講演レポート:第80回 ベストセラー「世界の経営学者はいま何を考えているのか」の入山章栄氏が語る!なぜ日本企業の「グローバル化」は加速しないのか!?~求められる国際化戦略とは~|Prowise Business Forum in Tokyo|システム構築やトータルソリューションをお探しなら、日立ソリューションズにお問い合わせください。

株式会社 日立ソリューションズ

Prowise Business Forum in Tokyo 第80回

ベストセラー「世界の経営学者はいま何を考えているのか」の入山章栄氏が語る
なぜ日本企業の「グローバル化」は加速しないのか!?
~求められる国際化戦略とは~

 企業が新たな市場を世界に求め、「グローバル化」をめざす機運にある日本ですが、「グローバル化」という言葉だけが先行し、戦略を立案・実行しているという厳しい意見があります。その中で、グローバル企業として世界に台頭している日本企業が存在しているのも事実です。
 本フォーラムでは、学術的観点と事例から、日本企業がとるべき戦略と実現手法を考察します。
 基調講演に、ベストセラー「世界の経営学者はいま何を考えているのか」の著者、入山章栄氏をお招きし、「グローバル化」の定義と日本企業に求められる国際化戦略についてご講演いただきました。日立ソリューションズからは、知識やノウハウを現地のパートナーを含めた関係者間で共有・理解するためのコミュニケーションを支援するテクノロジーについて、事例を交えてご紹介いたしました。

開催概要

日時 2015年1月15日 13:00~15:00 (12:30 受付開始)
会場 東京都港区港南2-18-1
JR品川イーストビル20F セミナーホール
主催 株式会社日立ソリューションズ

【基調講演】
世界の経営学から見る日本企業国際化への視座

入山 氏

早稲田大学ビジネススクール
准教授 入山 章栄 氏

講師プロフィール

1996年慶應義塾大学経済学部卒業。98年同大学大学院経済学研究科修士課程修了。三菱総合研究所で主に自動車メーカーや国内外政府機関へのコンサルティング業務に従事した後、2003年に同社を退社し、米ピッツバーグ大学経営大学院博士課程に進学。2008年に同大学院より博士号(Ph.D.)を取得。同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクールのアシスタント・プロフェッサー(助教授)に就任。2013年から現職。専門は経営戦略論および国際経営論。2012年に出版された著書『世界の経営学者はいま何を考えているのか』(英治出版)はベストセラーとなり、現在は『ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー』誌上にて長期連載「世界標準の経営理論」を掲載するなど、各種メディアでも積極的に活動中。

2013年までの約10年間、米国ビジネススクールで助教授を務めていた入山氏は、「グローバル化」の真の意味と、日本企業の国際化戦略に向けた基本的な考え方を、時間の許す限り熱弁した。

世界の経営の知見が日本に伝わらない現実

 冒頭、入山氏は"8338分の28"という分数をスクリーンに示す。約2万人もの経営学者が登録する米国経営学会「アカデミー・オブ・マネジメント」(Academy of Management)は、毎年8月に世界大会を開催しているが、2013年の年次総会には世界中から8,338人参加する中で、日本の大学から参加した人が28人だったことを示す数字だ。

「全体のわずか0.3%以下」と入山氏は危機感を込めてつぶやく。

「経営学の分野では国際標準化が急速に進んでいる。それは日本を除いた世界の国々で起こっており、各国が同じ学会に参加し、同じ経営理論や分析手法のもとに意見交換し、コンセンサス(常識)とされている経営学の知見が共有されている。残念ながらそこに参加している日本人は極めて少なく、"常識"が日本国内に伝わっていない可能性がある」

集積・裁定・適応のどれが重要かを見極めて特定の地域で通用する力を見出す

 入山氏は、企業が国際化するメリットをAgglomeration(集積)、Arbitrage(裁定)、Adaptation(適応)の3つで表した「AAA(トリプルエー)フレームワーク」(ゲマワット氏が2006年に提唱)を提示する。「世界がバラバラで中途半端な鎖国に近いセミ・グローバリゼーションだからこそ大事な考え方」だという。

 同時に、「その相反する3つの概念を同時に実現することは極めて難しい。どれかが実現不可能だと判断されれば潔く大胆に切り捨てるメリハリが必要」ともいう。

 また、鎖国に近いセミ・グローバリゼーションの世界では、ビジネスチャンスを考えると同時にリスクも考えなければならないと入山氏はいう。企業活動のリスク、国際ビジネスに負の影響を与える要因とは何か。

 貿易に影響を与える国と国の間の「距離」を統計分析すると、従来常識とされた経済規模(0.8%)や一人当たり所得(0.7%)などの経済データよりも、国境(80%)、言語(200%)、政策・制度(340%)、歴史的背景(900%)などの目に見えない要因の方が大きな影響を与える可能性があるという。

「世界中で企業固有の強みを満遍なく活かせる『グローバル企業』というものが幻想ならば、特定の地域で通用する力を見出すべきだ」と入山氏はアドバイスする。つまり、Regional (局所性)を持った「Regional-Specific Advantage」 (RSA)をめざすことだという。

3タイプのマネジャーの力を総合すれば多国籍企業に必要な人材育成が可能

 さらに入山氏は、世間一般で使われながら定義が曖昧な「グローバル人材」の代わりに、「3タイプのマネジャー」という考え方を披露する。スーパーマンのようなグローバル人材は育成できなくても、異なる3種類の人材を育成することはできるという。それは、1)ビジネス・マネジャー:世界を俯瞰し調整ができるタイプの人材。2)カントリー・マネジャー:各国地域に精通した強みを持つ専門家タイプの人材。3)ファンクショナル・マネジャー:会社の強みとなるファンクションに精通している人材だ。この3タイプをそれぞれ育成し、足し合わせることで、トランス・ナショナル・カンパニー(多国籍企業)に必要となる人材育成が可能になるというわけだ。

 この3つは先に述べたAAAフレームワークと密接に関連すると指摘する入山氏は、最後に、「世界は鎖国に近いセミ・グローバリゼーションであることを前提として国際戦略を考える必要がある。RSAをどのようにうまく活かしていくか、AAAのどれを重要視するのかを考えてメリハリのあるエキスパート育成を行っていただきたい」と語り、基調講演のまとめとした。

【日立ソリューションズセッション】
グローバル企業が競争優位を創出する戦略とは

日立ソリューションズ 松本

株式会社日立ソリューション
ハイブリッドインテグレーションセンタ
部長代理 松本 匡孝

グローバルなサプライチェーンの構築や自社のビジネスモデルの世界展開において必要となる企業間のコミュニケーションを支援するテクノロジーについて、事例を交えて紹介した。

ナレッジマネジメントがうまくいかない理由はコミュニケーションの分断

 企画→設計→試作→生産→保守というフェーズで製造業のエンジニアリングチェーンを考える上での課題とは何か。「全てにおいてITが完備されているが、それぞれのフェーズで壁というものが存在し、各システムがつながっていないことが多いのではないか」と松本は推察する。PLMで図面情報は共有可能だが、それはデータ作成であってコミュニケーションではない。なぜこんな手のかかる形状にしたのか、寸法公差はなぜこんなに厳しいのかなど、設計段階の事情(ナレッジ)が属人化して、ことの本質が後工程に正しく伝わらないことが後々問題になるという。

 それを回避するため、企業の多くはナレッジマネジメントを目的に文書管理システムやエンタープライズサーチ、社内SNS/Wikipediaなどを導入してナレッジDBを登録・共有している。しかし、そうした施策は本来の業務に負荷を与えるため、情報の登録に対してユーザーは消極的になりがちな上に、専門組織が継続的にメンテナンスを行わないと情報が陳腐化するなど、なかなかうまくいかなかったのが実態だ。

「従来の概念から脱却した新たな解決方法が必要となっている」と語る松本は、その解決方法として、データの修正理由や課題解決のプロセス、設計根拠、顧客要望など、各フェーズでディスカッションされている関連情報が図面から連携して読み取れ、組織として共有できることが理想となると提案する。

社内ノウハウの活用と社外パートナーとのアライアンスを両立した部品メーカー

 松本はそれを実践した取り組み事例をいくつか紹介した。

 1つ目は、自動車部品メーカーA社の事例。海外メーカーとのコスト競争が激化する中、A社は製品に新たな付加価値が必要と判断した。市場ニーズをいち早く察知し先読みした未来型製品を開発するため、社内ノウハウの蓄積・活用と社外パートナーとのアライアンスを推進しながら情報流出を防止する効率的なコラボレーション基盤を構築しようと考えた。

 A社が採用したのは「活文 Managed Information Exchange」(活文MIE)という製品である。エンジン、シャシー、ボディなどの製品カテゴリごとにワークスペースを設け、関係者にアクセス権を与えてディスカッションを活性化している。設計部門が「出力向上と低燃費化のため可変バルブの樹脂化を行いコスト低減と軽量化をしたい」と発言すると、研究部門が「可変バルブは素材の変更により一体化が可能」と応え、生産技術部門は「しかし、ロータリーバルブ部分に動的干渉があり形状の変更が必要」と指示を与える、といった流れで議論が進む。

 このシステムのメリットは、図面とともにディスカッションの履歴がテキストとしてサーバーに残されること。担当者が転勤しても、そのやり取りはナレッジに蓄積されているので属人化の心配はない。大容量データの3D CAD図面も、多重化通信を利用して海外拠点の担当者と安全かつ高速に転送できるので、以前のようにDVDなどに落とし込んで空輸する必要はなくなったという。

 複数のパートナー会社が関係する場合は、メッセージ単位で情報の公開先を特定するなど、コミュニティの中だけで制御を可能にしている。また、機密情報が社外パートナーから第三者に渡ってしまっても、ファイルを開く時に認証をかけるため正規のメンバー以外は閲覧できないようにすることも可能だ。なおかつ、一度配付してしまった資料も強制的に失効させることもできる。調達部門がパートナー会社に見積を依頼する際に技術情報を添付しても後日回収すればいいのだ。

 また、SNSの議論だけでは解決しない場合は、タブレット向け情報共有ソフトウェア「活文 Team Idea Sharing」を活用して関係者が画像を見ながら資料をリアルタイムに共有し、それを議事録として活文MIE上に保存する。手書きの指示も可能なので、現地のスタッフとビジュアルに意思疎通を図ることで手戻りを削減しているという。

活文MIEにメッセージを投げるだけで全て自動でワンストップに処理

「活文MIEは、メッセージとファイルを関連づけて一括管理することができる製品だ。添付したファイルはバージョン管理されるので、変更点のシェアや編集時の排他制御が可能」と松本は説明する。大容量ファイルも高速転送できる仕組みやセキュリティも備わっている。最大の特徴は、Active Directory(AD)やLDAPなどと、独自のユーザー管理を連携させた管理機能である。他社のユーザーに関しては自社のADに改めて登録する必要はなく、別のユーザーグループとして独自のカテゴリに取り込むことができる。

「ユーザーは活文MIEのエンタープライズソーシャルにメッセージを投げるだけ。ファイルを投稿すると、バージョン管理され、高速転送されて、ポリシー設定に応じた暗号化まで全て自動でワンストップに処理される。わざわざユーザーが個別にセキュリティを設定する必要はない。そこがこの製品が高く評価されているポイント」

 モバイルなどのマルチデバイスに対応し、ビッグデータや業務システムとの高い連携性も特徴のひとつ。また、別のコラボレーション製品とも連携する。例えば社内ではSharePointで運用し、社外のメンバーにデータを転送する時はSharePointのユーザーインタフェースを使って活文MIEに情報を投稿するという使い方も可能だ。

代理店側が持っている情報の一元的な管理・分析を実現した損保会社

 2つ目は、損害保険会社B社の事例。代理店とのコミュニケーション強化により顧客接点の情報を共有し、顧客ニーズの収集と代理店が使いやすいシステムを提供することで代理店業務の生産性を向上することを目的としていた。また、保険会社内には業務ノウハウが属人化しており、人事異動は代理店への対応に関する影響が大きく、代理店とのコミュニケーション履歴を残すことが重要と考えていた。

 B社は活文MIEを導入し、代理店ごとのコミュニティを1対1で構築した。アクセス管理を高度に設定することで、秘匿性の高い情報の取り扱いを可能とし、さらに情報の未・既読や問い合わせ、ノウハウ、業務の引き継ぎなどの代理店とのコミュニケーションで可視化した情報をB社が一元的に管理・分析することが可能になった。

この事例に関して「成功のポイントは3つある」と松本は指摘する。

 第1に代理店は便利だから使うという点だ。ポータルに情報が集約し、必要な情報へ容易にアクセスできるほか、代理店はB社から質の高いサポートを受けられる。
 第2は情報が蓄積するという点。従来はメールや電話、専用の問い合わせサイト、営業担当者の個別対応などに分散していたが、現在は情報が活文MIEによってデータベース化している。
 第3がナレッジとしての活用。コミュニケーションデータの収集・分析を行い、顧客ニーズを商品やサービスに反映できる。

強制的に物件情報を公開させることで営業同士の情報共有を実現した不動産会社

 3つ目は、不動産販売会社C社における物件情報共有システム構築の事例だ。不動産業界は古い体質が残っており、個々の営業担当者は獲得した売り物件を社内に公開せず、自ら買い手を見つるスタイルが一般的となっていた。結果的に自分で買い手を見つけることができず、売れ残り物件が増加する傾向にあった。売り物件が公開されないため、実際には買い物件を求める顧客に最適な物件がありながら販売することが困難であった。また、個々の営業担当者の営業プロセスが見えないためノウハウは属人化し、営業担当者の評価は販売成績のみという面も課題だった。

 C社はトライアル的に一部の営業所に活文MIEを導入した。営業担当者は必ず物件を社内で公開するように規則化し、その代わり物件公開時に「商談中」といったステータスを登録することで他の営業が販売できない状況を作った。ただし、物件が公開されることで買い物件を求める顧客を持つ営業は、条件に合う物件を販売するために、営業同士のネゴシエーションが活文MIE上で行われる。それにより営業プロセスの可視化も実現した。結果的にその営業所の利益は向上し、他の営業所でも活文MIEの活用が拡大していったという。

 また、物件情報も、タグ検索やキーワード検索、人・組織での検索によって従来に比べ探しやすくなり、投稿した情報に対して記事のアクセス数やコメントの投稿数、ファイルのダウンロード数などをログ解析することで、誰がどれだけ貢献したかも正しく評価できるようになった。

 活文MIEのような新システムを組織に導入し定着させるポイントとして、松本は次の3点を列挙する。1つ目は、コンセプトを策定し、それを実現するための最適なツールを選定すること。2つ目は、業務システムとして利用することで、ユーザーが活用することに必然性を持たせること。3つ目は、対象業務の選定・運用ルールの作成はユーザー部門主導で推進すること。

 最後に松本は、スティーブン・R・コヴィーの「7つの習慣」から第3の習慣を引用し、「物事は全て4つの領域に分けることができる」ことを紹介する。第1領域:緊急で今は重要なこと。第2領域:緊急ではないが目標達成のために重要なこと。第3領域:緊急だが重要でないこと。第4領域:緊急でもなく重要でもないこと、といった内容だ。

 「現在のワークスタイルはメール中心の業務になっているため、第1と第3の領域に支配され、ビジネスパーソンは力尽きてしまっている。重要なのは第2の領域。必要な情報に直接アプローチすれば第2領域を中心に仕事ができる。余計な業務を拒否するワークスタイルにシフトしていけば、生産性が高まりグローバルで戦える企業体質になる」と提案し、自身のセッションを終了した。

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