第六十三回 小暮真久 -前編- 「20円」で世界を変えるTABLE FOR TWO 想いをつなぎ、地球規模の問題に挑む仕組みとは|システム構築やトータルソリューションをお探しなら、日立...

平成の世にサムライを探して 

小暮真久 -前編- 「20円」で世界を変えるTABLE FOR TWO 想いをつなぎ、地球規模の問題に挑む仕組みとは

現在、地球には食事や栄養を十分に取ることができない人、食べ過ぎによる肥満や生活習慣病に悩む人がほぼ同数存在し、地球には「食の不均衡」が生じている。この現実に対し、“飢餓”“飽食”という対照的な地球規模の食糧問題に同時に取り組んでいるのが、NPO法人(認定特定非営利活動法人)TABLE FOR TWO Internationalである。「20円でできる社会貢献活動」として注目を浴びるTFT。設立時から事務局長を務めている小暮真久氏にお話を伺った。

「20円」から始める社会貢献
地球規模の食糧問題に挑むTFTの仕組み

小暮真久(こぐれまさひさ)プロフィール
1972年東京生まれ。
早稲田大学理工学部機械工学科卒業後、1999年スインバン工科大学にて修士号取得。マッキンゼー・アンド・カンパニー東京支社入社。2005年松竹株式会社入社、事業開発を担当。2007年TFTのコンセプトを知り、同年8月には事務局長に就任。2007年10月NPO法人 TABLE FOR TWO International設立。2009年1月には、TFTプログラム導入企業が100社突破した。著書に『“想い”と“頭脳”で稼ぐ 社会起業・実戦ガイド 「20円」で世界をつなぐ仕事』(日本能率協会マネジメントセンター刊)がある。

「20円でできること」--日本に住む私たちにとって、20円でできることといえば、公衆電話の通話くらい。20円ではジュース1本も買えない、電車にも乗れない、パンも買えない。

しかし、アフリカの子どもたちにとっては、20円は給食1食分に相当し、大きな価値を持つ。この「20円」の持つ相対的な価値に着目し、“飢餓”と“飽食”という地球規模の食糧問題に取り組むNPO法人 TABLE FOR TWO International(以下、TFT)。TFTの設立時から事務局長を務めているのが小暮真久氏である。

現在、地球には食事や栄養を十分に取ることができない人、食べ過ぎによる肥満や生活習慣病に悩む人がほぼ同数存在し、その数はそれぞれ10億人ともいわれている。このように、地球には「食の不均衡」が生じ、一方では飢餓、その一方では飽食といった「食」という共通のテーマで対照的な問題が発生している。

驚くべきことに地球人口の約3分の1が、「食の不均衡」の当事者なのである。そこでTFTは、この「食の不均衡」を解消し、先進国と開発途上国との人々を健康にすることを目指して活動を続けている。TFTについて、小暮さんはこう話す。

「食べるだけで社会貢献ができるので、誰でも気軽に参加できます。かつ、食べる人にも健康的な食事が提供されることで、両者にとってメリットがあるというのが特長です。また、TFTの活動は、海外から取り入れられることが多いとされる社会貢献活動の中では珍しく日本から始まったもので、日本から世界に向けて発信していく仕組みであるということも大きな特徴だといえます」

TFTの仕組みは、企業の社員食堂や学食でTFTの特別メニューを提供してもらい、一食の代金からそれぞれ20円がウガンダ、ルワンダ、マラウィの子どもたちの給食一食分として寄付されるというものである。その対価として、TFTのメニューを選んだ参加者には、低カロリーで栄養バランスがとれたヘルシーメニューが提供され、近年、先進国で問題となっているメタボリックシンドロームの改善に寄与しようというのだ。

「食べる」という日本であれば当然の行為も、一日三食どころか、一食もアフリカではままならない現実。寄付といっても一方的なものではなく、参加者にもメリットがある双方向性の効果をもたらす。

「20円は、アフリカの子どもたちの一食分の値段です。一食あたりの寄付金額が高すぎれば、参加者の負担も大きくなり、せっかくTFTの活動に共感してくれた方を減らしてしまう可能性もあります。この活動は、続けることに意味があると考えています。そのためにも『20円』という額が妥当だと思っています」

たしかに、一食ごとに20円であれば、参加する側にも負担は少なく、続けるのも苦にならない。現在、TFTのプログラムは企業や官公庁の食堂や大学の学生食堂などに導入されているが、TFTのメニューを選ぶか否かは、そこに属する一人ひとりの判断に委ねられており、より個人の意思にアプローチできる仕組みになっている。だからこそ、「20円」という金額がカギを握っているのだという。

食べるだけで社会貢献に参加し、かつ参加者の健康に寄与するという画期的なコンセプト。
このTFTの仕組みは、2006年の夏にヤング・グローバル・リーダーズ会議で、近藤正晃ジェームス氏(前TFT代表理事)らが発案したことに始まる。

その後、2007年2月にTFTを設立し、2007年10月にNPO法人として認可され、本格的な事業がスタートした。以後、活動開始から2年半余りで、大手企業や官公庁など200社以上がTFTのプログラムを導入し、参議院食堂や中央省庁にも導入されるようになった。多くの団体が導入に至った理由を小暮さんはこう話す。

小暮氏「食というテーマが我々にとって身近な問題であること、また、一食20円で気負わずにできることが、多くの参加者の共感を得られたのだと思います。日本に生きる私たちは、日々、当たり前のように食事をしています。しかし、日本の食料自給率は低く、その一方で毎日大量の食料廃棄物が出ている問題が生じています。こうして、日本を取り巻く食糧問題を鑑みても、TFTのコンセプトはおおいに意義があることだと思います」

TFTのトレードマークには「一つの食卓を囲み、先進国の参加者と開発途上国の子どもが、時間と空間を越えて一緒に食事をしている」という意味が込められている。地球規模で食糧問題の解決策として、この「一つの食卓」という一人ひとりの意識が変革をもたらそうとしている。小暮真久さんの想いと、TFTの参加者の想いは、今日も各社の食堂からアフリカの子どもたちに届けられている。

このシンプルなコンセプトによって「20円」の価値を地球規模で考えると、2倍にも3倍にも高まることになる。今日に至るまで、TFTの活動に参加する企業数は、指数関数的に増えている。その驚異的な広がりに、さぞかし順調な歩みが想像されるが、TFTを立ち上げた当初、スタッフは小暮さんともう一人しかおらず、たった二人での船出だった。

しかも、小暮さんは前職との掛け持ちだったという。しかし、その後のTFTには多くの共感者が集まり、今日まで一緒に作り上げてきた。多くの人の想いが、TFTを成長させてきたのだ。

「テレビや雑誌などでアフリカの貧困の様子を見て、『何かしなければ』『何かできることはないか』と思う人は多いはずです。しかし、その想いを表現できる場がありません。それを気軽に発揮できる場としても、TFTの活動を広げていきたいのです。その活動を続けるためには、TFTを事業として成立させていくことの重要性を強く感じています」

「日本では、社会事業にかかわっているというと、対等なビジネスパーソンとして認めてもらえないという風潮があります。この現実に直面して、NPOの活動を慈善活動や社会貢献だけで終わらせるのではなく、ビジネスとして成立させ、NPOに対する意識を変えたいということも大きな目標の一つです」

資金や人材など現実的な課題は山積みである。加えて、日本社会でのNPOに対する意識も活動していく中で逆風であることは否定できない。

※…ヤング・グローバル・リーダーズ会議:ダボス会議を主催する「世界経済フォーラム」は、多種多様な専門分野やセクターに携わる40歳以下の若手を「ヤング・グローバル・リーダー」として認定している。世界中から毎年200~300人が選出され、ヤング・グローバル・リーダーズ会議が行われる。

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