【平成の世にサムライを探して】第115回 ドルフィンスイマー 鈴木あやの「自然との一体感が疲れ切った心を癒してくれた」|システム構築やトータルソリューションをお探しなら、日立ソリューションズをご利用ください。

平成の世にサムライを探して 

【平成の世にサムライを探して】第114回 宗家花火鍵屋15代目 天野安喜子「一発一発の花火に技と魂を込めて──花火がもたらす勇気と生きる力」

小笠原で野生のイルカと出会ったことをきっかけに、ドルフィンスイマーとしての活動を始めた鈴木あやの氏。なぜイルカが彼女の心を捉え、彼女の何をイルカは変えたのか。イルカと共に泳ぎながら、イルカを観察し、その写真を作品として発表する鈴木氏の情熱に迫る。

自身をいたわるために訪れた“最も遠い日本”小笠原諸島

鈴木あやの(すずきあやの)プロフィール

1979年東京生まれ。
東京大学農学部卒業、同大学院農学生命科学研究科修士課程修了。
企業での研究職などを経た後、野生のイルカに出会い、イルカと共に泳ぐ感動を伝えることを志す。
現在、テレビ、ラジオ、映像制作、講演活動など多方面で活躍中。日経ビジネス「THE 100 2014 日本の主役」に選出される。
写真集に『イルカと泳ぐ』(新潮社)がある。

東京から南方へおよそ1000キロ。航空路はなく、ほぼ週に一便のペースで運航している客船を利用し、到着まで25時間半を要する。その“最も遠い日本”小笠原諸島を鈴木あやの氏が初めて訪れたのは、2007年のことだった。

「心身共に疲れ切っていた」─。鈴木氏はそう振り返る。

子供の頃から自然や生き物が好きで、東京大学では農学を専攻した。大学院で学んだ後、企業の研究部門に就職。遺伝子の細かな解析などの仕事に従事したが、研究を深めれば深めるほど、自然や生き物の全体像を見失っていくように感じた。研究を仕事とするという生き方にも、少なからぬ違和感があった。

その後、転職して食品メーカーへ。自分が手掛けた商品が店頭に並ぶ仕事にやりがいを感じたが、それでも物足りなさはつきまとった。会社勤めをしながら、大学時代の友人が始めたベンチャー企業の手伝いもした。バイオテクノロジーを子供たちに分かりやすく教える会社だった。自身の得意分野を活かせる仕事だったが、それも「答え」だとは思えなかった。

「ひたすらいろいろなことを吸収しようとしているうちに、自分のやりたいことが何かが分からなくなっていました。このままではだめになる。そう思いました」

会社を休職し、前から行きたいと思っていた小笠原を目指した。何かを見つけようと思ったわけではない。ただ自身をいたわるための一人旅だった。

こんなところが日本にあったんだ

最初に彼女の心を捉えたのは、言葉では言い表せないような感動だった。鈴木氏は振り返る。

「自然の美しさに圧倒されました。こんなところが日本にあったんだ、って」

「恋に落ちた瞬間」を語る鈴木氏
「恋に落ちた瞬間」を語る鈴木氏

島の周囲にイルカが棲息していて、ツアーに参加すればそれを実際に見ることができる。そう聞いたのは、島に滞在して数日が経ってからである。すぐにそのツアーに参加して、大海原をのびのび泳ぐ野生のイルカの群れを船上から見た。その新たな感動は、イルカと一緒に泳ぐことでいっそう深いものとなった。

「シュノーケリングの経験もなかったのですが、ツアースタッフの方に『海に入ってみませんか?』といわれるままに、海上にぷかぷか浮いてみたんです。すると、すぐにイルカが私に近寄ってきて、ピーピーと声をかけてくれました。その瞬間に恋に落ちてしまいました」

イルカとの邂逅(かいこう)を鈴木氏はそう笑いながら振り返る。そして、その「恋に落ちた瞬間」が、その後の彼女の人生を大きく変えることになる。

3週間にわたった小笠原滞在の間に、鈴木氏は素潜りの練習を繰り返した。イルカと共に泳ぐ「ドルフィンスイム」をもっと本格的に体験したいと思ったからである。スキューバダイビングではなく素潜りだったのは、自然との一体感を求めたためだ。タンクを背負っての遊泳ではどうしても動きが制約されるし、身一つでイルカと一緒に泳いでいるという感覚も薄れてしまう。

そうして彼女は、小笠原滞在中、ぎこちないながらも、何度もイルカと共に泳いだ。ただ一人で海に身を任せ、イルカと戯れる。大自然とのその一体感が、かつて野山を無邪気に駆け回って、生き物や花々を愛でていた頃の感覚を彼女に思い出させ、疲れ切った彼女の心を癒やした。

「友達と遊びに来てわいわいはしゃいでいたとしたら、恐らくここまで感動することも、癒されることもなかったと思います。一人きりで自然に向かい合うことで、感覚が研ぎ澄まされていたのでしょうね」

その研ぎ澄まされた感覚で得た自然との一体感を自身の体に記憶させ、鈴木氏は都会に戻った。

撮影は大きな水槽が置かれた都内のレストランバーで行われた
撮影は大きな水槽が置かれた
都内のレストランバーで行われた

しかし、現在のようなドルフィンスイマーとしての活動がすぐにスタートできたわけではなかった。会社を正式に辞め、家庭教師のアルバイトをしながら、東京都心部から比較的近いイルカの生息地である御蔵島に通うことで、イルカとの心の触れ合いを重ねた。

もっとイルカと泳ぎたい──。彼女のうちにあったのは、その思いだけだった。およそ120頭の野生のイルカが暮らすその島に年に10回以上通う生活。その中で、鈴木氏は次第にイルカへの理解を深めていった。

「はじめのうちはこちらからイルカに近づこうとしていたのですが、それではだめだということがだんだん分かってきました。イルカに意識してもらえるくらいの距離に身を置くと、私に興味を持ったイルカが自分から近づいてきてくれます。そのイルカに寄り添い、目を合わせて、一緒に遊ぶような感覚で泳げば、イルカも楽しんでくれるんです。そんな付き合い方ができるようになるまで、丸2年かかりました」

御蔵島のイルカには、島の観光協会が個体識別調査を行い、一頭一頭に名前を付けている。島に通う中で鈴木氏はその識別ができるようになり、イルカの方もまた、彼女を憶えてくれるようになった。

「イルカが向こうから私を見つけて、近寄って来てくれるんです。まるで、親戚の子供に会いに行くような感じですね」

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