第十七回 浜出雄一-後編-経営者として生きる意味を問い続けて二十年。自然や海にやさしい製品を世に出すことが自分の使命だと思うようになりました。|システム構築やトータルソリ...

平成の世にサムライを探して 

浜出雄一-後編-経営者として生きる意味を問い続けて二十年。自然や海にやさしい製品を世に出すことが自分の使命だと思うようになりました。

たった一度の人生なら、こんな風に生きてみたいと思わせてくれる熱血仕事人を訪ねるコーナー、北海道・函館を本拠地に、イカ釣りロボットの開発で全国に名をとどろかせている株式会社 東和電機製作所 代表取締役社長 浜出雄一さんの物語の後編をお届けします。顧客の声に真摯に耳を傾けることでさらに製品を進化させ、今また「自然にやさしく、人にやさしく、子孫にやさしく」という理想を見い出し、迷いのない一本道を歩み続けています。

お客さんの声に耳を傾けよう

浜出雄一(はまでゆういち)プロフィール
1947年、北海道函館市生まれ。株式会社東和電機製作所 創業者 浜出慈仁氏の長男として生まれる。父・慈仁氏の厳しくも自由な教育方針のもとモノ作りをこよなく愛する気質を養い、1972年、東和電機製作所に入社。設計課に所属し、さまざまな生産設備改良業務に取り組み、同社の主要製品である自動イカ釣り機の進化に貢献する。1984年、父・慈仁氏が亡くなった後、同社代表取締役に就任。これに前後してかねてから構想していたマイコン制御のイカ釣りロボットを出荷し、この分野におけるマーケットシェアNo.1を奪還する。近年は海の環境保護に積極的に乗り出し、集魚灯のLED化や海水電解装置の開発に注力している。

念願のシェア日本一を取り返して、あらためて浜出さんはじっくりと考えた。なぜ一時期お客さんが離れてしまったのか。それは天狗になったからだ、と思った。人気が出て、製品は作れば売れたので、自分たちのやっていることに間違いはないと思いこんでしまった。クレームが寄せられても真摯に耳を貸さず、故障への対応も、それがなぜ発生したか深く考えなかった。これからお客さんのいうことをよく聞こう。そう決意した浜出さんはそれから得意先のお客のもとを熱心に回るようになった。

東和電機製作所の自動イカ釣りロボットは、釣り糸の制御が全自動である。ボタン操作ひとつで、漁船に乗せたすべてのイカ釣りロボットの釣り糸を上下同時にコントロールすることができる。それによって、釣り糸は常に同じ動きができるようになり、急に潮流が変わっても釣り糸どうしがからまなくなるという利点があった。しかし、漁師は「糸はからまなくなったけど、イカの付きが悪くなった」と浜出さんに訴えるようになった。漁師はそれしかいってくれない。彼らは言葉で伝えることのプロではない。それが一体何を意味しているのか、わずかなヒントから浜出さんは一生懸命考える。

そして、突然あっと気づくのだ。それはこういうことだった。当時のイカ釣りロボットは、すべての釣り糸を同時に巻き上げ、巻きおろす仕組みになっているため、糸を巻き上げているときに、船の下をイカの群れが通過するとどうにも対処のしようがなかったのだ。そこで、次の改良機では、それぞれの釣り糸の巻き上げ、巻き下ろしの動作に微妙な時間差をつけることにした。こうすれば、一斉に釣り糸は動くものの、船の下でそれが皆無になる時間がゼロになる。当然、この改良機は漁師に歓迎された。

一口にイカといってもさまざまな種類がある。マイカ、ヤリイカ、アカイカ、東和のイカ釣りロボットはほとんどのイカに対応することができたが、ムラサキイカだけは苦手にしていた時代があった。ムラサキイカは胴体と足との結びつきが弱く、せっかく吊っても巻き上げる間に大波が来るなど衝撃が加わると、胴体がちぎれてしまう。それを業界では“脱落率が高い”といった。ムラサキイカの脱落率をなんとか下げられないか。浜出さんにとってそれは長年頭を悩ませていた懸案の問題だった。

あるとき、営業活動で北陸を回っていると、漁船を作る会社の人間が「うちの船はイカ釣り漁に向いている。うちの船で漁場に出ればイカがよく釣れる」といった。またしても判じ物の世界である。それはどういうことを意味しているのか。聞けばその船はシケのときにも揺れが少ないような漁船に設計しているという。それでひらめいた。衝撃でイカが脱落するのなら、衝撃から釣り糸を守ってやればいいのだ。それでイカ釣りロボットに衝撃吸収の仕組みを取り入れた。それによって、船が大きく揺れても、それはそのままは釣り糸に伝わらない。足の弱いムラサキイカであっても、他のイカ同様、完全な姿で吊り上げることが可能になった。これが特許長官賞を受賞した。

東和電機製作所では、マグロの一本釣りに対応した自動機も製作している。エサをつけた釣り糸をたらすのはイカと同じだ。しかし、マグロの場合は引きがあったら巻き上げにかかる。そして、マグロはイカと違って吊り上げられるのを逃れようと必死に抵抗する。漁船のそばまで寄せられると、海底に向かってすごいスピードでもぐり出し、釣り糸を引きちぎってしまうのだ。マグロは漁師にとって赤いダイヤである。一匹吊り上げると、百万円単位の商売ができる。それだけに逃したときのくやしさは大きい。というのも、逃げたマグロは、まるで漁師をあざ笑うかようにしばらく漁船のそばを回遊するらしいのだ。
漁師は浜出さんに向かって、怒りながら必死に訴える。「お前のところの機械のせいで釣れなかったんだ」 浜出さんは怒られながら、漁師からその状況を執拗と思えるほどくわしく聞きだす。そして、また考える。釣り糸が引っ張られて切られるのなら、釣り糸が引っ張られないようにすればいい。釣り糸に強い力がかかったときにブレーキがかかるようにしたらいいことに気づいた。

浜出氏またあるとき、同じ漁師が「機械の色を変えろ」といった。「はっ、色ですか? 何色ならいいのでしょうか?」と浜出さんが尋ねると、その漁師は「ピンクにしろ、ピンクに」といった。別に、牛が本能で赤い色を追うように、マグロがピンクという色にひきつけられるわけではない。それは単にその漁師の好きな色だった。ピンクと聞いた瞬間、「ダサい!」と思った浜出さんだったが、何とそのとおりにした。会社に帰って「色をピンクにする」といったら、聞いた社員はあっけにとられたというが、「お客さんがピンクといっているんだから」と押し切った。そうしたらどうだろう。試験的に持ちこんだ機械は、その漁師のマグロの水揚げ量を飛躍的に上げた。漁場にあってひときわ目立つピンク色の機械はたちまち界隈の漁師の知るところとなって、まだ販売価格も決まらないうちから「あのピンクをくれ!」という注文が次々に舞いこんだのである。浜出さんは、「改良して、よくなったとお客さんにほめてもらえることや、お客さんの望むことを実現して、喜んでもらえた時が一番うれしい。」と顔をほころばせる。

東和のイカ釣りロボットは、今や世界各地で利用されている。台湾、韓国、中国、アルゼンチン、ペルー。では、浜出さんは世界をかけ回って漁師のニーズを探っているのだろうか。そうではない、という答えが返ってきた。魚を釣るという仕事に関する限り、世界中で一番研究熱心なのは日本の漁師なのだそうだ。なかでも、もともと漁獲高の多いトップクラスの漁師の言葉は、一言一言に含蓄があるという。彼らの要望を実現した製品は、世界中のどの漁師も歓迎する。だから、浜出さんは日本の優秀な漁師の意見には素直に耳を傾けるのだ。

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