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【平成の世にサムライを探して】  H2L株式会社 主任研究員/早稲田大学 人間科学学術院 助教 玉城絵美「世界的発明はどのようにして生まれたのか──身体と経験を共有できる『夢の装置』」

2011年に米『TIME』誌が選んだ「The 50 Best Inventions(世界の発明50)」に選出された「PossessedHand」。その開発に成功したのは、日本の若い女性研究者だった。電気刺激によって人の手を制御するという独創的な技術の本質や着想のきっかけについて、開発者である玉城絵美氏に聞いた。

遠隔地にいる人と「触覚」を分かち合う

玉城絵美(たまきえみ)プロフィール

1984年沖縄生まれ。
2006年に琉球大学工学部 情報工学科卒業後、筑波大学大学院システム情報工学研究科、東京大学大学院学際情報学府でロボットやヒューマンインターフェースの研究を行う。
米ディズニー・リサーチ社、東京大学大学院総合文化研究科などを経て、13年、早稲田大学人間科学学術院助教に就任。H2L株式会社の主任研究員でもある。

※黒字=玉城絵美 氏

──  「PossessedHand」とは、「操られる手」といった意味だそうですね。その仕組みをお聞かせください。

コンピューターからの信号を電気刺激に変換し、電極を通して腕の筋肉に伝えると、筋肉はその刺激を脳からの指令であると勘違いして、手の指を動かします。そのメカニズムを使って、ものをつかんだり、楽器を弾いたりといった行為を手に行わせる──。それが、PossessedHandの仕組みです。

──  誰の手でも動かすことができるのですか。

筋肉の欠損などがなければ、誰の手でも動かすことができます。ただ、筋肉には個人差があるので、まずその個人差をソフトウエアに事前学習させる作業が必要になってきます。

PossessedHandで手を動かす場合は、たくさんの電極が付いた2つのバンドを腕に巻きつけるのですが、それに電流を流し、その人の筋肉の特徴を読み取り、調整する作業を最初に行います。キャリブレーションと呼ばれるその作業を行うことで、手を自在に動かすことが可能になります。

もちろん、筋肉の「性能」にも個人差があるので、すべての人の手の動きが同じになるわけではありません。細かな動きを再現するなら、マジシャンの手が向いていますし、素早い動きを再現するなら、ピアニストの手が適しています。

──  全く新しい発想でこの技術を開発し、仕組みを構築したということでしょうか。

PossessedHand装着例(写真上)とPossessedHand操作画面(写真下)
PossessedHand装着例(写真上)と
PossessedHand操作画面(写真下)

はい。このような発想や仕組みで情報を人間の手に「出力」するという技術は、私が知っている範囲では他にいないと思います。

コンピューターと人間とのコミュニケーションは、一般に、情報の入力と出力によって成立しています。コンピューターに入力された視覚情報は、画像や動画などの形で出力されますし、聴覚情報は、スピーカーからの音声という形で出力されます。

一方、「人の身体の動き」という情報は、これまではほぼ入力一辺倒でした。例えば、人の動作をセンサーで認識してディスプレー上に再現するマイクロソフトの「Kinect」や、電極の付いた手袋から手の動きをコンピューターに伝える「データグローブ」は、いずれも入力のための技術です。一方、PossessedHandは、情報をコンピューターから人間の手に出力することを可能にしました。その点が、国内外から大きな評価をいただいている理由であると考えています。

──  この技術によって、具体的にどのようなことが実現するのでしょうか。

私が実現させたいと思っていることの一つは、「身体と体験の共有」です。

ここにAさんとBさんという2人の人がいて、それぞれがPossessedHandとデータグローブを着けているとします。Aさんの手の動きの情報はデータグローブで読み取られ、コンピューターにインプットされます。その情報をPossessedHandでBさんに伝えれば、Aさんの手の動きがBさんの手によって再現されることになります。同様にして、Bさんの手の動きをAさんの手で再現することも可能です。

さらに、PossessedHandは「触覚」をある程度共有することを可能にします。ものに触れると、手に微かな跳ね返りの運動が伝わりますよね。その運動の情報を相手の手に送ることで、実際にものに触れたような感覚を伝達するんです。

玉城氏
玉城氏

──  手の動きやものに触れた感覚を別の人と共有できるわけですね。

ええ。さらにこの双方向のアクションは、AさんとBさんが別々の空間にいても成立します。例えば、ニューヨークにいるAさんがものをつかみ、ものに触れた感覚を、インターネットを通じて日本にいるBさんに伝えることが可能です。

これまで、視覚情報や聴覚情報は、ネット環境さえあれば、世界のどこでも共有可能でした。そこに触覚が加わることによって、よりトータルな「体験」を共有することができる。それがPossessedHandの一つの可能性であると考えています。

──  身体を移動させずに、遠隔地の出来事を疑似体験することが可能になるということですか。

そうです。ですから私は、PossessedHandを、ドラえもんに出てくる秘密道具の「どこでもドア」のようなものと考えています。

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※2010年9月30日以前に公開されたコンテンツについては、本文中の社名は当時のもの(日立システムアンドサービス)となっております。
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