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平成の世にサムライを探して 

【第107回】プロフリークライマー 野口啓代「心と体がつながった時、最高の登りができる」

道具を使わずに、両手足の力だけで人工の壁を登る競技「ボルダリング」。その世界大会で2度の年間チャンピオンに輝いているのが、野口啓代氏である。登ることの魅力にとりつかれてから10数年。なぜ彼女は登り続けるのか。世界の頂点に立つトップクライマーの才能と情熱と強さの秘密に迫る。

18歳にして世界の頂点に立つ

野口啓代(のぐちあきよ)プロフィール

1989年茨城県生まれ。
小学校5年生からフリークライミングを始め、6年生の春休みに全日本ユース選手権で優勝。天才少女の出現と話題を集める。
18歳で出場したボルダリングのワールドカップで初の世界一となり、以後、国内外の数々の大会で好成績を残し続けている。

人生のごく早い時期に全身全霊で打ち込める対象を見つけ、常人が到達できないような高みに軽々と達してしまう──。そんな人を天才と呼ぶのだとすれば、野口啓代氏は、まさに天才の名にふさわしいアスリートである。

小学校6年生の時に初めて出場したフリークライミング全日本ユース選手権のリードの部で優勝。中学校2年生で、大人も出場する国内大会のボルダリング競技で優勝。高校生になって出場した世界選手権のリードで3位。ワールドカップのボルダリングでは、高校2年生で2位、大学1年生の時には18歳にして初優勝し、世界の頂点に立った。2012年までで、ワールドカップでの優勝回数は実に13回。ボルダリングのワールドカップ年間チャンピオンにも2度輝いている。

リードとボルダリングは、ともにフリークライミング競技の一種である。ロープを自分でかけながら比較的高い壁を登るのがリードで、道具を一切使わずに四肢の力だけで壁をよじ登るのがボルダリングだ。リードは登った高さを競い、ボルダリングは与えられた課題にトライし、何回目で完登(ゴール)できたかを競う。

リードとボルダリングの違いは、しばしば陸上競技の長距離走と短距離走の違いに例えられる。陸上においてその2種目をこなせる選手がいないのと同様、フリークライミングの世界でも、リードとボルダリングの二足のわらじを履く選手の数は多くはない。だが野口氏は、メイン競技をボルダリングと定めながら、リード競技への出場も続けている。「両方大好きだから、両方で優勝したいんです」と微笑む。

メンタルが競技の結果を左右する

ホールドと呼ばれる突起物に手足をかけて登る(撮影:PUMP 2 川崎)
ホールドと呼ばれる突起物に手足をかけて登る(「PUMP 2 川崎」にて撮影)

野口氏がフリークライミングに出会ったのは、小学校5年生の時だった。夏休みに家族で行ったグアムでたまたま入ったゲームセンターに、大きな木の形をした張りぼてがあった。ホールド(手がかり、足がかりとなる石)が付いていて、それをつかみながら上まで登るというゲームだった。父親や姉弟とチャレンジした彼女は、すぐに夢中になった。日本に帰ってから、父親が家の近くに見つけてくれたクライミングジムに通い始めた。それが、クライマーとしての人生のスタートとなった。

登山の経験はほとんどなく、アウトドアに興味があったわけでもなかった。運動神経も特に良かったわけではないと野口氏は話す。

クライミングの素養は、自然に培われたものだ。茨城県で牧場を営む実家で、子どもの頃から毎日のように牛にまたがり、木や屋根に登った。いわば、やんちゃな自然児が、そのままクライマーとなったのが、現在の野口氏である。

ホールドに掛けられた野口氏の手 
ホールドに掛けられた
野口氏の手

むろん、やんちゃなだけで世界の頂点を極められるはずはない。彼女が誰よりも秀でているのは、おそらくメンタルの強さと頭の回転の速さだ。野口氏と言葉を交わすと、クライミングが好きで仕方がないという前向きな気持ちが真っすぐに伝わってくるばかりでなく、質問に対する反応の早さと答えの的確さに驚かされる。その「心と頭の強さ」が、競技でフルに発揮される。

「登っている時って、すごく頭を使うんです。右手は今ここにあって、左足は今あそこにある。次は手をどこに持っていって、足をどう動かせばいいか──。そんなことをずっと考えています。頭が冴えている時にはアイデアが次々に浮かぶし、手の指の先から足のつま先まで、全身に意識が行きわたっていることが自分でも分かるんです。心と体がしっかりつながっている。そんな感じです」

ボルダリングにトライする野口氏 
ボルダリングにトライする野口氏

ボルダリングの一回のトライは、通常、20秒から30秒程度で終わる。頭がフルに回転していて、自分の動きのすべてをイメージすることができれば、短い時間で一気に登り切ることができる。逆に、集中力が鈍っていたり、心が乱れていたりすると、自分の動きがイメージできず、完登も難しくなる。「フィジカルはもちろん大事ですが、それ以上にメンタルが結果を左右するんです」と野口氏は言う。

もっとも、どれだけ自分の動きをイメージできていても、登り切れずに途中で落ちてしまうことはある。重要なのは、その「落ち方」だ。

「自分の実力を出し切って、イメージ通りに登った結果として落ちてしまった時は、達成感や爽快感があります。逆に、自分がイメージするいい登りができなかった時は、優勝できたとしても、あまり嬉しくないんです。最高なのは、自分の力をすべて出せて、イメージ通りの登りができて、それに結果がついてきた時ですね」

一度最高の登りを体験すると、「またこういう登りをしたい」と強く感じる。それがトレーニングへのモチベーションとなる。クライミングの競技者となってからの7年間、彼女はそうやって自分のレベルを上げ続けてきた。

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