講演レポート:3Dプリンターがもたらすオープンイノベーションの世界 ~そのインパクトの本質から読み取る、企業変革のカギとは~|Prowise Business Forum in Nagoya 第9回|株式会社日立ソリューションズ

Prowise Business Forumin Nagoya 第9回

講演レポート

3Dプリンターがもたらすオープンイノベーションの世界

~そのインパクトの本質から読み取る、企業変革のカギとは~

 ものづくりを変え、ビジネスに変革をもたらすツールとして3Dプリンターへの注目が高まっています。これまで製造ラインを持たなければできなかったことが、ユーザーでもできるようになり、従来、作り手のみで製造していた製品に、より一層ユーザーの視点が反映されるようになります。3Dプリンターがもたらすインパクトの本質はこのようなオープンイノベーションにあるのではないでしょうか。
 本フォーラムでは、基調講演に慶應義塾大学 准教授の田中浩也氏をお招きし、3Dプリンターがもたらす未来についてご講演いただきました。
 また日立ソリューションズからは、オープンイノベーションの概念を取り入れることで、ものづくりのプロセスを変革する仕組みについて、事例を交えてご紹介しました。

セミナー風景

基調講演

ウェブ社会からファブ社会へ
~3Dプリンターで変貌する社会構造~

慶應義塾大学
環境情報学部
准教授 田中 浩也 氏

田中 浩也 氏

講師プロフィール

 1975年札幌市生まれ。京都大学総合人間学部、同人間環境学研究科、東京大学工学系研究科社会基盤工学専攻修了。博士(工学)。2005年に慶應大学環境情報学部(SFC)専任講師。2008年より同准教授。2010年マサチューセッツ工科大学建築学科客員研究員。2011年に国内初のファブラボを鎌倉に開設、2012年慶應義塾大学SFC研究所ソーシャルファブリケーションラボを設立、2013年第9回世界ファブラボ会議(横浜)実行委員長。文部科学省COI-Tサテライト「ディジタルファブリケーション国際研究拠点」慶應グループ研究リーダー。「未来の図工」を、場、空間(FabLab)と道具、機械(Personal Fabricator)の両面から探求している。

 3Dプリンターの可能性にいち早く注目し、日本での普及に貢献する田中氏は、「“つくる人”と“つかう人”との極端な分断によって大量生産・大量消費・大量破棄が進んだ20世紀のものづくりの課題の反省から、21世紀のものづくりは変化する」と語る。

3Dプリンターによってアイデアの“触れる化”が実現

 田中氏は、企業による大量生産⇒個人による適量生産、消費の楽しさ⇒創ることの楽しさの発見、特定企業による排他的なプロジェクト⇒異なるバックグラウンドを持った全員参加型のプロジェクトといった、社会や心の変化を若者が集う大学で感じられるという。
 また、1980年代のパソコンブームに似たトレンドが近年の3Dプリンターブームで起こりつつあるという。パソコンはもともと専門家がミサイルの弾道計算を行う特殊な目的の計算機だったが、80年代のマルチメディアブームによって個人が文字や音楽や画像で知的創造活動を増幅するためのデジタルメディアになった。
 3Dプリンターも元は専門家が特殊な作業をするための工作機で、レーザーカッターや旋盤などの工作機械のカテゴリーの中の量産する前の試作を作る工作機械だったが、2008年に特許が切れ、コストダウンが進み、誰でも3Dプリンターを使って知的創造活動に参加できるようになった時点から、パソコンやデジカメなどのデジタルメディアへの仲間入りを果たした。
 では、3Dプリンターで何ができるのだろうか。その方向性として2つの説を紹介する。1つは製造業に新しい産業革命が起こるという説(メイカームーブメント)。大規模な生産設備や作業人員は不要になり、1人で製造業に参加できるようになる。2つ目は新しい情報文化が始まるという説(FabLab:ファブラボ)。情報の中にモノのデータが流通するネットワーク端末のひとつとして捉えることで社会構造が変化する。
 慶応義塾大学SFCでも、3Dプリンターをものづくり工房(研究施設)とメディアセンター(図書館)の両方に設置し、理工系だけではなく文系の学生にも活用できるようにしているという。
「メディアセンターの3Dプリンターには多くの学生が行列を作り、毎日のようにiPhoneケースを作っている。アイデアを形にできるものづくりの楽しさに目覚めているようだ」という田中氏は、製造業だけでは出にくい発想の広がりが感じられるという。医学部の学生が自分の脳のCTスキャンデータを3Dプリンターで出力しているケースや、アイデアグッズを形にするケース、家電製品の破損した部品を復活したケースなど、「ビッグデータで情報の見える化が実現したように、アイデアの"触れる化"が実現していくだろう」と述べる。

3Dプリンターはアイデアや発想を獲得するためのツール

 さらに田中氏は、これまで試作ツールでしかなかった3Dプリンターが2つの方向に進化しているという。その第1がAdditive Manufacturing(最終製品が製造できるツール)。金型が不要になるほどの品質の高度化だ。第2がCreative Machine(家庭や学校などでアイデアを具現化する発想・創造ツール)。これらは3Dデータでスケーラブルにつながり、ネット上でさまざまな情報交換や共有が始まることで、ITと製造技術の融合、デザインと製造技術の融合(Social fabric)が起こるという。また、ワープロソフトを介して文章を生み出すのと同様に、ディスプレイを介して3Dプリンターと対話しアイデアや発想を獲得するためのツールとして考えるべきだという。
 3Dプリンターは毎年20%成長し、2025年までに最大60兆円の市場に拡大するという予測もある。その30%~50%は消費者自ら3Dプリントで行われる可能性があり、自家3Dプリントで毎年2000ドルの節約が可能だとする。
 米国では国内の教育機関1000施設に3Dプリンターを設置し、オバマ大統領は産業に対しても製造業のハブ拠点立ち上げを宣言している。
 例えばFabLabは、世界60カ国250箇所でネットワーク化された地域の市民実験工房として利用されている。そこでは、3Dプリンター以外にも大小のミリングマシンやレーザーカッター、デジタル刺繍ミシン、3Dスキャナーなど、さまざまなデジタル工作機械が設置され、小学生から大学の研究者まで多様な人々が出会い、新たに生まれたニーズの可能性を形にしているという。
 2009年に視察に来たオバマ大統領は、「20世紀はひとつの街にひとつの図書館を作り、文字の読み書きが万人に求められるリテラシーだったが、21世紀はひとつの街にFabLabを作る時代。地域の問題を地域で解決するものづくりが誰にでも必要なリテラシーになる」と語った。

パーソナルファブリケーションによって生まれる生活者発想のイノベーション

 田中氏は、先進国では若者のものづくり離れが深刻化していると話す。そのため、3DプリンターでものづくりのEmpowerment(動機付け)、Education(教育)、Problem solving(問題解決)、Job creation(職業訓練)、Innovation(新産業)という一連の流れが必要だという。
 田中氏は、国内に2011年の「ファブラボ鎌倉」を皮切りに、つくば、渋谷、北寝屋川(大阪)仙台、関内(横浜)、大分、広島にもFabLabを開設。年内にも全国的なネットワーク「FabLabリーグ」を立ち上げて、日本全体のものづくりの創造性を高めていく計画だという。
「FabLabで感じたことは、デジタルデータが作成できる人と素材の知識が豊富な人、工作機械やミシンの操作が得意な人とがコラボレーションして新たな創造が生まれ、ばらばらだったさまざまなジャンルのものづくりが同時発生していること」(田中氏)
 また、メーカーは自社の製品の都合で活用を考えがちだが、FabLabでのパーソナルファブリケーションによって生活者発想のユーザー中心イノベーションが生まれるという。
「3Dプリンターのメリットは、1つからでも作ることができること、複雑な3次元形状をつくることができること、データで遠隔地に送ることができることであり、コストが劇的に下がるパーソナルファブリケーションが実現する。しかしそれには想像力を広げていくことが重要だ」
 そう指摘する田中氏は、3Dプリンターを使う視点では多く語られているが、3Dプリンターそのものを作る視点も必要だとして、マテリアル、ウェブ、マシン(ハードウェア)、インターフェース(ソフトウェア)の4つの領域の企業の専門家が集まり、世界のどこにもない日本発の3Dプリンターを作るための研究所(慶応義塾大学SFC研究所ソーシャルファブリケーションラボ「COI-T サテライト 慶応大学ディジタルファブリケーション国際研究センター(横浜)」)を立ち上げたという。
「こうした拠点を活用し、世界トップレベルの3Dプリンターを開発することができれば日本の将来も明るいのではないか」と田中氏は期待を込めて語る。

日立ソリューションズセッション

企業のものづくりを変革するポイントとは?
~3Dプリンターの本質はオープンイノベーションにあり~

株式会社日立ソリューションズ
プロダクトソリューション事業部 プロダクト拡販推進部
主任技師 松本 匡孝

松本 匡孝

 日立ソリューションズセッションでは、グローバルで外部の知識を活用する「オープンイノベーション」を取入れることでものづくりのプロセスを変革する仕組みを、事例を交えて紹介した。。

パートナーや顧客とのコラボレーションによって共創型組織へとシフト

 「3Dプリンターの導入により、企画段階でのアイデアを形にすることができるため、迅速な意思決定や、設計の品質向上、試作工数の削減、機能確認などが実現する可能性が出てきた。しかし、現実には営業や経理などのスタッフ部門、さらには経営幹部からさまざまな要求や方針変更の指示等が介入し、開発期間のトータルな短縮や製品の開発段階で顧客ニーズを反映することが困難なケースもある」と松本は語る。
 今後の企業の進むべき方向として、参考になる調査結果を紹介。調査は世界70カ国以上、20以上の業種で4183人の経営層に実施した対面インタビューによると、自社の将来に影響を及ぼす最も重要な外部要因はテクノロジーと認識し、今後3~5年の間でビジネスパートナーの拡大や、顧客やパートナーとのコミュニケーションは対面からソーシャルテクノロジーを活用したコミュニケーションにシフトするなど、大きな変化が起こると予測。企業は顧客ごとに適合した施策を実施するために組織の見直しや投資を推進し、外部と連携するフロントオフィスの改革を優先するほか、顧客が自社の意思決定に参画する「顧客との共創型」組織へシフトしていく方向だという。
 そこで松本は、自社のみならずパートナーや顧客の知見を取り入れることでオープンイノベーションを実現した企業事例をいくつか紹介した。
 素材メーカーのA社は、複数の自動車メーカーを顧客に持つ企業。海外の競合メーカーとのコスト競争が激化しており、またハイブリッドや電気自動車など技術の急激な変化により、自社に不足する新たな技術の取得や、付加価値を強化することが求められていた。そこで、市場ニーズをいち早く察知し、さらに先読みした未来型製品を開発して顧客から選定される企業になるため、社内のノウハウの蓄積と活用はもちろん、社外パートナーとのアライアンスも推進することが必要と判断したという。
 A社は日立ソリューションズの情報・知識共有基盤「InWeave」(インウィーブ)を活用し、粉末冶金や成形品など製品カテゴリーごとにコミュニティを作成。設計者や技術者、営業担当などがコミュニケーションできるようにした。そうすることで、必要なデータを組織横断的に特定のメンバーで共有し活用することができ、さらにネットワーク環境が悪く図面等の大容量ファイルの転送に時間がかかる海外拠点では「デジ活ワイド」により高速転送を実現している。また、社外パートナーに文書を展開する際は、「活文 NAVIstaff」により暗号化を施しプロジェクト終了後に文書の失効処理を行うことで情報の二次利用を防止している。リアルタイムで議論を行う場面では、ユニファイドコミュニケーションシステムとインタラクティブホワイトボード「StarBoard」を組合せ、効率的なオンライン会議を実現している。
尚、各拠点で情報を共有する際、3DデータをInWeave上で共有し、必要に応じて3Dプリンターで出力し、製品レビューや品質改善に役立てている。

オープンイノベーションには社内改革と最適なIT基盤の活用がポイント

 「オープンイノベーションの実現には社内改革と最適なIT基盤の活用がポイント」という松本は、スティーブン・コビー氏の「7つの習慣」を引用し、自らを変革すればお客様との関係も変わると指摘。また、「『3Dプリンターの登場は産業革命』というのは正しいようで正しくない」と忠告する。
3Dプリンターが企画や設計、試作品開発等の各フェーズにおける作業の効率化や品質向上に貢献することは間違いないが、3Dプリンターが企業のものづくりを変革するという意味では「オープンイノベーションの中で有効に機能するテクノロジーのひとつである」(松本)

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