【平成の世にサムライを探して】第147回 長兼丸船主/深海魚ハンター 長谷川久志「「焼津の深海おじさん」が語る深海漁の魅力とは── 子どもたちに夢を与え続けられる深海漁師でいたい」|システム構築やトータルソリューションをお探しなら、日立ソリューションズをご利用ください。

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【平成の世にサムライを探して】第147回 長兼丸船主/深海魚ハンター 長谷川久志「「焼津の深海おじさん」が語る深海漁の魅力とは── 子どもたちに夢を与え続けられる深海漁師でいたい」

駿河湾で深海漁を始めて40年。光の届かない深い海に延縄(はえなわ)を下ろしカニやサメ、そして未知の魚を捕り続けてきた長谷川久志氏。現役漁師として船に乗り続ける一方で、「深海の語り部」としてメディアや講演などでも活躍する長谷川氏が、深海漁の底知れぬ魅力を語る。

漁のことも世の中のことも船の中で教えてもらった

長谷川久志(はせがわ・ひさし)プロフィール

1949年、静岡県焼津市生まれ。
中学卒業後マグロ船に乗り遠洋漁業に従事。
その後、近海マグロ船で父親らと漁を続ける。
深海漁を始めたのは40年前。
現在は、横浜の中華街にある「ヨコハマおもしろ水族館」の名誉館長を務めるほか、しばしばテレビにも出演し、「焼津の深海おじさん」として人気を博している。

※黒字= 長谷川久志氏

長谷川久志氏の画像
長谷川久志氏

── 漁師になったきっかけをお聞かせください。

父親はもともと大型カツオ船の船頭で、俺が小学2年生の時に自分の船を持って親方になったんです。そんな姿を子どもの頃から見ていたものだから、漁師という職業はずっと身近でした。
俺は中学時代はワルでね、入れてくれる高校もなかったから、自分で遠洋のマグロ船に話をつけて、乗り込んだわけです。16の時でした。あれは本当にいい経験だったね。俺の親父が面倒を見た若い船員が3人、その船に乗っていたんですよ。彼らは「お前の親父さんには本当にかわいがってもらった」と言って、俺にとても良くしてくれました。「なるほど、いいことをすれば、それが巡り巡って返ってくるんだ」と思いました。それで気持ちを入れ替えて、一生懸命働こうと心に決めました。あれで人生が変わったね。

── 仕事はきつかったでしょう。

遠洋ですからね。短い時で9カ月。長い時で1年2カ月。その間は家に帰ってこられません。大変でしたけれど、仕事は楽しかったですよ。漁のことも世の中のことも、あの船の中で学ばせてもらいました。

── 船が社会だったわけですね。遠洋漁業の仕事はどのくらい続けたのですか。

焼津市の小川港に停泊している長谷川氏の船「長兼丸」。現在は息子の一孝氏とこの船で漁に出ている
焼津市の小川港に停泊している長谷川氏の船「長兼丸」。現在は息子の一孝氏とこの船で漁に出ている

10年くらいです。親父から「船を買うから、家に帰ってこい」と言われて、それからは親父、祖父、義兄らと一緒にその船に乗って近海で漁をするようになりました。サバ、カジキ、マグロ、あとは小笠原まで行ってハタを捕ったりしていました。

── 深海魚の漁を始めたのはいつ頃でしたか。

ボタンエビの漁期が4月に終わるんですが、その後ちょっとの間、捕るものがなくなるんですよ。それで親父と「駿河湾の深海で何か捕れるんじゃないか」と考えて、大きな籠を作って沈めたら、エゾイバラガニとかタラバガニが面白いようにたくさん捕れましてね。それからしばらく深海でカニを捕る漁を続けました。それが40年くらい前のことです。
しかし、当時このあたりでは、カニを食べる文化がなかったんですよ。市場に持っていっても二束三文なものだから、料理屋に直接売ったりしていましたが、それも売れなくなって、トラックの荷台にカニを積んで行商をするようになりました。それでもなかなか買ってくれる人はいなくて、大根やミカンと交換したりしてね。もうやめようと思ったけれど、妻が「ここまでやったんなら、もう少し頑張ってみたら」と言ってくれて、もうしばらく続けてみることにしたんです。
ところがある時、テレビ局が取材に来て、焼津でカニが捕れるという情報を取り上げたわけです。エゾイバラガニは、濃厚なバターのような味がするので「ミルクガニ」と呼ばれたりするんですが、その名前で紹介したら瞬く間に話題になって、しかもリポーターが勝手に「限定で1杯500円」と言ったものだから、問い合わせが殺到しました。それからですね、深海のカニに注目が集まるようになったのは。

何が捕れるか分からないのが深海漁の一番の面白さ

── 深海ザメを捕り始めた経緯についてもお聞かせください。

カニが捕れなくなった時期があって、「じゃあ次はサメだ」と深海ザメに狙いを定めました。このあたりでは、実は昔から深海ザメ漁はあったんですよ。戦争の頃は、サメの油を戦闘機などに使っていたようです。

長谷川氏が捕ったアイザメ。たまにしか捕れないという。捕獲後冷凍し、肝油ドロップのメーカーなどに販売する
長谷川氏が捕ったアイザメ。たまにしか捕れないという。
捕獲後冷凍し、肝油ドロップのメーカーなどに販売する

でも、サメはカニよりも売れません。そこでサメの油を肝油ドロップなどに使ってもらおうと、いろいろな健康食品メーカーに電話をかけまして。やっと1社買ってくれるところが出てきたんです。それで何とか商売の糸口がつかめました。

── 深海漁の一番の難しさは何ですか。

魚群探知機で探っても、魚の反応が出ないことです。深海の魚は海底にはいつくばって泳いでいるからね。それから、延縄の下ろし方です。アイザメはだいたい450mから520mくらいの深さのところで捕れるんですが、潮の流れがあるから、そこにピンポイントで延縄を下ろすのはすごく難しいんですよ。
それでも、昔は1日で200万円くらいの稼ぎが出ることもありました。母親から「こんな漁をしていたら罰が当たるよ」と言われたりしてね。しかし、2009年8月に起こった駿河湾沖地震で、サメはこのあたりから完全に姿を消してしまいました。再び捕れるようになったのは、ようやく最近になってからです。

── 食用にできる深海魚もいるのですか。

タラ、イバラヒゲ、ソコボウズ。季節にもよりますが、そのあたりですね。これは食用ではないけれど、貝も結構引き合いがあるんですよ。貝のコレクターという人たちが世の中には結構いるらしくてね、観賞用に貝を買うんです。いつだったか、「深海の泥を譲ってほしい」という人がいましてね。美容にでも使うんだろうかと思っていたら、どうやら泥の中に小さな貝がいて、それが売れるらしいんです。こっちはただの泥だと思っていたからお金はもらわなかったけれど、それで大儲けしていた人がいたわけです。それを知ってからは縁を切りましたけどね(笑)。

── 水族館にも魚を提供しているのですよね。

沼津港深海水族館と東海大学海洋科学博物館。この2館には魚を買い取ってもらっています。一方、俺が名誉館長を務めている横浜の中華街にあるヨコハマおもしろ水族館には、タカアシガニや普通はなかなか手に入らない深海魚を無料で提供しています。もともと、この水族館を支えたいという思いがあって始まった関わりでしたから、お金はいただかなくていい、子どもたちに珍しい魚を見て喜んでもらえればいいとボランティアで提供しています。

長谷川久志氏
長谷川久志氏

── 海洋研究への協力もされているとか。

JAMSTEC(海洋研究開発機構)ですね。彼らは海の生態系の研究をしていまして、それに協力しています。草原の頂点に立つのはライオンで、海の表層の頂点に立つのはシャチですよね。では、深海の頂点に立つ生物は何か。それをカメラで撮影しながら調査しているわけです。彼らはいつも言っていますよ、「他の海ではサメの映像は簡単には撮れないのに、長谷川さんの船に乗ると必ずといっていいほど撮れる」って。「長谷川マジック」と呼ばれています(笑)。

── その「長谷川マジック」の秘密とはズバリ何なのでしょうか。

経験と勘ですね。もちろん魚群探知機も使うのですが、それだけではサメがどこにいるかは正確には分かりません。駿河湾の海底の地形がだいたい頭に入っているのと、あとは40年の深海漁の経験。そうとしかいえないですね。

── 深海漁の一番の面白さとは何ですか。

何が捕れるか分からないということですね。真っ暗な海の底に縄を垂らすわけでしょう。縄を引き上げると、思ってもみなかったものや、初めて見る魚が捕れていたりする。時には全くの新種が見つかることもある。これは、普通の漁じゃなかなか体験できないことですよ。ずいぶん長く深海漁を続けてきましたが、どれだけやっても毎回わくわくするね。全然飽きることがありません。

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