第12回 データ分析なくして経営戦略はなし!|Prowise Business Forum in NAGOYA|システム構築やトータルソリューションをお探しなら、日立ソリューションズをご利用ください。

株式会社 日立ソリューションズ

Prowise Business Forum in NAGOYA 第12回

データ分析なくして経営戦略はなし!
~明日からビジネスプロセスに取り入れるデータサイエンス~

 データ分析を「何のために、どのように活用すればいいのか」という声を多く耳にします。活用事例を分析すると、会社、組織により実施していることは千差万別ですが、共通点があります。それは、勝機を見出せる部分に自社のリソースを集中させる、「選択と集中」のための統計指標を作成していることです。どのお客様が商品を購入するのか、お客様が真に求めていることは何か、ヒトの勘や経験ではなくデータから客観的に捉え、リソースの「選択と集中」を行うことが経営戦略の実行を加速させるドライバーになるのではないでしょうか。海外では企業データの統計分析から経営や組織に関する法則が次々と発見されており、その動きに拍車がかかっております。

 本フォーラムでは、企業データの分析から得られた知見に基づく経営戦略を考察し、明日からビジネスプロセスに取り入れられるデータサイエンス手法をご提案いたしました。

開催概要

日時 2015年12月3日(木) 14:00~16:30 (13:30 受付開始)
会場 〒451-6016 愛知県名古屋市西区牛島町6-1
名古屋ルーセントタワー 16階
主催 株式会社日立ソリューションズ

【基調講演】
世界の経営学からみる日本企業イノベーション創出への示唆


早稲田大学ビジネススクール
准教授 入山 章栄 氏

【入山 章栄氏プロフィール】

1996年慶應義塾大学経済学部卒業。1998年同大学大学院経済学研究科修士課程修了。三菱総合研究所で主に自動車メーカーや国内外政府機関へのコンサルティング業務に従事した後、2003年に同社を退社し、米ピッツバーグ大学経営大学院博士課程に進学。2008年に同大学院より博士号(Ph.D.)を取得。同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクールのアシスタント・プロフェッサー(助教授)に就任。2013年から現職。専門は経営戦略論および国際経営論。2012年に出版された著書『世界の経営学者はいま何を考えているのか』(英治出版)はベストセラーとなり、現在は『ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー』誌上にて長期連載「世界標準の経営理論」を掲載するなど、各種メディアでも積極的に活動している。

 基調講演では、科学性を重視した世界標準の経営学への理解と、日本企業が必要とする認知心理学アプローチの経営学と社会学アプローチの経営学によるイノベーション創出への知見などを紹介した。

経営学の国際標準化が急速に進むものの知見が日本国内に伝わっていない現状

 冒頭、入山氏は、「日本で語られる一般的な経営学と、世界で標準となっている経営学とでは内容が全く異なり、世界標準の経営学の知が日本に伝わっていない。それを日本企業に伝え、経営に役立てられるようにすることが私の研究テーマ」と語る。

 そこで入山氏は、"33/10642"という数字を示した。世界中で約2万人の経営学者が登録する米国経営学会「アカデミー・オブ・マネジメント」(Academy of Management)は、毎年8月に北米の主要都市で世界大会を開催しているが、今年はバンクーバーで開催され、世界中から1万642名の経営学者参加する中、日本の大学から参加した人が入山氏を含めわずか33名だったことを示す数字だ。

「全体のわずか0.3%以下。日本人がいると珍しがられるほどだった」と入山氏は危機感を表す。米国の学会のため地元のアメリカ人が多いのは当たり前と思われるが、実際にはアメリカ人は4,600名程度で、英国から860名、ドイツから540名、中国・香港から520名が参加。しかも、他のアジアからはシンガポールから160名、韓国から150名、台湾からも130名が参加し、日本よりも多かった。

 入山氏は、「経営学の分野では国際標準化が急速に進んでいる。それは日本を除いた世界の国々で起こっており、世界中から集まった経営学者が世界共通の経営理論や分析手法のもとに研究発表をし、議論を戦わせ、膨大な経営学の知見が共有されている。残念ながらそこに参加している日本人は極めて少なく、知見が日本国内に伝わっていない現状がある」と懸念する。

世界標準の経営学は科学性を重視してビジネスの一般法則を探求

 では、世界標準になりつつある経営学とは何を行っているのか。それは「科学化」であると入山氏は断言する。科学とは真理を探究することであり、経営学はソーシャルサイエンスの一部のため科学性を重視し、経営理論を立てて企業や組織に共通で当てはまる真理に近いビジネスの一般法則を科学的に探求する。そのため、統計分析を多用し、経営学に関する論文の9割は統計分析に基づくものであり、コンピュータシミュレーションを用いた実験や、理論を立てて一般的かどうかチェックする演繹的アプローチを行う。日本で多く行われる事例に基づく帰納的なアプローチは1割にも満たない。

 ならば、どうやって企業や組織の法則を理論化しているのか。経営学とは人間がどのように意思決定し、行動しているかを分析する学問だが、人間はあいまいでいいかげんな要素が多く科学で分析することは難しい。そこで世界標準の経営学では、人間がどう考えて意思決定し行動するか分析する基盤を持った他の学術分野を借りて活用しているという。1つ目は経済学。人間は合理的に意思決定すると考え、合理性を基準に理論を立てて組織の行動を考える。2つ目は心理学。心理学的な考え方を使う研究者も多い。3つ目が社会学。人間の行動を分析するには社会的な関係性も重要となる。世界の経営学の理論はこれら3つの要素のどれかに基盤を置いて理論的な考え方を立てる。

「日本では経済学分野では国際化が進んでおり、経済学理論を活用した経営理論は進んでいるが、社会学と心理学をベースとした経営理論はあまり進んでおらず、イノベーション研究に重要なのはこの2つ」と入山氏は述べる。

知の探索と知の深化をバランスよく扱う両利きの経営がイノベーションを起こす

 そこで同氏は、認知心理学アプローチの経営学と、社会学アプローチの経営学について論じた。
 最初は認知心理学アプローチの経営学について。心理学分野に基づく組織がどのようにイノベーションを起こせるのかというのは世界中の経営学者にとって最も重要な研究対象のひとつになっているという。スタンフォード大学名誉教授のジェームズ・マーチ氏や、ペンシルベニア大学のダニエル・レビンサール氏、カーネギーメロン大学のリンダ•アルゴーティ氏などが認知心理学的アプローチで経営学を研究する世界的権威で、世界標準のイノベーション研究のほとんどは認知心理学をベースに活用している。

「とはいえ、何千ものイノベーション研究成果の中で根底にあるものは、知というものは必ず既存の知と別の知の新しい組み合わせで生み出されるという考え方だ」と入山氏は指摘する。1934年にイノベーション研究で世界的に有名な経済学者のヨーゼフ・シュンペーター氏が"New Combination"(新結合)という考え方でそうした知のイノベーションを論じた。

 ところが、人間の脳における認知には限界があるため、目の前にある知だけを組み合わせてしまう傾向にあり、それではイノベーションは起こせない。イノベーションを起こすためには、自分からなるべく離れた知を幅広く探索し、それを自分の知と新しく組み合わせることが重要だという。これを世界標準の経営学ではExploration(知の探索)という。日本での知の探索の例では、トヨタ自動車の大野耐一氏らがトヨタ生産方式を体系化した時、アメリカのスーパーマーケットでの商品や情報の流れを見て参考にしたといわれている。

 さらに、知は探索とともに深掘りしなければならない。それを入山氏は「Exploitation」(知の深化)と表現する。イノベーションを起こすことのできる企業は、あたかも右手で知の探索を、左手で知の深化を同時にバランスよく扱える「Ambidexterity」(両利きの経営)がコンスタントに可能だという。

 だが、入山氏は「組織というものは本質的に知の深化に偏りがちな傾向がある」と述べる。人間の認知にも限界があり、知の探索は自分の知らない領域で異なる知を探すことになるので、長期的な探索よりも短期で結果の出る深化の方に入れ込んでしまい、中長期的にはイノベーションが起きにくくなるという。これを経営学では「Competency Trap」(競争力の罠)に陥ると表現している。

「日本企業が今後イノベーションを起こす上で最も重要なことは、知の探索を促す仕組みを作ること」だと入山氏は強調する。

タスク型ダイバーシティは知の探索を実践して組織にプラスの影響を及ぼす

 ならば、知の探索を促すためには何をすればいいのだろうか。入山氏は次の3つのポイントで説明する。1つ目は経営者やビジネスリーダーが知の探索を肯定する姿勢を持つこと。天才といわれたアップル社の創業者であるスティーブ・ジョブズ氏でさえも数々の失敗作を作ってきた。その中で数少ない成功が莫大な富を生み出した、典型的な知の探索を実践した人物だ。だがその知の探索者亡き後、アップル社の作る製品に決定的な失敗作がなく、知の深化に向かっているのではないかと入山氏は心配する。

 2つ目はオープンイノベーション。同業他社や異業種と交流することで戦略的に知の探索を実践することが重要になっている。海外の著名なハイテク企業は自社のイノベーション手段をオープンイノベーションにシフトしている。また、コーポレートベンチャーキャピタルは、事業会社がベンチャーキャピタル企業のように振興のベンチャー企業に投資してコラボレーションしていくというもので、アライアンス、M&Aに続く第3のオープンイノベーションといわれる。統計分析を使った研究結果からもコーポレートベンチャーキャピタルを行う企業は事業価値も高くなりイノベーションも起こしやすいという。 3つ目は人材の多様化。組織レベルでの知の探索では、自分からなるべく遠く離れた知を探すことになるが、知というものは人間一人ひとりが持つものであり、組織に多様な人材を投入することが必要になる。そのため、近年広まってきたダイバーシティという考え方はイノベーションを起こす上で基本的に正しい。

 入山氏は、ダイバーシティは2種類存在するという。1つは「タスク型」ダイバーシティ。その人の能力・経験・知見など目に見えない部分が組織で多様化されること。もう1つは「デモグラフィー型」ダイバーシティ。目性別・国籍・年齢など目に見えやすい属性を多様化されること。
入山氏は、「経営学者たちによる統計分析を用いた実証研究で、一般にタスク型のダイバーシティは知の探索を実践するため組織にプラスの影響を及ぼすが、デモグラフィー型は組織にプラスとならないどころか、場合によってはマイナスの影響を及ぼしかねないことがわかってきた」と紹介する。

 人はどうしても認知に限界があり、このセミナー会場のように多くの人がいると全員の人は把握できないので、最初は見た目を重視してグループ化する心理が働くという。例えば、男性ばかりの組織において男女比を数字上整えても、無意識のうちに男性グループと女性グループとに分けて考えてしまい、結果的に女性がグループの中で孤立し、両者に軋轢が生じて組織がぎくしゃくしてしまうのだという。
 そのため入山氏は、「タスク型ダイバーシティの方法で、女性ならではの視点を活用すれば、知の探索が実現する可能性が高い」と分析する。

トランザクティブ・メモリーを高めるフェース・トゥ・フェースのちから

 知の探索をしたら、次に新たな知を組み合わせる必要がある。情報の共有だ。ただし、組織の全員が同じことを知っていることが情報の共有化ではないと入山氏はいう。「組織が大きくなればなるほど認知的に困難になる。世界標準の経営学では、『トランザクティブ・メモリー』という考え方が確立されている」

 情報の共有化に必要なのは、1)組織の「誰が」「何を」知っているのかを全員が"うっすら"と知っていること、2)その「誰か」に気軽に聞きに行ける組織文化の存在の2つだという。

「組織に必要なのはWhatではなく、Who knows what」と入山氏は説明する。トランザクティブ・メモリーであるWho knows what(知のインデックス化)を持っている組織はパフォーマンスや学習能力が高いというのが、経営学者の間で常識になっているという。

 では、どうすればトランザクティブ・メモリー(Who knows what)を高められるのか。南カリフォルニア大学 心理学教授のマーサ・ホリングスヘッド氏が1998年に行った実験では、34組のカップルを3つに分け、1)普通にコミュニケーションを取りながら作業するグループ、2)目隠しをして会話だけで作業するグループ、3)会話を禁止してアイコンタクトと身振り手振りで作業するグループで共同作業を行ったところ、最もトランザクティブ・メモリーの指数が低かったのが2番目のグループだったという。また、会話を禁止したグループは制約のないグループと遜色のない高い値だった。

「トランザクティブ・メモリーを組織で高めるためには"目は口ほどにものをいう"というように、フェース・トゥ・フェースのコミュニケーションが重要だ」と入山氏は述べる。

すかすかのネットワークの弱い結びつきで知の探索が実現する

 次に入山氏は、社会学アプローチの経営学について論じた。社会学でもイノベーションの研究は盛んで、会社や組織には人と人のつながりが存在し、そのつながりの関係がどのようにイノベーションに影響するのかを多くの学者が研究を続けている。中でも、スタンフォード大学社会学部教授のマーク・グラノヴェッター氏は、共同体の中での情報の伝播に関する「弱い紐帯の強み」(The strength of weak ties)という理論で現代の社会学に大きな影響を与えた。

 社会学では人脈を定量化する研究が行われている。どのような人脈を持つと人は得をし、組織は強くなれるのかといった内容だ。そこに「強い結びつきvs. 弱い結びつき」という考え方がある。強い結びつきの例は親友、弱い結びつきの例はただの知り合い。このどちらが重要か。一般的には親友だが、グラノヴェッター氏の考えでは必ずしもそうではない。
 AとBは親友、AとCも親友ならば、BとCが出会う確率は高くなる。それが拡大していくと、重層的な人脈ネットワーク(Dense Network)が構成される。それに対し、AとBはただの知り合い、AとCもただの知り合いならば、BとCが知り合うチャンスはあまり多くないはずで、結果的にすかすかのネットワーク(Sparse Network)が構成される。どちらのネットワークが重要かという判断になると、常にとはいえないまでも、すかすかのネットワークの方がいいとされているという。

 人脈で情報を流すことを想定した場合、密なネットワークの場合はさまざまなルートが存在するので伝達効率が悪く拡張しにくい。一方、すかすかのネットワークはつながりが弱いので簡単にネットワークを構成しやすく、より遠くまで伸びやすいということがメリットになる。

「水道管をイメージすると分かりやすい」と入山氏はいう。人脈が遠くまで伸びるということは、さまざまバックグラウンドを持った多様な人々と知り合うチャンスが生まれ、効率のよいネットワークを活用して情報が流れていくことが期待できる。まさに知の探索が実現するわけだ。弱い人脈や結びつきを持っているビジネスパーソンの方が、実は業務パフォーマンスが高く、クリエーティブな傾向にあるという。

 ところが、イノベーションとクリエーティブとは異なる。アイデアを確実に製品に落とし込まないとイノベーションにつながらない。そこで重要なのが社内や組織内での強い結びつきだという。入山氏は、「社外に広い人脈を持つ社員の弱い結びつきでビジネスのチャンスをつかんだら、社内に強い結びつきを持つ上司がそれを正しく理解して、部下のアイデアの稟議書をしっかりと上層部まで通すという組み合わせが、日本の企業がイノベーションを起こす上で非常に重要だ」と提言する。

昔の日本にはインフォーマルに知の探索を促す仕掛けが豊富に存在していた

 そこで入山氏は、「人脈ネットワークの中で最も得をする人は誰だろうか」と問う。ネットワーク理論的にはネットワークの結節点にいる人になる。それを「ストラクチャル・ホール」理論という。知の探索では知(情報)を収集することが目的なので、情報が流れる結節点(ストラクチャル・ホール)にいる人が最も多くの知に触れることになるからだ。分析の結果、そのポジションにいる人の方が出世も早く給与も高いという。

 最後に、入山氏は、「日本では昔の方が優れていた可能性がある。昭和時代には闇研やタバコ部屋、飲みにケーションなど、インフォーマルに知の探索やトランザクティブ・メモリー、弱い結びつきの強さなどを促すための仕掛けが豊富に存在していたが、コンプライアンスの強化でいつしか失われてしまった。それを今、欧米の企業が実践しイノベーションを創出している。経営学の理論は、人の持つ"人間臭さ"を組織に戻すことを科学的に研究するためのもので、今後はみなさんの企業でもぜひ参考してほしい」と語り、基調講演を終了した。

【日立ソリューションズセッション1】
お客様の真意は「行動」に現れる ~行動分析データの威力~

株式会社日立ソリューションズ
ビジネス・アプリケーション本部
主任技師 日高 恵司

 このセッションでは、買い物客の動きをデータ化し、魅力的な店舗や商品の開発をした最新事例から行動分析データの活用方法を紹介した。

見えなかったものを見える化し業務改善に結び付ける行動分析ソリューション

 講演の冒頭で、日高は、アパレル:5~10%、SPA(製造小売業):20~30%、コンビニ:80~90%という数字を示した。これらは日立ソリューションズが独自に調べた、来店者数を母数にした購入者の割合だという。「つまり、アパレルやSPAの店舗では、来店しても何も買わずに出ていってしまう人が大半を占めている」と日高はいう。

 また、船釣りを比喩として例に出し、「釣りは長年、勘と経験と度胸に頼ってきたことでその釣果には個人差が大きかった。しかし近年、技術革新が起き、魚群探知機の発明によって魚種や回遊パターン、潮目などを定量的に可視化できるようになり、初心者には予想もしなかった釣果が、また経験者にとっては予想していなかった漁場であることが分かるようになった」と説明する。

 見えなかったものを見える化することによって、業務改善や売上の改善に結び付けるのが、日立ソリューションズが開発した「行動分析ソリューション」だ。例えば小売業では、来店者数/来店率や、来店した顧客の性別・年齢・時間別推移のほか、曜日・時間帯・性別ごとの買い物ルートと購入品、何かを利用した前後の顧客の動線傾向と購入品、さらには買わずに退店した顧客の動線傾向などがカウントできる。

「行動分析ソリューションを活用してお客様を定量的に知ることができれば、適正な在庫やスタッフの配置・提案、陳列・品揃え戦略などに役立てることができる」と訴える日高は、このソリューションは製造業でも応用は可能だという。製造ラインの効率化やピッキングの効率化、従業員の安全対策にも役立てられると話す。

人の顔の映像から年齢・性別を推定し調査箇所や時間帯で傾向を把握

 次に日高は「店舗動線分析ソリューション」を紹介した。店舗動線分析ソリューションは大きく2つのシステムで構成されている。

 1つ目は「来店者属性測定システム」。店舗の入り口に設置したカメラで撮影したデータから、店舗(フロア・通路)には"どのような人が"、"いつ"、"何人くらい"来ているのかを見える化するシステムだ。映像中の人の顔から属性(年齢・性別)を推定し、時間軸とともに集計。調査箇所や時間帯での比較、傾向の把握を行う。またプライバシーにも配慮し、映像記録の機能は持たず瞬時にデータ化することで、利用者の個人情報は保持しない設計になっている。

 2つ目は「人流分析システム」。これは店舗内を"何人が"、"どのように動いて"、"どこに・どれだけ滞留"したのかを見える化するシステムだ。人体に無害な測域レーザーセンサを店舗内に複数配置し、トラッキング後にデータをリアルタイムに座標化することで人物の動きを詳細に可視化する。POSデータのタイムスタンプと人流分析システムのイベントを突合し、顧客が来店からどのような商品棚を回遊し、最終的には何を購入したのか(しなかったのか)などが分析できる。

売れないと考えていた消臭剤をレジ横に置いたところ完売

 ここで日高は、来店者属性分析の事例を紹介した。あるSPA店舗の事例では、メンバーズカードを提示した20歳代の顧客は10%未満だったが、来店者属性測定システムのカメラで測定してみると実際には30%以上も来店しており、カード利用履歴による顧客属性と実際に来店している顧客とに大きなギャップがあったという。その店舗では30~50歳代をターゲットとした品揃えをしていたが、実際に属性を調べてみると来店者は20~30歳代が多いことが分かった。その世代は一般にメンバーズカードの所持率や提示率が低く、実態が顕在化していなかったことが認識違いの原因だったという。

 次に、行動可視化事例を紹介した。ある食品小売業では人流分析システムを活用し、顧客の立ち止まった場所、時間を分析することで停留スポット(ヒートマップ)を作成。キャンペーン企画コーナーの人気度やキャンペーン商品を実際に購入した顧客、立ち寄ったが購入に至らなかった顧客を可視化した。
 また、アメリカの大手百貨店のMacy'sでは、靴売り場を人流分析システムでヒートマップ化したところ、店内の壁が客の流れを阻害していたことが分かり、壁を撤去したところ売上が増加したという。

 別の小売業では、人流分析システムで来店客の滞在時間と顧客単価の関係を可視化。最も多い滞在
 さらに別の小売業では、即退店者数と最初に立ち寄った場所を可視化した。非購買者の行動を見ると日用品の棚に立ち寄った来店者が多く、目当ての商品があって来店したが商品が棚になく即退店していることが判明。品揃えか在庫切れが原因だと推定された。
 加えて、生活雑貨店の事例では、清算後の行動分析から24%の顧客が再度買い回りをしていることが分かり、その中の13%が再度レジに並んで購入していたという。そこで、2度目の買い回りが多かった商品を特定したところ、売れないと考えていた消臭剤だと判明し、それをレジ横に置いたところ完売し、再び仕入れることにしたという。

生産性の高い作業員の動きを参考に低い作業員の動線を変更して効率を改善

 セッションの終盤で日高は、製造業でも店舗動線分析ソリューションは有効に活用できると提案した。生産性の高い作業員の動きと生産性の低い作業員の動きを見える化し、作業場での滞留時間を画像チャートで比較することで、生産性の高い作業員の動きを参考にして低い作業員の動線を変更したり、目線を検知するソリューションを活用して棚の配置を工夫したり、さらには手の動きをセンシングするソリューションを使って効率改善も可能になっているという。
 また、製造業や建設業向けの関連ソリューションとしては「屋内位置把握ソリューション」もあると紹介。作業員が身につけるスマホで位置を特定し、フォークリフトの位置管理などに利用できるという。 最後に日高は、「無駄な行動を削減して作業効率を図り、事故などのリスクも低減することができるので、ぜひ皆さんの会社でもご活用いただきたい」と訴えかけ、セッションを終了した。

【日立ソリューションズセッション2】
実際の経営戦略に活用している分析事例

株式会社日立ソリューションズ
ビジネス・アプリケーション本部
担当部長 奥沢 浩

 このセッションでは、実際の流通業と製造業の企業事例を用いてデータ分析を解説しながら、それを支援する日立ソリューションズの分析ソリューションについても紹介した。

BIとデータマイニングは似て非なるもの

 セッションの終盤で日高は、製造業でも店舗動線分析ソリューションは有効に活用できると提案した。生産性の高い作業員の動きと生産性の低い作業員の動きを見える化し、作業場での滞留時間を画像チャートで比較することで、生産性の高い作業員の動きを参考にして低い作業員の動線を変更したり、目線を検知するソリューションを活用して棚の配置を工夫したり、さらには手の動きをセンシングするソリューションを使って効率改善も可能になっているという。
 また、製造業や建設業向けの関連ソリューションとしては「屋内位置把握ソリューション」もあると紹介。作業員が身につけるスマホで位置を特定し、フォークリフトの位置管理などに利用できるという。 最後に日高は、「無駄な行動を削減して作業効率を図り、事故などのリスクも低減することができるので、ぜひ皆さんの会社でもご活用いただきたい」と訴えかけ、セッションを終了した。

原因の因果関係を追求してばかりいると"データの海に溺れる"ことになる

 そこで奥沢は、それを実践している流通業と製造業の企業事例を2つ紹介した。1件目は流通業の大手食品デリバリー企業A社における顧客分析例だ。A社は北海道・沖縄・離島を除く日本全国の会員向けに食材・食品や料理を宅配するサービスを展開し、配達スタッフは約1万名、契約会員数は約30万世帯以上抱える。同社は売上の拡大と利益率の向上を経営課題としており、主要KPIは(1) 顧客軸(会員数、顧客単価、新規会員定着率)、(2) 人員軸(スタッフのパープロ、スタッフの定着率)、(3) 商品軸(商品別売上高、利益率、商品別顧客層別発注数、入り口管理)などがある。

 奥沢はこのA社事例を(1)【症状】、(2)【メカニズム】、(3)【真因】、(4)【解f決策】、(5)【実行】の5段階で分析した。【症状】は売上の伸び悩み(会員数は右肩上がりにも関わらず客単価が上がらない)、利益率の低迷(デリバリ効率が悪い)とした。【メカニズム】では客単価が低い原因を分析。1人あたりの購入品目が少ない、安い商品しか売れない、購入回数が少ない(月あたり単価が安い)などさまざまな原因が考えられた。

 奥沢は「原因を分解して因果関係を追求していくと原因の要素が無限に増え、分析対象がさらに増えていくだけで収束しない、いわゆる"データの海に溺れる"という最悪なパターンになりかねない」と注意を促す。一度にたくさん買う人や高額な商品を継続的に買う人もいる。それはどんな人か、共通点は何かを考えるべきだという。

「うまくいかない多くの要素を考えるのではなく、うまくいっている数少ない理由の方を考えるという発想の転換が必要だ」とアドバイスする。

 A社は、「売上の伸長」=「会員獲得」と勝手に思い込み、自社の特質に合わない顧客を勧誘することによって客単価を悪化させてしまった顧客マーケティングの間違いを【真因】と考え、顧客セグメントを見直し、自社の特質にあった顧客アプローチを行えば収益率は上がるはずだという仮説を立てた。

情報分析のアプローチは「見る・知る・分かる・知らしめる」が基本的な流れ

 地区全体からから配達可能エリア(商圏)内の居住者のうち、購入履歴のある人、料理契約者、食材契約者などを抽出。また、商圏内の地域住民や利用客の特性を把握するため、社内データ(既存顧客)と外部データ(潜在顧客)を突合し、商圏内世帯分析や商圏内人口ピラミッド、エリア行動分析などを実施することで、「高齢・一人暮らし型」、「高齢・裕福型」、「高齢・不自由型」、「多忙型」、「不便型-1」、「不便型-2」の6つのセグメントに分類した。

 それらを客単価と配達難易度でマトリクス分類した結果、【解決策】として、客単価が高く配達難度は小さい「高齢・裕福型」と「多忙型」は高単価の厳選食材で購入単価をアップできる優良顧客として囲い込み、客単価は低いが配達難度は小さい「高齢・一人暮らし型」と「高齢・不自由型」も長期契約件数を増やせば月あたりの売上もアップできると判断し、これら自社の得意分野をターゲット顧客層とした。

 具体的な分析システムの機能としては、基幹からのデータを格納するため「SAP SybaseIQ」でDWHを構築し、「SAP BusinessObjects」で分析する。「見る・知る」(顧客分析テンプレート)、「分かる」(非定型分析)までは本社部門で行い、その結果をリスト化して「知らしめる」(定型分析)を一般ユーザー(営業店舗)に展開することが重要だという。

 最後の【実行】段階として、A社は会員獲得のためのキャンペーンを実施した。季節ごとの格安商品で新規顧客を獲得し、次におかずセットや季節の野菜などの定番に移行し、最終的には調理キットや料理の継続契約に持ち込む狙いだ。奥沢は、「キャンペーン商品は利益が出ないため、新規顧客がリピーターになって1ヶ月後や3ヶ月後にどれだけ残存し、長期契約に結びついているのか追跡して効果と趣向を分析することが重要」と説明する。

 この事例から、奥沢は「データの整備をすること、プロセスを踏んで分析を進めること、業務的経験からの仮説&検証、分析のレベルを理解すること、情報分析のアプローチ(見る・知る・分かる・知らしめる)といった基本的な流れが学べる」と語る。

モデル別採算システムから導出された製品別・顧客別損益情報を経営戦略に活用

 事例の2件目は、製造業B社におけるグローバル経営分析のケースが紹介された。B社は輸送機械の製造・販売を手掛け、売上高は約1兆円(連結)、従業員数は約5万名、海外拠点が約100社という大規模な企業だ。システム化の目的は、グローバル視点での製品モデル別原価・粗利の把握や、製品モデルごとの売れ行き・需要見通しの可視化、複数シナリオによるシミュレーション(人件費・為替・関税などを踏まえた最適な生産地、人口・GDPなど長期変動を踏まえた最適量生産・最適値販売)などが要望にあったという。

「グローバル化が進展することで、生産拠点の分散化・多国籍化や、サプライチェーンの拡大と複雑化、市場と製品の多様化などが変動要素となり、従来と異なる経営課題に直面している。そのため、タイムリーな情報把握とスピーディな意思決定や、製品ライフサイクルでのコスト・利益管理、サプライチェーン全体のコストを考慮した利益管理などが必要になっている」と奥沢は補足する。  また、製品を顧客に引き渡すまでに多くの海外企業が複雑に絡み、為替も変動するなど、製品ごとの真のコストや利益が見えづらくなっているという。

 構築したシステムは大きく2つに分けられる。1つは市場情報と販売実績による国別総需要予測システム。もう1つはメーカー/カテゴリ/エリア別需要設定を行う市場予測を元に、販売単価情報と原価情報を世界各国から収集し、どの国で何の製品を何台生産し、どの国に何台販売したら最終的に利益はいくら捻出できるのかといったシミュレーションを可能にするモデル別採算システムだ。
 これから導出された製品別・顧客別損益情報は、事業別・製品別収益性管理や、地域別・顧客別収益性管理、収益予測(シミュレーション)などの経営戦略に活用している。また、台数と利益率でマトリックス化し、優良モデル、少量高利益モデル、薄利多売モデル、不採算モデルを分析し、製品別ポートフォリオを作った。

「しかし、社内でこうした経営可視化システム導入の合意を得ることは容易ではなかったようだ」と奥沢は打ち明ける。そのためB社は、まず1年目でプロトタイプを作成し、2年目でそれを役員や関連部署に見せ、評価してもらった上で、最終的には3年かけて開発していったという。

 そこで奥沢は、連結原価シミュレーションの例を紹介した。仮想的にある製品を日本で設計し、基礎部品を中国で生産し、それをタイに運んで組み立て、欧州に販売するケースと、基礎部品をメキシコに運んで組み立て、北米に販売するケースのサプライチェーンを想定したモデルだ。

 日立ソリューションズではこのB社の事例をベースとして、製品別・顧客別収益管理パッケージ「ProfitNavi」を開発した。世界各国から市場データと生産拠点データ、販売拠点データなどを収集・蓄積することにより、製品別の利益構造を可視化し、経営計画のシミュレーションを可能にするソリューションだ。その他、実際原価計算パッケージ「CostACC」や、原価企画パッケージ「CostProducer」などと組み合わせ、サプライチェーン全体における製品別・顧客別損益予測を経営層や原価部門における戦略的意思決定に活用することを推奨している。

データ分析の目的は経営環境の変化に素早く対応し企業が生き残るためにある

 B社の事例から、奥沢は、国を横串で分析できるデータ環境の整備、市場理解から収益シミュレーションまでのマーケット・イン、現状に捕らわれない柔軟な仮説と実行計画が重要とした上で、「データが戦略を生むのではなく、戦略を裏付けるのがデータであり、勝つための仮説はやはり人間が考えなければならない」と結論づけた。
 その一方で、世の中には人工知能による機械学習という方法もあり、セッションの終盤でその可能性について紹介した。日立ソリューションズでは、商品を購入する確率の高い顧客を予測するリードスコアリングという手法を機械学習で解決する「機械学習リードスコアリングサービス」を開発した。商品のWebアクセスログなど既存の実績情報を利用して興味・関心の指標(滞在時間や参照回数など)からリード(見込み客)の行動データのエッセンスを取得してスコア(点数)化し、それに顧客マスタや購入実績データをマッチングさせた説明変数を機械学習機能が解析することで、近い将来にある商品を購入する確率の高いリードを予測する。

 日立ソリューションズでは、情報漏洩防止ソリューション「秘文」の拡販活動にこの機械学習リードスコアリング技術を適用した結果、スコア上位20%の顧客(全1283社中256社)で全体受注の57%を獲得した。256社にランダムに受注活動を行った場合、受注獲得は4社だけだったのに対し、予測モデルを利用した場合は12社となり、約3倍効率化したという。
 機械学習リードスコアリングサービスは、SaaSとして日立ソリューションズの環境で事前準備と検証を1~2週間程度行った後に、1ヶ月ごとにスコアリングしていくのが一般的だ。実行サイクルは変更も可能だという。希望により、オンプレミスとして顧客環境にスコアリング機能を配置することもできる。

 最後に奥沢は、「データ分析の目的は、経営環境の変化に素早く順応し戦略を立てるためにある。かのチャールズ・ダーウインも著書『種の起源』の中で、"唯一生き残るのは、最も強い者ではなく、最も賢い者でもなく、変化できる者である"と述べている。企業も同様に、経営環境の変化に素早く対応できる企業が生き残る。それを支援するのがデータ分析による戦略なのである」と結論付け、セッションのまとめとした。

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店舗に来店されるお客さまの購買行動を計測・蓄積・分析し定量的に評価する事で、店舗に眠る様々な気付きを発見!より良い商品開発、商品陳列、店舗空間作りのPDCAサイクルを実現し、企業経営に貢献します。

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