第2回 「複雑系」社会におけるリーダー論|知らなかったではもう済まされない 夏野剛の「複雑系思考講座」|システム構築やトータルソリューションをお探しなら、日立ソリューションズをご利用ください。

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夏野剛の「複雑系思考講座」

第2回 「複雑系」社会におけるリーダー論
第1回では、"1つの課題において物理学、地学、政治学経済学など幅広い学問領域が複雑に絡み合う現在"、そんな「複雑系」社会において、「世の中の現象を部分ごとに切り分けず、"複雑なもの"として全体で考える」という複雑系のアプローチが必要であると夏野氏は説きました。第2回目では、そのアプローチにおいて求められるリーダー像、「複雑系」のリーダーの資質をご紹介します。

米国と日本、複雑系社会への適応が明暗を分けた。

 前回で、世の中は「閉じた系」から「複雑系」社会へと変わっている。しかし、いまだに「複雑系」を理解できず、「閉じた系」に固執している旧来型の大企業が苦境に陥っている、というお話をしました。

 そんな日本と違い、軽やかに「複雑系」にシフトしたのが、米国です。実は米国社会は、ことさら「複雑系」を意識はしていなかったのにもかかわらず、自然に「複雑系」の新しい潮流が集積 しています。なぜそうなったかというと、「新しいことはとりあえずやってみよう」、そして、「ルールは後からつくろう」というのが米国社会ですが、 そういう考え方が、この変化の時代に非常にマッチしたのでしょう。IT革命に乗じ、「複雑系社会の特性」をフルに生かして世界の中心へのし上がったグーグルやアップル、フェイスブックなどの新興企業が、アメリカで誕生したのは、こうした背景があったからです。

 これに対して日本の社会は、新しいものが来ると、「先にルールをつくらないとダメ!」といって拒絶する傾向にあります。そこで明暗が分かれました。

 なぜ、新しいものを拒絶するのでしょうか。それは、"守りたいもの"があるからだと私は考えます。残念ながら日本経済は、1960年代の高度経済成長期から、80年代にかけての20数年間を今でも引きずっています。その20数年間が"たまたま"うまく行ったものですから、社会の仕組みや組織のあり方などをすべてこの間につくり上げてしまったのです。ところが、インターネットの時代になると、そのうまくいった仕組みがことごとくマイナスに作用しています。それが今の日本社会の状況といえるのではないでしょうか。

 一方、新興のIT企業が過去最高の売り上げを記録するような時代です。これが示すのは、昨今のビジネスシーンでは、前例のないやり方で新しいものを生み出さない限り、企業も個人も活路を見いだせないということ。そこで求められるのが「イノベーション」となるのですが、よほど突出した才能がなければ、独力で革新を生むことはできません。

 では、どうすれば「新しいものを生み出す作り手」となれるのか。昨今注目を集めている「オープン・イノベーション」についてお話しましょう。

 本来の意味のオープン・イノベーションとは、メーカーが研究開発にかける時間を「買う」という目的で、他社から技術を買って製品づくりのサイクルを速めるところから始まっています。わかりやすく言うと、世界中の家電メーカーが、グーグルのAndroidを使ってスマートフォンを製品化するようなことです。しかも、企業のオープン・イノベーションの活用法がどんどん進化し、技術だけでなく、それぞれの企業が持つさまざまなスキルも持ち寄って、新しい商品やサービスを生み出すようになっていったのです。それが2000年代に入ると、いよいよ個人の間にも普及し始め、さらにSNSが情報のプラットフォームになり始めた2010年代からは、個人同士が自由に交流して、新しいものを生み出せるようになってきたのです。正直、SNSの普及で、個人と組織との関係も劇的に変わってしまいました。私はもう、ビジネスを企業軸だけで考える時代は終わりを告げ始めたと思っています。アイデアと実行力のある個人が、オープンなネットを駆使して、ほかの能力のある個人とつながって新しいことを始めた方が、企業の動きよりも速いのは明らかです。これからは「複雑系」のコラボレーションが一層のスピードで進むはずです。

 事実、Facebookというものが、どこかの大企業の新規事業開発チームから生まれたとは私は思えません。これは創業したマーク・ザッカーバーグという「個」の力が成せる業だったからだと思うのです。ただし、ザッカーバーグ氏自身、Facebookを立ち上げた当初はまさか10億人ものユーザーが使うサービスになるとは予測していなかったでしょう。あるビジョンの下で作られたサービスが、ネット上でブラッシュアップされながら進化し続けて、今の形になった。これぞ、現代のオープン・イノベーションなのです。

イノベーションは「競争」から「共創」にシフトしている
イノベーションは「競争」から「共創」にシフトしている

 さらにこれからは、ビジネスのゴールを共有しない複数のプレーヤーがコラボレートして生み出す、「複雑系のイノベーション」が活性化するでしょう。例えば、ソーシャルゲームのZyngaがFacebook上で利用できるアプリを提供して大成功しましたが、このような動きは従来型の企業ではあり得ないものでした。これまでビジネスというのは、自社の中だけで設定した"閉じたゴール"に向かって動き、競合他社と競争するものだったからです。「競争」から「共創」にシフトしたことで、それぞれが違うゴールを持ちながら、関わるプレーヤー同士がそれぞれ利益を得られる流れに変わりつつあるのです。

 私は、そこにこそ、日本経済に成長力を取り戻す上での、一つのヒントがあると考えています。

イノベーションは「競争」から「共創」にシフトしている
イノベーションは「競争」から「共創」にシフトしている

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