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平成の世にサムライを探して 

【第102回】日本大学理工学部 教授/一般社団法人 宇宙エレベーター協会 技術開発委員長 青木義男「宇宙と地上を安全に往復できる夢の仕組み──宇宙エレベーターが人類の未来を変える」

地上と宇宙を結んで、人や物資を安全に運ぶ「宇宙エレベーター」。SFの世界の夢物語と思われていたこの仕組みが今、実現に向かって動き始めている。エレベーターの安全研究の第一人者であり、宇宙エレベーター協会の技術開発委員長を務める青木義男氏に、宇宙エレベーターの可能性について聞いた。

宇宙から地上にケーブルをぶら下げる

青木義男(あおきよしお)プロフィール
1985年、日本大学大学院生産工学研究科機械工学専攻博士課程修了。現在、同大学理工学部教授。
98年から1年間、米国コロラド大学工学部航空宇宙工学科客員研究員を務める。
専門は機械材料、材料力学、知能機械学など。
2008年に一般社団法人宇宙エレベーター協会(JSEA)の副会長に就任。現在は技術開発委員長を務める。

※黒字=青木氏

── 初めに、宇宙エレベーターの基本的な仕組みを説明していただけますか。

ご存じのように、現在、数多くの衛星が地球の周りを回っています。地上から見た衛星の速度は、高度によって異なります。例えば、高度400Kmにある国際宇宙ステーションは、1日に地球を約16周しています。この高度を上げていくと、衛星の見かけ上の速度は次第に遅くなり、約3万6000Kmの地点で地球の自転の速度と一致します。

この高さにある衛星は、地球と同じスピードで動いていますから、地上から見ると中空に止まっているように見えます。そのため、この軌道を「静止軌道」と呼びます。気象衛星はこの静止軌道上にあるので、地球上の同じ地域を定点観測できるのです。

宇宙エレベーターの仕組み自体は、実は極めてシンプルです。この静止軌道上に宇宙ステーションを建設し、そこから地上に向けて長いケーブルを下ろす。そしてそのケーブルを伝って、エレベーターを上下させる。それが基本的な考え方です。

── 地上から「建造する」のではなく、宇宙から地上に「下ろす」。これは画期的な発想ですね。

このアイデアは、1960年に旧ソ連のユーリ・アルツターノフという人が考案したものですが、まさに画期的な発想で、これによって宇宙エレベーター構想が初めて現実味を帯びることになりました。

エレベーターは、人が乗る乗り物の中で、最も安全性の高いものの一つです。スペースシャトルは計5機製造されましたが、そのうち2機は空中で爆発してしまいました。それによって、「宇宙とは命を懸けて行くところ」というイメージが半ば定着してしまっています。しかしエレベーターなら、安全かつ安定的に地上と宇宙を往復することができるのです。

── 半世紀前に考案された宇宙エレベーターが近年になって注目されているのはなぜですか。

この半世紀の間で材料革命が進行し、宇宙エレベーターを実現させるために必要な素材がほぼ出そろった。それが大きな理由です。例えば、91年に日本の飯島澄男氏がカーボンナノチューブという素材を発見しました。これは現在、宇宙エレベーターのケーブルに最も適した材料であるといわれています。

── カーボンナノチューブのどのような性質がケーブルに適しているのですか。

青木氏あらゆる物質には、自分の重さで切れてしまう長さがあります。うどんやそばを食べる時、箸で麺をつまんで持ち上げていくと、麺の重みで必ずどこかで切れますよね。例えば鉄のワイヤーの場合、どれだけ長く見積もってもせいぜい15Kmで切れてしまいます。これではとても宇宙と地上をつなぐことはできません。しかしカーボンナノチューブは鉄よりも軽く、はるかに強度が高いので、3万6000Kmの高さから地上まで伸ばすことが可能なのです。

ちなみに、ステーションを静止軌道上で安定的に運行させるには、地上までのケーブルと同じ長さのケーブルを、地球と反対側にも伸ばさなければなりません。そうしないと全体の重心が釣り合わず、ステーションが地上に落下してしまうからです。結果、最近の宇宙エレベーター構想では、ケーブルは合計10万Kmというとてつもない長さになっています。カーボンナノチューブは理論上、その長さに耐える性質を備えています。あとは、技術的にそれをどう実現していくかです。

地球環境を守るための研究が可能に

── 元来の専門はどのような分野だったのですか。

専門は機械の構造力学で、建築設備の構造計算などに携わっていました。転機となったのは、90年代に施行されたバリアフリー法です。その法律によって、エレベーターの設置件数が大幅に増加し、エレベーターの安全研究をする研究者が必要になりました。そこで一研究者として、エレベーターの安全設計や事故調査などに関わるようになったわけです。

書籍「デザインの自然学」を手に微笑む青木氏
書籍「デザインの自然学」を手に微笑む青木氏。

── 宇宙エレベーターの構想と出会ったのはいつ頃のことでしょうか。

4年ほど前のことでした。最初に宇宙エレベーターの概念を聞いた時は、実現は到底無理だと思いました。エレベーターは、極めて緻密な制御を必要とする乗り物です。床の高さにピタリと合わせて止まらなければならず、何千回、何万回繰り返しても誤差があってはならない。しかもそれを自動でやらなければならない。そのため、現代のエレベーターを制御するには、4つものCPUが必要となっています。

そのような精密な乗り物で宇宙のようなとてつもなく遠い場所に行くなどという話は、エレベーターに関わってきた人間として、すぐには受け入れられませんでした。しかし、宇宙エレベーター建造の意義を聞いていくうちに、なるほど、これは人類にとって必要なものであり、何としても実現させなければならないと考えるようになりました。

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