講演レポート:第86回 早稲田大学ビジネススクール教授の平野正雄氏が語る!グローバル化に問われるのは、未知なる環境への適合だ!|Prowise Business Forum in Tokyo|システム構築やトータルソリューションをお探しなら、日立ソリューションズをご利用ください。

株式会社 日立ソリューションズ

Prowise Business Forum in TOKYO 第86回

早稲田大学ビジネススクール教授の平野正雄氏が語る!
グローバル化に問われるのは、未知なる環境への適合だ!
~世界650社の事例から導き出す、世界に通用する企業戦略~

 成熟化が進む日本市場。各企業は新たな市場を求めて海外に目を向けています。しかし待ち受けているのは、「不安定で変化が激しい」「先が読めず不確実性が高い」「さまざまな要素が絡み合い複雑化する」といった、不明確で不透明な環境の中での競争です。これまでのマネジメントの常識は通用せず、未知なる経営環境に適合しうるマネジメントが必要になるのではないでしょうか。本フォーラムでは、世界で革新的な経営を行っている企業を分析して、世界に通用する企業戦略のあり方を考察いたしました。
 基調講演に、20年間にわたりマッキンゼー・アンド・カンパニーで勤務し、経営コンサルタントとして幅広い産業分野でのプロジェクトに従事してきた早稲田大学ビジネススクール教授の平野正雄氏をお招きし、日本企業がグローバル競争の中で成長発展して行くための道筋についてご講演いただきました。日立ソリューションズからは、世界650社の実績から盤石なグローバル競争基盤を築くためのIT戦略のあり方について事例を交えてご紹介いたしました。

開催概要

日時 2016年1月21日(木) 14:00~17:30 (13:30 受付開始)
会場 東京都港区港南2-18-1
JR品川イーストビル20F セミナーホール
主催 株式会社日立ソリューションズ

【日立ソリューションズセッション1】
世界650社の事例から考察するグローバルIT戦略と課題

加藤 英也
株式会社日立ソリューションズ
Dynamics推進本部
部長 加藤 英也

 日立ソリューションズは、米国、UK(英国)、インド、カナダなどの各拠点で共通的にマイクロソフトのERP「Dynamics AX」をベースとしたソリューションの導入経験があり、その数は全世界で650社にも及ぶ。このセッションでは、グローバルロールアウトでの戦略と課題について事例を交えて紹介した。

企業グループ全体で統制されたグローバルIT戦略やグローバルIT標準が必要

 日立ソリューションズはいくつかのタイプのグローバル事業を推進しているが、その中の柱に、日系企業の海外展開における拠点ERP導入の支援サービスがある。その商材となるのが2012年から開始したDynamics AXを核としたグローバルロールアウト支援だ。

「グローバル展開では、本社と現地での考え方・業務の違いによる計画の遅れや、個別システム化したITで標準化ができない問題など国内でのERP導入では経験できないIT要素がある。トラブルを回避するためには、早い段階でIT部門の参画だけではなく企業グループ全体で統制されたグローバルIT戦略やグローバルIT標準の定義が必要だ」と、数多くのグローバルロールアウトを支援してきた加藤は語る。

 日本でのDynamics AX導入支援はおよそ30件存在する。その中から、加藤は4件のグローバルロールアウト事例を紹介した。

 事例の1つ目は、製造メーカーA社における、アジアの生産拠点へのDynamics AX生産管理を個別導入した案件だ。プロジェクトはシンガポールのローカルベンダーが中心となり、体制を構築して進められ、日立ソリューションズはA社のプロジェクト管理という役割で参加した。日本側(A社本社と日立ソリューションズ)は、プロジェクト管理、評価・設計指導、進捗管理、予算管理などを出張ベースでマネジメントし、シンガポール工場側は要件定義、基本設計・開発、稼働環境の構築、稼働支援までを担当した。
 構築後の保守体制はA社本社が統括し、構築を担当したローカルベンダーが現地保守を行っている。
 加藤は、「現在の生産業務維持を優先させたことによる大幅な固有要件のアドオンが発生し、その他の地域への展開は難しい仕組みになった。また、本社統制と現場納得の重要性は認識していたものの、プロジェクト実態は拠点側主導となり、予算・日程とも非常に混乱したのが反省点だった」と振り返る。

 2つ目は、製造業B社における海外拠点へのDynamics AX会計を個別導入した事例だ。B社は海外への拠点拡大を見据えて、Dynamics AX会計を導入したロールアウトモデルを開発し、北米拠点を皮切りに、日本国内の事業部、更にアジア拠点に展開した。アジア拠点への展開は、事前にロールアウトモデルを開発していた効果があり、わずか1ヶ月でロールアウトを実施した。今後は東南アジアを中心に拡張していく計画だ。
 会計を対象としたシステムであったため、システム標準化が実現しやすく、モジュール化による海外拠点への拡大展開の効率向上が期待できる。

グローバル標準化による効率向上と個別対応ではないグローバルIT戦略

 3つ目は、製造業C社における2-Tier ERPモデル導入事例だ。C社では、日本本社と海外統括拠点(北米・欧州)はSAPを活用しているが、新興国のERP標準化はDynamics AXを指定しており、その第一弾としてタイ拠点にDynamics AX 販売・会計を導入することで他拠点への展開モデルを開発。このSAPとDynamics AXの2階層ERPシステムは、本社でのグローバル連結会計の基盤を構築するとともに、PSI(生産・販売・在庫)の可視化をリアルタイムに実現した。日立ソリューションズは海外現地に6ヶ月常駐して開発・構築・稼働支援を担当し、その後の保守体制はC社の情報システム会社が日本からリモートで現地対応することとなり、日立ソリューションズはパッケージの技術的観点で後方から支援している。

「この事例では100%の標準化は不可能であるものの、一定のロールアウトモデル化を実現でき、本社連携を視野に入れたグローバル連結モデルを構築するに至った。しかし、タイローカルベンダーのソリューション品質が依然として課題となっている」と加藤は分析する。

 最後の4つ目は、製造業D社でのグローバル標準テンプレートの開発とロールアウトのケースだ。日本と海外拠点(米国・英国)の3拠点にDynamics AX 会計・販売を稼働させる案件で、本社がグローバル標準テンプレートを開発し、拠点側でローカル要件のアドオンを行っていく計画でスタートした。

 構築プロジェクトでは日立ソリューションズが日本拠点を統括し、海外拠点は日立ソリューションズアメリカ社がサブ統括で対応した。保守もその体制を継承したが、グローバル保守をサポートしている日立ソリューションズインド社がリモートで参加している状況だ。
 このプロジェクトは、クラウド型サービスとして1インスタンス&マルチカンパニー構成を実現し、日立ソリューションズの海外統括力をふんだんに活用した本格的なロールアウトプロジェクトを達成した事例となったが、一部に海外拠点への統制上の課題も残した。加藤は、「お客様側と同時に、海外拠点のベンダーをどのように統括していくのかも非常に重要だと理解できた事例になった」と述べる。

 これら4つの事例から、「従来は地産地消の生産拠点グローバル化から、グローバル最適地生産の追求へと環境変化が起こっており、これまでのスピードアップから、スピードアップ+柔軟性が必要とされている。しかし企業のリソースは有限であるため、今できる対策としてはグローバル標準化による効率向上と、個別対応ではないグローバルIT戦略が求められている」と加藤は総括した。

グローバルロールアウトは国内ITプロジェクトと異なる観点で検討する

 次に、グローバルロールアウトの基本戦略について考察した。グローバルロールアウトの場合、システム上の考え(インスタンス設計、システムフレームワーク設計、グローバル標準モデル設計)だけではなく、体制上の考え(ガバナンス統制、ベンダー選定)や、運用上の考え(グローバル保守、グローバル標準モデルの保守)なども国内ITプロジェクトと異なる観点を加えて検討するべきだと加藤はいう。

 システムのインスタンス設計では、グローバルロールアウトのスコープ(地域)・対象業務特性などを十分に考慮することが重要となる。各拠点単位にサーバーを配置する方法や、グローバルでITを1インスタンスに統合する方法もあるが、日立ソリューションズではリージョン単位にインスタンスを分割し、拠点に近いタイムゾーンで稼働環境を配置する方法を推奨している。

 システムフレームワーク設計については、グローバルシステムはグローバルテンプレートによる標準化を図るとともに、各拠点のローカル要件も無視できないため、Dynamics AXの「8階層フレームワーク」を活用した「階層管理可能なグローバルシステム基盤フレームワーク」でローカライズを実現する。
 グローバル標準モデル設計は、グローバル共通化すべき(+できる)業務機能を実現するためのものだが、最初から完璧なグローバル標準モデルを定義することは難易度が高いため、簡易PoC(適合性評価)によるローカル標準モデルのスコープを早期に確定することが重要になる。
 体制のガバナンス統制では、企業側は本社にとりまとめ体制を構築し、海外拠点の業務・事情・状況などを把握した上で適切な判断を下して統制することや、現地拠点ベンダーに丸投げせずにグローバル標準モデルを統制管理することなどが重要だという。また、ベンダー側は顧客対応のグローバルアカウント体制を構築し、顧客の計画を世界共通に追従するガバナンス運用に加え、ローカルベンダーを統制しグローバルプロジェクトとして一枚岩で運営するガバナンス力が求められる。
 運用のグローバル保守では、24時間対応可能な体制、サービスレベルの均一化、大幅な保守運用コストの低減を実現するため、1)グローバル保守拠点の1本化、2)タイムゾーンを考慮した管理リージョンの定義、3)リージョン内の最大時差を2~3時間とする、などの対策が重要だという。

グローバルロールアウトでは各拠点の課題や固有案件の統合的管理が必要

 続いて加藤は、グローバルアカウントプロジェクトのイメージについて言及した。日立ソリューションズのグローバルロールアウトプロジェクトの基本的な流れとしては、グローバル標準テンプレート開発フェーズ(要件定義アプローチ→要件定義評価ポイント→要件定義の統制)、グローバル拠点ロールアウト展開フェーズ(Waveアプローチ→固有要件アプローチ)、グローバル運用フェーズ(グローバルテンプレートの成長)などと定義しており、各拠点の課題や固有案件を統合的に管理可能な活動が必要だという。

 グローバル標準システムの要件定義作業の流れとしては、1)業務標準化とシステム要件の策定、2)モデル拠点の選出と業務プロセスの標準化、3)さまざまな業務課題への対応策を策定、4)グローバルテンプレートの業務要件とシステム要件の作成といった流れを示した。また、要件定義の参加メンバーとしては事業体ごと、拠点ごとの責任者が合議制で要件を決定することが重要で、コーポレート責任者、ビジネス責任者、ローカル責任者を任命することが鍵になるという。

 グローバルテンプレートの展開については、Waveアプローチ(各国への展開)を進め、Waveを重ねるごとにグローバルテンプレートをアップデートしていく。その際、各国インスタンスへの展開においてガバナンスの効くベンダーの選定が最も重要だという。また、固有要件精査のアプローチを行う時にアプローチ手法によりカスタマイズの内容を分類・評価し、それに基づき固有要件精査の結論を出して責任者の判定を受けるようにする。

「その際、適切にジャッジできるかなど実運用のハードルが高いが、『振分基準』と『運用の仕組み』を最初に用意しておくことが大切」と加藤は指摘する。

グローバルITでさらなるスピードアップと柔軟性を実現するための施策

 日立ソリューションズのDynamics 事業はワールドワイドで1500名以上の体制を持つとともに、米国に「グローバル統括推進センター」を組織し各拠点を統制管理することで、必要な拠点に必要なタイミングで体制化する取り組みを行っている。
 また、Dynamics AXの機能を拡張・補完するテンプレートやソリューションも充実しており、ISV(独立ソフトウェアベンダー)が開発したAXテンプレートや日立ソリューションズ開発のAXテンプレート、日立グループのパッケージ製品群と組み合わせるハイブリッドソリューションのほか、AX対応業種テンプレート(一部計画)、グローバル複数拠点を対象としたグローバルシステムの保守サポート(日立ソリューションズインド社が行っているワールドワイドを対象とした24時間のDynamics AXに関わる保守サービス『Managed Service』)なども用意している。

 最後に加藤は、グローバルITでさらなるスピードアップと柔軟性を実現するための施策として、「グローバルテンプレートの標準化とグローバルIT基本戦略は1つの有効な施策であり、ベンダーや技術選定、グローバル保守は国内ITとは異なることを認識すべき。また、グローバル/地域それぞれの層別の標準化や、グローバルベンダーによる本社/拠点の統括機能を活用することが必要」と念を押し、セッションのまとめとした。

【日立ソリューションズセッション2】
グローバル製造業のためのコストマネジメント 原価企画ソリューション

福手 健二
株式会社日立ソリューションズ
産業ソリューション本部
主任技師 福手 健二

 このセッションでは、精緻で実現性のある“勝てるコスト”を作り込む活動を支援するコストマネジメントソリューションと、原価企画パッケージ「CostProducer」について、いくつかの製造業事例を交えて紹介した。

世界最適化生産時代のコストダウン戦略には製品軸でのコストマネジメントが必須

 冒頭、福手は、「グローバル時代の経営環境は、世界規模の需要変動や価格競争の激化、為替レートの変動、原材料調達コストの変動、製品ニーズの多様化、生産コストの高騰などでコストマネジメントが難しくなっている」と指摘する。その状況の中、実際の対応は、企画段階でコスト算出の基準値(生産活動の原単位、部材単価、スタンダードタイムなど)が各拠点ばらばらで精査できず、利益計画の見直しに対して迅速かつ正確なコストマネジメントができないほか、海外拠点を含めた膨大な基礎データを元に従来の手作業でのExcel集計や試算などをすることはもはや不可能になっているという。
 そのため、地域・技術・製品戦略効果を反映した事業・利益計画の作成や、製品企画・開発段階からの原価企画マネジメントの強化、為替変動を見越した営業戦略に基づく精度の高い営業見積の作成、グローバル調達や複数社購買などのコストダウン施策の推進などが必要となる。

「世界最適化生産時代を迎え、コストマネジメントの要件が変化しているため、市場が製品売価を決定する時代のコストダウン戦略立案には、製品軸でのコストマネジメントの仕組みが必須」と福手は断言する。

製造コスト低減に貢献するのは製造段階ではなく企画・開発の段階

 そこで、日立ソリューションズが考えるコストマネジメントソリューションの概要について紹介した。福手は、コストマネジメントソリューションを「利益を創出するための仕組み」と表現する。グローバル時代の原価企画システムは、経営環境を睨んだ製品利益計画の立案、営業戦略に基づく売価見積、原価企画によるコスト作り込み、調達VE推進など、製品利益を確保するための業務基盤が重要だという。

 製品利益計画策定には、経営可視化による経営トップのタイムリーな意思、本社事業計画案作成やローリング期間の大幅な短縮、拠点の納得感を高めるための情報共有などが必要になる。

「今や製造コスト低減に大きく貢献するのは製造段階ではなくSOP(Start Of Production:量産開始)前の企画・開発の段階」と言い切る福手は、長年のコスト低減策により量産以降の原価改善は一般的に製品原価の20%しか改善できないとし、製造段階でのコスト改善期待値には限界が見えているという。「事業展開の多様化により設計開始から開発・生産準備段階でコスト改善の可能性が最も増加する」と指摘する。
 そのため、原価企画の業務プロセスでは、製品企画・開発・調達・製造に関わる多くの部門と協力して効率的に「事業成立のシナリオづくり」や「目標達成のシナリオづくり」、「原価改善の具体的な活動」を行うことが課題になっているという。

 CostProducerは、Step1:製品別の利益計画の策定(新製品の利益計画シミュレーション。製品の生涯損益の見える化による利益計画)、Step2:目標原価の設定(部品表ベースまで展開した目標原価の設定)、Step3:原価造り込み活動(VE活動テーマと目論見値の設定。目論見値の積み上げ)、Step4:目標到達度の確認(目論見値を実施難易度別に積み上げ、評価。活動計画の進捗管理と活動フォロー)といったPDCAサイクルを原価企画データベース上で回すことで、原価企画業務のフレームワークとして機能する。
 また、原価企画データベースと連携することで部材コストダウン活動も支援する。部材コストダウン効果の高い部材や新規部品を抽出・選定し、仕入先に見積依頼し、その見積回答を製品原価レベルで比較することでコスト改善効果を試算するなど、調達業務プロセスの一連のPDCAサイクルをカバーする。
 さらに、CostProducerは営業見積業務も支援する。見積依頼の受領からその情報を登録し、見積依頼情報の変化点を管理した上で原価企画結果に営業目論見を反映した見積情報を作成し、見積の妥当性評価、見積回答の履歴管理などで業務精度向上や作業工数削減に貢献するという。

コストテーブルを時点管理することで整合性のあるコスト積み上げを実現

 次に、福手はCostProducerの活用事例を紹介した。「原価企画の業務は多くの企業でExcelを使って管理しているケースが多い。しかし、グローバル化が進むようになると海外拠点の数字を集めて比較することが必要になり、その集計だけで大変な作業になる」と福手は指摘する。

 ある企業では、中国、米国、ブラジルの生産拠点を1つのプロジェクトとして捉える国際分業に対応した原価企画業務基盤をCostProducerで構築した。原価企画の活動単位を複数の生産拠点を横断するプロジェクトとして管理し、プロジェクト内の関連拠点がそれぞれ原価見積を行い、最適コストで作り込みを推進する。具体的には、プロジェクトごとに「材料時点」、「賃率時点」、「為替時点」などのコストテーブルを立体的に時点管理することで、適用基準を統一し、整合性のとれたコスト積み上げを実現している。ここまでの処理はExcelでは難しいという。
 また、調達VE活動支援としてCostProducerを活用し対象部品の選定と部品共通化を推進した企業のケースでは、部品構成の中で単価未取得の部品を抽出し、優先的に見積取得すべき品番を特定した後、過去類似部品の単価を参照しながら目標単価を設定。その目標単価をベースに仕入先各社に見積依頼し、各社の回答を回収する、といった流れを作った。

 この企業はコスト改善対象の選定も行った。製品グループやプロジェクト単位を範囲とした調達部品金額ランキングや、類似部品との調達単価の乖離が大きい部品調達金額ランキングを参考に、コスト改善効果の大きな部品の見積を仕入先に依頼し、その回答を比較・検討して平均単価を原価企画データベースに登録する。

 さらに、共通部品・ユニット、生産地違いの同一部品などに関しても原価企画データベースを活用して部品共通化シミュレーションも実施している。
 また、ある自動車部品メーカーのケースでは、見積依頼情報の変化点管理にCostProducerを活用。顧客との折衝と連動した「設計原価」と「営業見積」の時系列管理および見積の前提条件(図面・企画台数など)、見積、原価目標、VEテーマなどをセットで履歴管理している。見積も標準原価率や原価企画結果を使用して費目別原価を算出し、営業目論見を反映した顧客提示見積書を作成するとともに、見積管理画面で折衝経緯も容易に把握できるようになったという。

グローバル対応戦略決定を効率化するためのコスト情報の整備と活用

 以上の内容から、福手は、グローバル環境下でのコストの作り込みにおいて、1)製造原価のみならずサプライチェーンコストを含めた製品軸のコストマネジメントにシフトすべきであり、2)その上で国際分業のリスクを織り込んだ利益計画・原価企画の実践、3)早期の段階での利益目標設定と目標原価の作り込み、4)グローバル・共通化推進を意識した調達VEの実践、5)コストダウン施策の共有促進やフォロー・見直しの徹底と戦略的売価の実現が重要だと指摘した。

 最後に、福手は「経営環境の変化やグローバル化にともなってコストマネジメントに対する重要性が高まっている。原価企画から原価管理に至る大きなPDCAサイクルを回しながら確実に利益を生み出す仕組みを構築し、グローバル対応戦略決定を効率よく行うためのコスト情報の整備と活用が求められている。日立ソリューションズはものづくり日本をIT技術のプロフェッショナルとして積極的に支援していく用意があるので、皆様からのコストマネジメントに関するご相談をお待ちしている」と語りかけ、セッションを終了した。

【基調講演】
グローバル時代における経営戦略

平野 正雄 氏
早稲田大学ビジネススクール
教授 平野 正雄 氏
【平野正雄氏プロフィール】

1987年から20年間にわたり、マッキンゼー・アンド・カンパニーに勤務。経営コンサルタントとして、幅広い産業分野でのプロジェクトに従事。この間、1998年から2006年までマッキンゼー日本支社長。2007年にカーライル・グループ日本共同代表。日本企業に対するプライベート・エクイティ投資を実行。現在、早稲田大学ビジネススクール教授。

 基調講演では、早稲田大学 商学学術院(ビジネススクール)教授の平野氏がコンサルタントや投資家としての原体験に基づき、グローバル時代における経営戦略についてマクロの視点と先端的企業動向を紹介した。

今日のグローバル化は3つの革命要因が複合的に関与する巨大な変化のうねり

 冒頭で平野氏は、1970年~2010年における日本、米国、世界全体のGDP成長率推移をグラフで示しながら、「1970年からバブル崩壊の1990年までは日本の成長率が高かったが、次の10年を見ると米国が高い成長率を維持した時代となった。重要なことは、この間に米国発のITやインターネットの普及、金融革命などの大きなイノベーションが発生し、そこに中国を筆頭とする新興国経済の拡大が重なることで、企業の経営環境は激変したことである。それを“3つの革命”が複合的に関与する巨大な変化のうねりであり、グローバル革命と表現する。3つの革命とは、新興国革命、金融革命、デジタル革命である。それらは、1)政治的要因:中国の改革(1976年)、冷戦終了(1989年)や、2)制度的要因:ブレストンウッズ体制の終了(1971年)、EUROの誕生(1990年)、GATTからWTOへ(1995年)などのほか、3)技術的要因:デジタル革命開始(1985年)、インターネットの台頭(1995年)、金融工学の発展(1987年)などが同時並行的に発生することにより、1990年以降に巨大な経済構造、そして企業の経営環境の変化が起きたのである。」と説明した。

1995年以降のグローバル市場における日本企業のプレゼンスは大きく後退

 平野氏は、3つのグローバル革命は企業経営の革新を促しているという。「日本は、自国の生活レベルや消費嗜好などが比較的似た米国や欧州地域の約5億人の均質なマーケットを相手に、アジア唯一の高品質ものづくり国家として安定的に成長することができた。しかし、それに過剰適応した結果、上述のグローバル革命への対応に出遅れて競争力を失っていった」と述べる。 また「日本は新興国をローコストの生産拠点としては活用してきたものの、巨大な消費者市場としての認識は必ずしも早くなかった。さらに気が付くと、家電製品やPC、半導体、自動車などの、従来日本が得意としてきた産業領域において競争力のあるアジア企業が急速に台頭することで、大きな打撃を受けてしまった」と平野氏は説明する。

 そのような状況の中で、1995年以降のグローバル市場における日本企業のプレゼンスは大きく後退していると平野氏は指摘する。世界の売上上位500社の構成を地域別に分析したデータによると、グローバル革命が勃興する頃の1995年に日本企業は35%ものシェアを誇っていたが、2000年には21%、ついに2014年には9%と下降の一途を辿ったのだ。その結果、日本国内でトップシェア30%の企業であれば、それだけで世界市場の10%のシェアに相当したものが、今や世界市場では3%程度にしか相当しないことを意味する。商品競争力的にも、事業規模的にも、日本で勝てれば世界に通用するという時代は終わり、日本企業は戦略の抜本的な見直しが必要であった、と平野氏は指摘する。

日本企業がグローバル革命に出遅れた3つの罠

 なぜ日本はグローバル革命への対応に手間取ってしまったのか。平野氏はその要因を3つ罠があったとする。1つ目は認識のギャップだ。例えば、新興国は日本の発展モデルを後追いすると思い込み、日本中心の事業展開から抜け出せなかった。あるいは、洗練された日本の消費者向けて開発された商品は競争力が高いと信じていたが、実際にはスペック過剰のいわゆる‘“ガラパゴス化”に陥った、ことなどを指摘する。

 2つ目は戦略の誤りである。例えば、戦略の主眼を相変わらず技術開発による製品高機能化においている間に、世界市場では競争の力点が経営判断のスピードと販売・マーケティング力にシフトしていた。また、垂直統合型の事業展開や技術のブラックボックス化にこだわったが、世界は水平分業・標準化が進展し、規模の経済が支配していたことなどは、戦略の誤りと言える。

 3つ目は構造問題。日本人が得意な“すりあわせ”は、しばしば専用部品過多や過剰品質を生み、暗黙知によるコミュニケーションも発想の同質化や人材育成コストの高騰を招いた。また、大きな内需は内向き志向や国内仕様優先につながり、終身雇用制は高固定費や知識・技術の陳腐化を招いた。

「つまり、これらの問題に共通するのは、日本企業のかつての強みの多くが弱みに暗転したということだ。だから今こそ企業変革が必要なのだ」と平野氏は危機感を露わにする。

世界企業はイノベーション、新市場開拓、M&Aを駆使して成長

 では、こうした新たな経営環境で業績を拡大し、価値を創造してきた企業は、どのような手段で成長を実現してきたのであろうか。平野氏は、日本企業を含む世界のトップ700社の成長を分析したマッキンゼー社による調査を紹介して、まず2000年代の10年間にトップ企業は年平均10%の高い売り上げ成長率を達成したことを示した。「さらに興味深いことに、その10%の内訳をみると、既成市場におけるシェア向上の貢献は1%以下で、約6%の成長はイノベーションもしくは新興市場の開拓などによる新たな市場創造によって、もたらされたものであり、残る約3%はM&Aによって“成長を買った”ものである。つまり、既存市場でシェア競争に血道をあげていても、それは殆ど企業の成長には結びつかない、ということだ。既存市場が成熟している企業が成長するためには、イノベーションによって自ら市場を創造するか、未開拓の新興市場に進出するか、もしくはM&Aを駆使することが必要なのである。このことは、IT産業の企業の成長パターンを比較すると明確だ。同時期にアップルは平均20%の高成長を実現しているが、その殆どはiPod、iPhoneなどのイノベーションによる市場創造によるものだ。そして、この間に約8兆円もの株主価値を創造している。

 一方、台湾のローコストPCメーカであるエーサー社は、PC市場におけるシェア獲得により、さらに高い27%ものの平均成長率を実現しているが、この間の株主価値は約3000億円しか向上していていない。他方、米国のHPはM&Aを繰り返して平均10%の成長と約4兆円の価値を創造している」と平野氏は示した。21世紀に企業が成長し、価値を創造するためには、イノベーション、グローバル化、そしてM&Aを駆使して、持続的に変革に取り組まなければならない、と指摘する。

経営者はWhat/Where/Howを明確にして変革を主導していくことが必要

 平野氏は、日本企業が変革を実現していくためには、長期的な戦略思考が重要である、と説く。その方法は以下の3つだ。

 1つ目は“What we want to be”(アスピレーション):我々はどのような会社になりたいのか、どのような価値を顧客や社会に届けたいのか、といったビジョンとその実現に向けた強い経営の意思を打ち出す。

 2つ目は“Where to compete“(事業構想の確立):我々はどこで戦うのか、どのような事業を行い、どのような事業は行わないのかという事業領域の選択を明確にすること。

 3つ目は“How to compete”(個別施策の推進):我々はいかに競合と戦い、顧客を獲得していくのか、いかに顧客の要望に応え、業績を伸ばしていくのかを徹底的に追及する。

 平野氏は、「日本企業はHowの個別施策は強いが、What(どのような)とWhere(どこで)が弱い。しかし、WhatやWhereを見直すことは過去を否定することにもつながるため、サラリーマン社長でどこまで踏み込めるかが課題だ」と指摘する。

 WhatとWhereを劇的に変化させた企業がある。フランスの国際的な食品関連企業DANONEだ。同社はかつてパスタソースやビールなど何でも販売していたが、トップの健康関連食品メーカを目指して、医療用栄養食品や乳児用栄養食品、水、乳製品などに選択と集中を行い、事業構造を大幅に変革した。また、オランダの伝統的化学会社のDSMも、成長率の高いライフサイエンス分野とマテリアルサイエンス分野を事業領域に定めて、事業構造を大きく転換し、業績を向上させた。

「How to competeはオペレーショナルな深掘りと現場の創意工夫、持続的改善のExploitation(開拓)である半面、Where to competeは事業領域の再定義や大胆な資源の再配分、事業買収や売却の活用といったExploration(探検)をめざすもの。経営者がWhatとWhereをしっかりと行うことが重要」と平野氏は重ねて強調する。「企業変革こそ経営者の仕事である。経営者が強い意志をもって過去と決別し、新しい企業体への進化を主導しない限り、企業は生き延びていくことはできない」というメッセージを残して、基調講演を終了した。

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