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平成の世にサムライを探して 

【第八十七回】建築家 西沢立衛「日本を代表する建築家が考える『建築的問題』とは──21世紀という時代の精神を建築として残したい」

建築設計の仕事を続けていると、巨大な「問題」に直面する。建築家西沢立衛氏はそう言う。これまで数々の建築賞を獲得し、師である妹島和世氏とのユニット「SANAA」での活躍でも知られる西沢氏が考える「問題」とは何か。建築設計という営みの根源に迫る西沢氏の思考を辿る。

建築物の用途はおのずと変化する

西沢立衛(にしざわりゅうえ)プロフィール
1966年東京都生まれ。
88年横浜国立大学工学部建築学科卒業。90年同大学院修士課程修了。同年妹島和世建築設計事務所入所。
95年妹島和世氏とSANAA設立。97年西沢立衛建築設計事務所設立。
2001年横浜国立大学大学院助教授に就任する。
ベネツィアビエンナーレ国際建築展金獅子賞、日本建築学会賞作品賞、プリツカー賞など、受賞歴多数。

※黒字=西沢氏

-- 建築家になったきっかけをお聞かせください。

気付いたらなっていたという感じです。高校時代は数学が好きで、芸術も好きでした。当時、そういう生徒は建築の方に振り分けられるんですね。それで、大学は工学部の建築学科に入りました。

建築が面白くなってきたのは、設計課題という授業がきっかけでした。「オフィスビルを設計する」といった課題が出て、1カ月くらい掛けて自分でビルをデザインして、提出しました。それで建築設計の楽しさを知って、その後勉強するうちに、建築家になろうと考えるようになったのです。

-- 建築家になって具体的に造りたいものはあったのですか。

建築家は対象や用途を決めません。建築物は、一人の人間の生涯よりも長く残っていくものです。ヨーロッパでは500年前に造られた建築がごく普通に残っています。それだけ長く建っていれば、その間におのずと用途は変わっていきます。ルーブル美術館がいい例です。あの建物はもともと住宅でした。博物館しか設計しませんとか、銭湯しか造りませんと言っていたら、建築を設計できなくなってしまいます。

-- 卒業後、すぐに建築家としての活動を始めたのですか。

妹島和世さんの事務所に入って、いくつかのプロジェクトを担当しました。もちろん、ボスは妹島さんですから、自分で設計するわけではありません。妹島さんの下にみんなで集まって何かを造っていくというやり方です。運慶やボッティチェリの作品は、大きな工房で大勢の人間がかかわって造られています。それと同じです。
24歳からの5年間は、妹島さんの下で修行をしました。

-- 独立後は、妹島さんとのユニットであるSANAAと西沢建築設計事務所の両方で活動することになるわけですね。この二つの活動で、スタイルを使い分けたりしているのですか。

僕が建築の造り方を学んだのは妹島さんからで、それ以外の造り方は知りません。ほかの設計事務所で働いたことがないからです。スタイルにしてもなんにしても、妹島さんから受けた影響は大きいですね。ほかにやり方を知っているわけではないから、自分一人でやっても、共同設計であっても、スタイルという意味ではたぶん同じですね。

巨大な「問題」にいかに取り組むか

-- 独立後に最初に手掛けた仕事は何でしたか。

西沢氏「ウィークエンドハウス」という名前の週末別荘でした。東京から車で2時間くらいのところに山を平らにした場所があって、そこに建てました。セキュリティの問題で、窓がない建物を造ってほしいという依頼でした。

閉鎖的にはしたくなかったので、いくつかの四角い中庭を建物に組み込むようにして、雨戸を開けると中庭越しに外の風景が見えるし風も入ってくる、という造りにしました。

-- かなり画期的な設計ですね。

そうでしょうか。中庭のあり方が普通ではないかもしれませんね。覚えているのは、アイデアをいくつも出して、あの形に決まっていったということです。

-- アイデアは、その作品が完成した時点で完結するものなのですか。それとも次の作品までつながっていくものなのでしょうか。

発展していくものだと思います。一つの作品を造ると、何かしら「問題」が見えてきます。「ドアノブを付ける位置を変えればよかった」といった小さな問題もありますが、もっと大きな問題も出てきます。一つの作品、一つのプロジェクトの中では到底解決されないような大きな問題です。

-- 具体的には?

例えば、「ばらばら」という問題。「建物がばらばらである」という状態を設計して、「ばらばら」のいい点悪い点、その空間的な意味、いろいろなことが、そのプロジェクトの中だけで決着がつく問題でないことに気付くのです。

あるいは「開く」という問題があります。建築において「開く」とは何か? ということです。窓を開くと光が入ってきます。ドアを開くと外に出られます。当たり前のことです。

豊洲運河に面した西沢立衛建築設計事務所しかし意外にこれが、考え始めると簡単ではなく、例えば「開き方」によっては、社会からの断絶宣言を言うこともできるし、逆に社会へつながっていく意思表明にもなる。「開く」と言っても、そのあり方はずいぶん多様なのです。

「開く」というのは、あらゆる建物が必ず備えている普遍的な問題なのです。

エジソンが人工光を発明した時、彼は夜中に本を読みたいと考えたのかもしれない。そういう意味では、人工光は素晴らしい解答でした。ただそれは解答であると同時により大きな問題でもあった。人工光というものを見て、いろんな人がこれは問題だと感じた。ある人は街灯の発明につなげ、ある人は映画を発明した。人工光というのはエジソン個人の世界を超えて、世界的な問題になっていったのです。

それは、分野を超えて広がっていった非常に大きな問題でした。
建築においても、そのような「問題」というものがあって、例えば「ばらばら」であったり、「開く」であったり、それらは僕でなくても、ほかの建築家や、もしくは他分野の人でも取り組むことができる大きな問題です。

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