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株式会社 日立ソリューションズ

経営課題としてのCSR ~CSRを経営戦略にどう取り入れるか~

 2012 年5 月15 日、CSR 有識者である株式会社ニッセイ基礎研究所 川村雅彦氏、株式会社クレイグ・コンサルティング 小河光生氏の2 名をお招きし、当社経営幹部とのステークホルダー・ダイアログを開催しました。社員が傍聴する公開座談会の形式で開かれた本会では「経営戦略とCSR」、「ISO26000 から見た日立ソリューションズのCSR」をテーマに、率直かつ中身の濃い議論が交わされ、有意義なステークホルダーエンゲージメントが実現しました。

当社からの参加者

専務執行役員 CSR統括本部 統括本部長新美 雅文
経営企画統括本部 副統括本部長柳田 三生
経営企画統括本部 グローバルビジネス推進本部 本部長江川 裕仁
執行役員 人事総務統括本部 副統括本部長石川 浩
営業統括本部 公共営業本部 本部長出店 秀隆
執行役員 調達統括本部 統括本部長河野 滋
CSR 統括本部 ブランド・コミュニケーション本部 本部長安東 泰隆

日立ソリューションズのCSRの考え方および方向性について

(新美)

  CSRの考え方をお話しする前に、まず、当グループの企業理念「確かな技術と先進ソリューションの提供を通じ、お客様と地球社会の発展に貢献する」についてご紹介します。事業を通じてこの理念を実践することが即ち日立ソリューションズのCSRであると認識しています。  具体的な取り組みとしては、「日立グループCSR取り組み方針」に則して年度の計画を立案し、同じく日立グループの「CSRセルフアセスメントツール」を活用して施策を分析、評価し、翌年の活動に反映しています。  8つの取り組み方針の中ではとりわけ「企業活動としての社会的責任の自覚」「事業活動を通じた社会への貢献」「情報開示とコミュニケーション」「社会貢献活動の推進」の4つに重点をおいています。また、株主、お客様、取引先といったステークホルダーに大切な価値を提供する社員が、CSRの具現者として主体となるものと考えています。川村 基本的な考えはよく理解できました。ひとつ懸念するのは「事業活動を通じた社会への貢献」の中身が“プロダクト”にウエートが置かれていることです。ITソリューションを使って社会的課題を解決する御社の活動は非常に重要ですが、その一方で、日々のオペレーションや業務プロセスでステークホルダーとやりとりをしていく中で、CSRを意識し、実践していくことも非常に重要です。プロダクトとプロセスはCSRの両輪ですので、そこにも切り口を設けられてはと思います。

経営戦略とCSRについて

(柳田)

 2015年度に向けた中期経営計画では、売上高4000億円、営業利益率12%を目標に、事業構造改革、グローバル事業の拡大などの主要テーマに取り組んでいます。特にグローバル事業は、現在約5%のグローバル事業比率を15%にする目標を掲げています。当社の経営戦略とCSRとの関係ですが、私個人としては「経営戦略=CSR」ととらえています。私たちがなぜ事業構造改革に取り組んでいるのかというと、持続的成長を実現するために必要だからであり、この改革の達成によって経済的責任が果たせます。
 当社のコーポレートフィロソフィーでは、企業理念、企業行動基準、企業ビジョンのもとに中期経営計画があります。つまり、中期経営計画は経営理念のもとに策定されており、企業行動基準は法的、倫理的責任を含みます。その上で事業を成長させるということは、つまり「経営戦略=CSR」なのです。

(川村氏)

 企業の経営環境は近年大きく変化しています。20世紀には、資源や環境の制約、貧困や食料配分などの人口増による制約が基本的に存在しませんでしたが、21世紀の現在では、2050年に人口が90億人に膨らむと予測され、地球はもつのかと懸念されています。
 社会がサステナブルでないと企業もサステナブルになりません。そのような環境で経営戦略を考える時、財務上の目標は必要条件であっても、十分条件ではありません。社会の持続可能性に対する考えを具体的に示さなければ、CSRブランディングは実現しないでしょう。
 最近は、環境に限らずCSRに関するさまざまなKPIが検討されています。財務的な目標と同列に、絞り込んだ形で非財務的な目標を経営計画に明示し、コミットされるといいのではないかと思います。

(安東)

 例えば、中期経営計画に定量的な業績見通しや目標に加えて、どのような社会課題の解決に向けた取り組みを行うか、定性的な記載も行うというようなことでしょうか。

(川村氏)

 そのような形はわかりやすいと思います。

(小河氏)

 私は、CSRとはひとことで何かという質問に「社内の優先順位と社外の優先順位をどう折衷させるか」と答えています。事業で持続的成長を遂げるのはまさしく内部の優先順位です。一方、企業はステークホルダーを抱えており、彼らの持つ外部の優先順位は往々にして内部の優先順位と一致しません。ある消費者団体が“CO2はゼロあるいはマイナスだ”と主張したとしても、企業としては、事業の制約条件になりますから、受け入れには覚悟が必要です。このように一致しない外部と内部の優先順位を、どう折衷するか。そのために外部とのダイアログやコミュニケーションを欠かさずにしていきましょう、というわけです。
 御社が今後、グローバル事業比率15%を達成しようとすると、2015年度につき合っているステークホルダーは今とは違っている可能性が大きいです。そのステークホルダーの優先順位をいかに知り、内部の優先順位といかに折衷していくか、この点が中期経営計画とCSRの関係において一番大きな課題だと思います。

(柳田)

 なるほど、その通りですね。海外に出ればお客様が変わり、お客様のお客様も変わります。私たちのミッションは最終ユーザーの顧客価値向上を目指すことですから、環境が変われば、おのずと私たちも変わらざるを得ないでしょう。

(小河氏)

 例えば、御社は主力製品の「StarBoard」を世界各地に納入されていますが、「StarBoard」が最終ユーザーの学力向上にどれだけ寄与したかをKPIでとらえてはどうでしょうか。製品の社会的な価値を定量的にとらえていくことは、ひとつのチャレンジになると思います。

グローバル事業におけるCSR

(江川)

 グローバル事業について数値以外のことを申しますと、従来のハードウェアの輸出が中心のモデルから、システムインテグレーション、サービスの提供へとシフトすべく、全社で事業計画を推進中です。役務系のビジネスモデルに移行することにより、現地雇用を軸に経営を進めることとなり、現地との接地面がより広く、より深くなり、これまで以上に社会からの要請が増えると認識しています。
 先日、ISO26000を読ませていただきましたが、通常、海外のオペレーション上の法規制や基準とされているものが非常に多いことに気づきました。私はこれまで、CSRというのは理念に近いものと思っていましたが、すでに社会の要請が具体的に法制化されるところまできていると認識を改めました。

(安東)

 CSRは法令遵守にとどまらない、という視点も必要だと思います。

(川村氏)

 ご指摘の通り、CSRは今や理念から実践のステージになっています。各地域でさまざまな領域の多様なハードロー、ソフトローがあり、それを遵守することは第一歩であり基本です。しかし、本来のCSRは“Beyond Compliance”です。規制を守るのは当たり前で、さらに現地の社会課題や考え方をわかった上で、当地でやるべきこと、求められることを価値観レベルで認識し、実践することが重要なのです。つまり、経営が非財務的な問題をどう取り扱うのか、リスク管理の観点からも多様な価値観への対応が経営に求められています。

(江川)

 “Beyond Compliance”とは、まさしくその通りだと実感します。海外で発生するトラブルのほとんどは文化的、宗教的価値観の問題です。もともと言語も違いますから、日頃のコミュニケーションでも10~20%の欠落がつきまとい、互いに誤解しやすい、されやすい環境で仕事をすることになり、そこに問題が生じるのです。

(小河氏)

 グローバルで問題になるのは、まさに法律を超えたところにある問題です。例えば、人権侵害に対してあまり神経を使っていない国、贈収賄に甘い法律しか持っていない国もアジアにはありますが、そういう国でも、当社はこうやっていくという独自の基準を持たなければいけません。さもないと、贈収賄にゆるい国では袖の下が当たり前になりかねません。

日立ソリューションズのCSR

(1)「人権・労働慣行」について

小河 光生 氏

小河 光生 氏

(小河氏)

 ISO26000を理解する時に、守りと攻めの両面からとらえる必要があります。守りはリスクマネジメントのあり方で、今日のテーマである人権・労働慣行などはここに入ります。攻めは、ビジネスを通してどう社会課題を解決していくかです。これはマテリアリティという言葉で表され、御社が数多ある社会課題の中で何にフォーカスするか、という意味です。
 日立グループのCSR 活動方針には、守りと攻めがバランスよく入っており、ISO26000に取り組む点からも大きな強みだと思います。これを粛々とやっていくことで方向的に間違いはないでしょう。
 さて、守りに話を戻しますが、まず、グローバルの人権問題は国内のセクハラやパワハラとは根っこが違い、宗教、人種、マイノリティなど弱者差別といった問題であるととらえ直さなければいけません。ラギーレポート、OECD多国籍企業ガイドラインなど、人権に関する国際的な動きが顕著に見られます。

(石川)

 当社の特徴はまず「人がすべて」の企業であることです。特に銀行、鉄道など、ミッションクリティカルな分野が多いため、残業が多く、しかもそれが特定の人に偏っており、結果として健康問題が起こりやすい環境にあります。また、システムエンジニア(SE)はお客様のところに常駐しているので、分散環境での管理という課題もあります。そういった環境で、働きやすい職場作りは、単独の施策ではなかなかうまくいかないので、総合的なパッケージで施策を展開してきました。
 まず、大きな柱は制度上の仕掛けで、ワーク・ライフ・バランスの制度を拡充し、やりがい感の醸成を目指しました。次に総労働時間縮減、3つ目は健康管理、4つ目がコミュニケーションです。残業縮減や制度の運用なども、職場のコミュニケーションが成り立っていないと推進できませんので、ここに手を打ってきました。

(小河氏)

 社員は最大のステークホルダーということで、働きやすい職場作りを進めてこられたのは大きな特徴ですね。御社の場合、「延長保育料の支給」、「段々飛び懇親会」という非常にユニークな制度をお持ちで、草の根的な施策が働きやすい職場につながっていることは誇るべき成果です。また、日立グループで初の女性の役員がいらっしゃるのも財産であり、これらの強みをもっと意識されるとよいと思います。
 御社は女性管理職比率を増やすという目標を掲げておられるので、“インクルージョン”という概念をご紹介します。“ダイバーシティ”は多様性を持つこと、“インクルージョン”は多様性を受け入れる風土をつくることを意味し、これらはセットで取り組むべきです。
 御社の場合、“ダイバーシティ”はある程度進めてこられたが、それを受け入れる風土はできているでしょうか。今後は海外のリーダーも育成されると考えますが、外国人が働く環境としてはどうか。これらが今後のチャレンジになると思います。また、それらの数値を積極的に開示することが求められます。

(安東)

 ネガティブと思われる情報でも、将来への取り組みや目標値があるのであれば、ステークホルダーに開示すべきということですね。

(石川)

 毎年“ダイバーシティ”の意識調査を行っていますが、男性の方はかなり低い水準にとどまっています。つまり、まだまだ女性を活用していくという意識は低いのです。それでも女性の活躍についての取り組みは行っていますが、外国人、障害者については遅れています。現在は外国籍の社員が100名おり、今後、中国を中心に雇用も増えていきますので、彼らの働く環境や働きがいについてのヒアリングを始めようとしています。
 また、ISO26000を見て痛感するのは、グローバルの問題で、特に人権・労働問題は最大の課題だということです。これまで当社の拠点は、北米、欧州が中心でしたが、2011年、中国の拠点を現法化し、今後、アジアにも出ていくことになります。正直なところ、これまでに日本の人事部門が現地の人事部門と人権について議論したことはありませんでした。

(小河氏)

 では今後、人権・労働慣行に取り組むための3つのポイントを参考までに申し上げましょう。
 まず、「長時間労働をいかに解決していくか」。本社だけでなく、グループ会社、現地法人でどう取り組むか、あるいはサプライヤーではどうかといった視点です。
 2つ目は、「どの部門が責任を持って人権課題に取り組むか」です。日本企業の場合、人事部は基本的に国内人事が担当分野で、海外の人権問題は人事部の守備範囲ではないとするところが多々あります。では、海外事業部門か、それとも他の部門か、どこかがオーナーシップを持たないと対処できません。
 3つ目は、「人材育成にどう取り組むか」。“ IBMの社会貢献「コーポレート・サービス・コー」”という事例では、多国籍の社員を集めて、途上国の社会課題に何ができるかに取り組んでいます。10人程のメンバーが3カ月ほど現地に出向き、社会インフラ構築などのプロジェクトを立ち上げます。これには、新興国ビジネスをどう立ち上げるかというビジネス上の狙いもあるのですが、人材育成にも大きく寄与しているというレポートを出しています。CSRの人材育成のヒントになると思います。

(2)「顧客」について

(出店)

 私たちのお客様には、官庁、自治体、公共機関、民間のリーダー企業など、社会的責任の大きいお客様が大勢いらっしゃいます。お客様と接する営業には、お客様の声を真摯に受け止め、必要に応じて、会社の上層部や関連部門に上げ、事業に反映する機能が備わっています。
 では、どう事業に反映していくかですが、基本は情報システムの案件を通じてお客様のご要望に応えますが、時には情報システム以外のところをご支援する場合があります。
 一例を挙げますと、情報処理技術者試験を手掛ける組織のお客様が 「ITパスポート」という試験を試験会場のパソコンからいつでも受験できるようにIT化されました。今後は、受験者数の増加も課題となりますので、我々はシステム構築に限らず、これからも協力させていただきます。
 まず大学、専門学校にPRをしたところ、学校側は、企業が「ITパスポート」を採用の基準、あるいは参考にするといえば、学生は積極的に受験するとおっしゃっていました。そこで企業様にもPRを行い、制度普及を積極的に支援していきます。

(小河氏)

 先ほど、「StarBoard」の話をしましたが、自社の商品・サービスがどう社会に貢献するかを現場の営業や開発者が感じられるかが、CSRとビジネスをつなげるポイントです。開発、あるいは営業の段階で社会の課題と自社の商品・サービスのつながりをシナリオ化できると良いと思います。

(3)「調達」について

(河野)

 当社の調達は、主力が物ではなく、ソフト開発の外部委託が中心であり、人数換算では、社員を超す規模の10,000名に登録いただいています。古くから当社が大事にしていることは“パートナーシップ”という言葉に尽きると思います。パートナーを認定し、定期的に会社の方針を共有し、教育支援、ツールの支援なども積極的に展開しています。新規取引の際には訪問し、CSRを含めた情報共有も行います。
 また、二次以降の取引先の管理については、データベースをつくって対応しています。訪問して、それぞれの窓口を登録してもらい、何かあった時に確実に情報収集できるルートを確保しています。
 2点目はグローバル調達ですが、海外にも10 ~12%程ソフト開発を委託しています。現在は取引先を絞り込んでいますので、情報共有はできていると思いますが、先ほどお話のあった長時間労働については今後の課題です。エリアは中国中心ですが、一部ベトナムもあります。ベトナムでは育成に力を入れており、大学の設立支援を行い、その学生を活用するなどの施策も行っています。

(小河氏)

 CSR 調達方針を出されていますが、継続的なチェックはされているのですか?

川村 雅彦 氏

川村 雅彦 氏

(河野)

 取引先の評価は一年に一回、主力ベンダーをピックアップし、数年で全社を回れるようにしています。

(川村氏)

 既存の取引先の点検結果や改善の内容などを開示してはどうでしょうか。方針を開示するだけでなく、その実践や結果はどうなっているかに大きな意味があるのです。

(小河氏)

 調達で一番難しいのは、どの範囲までやるかの線引きです。ISO26000では「影響力の範囲」という言葉になりますが、資本関係、取引上の重要性、売上比率などを参考に範囲を決め、範囲に入ったところに対してどういう方針でやっていくのかを決めていこうと考えています。

(川村氏)

 基本的な考え方は担当者レベルではなく、経営側できちんとしておくことですね。

(新美)

 今回座談会として初めての開催でしたが、非常にフランクな会合となりました。当社のCSRはまだまだ十分と思っておりませんが、特に「プロダクト中心でプロセスがまだ」「効果の測定や開示についても行き届いていない」というご指摘は大変参考になりました。今後も、ステークホルダーとの対話を続け、現状を冷静に把握し、一歩ずつ高みに近づいてまいりたいので、両先生には引き続きご指導いただきたいと思います。
 また、今回30名を超える社員が参加してくれたことは、CSR 意識の高まりの現われと感じます。今後は私ども経営にも是非意見を寄せてもらいたいです。

ステークホルダー・ダイアログを終えて

取締役社長 林 雅博

 当社のCSRは、グローバルビジネスの展開において、まだ改善すべき点があるように思います。社会責任のグローバル基準を十分に理解し、社会を基点とした考え方でビジネスを推進する必要があるとの思いを新たにしました。  本日ご意見をいただきました川村様、小河様には厚く御礼を申し上げます。今後も継続してステークホルダーの皆様と対話を行い、改善に努めてまいります。また今回、多くの社員に聴講いただきましたが、今後も少しでも多くの社員が、CSRをより一層意識する機会を作りたいと考えています。

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