【平成の世にサムライを探して】第118回 玉川大学ミツバチ科学研究センター 教授 中村純「なぜ、ミツバチの群れは滅びないのか──社会を存続させる500万年の『知恵』」|システム構築やトータルソリューションをお探しなら、日立ソリューションズをご利用ください。

平成の世にサムライを探して 

【平成の世にサムライを探して】第118回 玉川大学ミツバチ科学研究センター 教授 中村純「なぜ、ミツバチの群れは滅びないのか──社会を存続させる500万年の『知恵』」

ミツバチは、アリなどと同様に、高度に発達した社会を運営していることで知られている。はるか500万年前に成立したといわれるその社会の仕組みと、それが持つ意味、さらにはミツバチの社会が私たち人間に与える示唆について、玉川大学ミツバチ科学研究センターの中村純教授に話を聞いた。

ミツバチ社会の知られざる仕組み

中村純(なかむらじゅん)プロフィール

1958年岐阜県高山市生まれ。
83年、玉川大学修士課程修了。一般企業、青年海外協力隊を経て、93年に同大学博士課程を修了する。
その後、同大学助手、助教授を務めた後、2007年に玉川大学ミツバチ科学研究センター教授に就任。

※黒字=中村純 氏

──  まず、ミツバチの集団がどのような役割によって構成されているか教えていただけますか。

一般に「ミツバチ」という場合は、ほぼセイヨウミツバチで明らかにされたことで説明することになります。このハチは、多い時で5万匹以上、少ない時は1万匹程度で群れをつくって生活しています。群れは、1匹の女王バチと、大多数を占める働きバチ、それから少数のオスバチによって構成されています。

働きバチはすべてメスで、その役割は大きく3つに分かれます。育児、貯蔵、採餌です。基本的には、年の若いハチが巣の中で育児や蜜の貯蔵に従事して、日齢を経たハチが巣の外に出て餌となる蜜を採取するという役割分担になっています。

日齢を経たハチが採餌を行うのは、その作業のリスクが非常に高いからです。巣の外に出れば、鳥やカマキリに食べられるかもしれないし、雨に打たれて死んでしまうかもしれません。死ぬ確率が高い仕事は、巣の中の仕事を一通りやり終えたハチが担う。それがミツバチの社会の決まりになっています。

──  確かにその仕組みなら、1匹が一生のうちにこなせる仕事の量は多くなります。オスバチにはどのような役割があるのですか。

オスの役割は一つしかありません。生殖です。オスバチは生まれてからしばらく経つと、巣の外に飛び立って、他の巣の女王バチと交尾をします。交尾を終えたオスバチは、その場で死んでしまいます。交尾せず巣に戻ったとしても、貴重な栄養源を消費するだけなので、繁殖期の終わりには巣の外に捨てられてしまいます。

──  極めて合理的ですね。女王バチの一番の役割は、やはり群れを統率することなのでしょうか。

いいえ。ミツバチの群れは、リーダーを持たない集団です。女王バチの一番の役割は、群れを維持するために産卵を続けることであって、統率することではありません。

写真中央に見えるのが女王バチ。一回り大きな体格を持つ。
写真中央に見えるのが女王バチ。
一回り大きな体格を持つ。

女王バチは、巣の外でいろいろな巣のオスバチと交尾をして、多様な精子をお腹の中に蓄えて巣に戻ります。その精子を長期的に保存し、2年から3年にわたって大量の卵を産卵します。その数は、多い時期には1日に1000個を超えることもあります。

女王バチのもう一つの役割は、働きバチの卵巣の発達を抑制するフェロモンを出して、働きバチたちの生殖活動を抑えることです。卵を産む役割を自分一人で担うことで、他のメスには労働に専念できる環境を与える。それも女王バチの重要な仕事です。

しかし、女王バチはいつまでも卵を産み続けられるわけではありません。蓄えた精子の数には限界があるからです。

女王バチの産卵能力が衰えてくると、次の女王バチを産み出すための部屋が働きバチによって10から20くらい巣の中に作られます。女王バチがそこに産卵し、新しい女王バチが誕生する直前、現女王バチは群れの約半分を連れて巣を出て、新しい巣を作ります。それが、「分蜂(ぶんぽう)」です。

一方、新たに誕生した女王バチは、そのまま古い巣にとどまり、他の女王バチ候補の部屋をすべて壊し、もし他にもすでに新女王バチが誕生していれば、1匹になるまで殺し合うか、いずれかが分蜂します。こうして、一つの巣に1匹の女王バチの体制は維持されます。

民主的討論によって新しい巣を決める

──  ミツバチが「ダンス」をするというのは、よく知られています。このダンスの意味についてもお聞かせください。

中村氏
中村氏

有名なのはいわゆる「8の字ダンス」ですよね。お尻を振りながら歩いて、弧を描いて戻ってくる。また歩いて今度は逆の方に弧を描いて戻ってくる。この動きが8の字に見えるというわけです。この8の字ダンスには、餌となる花や、分蜂の際に新しい巣を作る場所の候補の方角と距離を知らせる意味があります。

花の場所を伝える場合は、花の蜜の状態も伝達していることが知られていて、花蜜の糖度が高い花の場合には、より激しくダンスを踊ることが知られています。

──  ミツバチのダンスは、一種の「言語」と考えてよいのですか。

ええ。無脊椎動物の中で唯一言語を持っている生物がミツバチであるといわれています。8の字ダンスに限れば、その言語が伝えるのは餌の在りかと巣の候補地だけですが、他にも10種類程度のダンスがあって、「ダニがいるから背中をかいて」とか、「花が咲いたから外に出ろ」といったことを仲間に伝えているようです。

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