第4回 ITサービスの「ビジネススキーム」考察|知らなかったではもう済まされない 夏野剛の「複雑系思考講座」|システム構築やトータルソリューションをお探しなら、日立ソリューションズをご利用ください。

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夏野剛の「複雑系思考講座」

第4回 ITサービスの「ビジネススキーム」考察
第3回では、誰がリーダーをやっても同じような結果が出せた単純な時代はもう終わったのだから、これからは過去の栄光にきっぱりと別れを告げ、新しく勝てる分野を探すべきと訴えた夏野氏は、まずは自分たちの「強み」は何かを知らなければ戦えないと説きます。似て非なる楽天とアマゾンのビジネスモデルを解説しながら、両社が自らの強みを知り、最大限のパワーを注いでいることを引き合いにしながら、「強み」について真剣に向き合うことの大切さを語っています。

「アマゾンと楽天」のビジネススキームの違いを即座に見つけられるか

 今回は、日本市場における代表的なITサービスを行う企業を比較しながら、それぞれの複雑系を使ったビジネススキームを見ていきたいと思います。

 皆さんは、「アマゾン」と「楽天」というと、イオン対セブンアンドアイやパナソニック対ソニー、というような絶対的な対立構造を思い浮かべるかもしれません。その2社はどちらも同じネットショッピングの会社ですので、お互いライバルでしょうと言う人も少なくないでしょう。しかし、イオンとセブンアンドアイではビジネスモデルがほぼ同じであるのに対し、「アマゾン」と「楽天」とではビジネススキームが全然違うということをご存知でしょうか。

 両社ともに、欲しい商品を検索すれば商品アイテムがたくさん並び、お客は価格等を見て注文できるというサイトを軸に展開していて、それは一見ほぼ同じようなビジネススキームのように見えます。しかしながら、「アマゾン」は、自前で商品を抱え、自ら売っている一方、「楽天」は、外部の人々に様々な商品を売ってもらうためのプラットフォームをつくり、それを提供しているだけなのです。なぜこれを取り上げるかというと、一見ライバルのように見える会社が、自分たちと同じことをやっているとは限らないということを知ってほしいからです。

 「楽天」は、参加している各商店が、たくさん利益を上げることができるように、担当社員がコンサルティングを施して後押しする。この社員であるスーパーバイザーがものすごく優秀で類まれなノウハウを持っているのです。それに対し、「アマゾン」は、自分の倉庫にある商品の売れ行きを冷徹に分析して、在庫管理を徹底的にやるわけです。それだけをみてもやっていることが全然違うことがわかります。また、「楽天」は、消費者を囲い込むためのポイントを重視します。楽天スーパーポイントの3倍セールなどをよくやっています。それは、「楽天」で売っているものと、「アマゾン」で売っているものが同じである場合、商品を探している客が、ポイントを得られる「楽天」を選ぶようにしているのです。しかもかなり高いリベートを提示することで、ポイントを集客や囲い込みのマシーンとしてフル活用しています。配信頻度の高いメルマガシステムも集客の一環。広告チラシと同じ原理の集客マシーンとして活用しているのです。

一見ライバルのように見える会社が、同じことをやっているとは限らない
一見ライバルのように見える会社が、
同じことをやっているとは限らない

 それに対して、「アマゾン」はポイントで引きつけようなどとはまるで思っていません。アマゾンにもポイントは存在しますが、基本的に次回の買い物に半自動的に使用されるようになっていて、値下げの原資となっています。むしろ、自分のところに在庫があれば、「今日オーダーしたら、今日届く」ことを売りにしている。一方で「楽天」は、店に対してすぐ届けるようにお願いするにとどまり、店がその通りにするかどうかは分かりません。それがプラットフォーム戦略というものです。

 わかりやすくいうと、楽天は「ユーザー数の確保」が至上命題であって、その集客力を、他の金融サービスや旅行などの代理業サービスなど多岐にわたるビジネスに活かすやり方なのです。

一見ライバルのように見える会社が、同じことをやっているとは限らない
一見ライバルのように見える会社が、
同じことをやっているとは限らない

 それに対して、アマゾンは全世界での「売上高」に重きを置いたビジネス。いわゆる「ロングテールモデル」ビジネスで成長しました。ロングテールとは、たとえ一年間に1個か2個しか売れないような販売機会の少ない商品であっても網羅的にアイテムを取り揃えることで、相対的に売上を大きくすること。これはリアルな店舗では無理でした。アマゾンはITを駆使した在庫の一元化などによって無駄なコストを排除し、小さな町の書店やCDショップには置いていないようなマイナーな商品であっても大量に扱うことができるようになりました。これによって売上を大きく伸ばしていったのです。注文内容の確認を極端に簡略化した「1-Click購入」も、"売り上げを伸ばす"ためのひとつの仕掛けなのです。

 こういったアマゾンのビジネスモデルは、基本的に言語変換と在庫管理のみでどこの国にも進出が可能で、大量仕入れ・大量販売モデルが成功しやすいということは、ウォルマートやカルフールのようなリアル店舗で展開する大手スーパーマーケットチェーンが証明していることにも起因しています。

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