講演レポート:第89回 IoT時代、ビジネスはどうあるべきか|Prowise Business Forum in Tokyo|システム構築やトータルソリューションをお探しなら、日立ソリューションズをご利用ください。

株式会社 日立ソリューションズ

Prowise Business Forum in TOKYO 第89回

IoT時代、ビジネスはどうあるべきか
~モノからコトへ、加速するサービスイノベーションの実情~

 成熟化する市場への対応、コモディティ化からの脱却など、混沌の世を打破するためにさまざまな議論が繰り返されてきましたが、未だ決着することはありません。今、この現状を打破するものとして、IoTを軸にしたビジネスへの期待が高まっています。IoTはビジネスモデルそのものを変化させるインパクトがあり、イノベーションと言える新たなビジネスが各社より誕生しつつあります。この現状を捉えると、いち早くIoTに着手することが競合に打ち勝つ一手になると言えます。その先駆けとして、製造業の保守メンテナンス事業はIoTを駆使して急速に発達しています。製造業の保守メンテナンス事業には新たなビジネスのヒントが隠されているのではないでしょうか。
 本フォーラムでは、保守メンテナンスの事例から、ITで拡がる可能性を提案し、IoT時代のビジネスがどうあるべきか考察しました。

開催概要

日時 2016年9月1日(木) 14:00~17:30 (13:30 受付開始)
会場 東京都品川区東品川4-12-7
日立ソリューションズタワーA 4F 講堂
主催 株式会社日立ソリューションズ

【日立ソリューションズセッション1】
国内製造業のサービス事情
~保守メンテナンス業務改善事例に見るサービス化のポイント~

江角 忠士
株式会社日立ソリューションズ
産業ソリューション本部 第4部
主任技師 江角 忠士

 日立ソリューションズセッション1では、多くの国内製造業が抱えている保守・メンテナンス業務の課題を最新技術でどのように解決し、どのように変革しているのかについて、事例を交えて紹介した。

保守・サービス部門が生き残るための2つの課題

 国内製造業の保守・サービス部門を取り巻く現状について、江角は大きく3つの視点で課題を分析した。1つはグローバル化の進展。少子高齢化による国内市場の縮小、急成長する新興国市場、海外メーカーの脅威などが要因となる。2つ目は労働市場の変化。国内人口の減少、国内労働力の減少(少子高齢化による若手労働力の不足)、多様な国籍の人材を雇用する機会の増加などが影響する。3つ目はデジタルテクノロジーの進歩。バーチャルコミュニケーションの進展、モバイル端末の普及、コンシューマライゼーション(一般消費者向け技術の企業内活用)の一般化などの影響が考えられる。

「付加価値が『もの』から『こと』に移り、ものを作るだけでは商品が売れず、生き残れない時代に突入している」と語る江角は、保守・サービス部門における課題を、(1)経営視点:サービタイゼーション(製造業のサービス化)に代表される新しいビジネスの創生、(2)現場視点:従来からの保守・サービス実務、現場効率化課題への対応の2つが考えられるとした。

 また、経営層からはコストセンターからプロフィットセンターへの転身が期待される一方で、事業部門からは継続的な保守・メンテナンス業務の効率化が求められ、板挟み状態の閉塞感が増しているという。

内向き投資のIoTが顧客満足度の向上という外向きの投資へと変化

 そこで江角は、経営視点での製造業におけるビジネスモデルの変革について論じた。新たなビジネスモデルの例としては、インダストリー4.0(第4次産業革命)ではお馴染みとなったスマートファクトリー(製造ラインの機器をネットワークでつなぎ工場内の稼働状況を可視化・最適化する考え方)や、個別仕様品の大量生産(マスカスタマイゼーション)、製造業のサービス化(収益源が製品販売から保守などのアフターマーケットおよびサービス型のビジネスモデルへシフトする考え方)などがあり、その中心となるのがIoTであるという。

 IoTの活用状況に関して、最近のあるグローバル市場レポートによると、現在IoTを活用中の業界は、公共事業、石油・ガス、製造がトップ3になる結果となった。それを踏まえて江角は、「監視・管理が必要な資産および設備(プラントや工場設備など)が事業に直接的に関係し、利益に貢献する業界ほどIoT採用率が高い」と分析する。

 また、同レポートで、現在IoTを利用している目的については、「ビジネスオペレーションの効率向上とコスト削減」がトップとなったが、一方で今後12ヶ月以内にIoTを導入する目的においては「カスタマーエクスペリエンスの強化」がトップとなっており、江角は「従来は社内プロセスの最適化など内向きの投資として考えられたIoTが、今後は顧客満足度の向上といった外向きの投資へと変わりつつある」との見方を示す。

 では、国内のIoTの状況はどうか。経済産業省の資料によると、国内の製造業でIoTの活用は拡大が見込まれているものの、現状は大手企業での活用に留まり、先進的な取り組みは限定的であること、製造の各プロセスで活用状況に差があり、「設計開発」「生産」に比べ予知保全や運用サービスなどの「運用・保守」ではほとんどIoTの投資が進んでいないことなどが報告されている。

 江角は「国内のIoTは、運用・保守といったコスト部門への投資に相当の遅れが見られる」と述べる。

ジェットエンジンの「推力」を売るロールス・ロイス社

 前述のサービタイゼーションの先進事例として、ロールス・ロイス社の「Power By The Hour」が有名だという。これはエンジンの出力と使用時間に応じてエンジンの利用者(航空会社)に利用料金を請求するという従量課金サービスで、エンジンを販売するのではなく「ジェットエンジンの推力」を売るというビジネスモデルである。

「こうしたサービタイゼーションを実現するためには、センサーによってエンジンの稼働状況を正確に把握し、稼働に応じた課金の仕組みをしっかりと作ることと同時に、保守・メンテナンス業務においては消耗品や交換部品の種類と数量、整備士の配置や人数などを全てロールス・ロイスが担い、稼働実績に基づく適切なタイミングでの整備とリソース管理が求められる」と江角は補足する。

 また、IoTを活用した工場ラインの設備シェアリング事例も紹介した。設備所有会社A社は、自社の保有する大型加工機械のスペックや稼働予定を公開し、加工依頼会社B社からの依頼に応じる形で加工サービスとして共有・提供することで、インダストリー4.0でいうところの「つながる工場」を実現し、自社設備の稼働率向上と設備投資の効率化を図ることに成功した。それにより、社外向けのサービス品質と能動的なメンテナンスが求められるようになったという。

故障発生の予測モデルをパッケージ化してサービス品質の均一化を実現

 次に、江角は現場視点による保守・サービス実務や現場課題への対応について考察した。保守・サービス部門に求められている課題は大きく2つあるという。第1は、サービス品質を維持しつつ業務量を減らすコスト低減だ。その施策には、(1)プロアクティブな保守・サービスの実現と、(2)適切なスキルを持つ要員をタイムリーにデリバリーすることが必要となる。

 (1)のプロアクティブな保守・サービスでは、設備に配置した製品センサーからのデータを機械学習させることで故障発生の予測モデルを構築し、予防保守の対象となる機器や予防保守のタイミング、保守内容、修理部品、作業チェックリストなどをパッケージにして保守員に作業指示を出すことで、サービス品質の均質化と1度の訪問での作業完了をめざす。

 また、(2)の適切なスキルを持つ要員をタイムリーにデリバリーするとは、リソース(保守員・車両など)やスキル、スケジュールを見える化し一元管理することで、移動時間の削減や稼働率の向上、負荷の軽減などをめざすことであり、スマートデバイスなどを活用し、保守業務の効率化とチェックリストによる作業ミスの抑止を実現する。

 その事例として、日立ソリューションズ・アメリカでは、パイプラインの修理・メンテナンス・分析サービスを提供する企業に対し、サービスオーダー生成~保守作業~請求書発行までの一連の作業をシステム化する支援を行い、全社リソースの可視化や生産性向上、業務処理量の増大を実現することで、緊急配送軽費の削減や設備稼働率の向上が図られたという。

 さらに、あるATM(現金自動支払機)メーカーは、海外保守拠点で勘に頼った対応によりムリ・ムダが発生していたが、顧客満足度の向上が実現できたという。

保守員のセールス・パーソン化が有効な営業支援になる理由

 課題の第2は、プロフィット部門化(売上/収益への貢献)である。その施策には、(3)自社部品販売による売上拡大、(4)保守員のセールス・パーソン化などがある。

 (3)の自社部品販売による売上拡大について、ある企業の例では、保守サービスと自社部品の売り上げが全体の75%と想定されていたものの、実態は復旧優先で他社部品の調達による修理が行われた結果35%に過ぎず、1機械あたり2億円の販売機会損失につながっていたという。そのため、ビッグデータ分析などによって自社部品売上確保と計画外停止の抑止による改善の方向性につなげようとしている。

 また、(4)の保守員のセールス・パーソン化については、保守サービス時の“ついで営業”や情報収集/蓄積によるニーズのヒアリングで有効な営業支援が可能となる。

「保守員が営業より有効な理由として、定期的な訪問が可能で、他社の機器情報を収集しやすいこと、顧客とのコンタクト時間の長さなどがあるが、モノを売るというマインドを養成しないとセールスにつながらず、営業とのコミュニケーションがなければ情報が有効に活かせないという問題もある」と江角は指摘する。

 そのため、CRMなどで、営業が顧客にどのような提案をしているか、保守員が顧客の機器にどのような保守・メンテナンスをしているか、コールセンターがどのようなクレームを受けているかを一元的に登録することで、情報の共有化が可能になるという。

 その後、「Microsoft Dynamics CRM フィールドサービス」を活用した、お客様→コンタクトセンター→管理者→サービスエンジニア→管理者→お客様の流れを想定したデモストレーションを紹介した。

 最後に、江角は、「日立ソリューションズでは、サービスエンジニアの技術力とIoTに代表するテクノロジーを組み合わせれば、より高付加価値のサービスを実現できると考えている」と語り、自身のセッションを終了した。

【日立ソリューションズセッション2】
フィールド業務のスマート化はここまできている!
~IoT、ウェアラブルデバイス等を活用した事業価値向上~

高見 順吾
株式会社日立ソリューションズ
通信サービス本部 第1部
主任技師 高見 順吾

 日立ソリューションズセッション2では、フィールド業務のスマート化について、日立ソリューションズが提供するフィールド業務ソリューションやスマートグラスの活用による今後の可能性などについて紹介した。

先端技術を活用することでフィールド業務のあり方そのものを刷新

「オフィスから始まったスマート化はその後フィールドに拡大し、フィールド業務のスマート化として絶賛進行中である」と高見は強調する。オフィス業務のスマート化は、まるで自分の席にいるかのような環境でどこにいても仕事ができることをめざすのに対し、フィールド業務のスマート化は、先端技術を活用することでフィールド業務のあり方そのものを刷新し、ワークスタイルの変革をめざす点が異なる。

 では、今なぜフィールド業務支援が注目されているのか。それについて、(1)フィールド業務支援を可能にする技術やインフラの整備。スマートデバイスの普及や移動体通信網の整備とサービス拡充、IoTやAR(拡張現実)などの先端技術が進歩してきたこと。(2)市場に於ける社会的背景の高まり。熟練技術者の大量退職による減少、社会資本や設備の老朽化、東京オリンピック・パラリンピックを契機とした建設事業活性化、コンプライアンスへの対応などによる需要が急拡大していること。(3)そもそもオフィス業務に比べIT導入が遅れていることなどが要因にあるという。

 そこで高見は、ウェアラブル型のスマートグラス(ハンズフリーでさまざまな情報を取得できる透過式のメガネ型ウェアラブル機器)を活用したデモストレーションを披露した。スマートグラスを介して、オフィスに在籍する熟練者とフィールドで作業する現場担当者が、作業視点の映像でリアルタイムに共有でき、文字や画像だけでなく、手順書や作業終了後のイメージ写真等をスマートグラス上にAR表示させることで、これまでのように現場で直接マンツーマンで指示を出さなくても、遠隔での作業支援や注意喚起が実現可能なことを実演。また、部品ピッキングの例では、作業内容を事前に手順化するとともに、倉庫の部品棚にARマーカを付与し、それらをスマートグラスに表示させることで、誰でも効率的なピッキング作業を可能にするイメージも紹介した。

 こうしたウェアラブルデバイスのメリットとしては、(1)ハンズフリーで作業を阻害せず情報確認が可能になる。(2)映像共有によって熟練者が複数の現場担当者に対し遠隔作業支援が可能になる。(3)作業証跡を画像・動画・音声で記録しエビデンス化が可能になるといった点を挙げ、ウェアラブルデバイスは発展途上ではあるものの今後の可能性が非常に楽しみな分野であることを強調した。

日立ソリューションズが提供する「フィールド業務ソリューション」

 次に高見は、日立ソリューションズが定義するフィールド業務について論じた。「フィールド業務とはオフィスから離れて行う作業の総称で、あえていえば『作る』業務、『守る』業務、『取る』業務の3つに分類できる」と高見は説明する。作る業務とは工場・プラントやビル建設などの施工現場作業、建設工事や設備設置箇所などの現地調査作業などをいう。守る業務とは設備点検やビルメンテナンス、産業用機械の保守など現場に赴いて保守・メンテナンスを行う作業のこと。そして、取る業務とは情報収集を意味し、営業活動や電気・ガスのメーター検針、出張査定などが考えられ、非常に裾野の広い分野になるという。

 日立ソリューションズが提供する「フィールド業務ソリューション」は、フィールドとオフィスをシームレスにつなぎ、作業効率化や高品質化を提供するもの。案件管理、報告書作成(タブレットによる業務報告システム「快作レポート+」)、文書管理(ドキュメント・文書管理システム「活文」)、進捗管理(プロジェクト管理システム「SynViz S2」)、地図情報連携(空間情報ソリューション「GeoMation」)、ウェアラブル活用などの各機能を必要に応じて組み合わせて利用することで、作業担当者は現場にいながら報告書作成や必要な書類の閲覧、精度と信頼性の高い報告業務ができる一方で、管理者や熟練者はオフィスにいながらその現場の状況や作業進捗が把握でき、高品質な現場支援も可能になる。

「フィールド業務ソリューションは日立ソリューションズグループの豊富な導入実績を持つパッケージサービスを組み合わせたもので、全ての機能を導入する必要は無く、お客様の都合に合わせて必要な機能だけを導入したり段階的導入でスモールスタートしたりすることもできる」と高見は説明する。

熟練作業者の作業をコンテンツ化し技術力向上と品質平準化を実現

 そこで、フィールド業務ソリューションの具体的な課題解決イメージについて紹介した。1番目は作業の非効率性。従来は事務所に戻って報告書を作成したり、案件に紐付いた作業進捗が可視化されていなかったりした案件も、スマートデバイスを活用することで現場での報告書作成が可能になり、その報告書と連動した作業進捗も更新できるようになる。それにより、報告業務の効率向上とタイムリーな情報共有による問題の早期発見、進捗の見える化による作業遅延の防止と最適な計画立案が実現できるという。

 2番目は現場での資料管理。現場作業においてかさばる図面や手順書を持ち歩く難点や、それに起因する資料紛失や情報漏えいのリスクが発生し得る状況も、資料の電子化とスマートデバイスによる安全なリモート参照、資料のアクセス権限・履歴管理による高セキュリティ化を実現し、また資料全体のライフサイクル管理までをも可能にする。

 3番目は熟練技術者の高齢化による減少。熟練者の技術・ノウハウ継承ができないことで、現場での作業手順が分からず、また少子化による若年労働者が減少するスパイラルを防止するため、手順ナビゲートによる業務支援や遠隔支援による適切かつ高度な作業指示により、全体での技術力向上と品質平準化を実現する。他にも、ウェアラブルデバイスに代表される先端機器を導入することによる職場魅力度の向上や、熟練者の卓越した作業内容を録画し教育コンテンツ化することで、作業の事前確認といった用途も今後は考えられる。

 4番目はコンプライアンス・安全対応。労働災害や事故発生時の対応遅れ、再発防止対策が機能していない状況を改善するため、事故をステータスごとに管理して可視化すると同時に、再発防止に向け事故内容情報を蓄積して分析する仕組みを作る。それにより、事故対応や解決の迅速化、発生した事故の管理・分析による再発防止を実現する。

フィールド業務のスマート化に有効なセキュリティ対策

 その一方で、スマートデバイスにおけるセキュリティ対策も重要になる。高見は「当社ではスマートデバイスに求められるセキュリティ対策には3点あると捉え、各対策に対してセキュリティソリューションを用意している」と紹介した。

 1点目はログイン認証、2点目は暗号化/持ち出し制御、3点目はリモートワイプ/ロック。これらのセキュリティ対策は、フィールド業務の内容に応じてセキュリティの強弱を自由に選択することができる。

 最後に高見は、「当社はこれまで培ってきた既存ソリューションと先端技術などを組み合わせて、お客様のフィールド業務をトータルに支援していく」と宣言し、セッションのまとめとした。

【日立ソリューションズセッション3】
IoT時代のビジネスの鍵は収益モデルにあり!
~会員管理、課金、決済システムの未来~

中村 勉
株式会社日立ソリューションズ
通信サービス本部 第4部
部長 中村 勉

 日立ソリューションズセッション3では、今後の拡大が予測されるIoTビジネスから、会員管理、課金、決済システムなどの収益モデルの将来像を考察した。

2000年代の通信事業者のサービス競争の再来

 ビジネスで何が起きているのか。中村は2つの変化について言及した。第1に消費モデルが所有から利用モデルに変化していること。個人消費が所有から利用へと遷移し、近年はカーシェアやブランド品のレンタルビジネスが盛況で、今後はさらにレンタルや付加サービス利用が加速されるという。また、法人ビジネスは従来、売り切りビジネスが主体であり、ターゲットは大規模な企業に限られていたが、近年は高額な機器を利用するモデルの登場により小規模な企業でも高額な機器を導入できる動きが出てきた。

 第2にSimの再販や電力自由化、ガス自由化など異業種への参入が活発化していること。放送・通信・エネルギー事業者などでは本業において競合する他社との競争力強化と既存顧客の囲い込みを狙い、異業種へ参入するケースが増加。また、産業・流通業者などでは売り切り主体のビジネスに加え、継続的な収入が期待できる継続課金サービスへの参入が増えているという。

「これらの変化の延長線上には何があるのか。それは、サービス・IoTなどの利用モデルの早期立ち上げと、異業種を含むサービス・価格などにおける他社競争力の確保につながり、1990年代後半~2000年代の通信事業者のサービス競争の再来が起きつつある。そこにIoTの答えがある」と中村はいう。

 通信事業者の大競争時代には、(1)多様なサービスを短期間に提供する。(2)魅力的なサービスや料金メニューを短期間で提供する。(3)顧客ごとの嗜好の分析と新サービスへの反映などが起こった。同じように、IoT時代で競争に勝つためには、(a)魅力的なサービスを短期間に提供できる基盤整備、(b)価格や割引など魅力的な料金メニューの提供、(c)顧客の嗜好分析のための情報蓄積と分析といった要素が必要になるという。

IoT時代にもサービス競争に対応できる会員管理・課金・決済システムが鍵

 次に、IoT時代に求められる戦略について掘り下げた。1990年代~2000年代に通信事業者は、「サービスの品質強化による差別化」や「販売力強化による競争力強化」、「利用シーン拡大による市場開拓」など、さまざまな顧客獲得競争を展開してきた。「そのノウハウをいかに有効活用できるかがIoT時代の勝者への近道」と中村は指摘する。

 サービスの品質強化の差別化では、通信事業者は通信の速度・エリアカバー率などの競争、ダブル定額やセット割などの料金体系、学割や年契約、割賦などの顧客囲い込みを行ったが、IoT時代も自社の強みである技術を軸とした魅力的なサービスやターゲットユーザーが魅力を感じる料金メニュー、顧客囲い込み施策による優良顧客獲得などが必要となる。

 販売強化による差別化では、通信事業者は自社ショップや販売代理店を全国に拡大し、代理店向け販売やインセンティブ強化による販売意欲の高揚を、また乗り換え特典による他社ユーザーの獲得などを実施してきたが、IoTでも自社で提供するサービスに適した営業施策、販売代理店や取次店の拡大、魅力的なサービス提供による市場獲得が重要となる。

 利用シーン拡大による市場拡大では、通信事業者は電話中心からデータへの拡大、業務向け利用による法人ユーザーの拡大、人だけでなく装置の中に通信モジュールを格納したM2M市場の開発などを行っており、IoTでも法人向けサービスの拡充から始まり、コンシューマ向けサービス化による拡大、デファクトな装置や施設への拡大へとシフトすることが予想されるという。

 中村は、「IoT時代で必要な戦略は、自社の強みを生かしたサービス化や、魅力的な料金メニューの提供と迅速な変更、販売チャネルの拡大施策、ターゲット市場拡大施策などが考えられるため、サービス競争に対応できる会員管理・課金・決済システムが鍵となる」と強調する。

会員管理・課金・決済業務をオールインワンで提供するBSSsymphony

 そのためのソリューションとして、顧客管理・課金・決済を行うための業務パッケージ「BSSsymphony」を紹介した。BSSsymphonyは会員管理、課金、請求、決済業務をオールインワンで提供するシステムで、マスタ設定のみで新サービスや新料金、割引額変更などへの対応が可能な柔軟性を持つほか、セット割りや年契約、キャンペーンなど複雑な割引を標準提供し、店頭販売や代理店販売、訪問販売、Web販売など多様な営業戦略に対応した機能も提供する。

 特徴は大きく4つある。1つ目は新サービスへの迅速な対応を可能にする料金マスタ設定の実現。2つ目はセット割や年縛り、顧客属性(年齢など)による割引など複雑な割引機能の標準提供。3つ目は多様な料金プラン設定への対応。4つ目はさまざまな販売チャネルへの対応など。

 最後に中村は、「今後BSSsymphonyは、多種多様な業態への展開や、フィンテック(IT技術を駆使した新たな金融サービス)への対応、SFA(営業支援システム)、CRM(顧客関係管理)、BPO(業務プロセスのアウトソーシング)との連携による付加価値拡大なども計画している。IoT時代における皆様のビジネスへの支援に役立てていただきたい」と語りかけ、セッションを終了した。

【基調講演】
IoT時代の経営戦略:バリューチェーンからレイヤー構造へ

根来 龍之 氏
早稲田大学ビジネススクール
研究科長・教授
根来 龍之 氏
【講師プロフィール】

京都大学卒業。慶應義塾大学大学院経営管理研究科(MBA)修了。鉄鋼メーカー、英ハル大学客員研究員、文教大学などを経て現職。早稲田大学IT戦略研究所所長、経営情報学会会長、国際CIO学会副会長、組織学会理事、CRM協議会顧問などを歴任。主な著書に『IoT時代の競争分析フレームワーク』(中央経済社,編著)、『ビジネス思考実験』(日経BP社)、『事業創造のロジック』(日経BP社)、『代替品の戦略』(東洋経済新報社)、『デジタル時代の経営戦略』(メディアセレクト)、『ネットビジネスの経営戦略』(日科技連)、『プラットフォーム最前線』(翔泳社,監修)、『CIOのための情報・経営戦略』(中央経済社,監修)などがある。

 基調講演では、IoTを含むデジタル化の本質について、レイヤー構造化という概念がもたらす戦略課題、そして業界別のレイヤー構造化の動向などについて論じられた。

コンポーネント化・モジュール化が進む自動車業界

 冒頭、根来氏は、デジタル化がもたらすものについて、「モジュール化」、「ソフトウェア化」、「ネットワーク化」の3つに分類できるとし、それらについて自動車業界を例に説明した。

 第1のモジュール化とは、部品が独立で設計でき、汎用化や標準化する現象をいう。自動車の場合は車体の台車部分、つまりプラットフォームやエンジン、トランスミッションなどの基本部分に取り入れられている。自動車の場合のプラットフォームとは、フレーム(もしくはフロアパン)、サスペンション、ステアリング、パワートレインなどが含まれ、1つのプラットフォームに対して複数の車種に適用することで開発コストを削減する効果が生じる。

「自動車メーカー各社、部品の共通化は急速に進みつつあり、車体の標準化以外にもコンポーネントの共有、コンポーネント内のモジュール化が進み、全体の多くの割合を占めるようになっている」と根来氏は話す。

 モジュール化の端的な例は、電気自動車で知られるテスラ社だ。その「モデルS」では電気モーターを構成する部品点数はわずか約100点といわれ、1万~3万点とされる内燃機関のエンジンと比べて極端に単純な構造になっている。

 第2のソフトウェア化については、ITの導入によってかなりの部分にまで浸透している。自動車製品のソフトウェア化も衝突防止システムやアクティブ・クルーズ・コントロール、車間距離維持システムなどのセンサーや制御のために使われる。

 ソフトウェア化やネットワーク化の前提になるのが部品の電子化である。ある資料によると、電子部品の使用比率はこの10年で約2倍に増えているという。根来氏は、「電子化とともにソフトウェア化、あるいはソフトウェアによる制御が自動車業界では進んでいるといえる」と話す。

 第3のネットワーク化についても、自動車業界では昔から進んでおり、ナビゲーションシステムなどはトヨタのテレマティクスサービス「T-Connect」や、ホンダの通信型ナビ「インターナビ・リンク プレミアムクラブ」などは歴史が長い。

「そこで注目しなければならない点は、ナビゲーションの世界に汎用機が入ってきていること」と根来氏は指摘する。車載情報端末にiPhoneを活用するシステム「Apple Carplay」が登場し、純正ナビ業界は戦々恐々としているという。

 根来氏は、「ネットワークにつながり、かつデータを収集しながら自動的に制御する自動運転技術などはIoTの典型的な世界」と述べる。

デジタル化製品のプラットフォーム化・ソフトウェア化・ネットワーク化

 次に、根来氏は製品のデジタル化について、さらに広く捉える形で考察した。それにより、IoTについてより多くの産業に共通のトレンドが見えてくるという。

 取り上げたのは玩具である。バンダイの「仮面ライダー・ライダーベルト」は世代が変わるごとにベルトの構造が変わり、最近ではベルト部分とそれに取り付けるコンポーネントの部分が個別に販売されることが多くなっている。ベルトを買うとコンポーネントも売れるため、ベルトがプラットフォームになり、以前の倍の価格でも売れるようになったという。

 この手法は他の商品にも流用されている。「妖怪ウォッチ」ではウォッチ部分がプラットフォームではなく、そこに差し込むメダルがプラットフォーム部品となり、Webサービスや携帯ゲーム機、アーケードマシンなどさまざまな遊具に再利用できる共通部品化を実現している。

 こうしたデジタル化製品のプラットフォーム化、ソフトウェア化、ネットワーク化は、携帯電話や音楽プレーヤー、電子リーダー、ゲーム機、活動量計、スマートグラス、VR(仮想現実)、クラウドPOS、監視カメラ、ロボット、モバイルペイメント、スマートサーモスタット、スマートロックなどにも組み込まれつつある。しかし、業界によってその進み方は大きく異なるという。

レイヤー構造化は最終消費者が各レイヤーに対して直接選択可能な世界を実現する

「このような傾向をどう捉えるか、産業構造にどんな影響を与えるかを考えることが重要となる」という根来氏は、レイヤー構造化という概念で考察した。

 レイヤー構造化とはコンピュータ業界の構造のように産業が変わっていくことだという。例えば、法人向けコンピュータ業界におけるレイヤー構造化は、業務ソフト、データベース、ミドルウェア、OS、ハードウェア、ネットワークのレイヤースタックによって成り立っている。そこではオープン化も進み、1つの企業で全てのレイヤーを提供するケースは少なくなっている。これをさまざまな業界に波及していくことがレイヤー構造化の本質なのだと根来氏はいう。

 電子書籍産業におけるレイヤー構造化は、電子コンテンツ、コンテンツストア、アプリケーション、ハードウェア・OS、通信ネットワークというスタックで構成されている。

「レイヤー構造化では最終消費者が各レイヤーに対して直接選択可能な世界になる」と根来氏は話す。しかしそれをバリューチェーン構造で見ると、最後のプレーヤーが提供するメニューから選択する形となるため、最終消費者はバリューチェーンの最終ステージでのみ選択可能になる。

 バリューチェーン戦略の成功例であるSPA(アパレル製造小売業)のユニクロは、商品企画をコア業務とし、店舗の運営、委託工場の完全買収を前提とした操業指導を実施することで、低コスト・高機能の特化型商品展開に成功している。しかし、店舗運営に大きな投資が必要であると同時に、商品の多様性は提供できず、同じモデルの競合他社に規模の競争でなかなか勝てない可能性もある。商品特化を前提に効率と規模で競争する構造だ。

 一方、レイヤーの統合化で成功したAppleは、iPhone/iPadとiTunes Storeの統合に加え、ハード設計、部品手配は自社で行うエコシステムとしての競争力・収益力を持ち、OEM生産ながらハードウェアの競争力も保っている。しかし、先行しないとエコシステムの規模でなかなか勝てない可能性もあり、多様性とプラットフォーム機能の独自性(商品の独占的魅力)の両立による競争に縛られる。

「ユニクロはバリューチェーン統合、Appleはレイヤー統合というべき」と根来氏はいう。

バリューチェーンのオープン化とレイヤーのオープン化の違い

 オープン化においてもバリューチェーンとレイヤーでは異なる。バリューチェーンのオープン化とは、家電メーカーで考えると川上では複数購買や汎用品の購入のことをいい、川下では販売チャネルのオープン化のことをいう。

 その成功例として、自転車ギアのシマノの場合は、ほぼ全ての自転車メーカーにギアを独占的に供給し、メーカー側もシマノのギアなしでは自転車を生産できない。ただし、シマノのギアを選んでいるのは自転車メーカーであり、消費者ではない場合があるため、消費者の選択による独占崩壊の圧力が直接的には効かない。独占維持には、メーカーとの共同開発や標準部品企業としての独自イノベーションの追求が必要となる。

 一方、レイヤーのオープン化とは上下でのオープン化を意味する。例えばスマートフォン産業におけるGoogleの場合は、コンテンツ電子化はオープン、コンテンツストアはGoogle Playがあるためセミオープン、OSはAndroid OSでクローズ、ハードウェアはオープン、ネットワークもオープンである。

 レイヤーのオープン化の成功企業にはMicrosoftのOfficeがある。ほぼ全ての消費者にアプリケーションを供給し、PCのプリインストールもあり、ネットワーク効果で成功した。しかも、Officeを選択しているのは消費者であってPCメーカーではなく、消費者の選択による独占崩壊の圧力がかかる可能性がある。消費者の選択変化のきっかけとなるのは、自社が参入するレイヤーとは関係ないレイヤー構造の転換(例:クラウド化)や、下層レイヤーの変化(例:タブレットやスマートフォンによるPCの代替)によるビジネスモデル上の矛盾にあるという。

レイヤー構造化の産業における戦略課題

 次に、レイヤー構造化の産業における戦略課題について、根来氏は3つの戦略を挙げる。1つ目はエコシステムの構造変革の戦略。自社が先導する新しいレイヤー構造を創り出して、他社と構造的に差別化する。

 2つ目はエコシステムの差別化戦略。どのレイヤー(上位か下位か)を自社で行うべきか、レイヤー統合型ビジネスモデルをどの程度追求するかが課題となる。

 3つ目は企業間連携の戦略。他のレイヤーに対してどの程度オープンであるべきかが問われるという。

 そこで根来氏は、エコシステムの構造変革の例を3つ示した。AppleはiTunes Storeというコンテンツストアレイヤーに参入し、ハードウェアと統合した。GoogleはGoogleAppsというクラウドサービスレイヤーに参入し、クライアントサーバー型ソフトウェアに対抗しようとしている。そして電気自動車用バッテリーのスタートアップのBetter Placeという企業はバッテリーレイヤーを自動車レイヤーからオープンにして電気自動車に参入しようとしたが、残念ながら失敗したという。

業界のイニシアティブを変革していくレイヤー構造化

 では、このレイヤー構造化が業界のイニシアティブをどのように変革していくのか。それについて根来氏は2つの業界を詳しく紹介した。

 1つは書籍業界。電子書籍の歴史は松下電器産業(現:パナソニック)が2004年に発売した「ΣBook」に遡る。しかし、日本の電子書籍は花開かず2008年に終了。それと入れ替えるようにAmazon.comの「Kindle」が登場し、そのリーダーを中心にビジネスが拡大していく。なぜこのようなことが起こったのか。そこにはAmazon.comのレイヤー戦略の成功があったという。Kindleリーダーをセミオープン化するとともに、電子コンテンツは独自フォーマットで提供し、ネットワークとハードウェアの一体化、通信費無料化などを実施した。根来氏は、「この事例は、ハードウェア戦略の勝利ではなくレイヤー戦略の勝利だ」と断言する。

 もう1つは自動車業界。ここでは、車両のモジュール化、車載情報端末のソフトウェア化、ネットワーク化により、レイヤー構造化が進展し、テレマティクスなどの上位レイヤーは分離が発生。各レイヤーを消費者が直接選択可能になった。また、今後さらにEV化が進めば制御がソフトウェア化するので、ハードウェア(車両レイヤー)の分離が進むことが予測される。例えば、ホンダはスマホ対応でオープン化し、テスラも車両制御OSをオープン化することで、自動車業界以外のAppleやGoogleなどの新規参入が行われ、産業全体のイニシアティブを取るレイヤーが変化していく可能性があるという。

 その結果、レイヤー構造化した自動車業界における戦略的課題としては、1)エコシステムの構造変革の戦略:OS層を握った会社がイノベーションの先導役になる可能性。2)エコシステムの差別化戦略:参入戦略(データ層への参入)と企業間連携の戦略(自社ハードウェアの情報をどの程度独占すべきか)が考えられるという。

 こうしたレイヤー構造化の進展・変化は、他の業界でも起こりつつあるという。根来氏は、スマートフォンによるレイヤー構造、SIMフリーによるレイヤー構造、インターネット広告のレイヤー構造、ゲームビジネスのレイヤー構造、テレビ事業のレイヤー構造、銀行ATMサービスのレイヤー構造、スマホ決済の浸透によるレイヤー構造など、業界別のレイヤー構造化の進展・変化について触れた。

 最後に、根来氏は、「レイヤー構造化における戦略では、全てのレイヤーに参入することは困難なため、どのレイヤーを自社が行うべきか、レイヤー統合型ビジネスモデルをどの程度追求するのかを明確にすることが必要で、企業間連携においても他のレイヤーに対してどの程度オープンであるべきかを認識しておくことが重要」と語り、基調講演を終了した。

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