講演レポート:第59回「企業におけるスマートデバイスの未来 」|システム構築やトータルソリューションをお探しなら、日立ソリューションズをご利用ください。

Prowise Business Forum in Tokyo 第59回

講演レポート

企業におけるスマートデバイスの未来

~事例から企業にもたらす可能性と、リスク対策を徹底検証~

 スマートデバイスに対する企業の期待は大きく、企業価値を向上させるためのツールとして様々な活用方法が模索され、加速的に導入が進んでいます。しかし成果を出すためには、自社のビジネスのあり方を見直し、具体的な活用方法を定め、リスクを分析し、どこで投資対効果を捻出するか慎重に検討する必要があります。
今回で59回目となる本フォーラムでは、基調講演に慶應義塾大学の夏野剛氏をお招きし、スマートデバイスとクラウドの更なる融合がもたらす展望と日本企業の未来についてご講演いただきました。
また、日立ソリューションズからは、これまで当社が手がけてきた数々の導入事例を踏まえて、ビジネス用途別にスマートデバイスの具体的な導入のポイントや効果をご紹介するとともに、企業や組織への導入に向けたリスクを整理し、スマートデバイス活用のライフサイクル管理のポイントなどを検証しました。

セミナー風景

基調講演

スマートデバイスとITで変貌する社会と日本企業の未来

慶應義塾大学大学院 政策メディア研究科 特別招聘教授 夏野 剛 氏

夏野 剛 氏

講師プロフィール

 1988年早稲田大学卒、東京ガス入社。95年ペンシルベニア大学経営大学院(ウォートン)卒。ベンチャー企業副社長を経て、97年NTTドコモへ入社。99年に「iモード」、その後「おサイフケータイ」などの多くのサービスを立ち上げた。
 2005年執行役員、08年にNTTドコモ退社。現在は慶應義塾大学政策メディア研究科特別招聘教授のほか、ドワンゴ、セガサミー、ぴあ、トランスコスモス、GREEなどの取締役を兼任。World Wide Web Consortium(略称:W3C) Advisory Boardメンバー。
 NHKの「ITホワイトボックス」などTV出演多数。特別招聘教授を務める慶應大学政策メディア研究科では「ネットワーク産業論」をテーマに講義する。2001年ビジネスウィーク誌にて世界のeビジネスリーダー25人の一人に選ばれる。著書「ケータイの未来」「脱ガラパゴスの思考法」「iPhone vs.アンドロイド」等多数。

 慶應義塾大学政策メディア研究科の特別招聘教授を務めながら、国内11社の取締役を兼務する夏野氏は、5分程度の隙間時間があれば取締役会の資料に目を通してメールを返信し、Twitterをつぶやき、Webのチェックをする。これらは全てタブレット端末で行っている。iモードを立ち上げた本人をもってしても、マルチタスクがこれほど可能になった経験はかつてなかったという。
「スマートデバイスが登場したことにより、365日、寝ている間以外はネットワークとつながる状態が現実化した。その背景には必ずクラウドが存在する。PCのようにスマートデバイスの中に情報を蓄えることに基本的に意味はなく、インターネット上のサービスであるクラウドがあるからこそスマートデバイスの存在意義がある」

IT革命以後15年間で起こった“その後のIT革命”

 1990年代終盤に流行語となったIT革命以後、現在までの約15年間で起こった“その後のIT革命”は3つに分類できると夏野氏はいう。その第1は「効率革命」。1997年までは航空機のチケットを予約するのに旅行代理店に行くか、コールセンターに電話するしかなかった。各窓口のマネジメントが航空会社の営業成績と輸送効率を左右していた。しかし今は個人顧客の7割がWeb予約を利用するようになり、ビジネスのフロントラインが窓口からWebインターフェースへと変化した。
 夏野氏は、「全てのビジネスがネットを無視しては成り立たなくなっている。ITによって営業圏や商圏、営業方法、店舗展開などの概念が大きく変わり、これまで接点のなかった顧客への販売を可能にしている」と語る。
 第2が「検索革命」。1998年に登場したGoogleの検索エンジンによって個人の情報収集能力が飛躍的に拡大し、以前なら組織でしか入手できなかった研究論文などの情報が当たり前のようにネット上に存在するようになった。企業の研究開発プロセスも企業の枠組みを超えたインタラクションが次々に起こっていると指摘する。
 第3が「ソーシャル革命」。TwitterやFacebookなどによる情報の共有・蓄積・共振によって個人の情報発信能力の飛躍的に拡大した。

その後のIT革命がもたらした3つの変化

 この3つのIT革命がもたらしたものとは何か。その1つが複雑系知識ネットワークの現実化であるという。複数の人が集まってコミュニケーションを行うことにより思いも寄らない新たなアイデアを創造する「創発」や、リーダーシップが不在でも個人同士が思いを共有して一致した行動につなげる「自己組織化」、他人の知識やクラウド上のデータベースを利用する「外部脳」などが、TwitterやFacebookの登場によって従来よりも容易に実現するようになった。
 2つ目が個人能力の最大化だ。夏野氏は、100人の平均的な人材を育てるよりも意欲ある1人のオタク(専門能力を有した人材)を雇い入れることが遙かに効果的だとし、組織力の定義が変化している上に、中間管理職が不要になることで従来の組織階層も無意味になり始めているという。
 3つ目は多様性社会の実現。オタクが増加することで価値基準の標準偏差(ばらつき)が拡大し、社会全体が平均値思考からロングテールへと向かう。
 「この流れによって、社会システムは変化を強要されるようになってきた。それを加速したのがクラウドとスマートデバイスだ」(夏野氏)
 組織構造がフラット化することで、終身雇用・年功序列・新卒一括採用などが機能を失い、突き抜けた才能を持つ人材の活用や多様性を前提とした教育システムに移行することで平均値理論も意味を失っている。また、個人の情報収集能力が高まったことで、リーダーの役割が利害調整型から率先垂範型へと変化し、その役割も重く辛いものになっていくと夏野氏は指摘する。

新しい人類のモデルを世界中に示すことができる日本

 そして、クラウド&スマートデバイス時代のITのあり方について、1)モバイルとPCの実質上の完全融合、2)ブラウザ機能の充実と共通化、3)コンテンツサービスの使用価値の向上の3つを示し、企業経営者は本気でマインドセットを変えるべきだと強調する。
 とはいえ、日本ではガラケー(従来型の携帯電話機)の機能が高かった経緯もあり、日本のコンシューマや企業の従業員はスマートデバイス活用のリテラシーが高いと評価。新たに教育が不要なことは、ソリューションプロバイダーにとっても大きなアドバンテージに働くという。
 また、日本は豊富な資金力(1450兆円超の個人金融資産と250兆円の企業内部留保)や、世界トップレベルのITインフラ・教育水準・労働意欲の高さ、眠れる技術資産などを抱える。個性軽視や議論軽視、予定調和好きなどの弱点もあるが、それらを少なくともリーダーから排除すればまだまだ伸びる余地は大きいという。 最後に夏野氏は、「必ずや日本は新しい人類のモデルを世界中に示すことができると確信している」とエールを送り、基調講演のまとめとした。

日立ソリューションズセッション1

事例から見るスマートデバイスの導入効果とポイント

株式会社日立ソリューションズ ソリューション技術本部 ソリューション技術部
部長代理 山村 秀宗

山村 秀宗

 日立ソリューションズセッション1では、スマートフォンやタブレット端末の拡販ソリューション開発を担当する山村が、スマートデバイス導入企業の事例をいくつか示しながら、スマートデバイスの具体的な利用イメージや可能性について紹介した。

スマートデバイスによる3つのビジネス用途

 「日立ソリューションズではスマートデバイスのビジネス用途を3つの切り口で提案している」と述べる山村。その1つは外出先からの迅速な情報アクセス。社外からいつでもメールやグループウェアを利用したり、VPN接続でイントラ上の情報にアクセスしたりするほか、リモートデスクトップで遠隔業務を行うことで、空き時間の有効利用や迅速な社内情報取得、交通費などのコスト削減、在宅勤務などを実現する。
 2つ目は営業スタイルの改革。タブレット端末を使った静止画・動画による効果的なプレゼンや大量カタログの電子化、外出先での顧客情報参照、タイムリーな見積作業などを可能にし、営業活動の効率化と顧客満足度の向上を目指す。
 3つ目がビジネスのスピードアップ化。ペーパーレスと電子化による会議の効率化(印刷費用の削減、時間節約)や、検査結果のリアルタイム報告などフィールドサービスの効率化、店舗・接客業務の効率化などが見込まれる。

ビジネス用途に応じたスマートデバイスの導入事例

 次に、山村は上記のビジネス用途に応じたスマートデバイスの導入事例を紹介した。

(外出先からの迅速な情報アクセスを実現:事例1)外出先から社内メールアクセス
 200年以上の歴史を持ち国内・海外・港湾での総合物流事業を行う鈴与株式会社は、経営幹部や営業担当者が利用する携帯電話のリモートアクセスシステムをリプレース。SecureOnline上で稼働する「スマートフォンセキュアアクセスサービス」を活用することで、外出先から安全に添付ファイルの閲覧を可能にし、リモートアクセス費用の削減を実現した。

(外出先からの迅速な情報アクセスを実現:事例2)決済業務のスピードアップ化
 金融業A社は、管理職が外出先からでもタブレット端末で決済業務を可能にするため、既存の決済アプリは維持させつつ、SSL-VPNでリモートデスクトップの遠隔操作を可能にする「ArrayDesktopDirect」を活用。ワンタイム認証の「SecureMatrix」と連携させ、セキュリティを確保しながら仮想デスクトップ環境を実現。災害時のBCP(事業継続計画)も強化した。

(営業スタイルの改革を実現:事例1)電子カタログによる効果的なプレゼン
 製造業B社は、全営業担当者に配布したタブレット端末の効果的な利用方法を模索していた。膨大な製品カタログのデータをスマートデバイス用情報共有サービス「Handbook」に格納することで、商談時に適切な最新カタログを提示することが可能になり、紙カタログの印刷部数を削減しコスト低減を実現。

(ビジネスのスピードアップ化:事例1)ペーパーレス会議の業務効率化
 出版業C社は、幹部会議の効率化や資料の機密性を高めるためペーパーレス化に取り組み、文書管理システム「ラビニティOne」を導入して文書管理サーバーに登録した会議資料をタブレット端末で参照するシステムを構築。会議の準備に関わる手間や紙コストの削減、情報漏えい防止などを実現した。

(ビジネスのスピードアップ化:事例2)作業現場から設計図面へのアクセス
 電気工事業D社は、工事の施工・保全業務担当者約100名が利用する工事関係図面(紙)を電子化し、「ラビニティOne」で一元管理。作業現場からでもVPN経由でタブレット端末安全にアクセスできる環境を構築し作業効率を向上させた。

業務システム連携による事例

 さらに山村は、日立ソリューションズのアプリ開発力や技術力を活かした業務システム構築で実現したスマートデバイスの導入事例も紹介した。

(業務システム連携:事例1)報告業務とプロジェクト管理の連携
 建築工事業E社は、工事現場で撮影した写真の管理と施工実績報告業務を効率化するため、モバイル端末用報告書管理ツール「ケータイ快作!」を利用して報告書作成するシステムを構築。プロジェクト管理システムと連携させることで、迅速な情報共有と作業工数の削減が可能になった。

(業務システム連携:事例2)配送計画システムと車両管理
 物流業F社は、保有するトラック1000台の配送効率を高めるため、タブレット端末にトラック運行管理ASPサービス「スマートe-trasus」を運用して、日々の配送量に応じた配送ルートを動的に変更できるナビゲーションを活用。ドライバーに負担をかけずに配送の効率化を実現してトラック10台分の輸送コストを削減した。

 スマートデバイスの導入ポイントと効果について山村は、「メールや資料の参照がしやすいため携帯電話の代替のほか、Web閲覧や情報共有にも活用できるPC端末の代替、電子化による紙資料の代替、そして業務システム連携のフロント端末としての利用価値が高い」と強調する。

日立ソリューションズセッション2

スマートデバイスの企業導入に潜むリスクと対策のポイント

株式会社日立ソリューションズ プラットフォームソリューション本部 セキュリティソリューション部 
技師 猪股 健一

猪股 健一

 日立ソリューションズセッション2では、スマートデバイスを安全に活用するためのITインフラの実装方法やポイントなどについて紹介した。セッションを担当した猪股は、「スマートデバイスの普及に伴って企業への導入は拡大傾向にあるものの、セキュリティの不安が導入を阻害している大きな要因となっている」と語り、それを裏付けるように、2012年からはスマートデバイスを標的としたマルウェアが桁違いに急増しているという。

スマートデバイス活用のライフサイクル管理

 スマートデバイスを利用する際の代表的なリスクとしては、持ち運んで利用するケースが多いため、紛失や盗難のほか、会社で認可されていない端末の不正アクセスやアプリの利用によるウイルス感染、クラウドサービスの無断利用や不適切な廃棄による情報漏えい、生産性の低下などが考えられる。
 「企業が許可したスマートデバイスを安心・安全に業務で利活用するためには、まず端末を特定して厳格に管理し、許可した端末だけをセキュアに社内リソースへ接続させるための仕組みや、端末自体にセキュリティを確保することが必要」
そう指摘する猪股は、1)「計画」:社内ルールやマニュアルの整備、サポート体制の確立。2)「導入」:利用開始手続き、利用者教育、初期設定。3)「運用」:デバイス情報の定期的な収集・監視、デバイス機能の制御、事故対応。4)「廃棄」:業務利用データやデバイス設定の消去、業務アプリの削除といったライフサイクル管理が不可欠だという。
そのライフサイクル管理を実現する手段のひとつが、MDM(Mobile Device Management:モバイル端末管理システム)である。デバイス状態の監視とポリシー・アプリケーション・接続設定の一元管理、企業ポリシー適用、アプリケーション・通信設定の配布、遠隔ロックとワイプ(データ消去)、セキュリティポリシーの強制、デバイス機能のロックダウンなどを可能にする。

MDM選定のポイント

 MDM製品の実装においては、パスコードの強制のほか、カメラなど業務上不要な機能の制御、社内アクセス用の通信設定の管理、アプリケーションの管理が不可欠という。
 現在は多くのベンダーからMDM製品が提供されているが、その選定にはいくつかポイントがあると猪股はいう。
 例えば、大規模導入を想定した機能が実装されていること。デバイスのグループ管理やActive Directory/LDAPとの連携を重要視すべきだという。
 さらに、セルフプロビジョニングによって運用負荷の軽減が可能であること。デバイスのポリシー適用やアプリケーション・通信設定の配布が自動化されているか、ポリシー違反を検出したらデバイスから自動的にアプリケーションや通信設定を剥奪できるかで判断する。
 また、認証強化においては、まず認可された端末を厳格に特定することが重要で、IMEI(International Mobile Equipment Identity)やUDID(Unique Device Identifier)といったスマートデバイス端末固有の識別情報を基にしたデバイス証明書を活用して個体識別を行うことが有効だという。
 デバイス認証に加えてユーザーIDやパスワード、OTP(ワンタイムパスワード)などを併用した二要素認証による利用者識別も、端末盗難・紛失時やなりすまし防止に効果的だ。
 なお、無線LANからのセキュアなアクセスを実現するためには、不正なアクセスポイントの検知やユーザーごとのアクセス制御などの実施も必要となる。

スマートデバイス用ウイルス対策と暗号化・持ち出し制御

 デバイス側のセキュリティ対策については、スマートデバイスを対象としたマルウェアが急増している中でウイルス対策が優先されるという。
「ポイントは、利用者にウイルス対策を一任するのではなく、管理者側が企業向けのウイルス対策ソフトを導入して対策状況を一元的に把握すること。また、利用者がウイルス対策ソフトを勝手にアンインストールできないようにするツールを選ぶことも大切」
一方、情報漏えい対策としては暗号化や持ち出し制御の機能が基本となる。持ち出す場合は安全対策を確実に実施することが必要だという。
「スマートデバイスは大容量のUSBストレージと同様。『秘文』などのエンタープライズ用ソフトウェアを実装してしっかりと制御することをお勧めしたい」
なお、企業や組織のスマートデバイス活用で参考になるガイドラインとして、日本スマートフォンセキュリティフォーラム(JSSEC)や日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)が公開しているセキュリティガイドラインが具体的で参考になるとアドバイスした。

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