【平成の世にサムライを探して】第144回 株式会社ジャパンブルーエナジー 代表取締役社長 堂脇直城「「水素の地産地消」がエネルギーモデルを変える」|システム構築やトータルソリューションをお探しなら、日立ソリューションズをご利用ください。

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【平成の世にサムライを探して】第144回 株式会社ジャパンブルーエナジー 代表取締役社長 堂脇直城「「水素の地産地消」がエネルギーモデルを変える」

水素で走るトヨタ自動車の「MIRAI」の発売から2年以上がたつが、エネルギーとしての水素活用はまだ模索段階にある。しかし、2020年の東京五輪に向けて、今後水素社会のデザインが急速に進んでいきそうだ。ベンチャー企業、ジャパンブルーエナジーが開発した、バイオマス(有機廃棄物)から水素を生み出す方法は、来るべき水素社会を支える可能性のある画期的な技術である。代表取締役社長の堂脇直城氏に話を聞いた。

有機廃棄物から生まれる環境負荷のない水素

堂脇直城(どうわき・なおき)プロフィール

ジャパンブルーエナジー代表取締役社長。
大手通信機器メーカーに勤務後、父親が創設したコンサルティング会社を引き継ぐ。
2002年にドイツの企業より「有機物質及び物質混合物をガス化する方法」の日本国内における独占的通常実施権を取得。
バイオマスガス化水素製造の研究開発を始め、国の補助金などを活用して実証プラントを3本建設。
改良したオリジナル特許を国内外に3回出願し、世界各国で特許を取得している。
12年より現社名に。

※黒字= 堂脇直城氏

── 木くずなどの有機廃棄物、いわゆるバイオマスから水素を作るという画期的な技術に取り組まれています。その基本的な仕組みを説明していただけますか。

ベースになっているのは、ドイツで開発されたバイオマス発電の技術です。普通のバイオマス発電は、木くずなどを燃焼させ、その熱で蒸気を発生させてタービンを回す仕組みになっています。燃焼によってCO2が発生しますが、そのCO2は植物によって吸収されて相殺されるため、比較的クリーンな発電方法であると見なされています。

── 植物由来の原料から発生したCO2が植物によって吸収される。結果、CO2排出量はゼロカウントとなる。いわゆる「カーボンニュートラル」という考え方ですね。

そうです。CO2が排出されるという点では従来の火力発電などと変わりませんが、バイオマスを使うとカーボンフリーとなりCO2排出がゼロカウントになります。それがバイオマス発電です。当社が取り組んでいるバイオマスガス化プロセスでもCO2は発生しますが、バイオマスを原料に使うので「カーボンニュートラル」になりCO2はゼロカウントです。これは、酸素のない炉の中で、700度以上の高熱でバイオマスをガスにし、それを利用してガスエンジンを回して発電する仕組みです。この仕組みでは、熱分解後にチャー(黒炭)が発生します。また、熱分解ガスの改質プロセスでCO2が発生しますが、バイオマスが原料なのでカーボンニュートラルとなりゼロカウントです。
この仕組みが面白いのは、発生するガスに水素が含まれている点です。50%程度の純度の水素を取り出し、99.99%という高純度の水素を精製するのが、私たちが開発した水素製造の方法です。

堂脇直城氏の画像

── 「カーボンニュートラル」で非常にクリーンな発電方法であるバイオマスガス化発電があまり普及していないのはなぜなのでしょうか。

最大の問題は、ガス化の過程でタール(油状の液体)が発生することです。タールは高温の環境では気体の状態でガスの中に溶け込んでいるのですが、炉の中に熱ムラが出て温度が低い場所ができると、液体・固体となって炉の内壁などに付着してしまうのです。これをいかに防ぐかがガス化発電の課題でした。

── となると、熱ムラを発生させずに、炉の中を常に高温に保つことができればよいというわけですね。

そういうことです。そこで威力を発揮するのが、私たちが「ヒートキャリア」と呼んでいる直径1センチほどのアルミナ(酸化アルミニウム)の玉です。1050度の高温にした数トン単位のヒートキャリアをバイオマス原料と混ぜ合わせて炉の中に入れることで、炉内の熱ムラがなくなり、タールが固体化することを防げるわけです。

── それは御社が開発した技術なのですか。

2013年に完成した群馬県渋川市の第3号実証プラントの画像
2013年に完成した群馬県渋川市の第3号実証プラントは、様々な技術が結集されている

ここまではドイツで開発された技術です。これに水素精製のシステムを加え、プラント全体をよりコンパクトにするといった工夫を施したのが、当社独自のアイデアです。それによって特許を取得しています。

── もともと発電用の技術だったものを水素製造に特化したところに、御社の独自性があるというわけですね。プラントをコンパクトにすることのメリットは何なのでしょうか。

熱調整がしやすくなる点です。ヒートキャリアは、各炉を循環して下に降り、それを上まで持ち上げて再度炉に入れる、という形で再循環させています。プラントを小型化すれば、その移動距離が短くなるので、熱のロスを防ぐことができます。
もう一つのメリットは、町村単位での導入がしやすくなることです。巨大なプラントは導入コストもかかるし、場所も取ります。一方、小型プラントであれば、小規模な町村への導入のハードルがぐっと下がります。その結果、全国各地への普及が進む。それが私たちの狙いです。

「水素を使ううれしさ」を積み重ねていくことが大切

堂脇直城氏の画像

── その水素製造プラントは、今後、どのように活用されていくことになるのですか。

私が描いているのは、地域で使うエネルギーを地域で生産するモデルをコンパクトな水素プラントによって実現する、というビジョンです。
もともと当社はコンサルティング会社で、2000年代初頭に通産省(現経済産業省)などとともに、未来の循環型社会をいかにデザインするかを議論していました。当時、リサイクルは産業や工業分野の課題であると考えられていたのですが、日本の国土の7割以上は農山村です。農山村地域を巻き込んだリサイクルが実現しなければ、本当の意味での循環型社会は成立しない。そう考えていました。
一方、2000年代の初頭から「どうやら自動車メーカーは水素を使った車の開発を考えているらしい」という話が一部で語られていました。今でいう燃料電池自動車です。水素はCO2を出さないクリーンエネルギーであるということでしたが、調べてみると、水素を作るには化石燃料が必要であることが分かりました。化石燃料に代わる有望なエネルギー源である水素は、化石燃料を使わないと作れない。それでは完全に本末転倒です。水素がクリーンなエネルギーであるというなら、その製造過程もクリーンでなければなりません。
リサイクル、農村、水素──。それらのテーマは、しばらくの間、私の頭の中にばらばらにありました。ドイツのバイオマスガス化発電技術との出合いによって、そのすべてのテーマが一気に結び付いたわけです。農山村から出る有機物を資源として使い、水素を作り出し、その水素で自動車を走らせる。しかも、その土地で作ったエネルギーをその土地で使うことができる。「これだ!」と思いましたね。

ジャパンブルーエナジーが開発したガス化二段炉の仕組みの画像

── まさしくエネルギーの地産地消ですね。地産地消を行う意義とは何なのでしょうか。

一つには、運ぶお金がかからないということです。現在の水素プラントの多くは臨海地区にあって、利用する場所までの運送コストがかかるので、水素の市場価格が高くなる構造になっています。しかし、私たちが開発した小規模のプラントを導入すれば、地域内で使う水素をその地域内で製造することができます。現在のところ、その地域は50km圏程度の規模を想定しています。
もう一つ、水素の地産地消が持つ大きな意味は、「水素を使ううれしさ」が分かるということです。

── 「水素を使ううれしさ」ですか。

ええ。水素社会を実現させるには、「水素を使ううれしさ」を多くの人が感じるようにならなければならないと私は考えています。
例えば、水素を使った燃料電池自動車が都会を走っている。それだけを見ても「水素を使ううれしさ」を感じることはなかなかできません。しかし、自分が暮らす地域から出るバイオマス資源から水素が生まれ、それによって自動車が走っているという事実を知れば、多くの人が「水素を使ううれしさ」を身をもって感じることができると思うんです。
我々が原料として利用するバイオマスとは、農林畜産業や食品加工業からの有機系廃棄物を中心に考えています。もちろん近い将来は下水汚泥も原料として考えています。それを処理しようとすれば、これまでは大量の重油をかけて燃やさなければなりませんでした。そのためのお金もかかりました。しかし、それを資源とすることができれば、それがエネルギーという新しい価値に換わり、そこから逆にお金が生まれるわけです。資源、エネルギー、お金が地域の中で回り、さらにそこで生まれた水素で走る車がその地域の中を行き来する。これは非常に「うれしい」ことだとは思いませんか。

── なるほど。燃料電池自動車は水素社会のバリューチェーンの「川下」に当たるわけですが、水素が生まれる「川上」までが見えれば、確かに水素のありがたさが実感できますね。

しかも、その川上と川下が、自分が暮らす土地でつながっているわけです。私たちがやるべきことは、小規模のプラントを各地に提供して、小さな「うれしさ」を積み重ねていくことだと思っています。その集積が、結果として水素社会につながっていく。そんな見通しを私は持っています。

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