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情報システム部門の憂うつ-進化を求められるIT部門 その役割とシステム化構想力|システム構築やトータルソリューションをお探しなら、日立ソリューションズをご利用ください。

特集・コラム

第3回 業務プロセスを可視化する力 第3回 業務プロセスを可視化する力

業務プロセスを可視化できるドキュメントの重要性

 第2回では、超上流、上流設計をテーマに、初期仮説の重要性、ならびに、初期仮説を具体化し検証していくためにも業務プロセスの可視化が重要と締めくくりました。

 私は、2002年からアイ・ティ・アールのアナリストとして仕事をしておりますが、もっとも多くお受けするのがパッケージ/ベンダー選定プロジェクトです。こうした選定案件にかかわらず、初めてのお客様の場合は、当然ながら、最初はお客様を知ることから作業を開始しますが、汎用的な機能から成るパッケージを選定し、導入を成功させるためには、お客様の業務の特徴や固有性を見抜くことがなにより大事です。場合によっては、パッケージがまったく適さないケースもありますので、そういう場合はできるだけ早い段階で判断が必要です。また、パッケージを適用すべき業務分野とそうでない業務分野を見極めないとお客様の時間を無駄にしてしまいます。

 そこで、プロジェクトのご支援を開始してほどなく「貴社の業務のエンド・ツー・エンドを見渡せるドキュメントをお持ちではないでしょうか。たとえば、A3 1枚程度で貴社の業務の流れを大枠で把握できる資料を拝見できればと思うのですが」とお願いすることになります。エンド・ツー・エンドとは、end-to-endをカタカナで表記したもので、あまり一般的な用語ではありませんが、ITや業務プロセス可視化においては昔から使われており海外では定着しております。辞書を引くと、電話サービスで通信の発信から着信までの両端といった説明もありますが、端から端まで、すなわち業務の始まりから終わりまでを指します。つまり、一般的な企業では、販売を始点として調達、生産を経て、会計の月次・年次締めを終点と見ることができます。

 もちろん、保守サービス、アフターサービスが重要となる事業の場合、月次・年次といった締めのタイミングが終点とはいえませんし、販売の前の営業活動、マーケティング、その以前の製品開発、R&Dなど始点にも遡りがあり、システム化を検討する対象範囲(スコープ)によりある程度幅がでてきます。しかしながら、いわゆる基幹業務のプロセスとして、販売から会計に至る業務プロセスはほぼあらゆる業種に共通するものといってよいでしょう。しかし、残念ながら、これまでに多くのプロジェクトをご支援してきましたが、エンド・ツー・エンドを把握するために参考となるドキュメントをご提示いただく機会には一度も出会えたことはありません。

なぜ可視化は難しいのか

 これといったドキュメントがない以上、なにか参考となる資料をお預かりすることになるのですが、その際の定番が、システム構成図、システム関連図、業務フロー図といったシステム視点の膨大なドキュメント群です。最近は、J-SOX対応時に作成された大量の業務フロー図、業務記述書も増えてきました。しかし、システム視点のドキュメントはエンド・ツー・エンドを見渡すのには適しませんし、要件定義や基本設計といった初期の設計段階で作成された業務フローが最新状態を反映していることはまずありません。そして、ほとんどの場合、J-SOX対応時のドキュメントも同じような命運にあります。

 事業部門や本社部門のユーザーの方々は、所属する部署のエキスパートではありますが、全社を横断する最新の可視化ドキュメントを作成することはミッションではないでしょう。企業によっては、業務改革、ビジネス推進に特化した部署が設立されていることもありますが、そういった例外を除けば、可視化はIT部門の役割として期待されていることが多いと思います。それではなぜ、本来、全社の業務を横断的に見渡せるはずの、そして、見渡したうえで最適なソリューションを検討すべきはずのIT部門がエンド・ツー・エンドを可視化したドキュメントを持てていないのでしょうか。そもそも、なぜ可視化は難しいのでしょうか。可視化の難しさの本質を、以下の3点に集約してみました。

可視化の難しさの本質

 それでは、具体的に、ある企業が業務プロセス可視化をITベンダーに委託した際の成果物を見てみましょう。※図をクリックすると拡大されます。

図1 IT視点の煩雑なドキュメンテーション例

出典:ITR  © 2011, ITR Corporation All rights reserved.

図1 IT視点の煩雑なドキュメンテーション例

 図1は、一部のみを抜粋して編集していますが、全体像はこの10倍以上の面積にわたりさらに複雑でした。それを参考資料としてお預かりした私はひと目で匙を投げました。箱形が業務プロセスらしいのですが、一見しても業務の流れや順番が読み取れず、中途半端にシステムの画面、帳票、データのイメージが盛り込まれていたり、現状業務が部分的に省略されていたりします。その反面、ある部分だけが細かく掘り下げられていたり、先走ってシステムのロジックが入り込んでいたりするため、結果として、業務とITいずれの視点でも中途半端で不十分なものといわざるをえません。率直なところ、最後までどこが業務の始点でどこか終点なのか、そしてその間の流れを追うことができませんでした。

 もうひとつ例をあげましょう。今度は、J-SOXを担当したある監査法人が基幹システム刷新にあたり、業務プロセス可視化を行ったものです。※図をクリックすると拡大されます。

図2 縦レーン型可視化の典型例

出典:ITR  © 2013, 「企業IT力向上研究会」 All rights reserved.

図2 縦レーン型可視化の典型例

 図2の例では、こういったドキュメントが100頁以上ありました。A4 1枚で数個の業務プロセスを書いているのでどうしても量が増えてしまいます。そして、図1と同じようにシステムの画面、帳票、データのイメージも組み込まれているのに加え、縦にレーンと呼ばれる線が引いてあり組織や役割毎に区切ってありので、一見分かりやすいドキュメントにすら見えます。まさしく、組織を横断する業務プロセスに思えなくもありません。結論からいえば、このスタイルも業務プロセスのエンド・ツー・エンドを俯瞰できるものではありません。人間の能力には限界がありますので、100頁にも細分化された頁を透かして、そこから1枚の紙に業務を紡ぎだすことはできるものではありません。

どのように業務を可視化できるか

 それでは、どのように業務プロセスを可視化していけばよいのでしょうか。これが正解ということではありませんが、私なりに工夫した手法とそのポイントをビジュアルでご紹介します。※図をクリックすると拡大されます。

図3 業務プロセスが俯瞰できる可視化

© 2011, ITR Corporation All rights reserved.

図3 業務プロセスが俯瞰できる可視化

 図3は、私が作成したある企業の例で、4つの事業からビジネスが構成されており、A3 1枚で営業から経理、原価管理までの流れを見渡せます。全部で箱形が150個程度ありますが、記述ルールは①から③の3つだけ、そして使用する記号は箱形と矢印の2つのみです。経営者の方とディスカッションするために少しカラフルにしており、灰色の箱形は業務プロセスにおける課題をポスト・イットで貼りつけたイメージにしておりますが、通常はそこまでしません。この簡単なルールなら、ユーザーの方も問題なく書けますし、特別なツールも不要です。実際、図3は2時間程度のワークショップ2、3回程度でユーザーの方自らに書いてもらった原型をベースに仕上げますし、作成にあたってヒアリングもしません。これまで数多く実践していますが、3つのルールだけきちんと説明すれば問題なく短時間で作成できています。さらに、この図は誰でもエンド・ツー・エンドを読み取ることができます。

 「聞かなければ分からない」「書き方が分からない」「書いた人しか分からない」の3つの可視化の難しさは、発想を転換すれば解消できますし、そういった啓蒙をしていけるのは社内にIT部門を置いて他にはないと思います。次回は、業務プロセスの可視化を基に、システム化を構想する力についてご説明したいと思います。

浅利 浩一 氏の写真

浅利 浩一 氏

株式会社アイ・ティ・アール プリンシパル・アナリスト

国内製造業で、生産、販売、調達、物流、会計、人事・給与、製造現場/工程システムなど、エンタープライズ全領域のアプリケーション構築に携わる。SAPの設計・展開では、国内グループ企業向け共通システム、およびグローバル・システムの構築に携わるなど、幅広い業務分野での導入経験を持つ。2002年より現職。
現在は、ERPを中核としたエンタープライズ・アプリケーション全般、SCM、PLMを担当し、可視化からシステム化構想、製品選定、概要設計および導入支援などのプロジェクトを数多く手がけている。また、グループ/グローバルにおけるシステムの設計・構築・展開などのコンサルティングに取り組んでいる。

浅利氏共著本 日本版SOX法 IT統制実践法~IT全般統制・IT業務処理統制~の写真

浅利氏共著本

日本版SOX法 IT統制実践法~IT全般統制・IT業務処理統制~

内山悟志・浅利浩一[共著]
出版社: ソフトリサーチセンター (2007/3)

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