ページの本文へ

グローバル経営を支える見える化の情報基盤|システム構築やトータルソリューションをお探しなら、日立ソリューションズをご利用ください。

特集・コラム

第3回 どのように経営管理基盤の導入を進めるべきか 第3回 どのように経営管理基盤の導入を進めるべきか

見えるべき情報の対象を特定する

 このテーマに取り組もうとする企業では、 第2回「経営者の不満」の項で5つに分類したいずれかの「見えない」課題がなんらか顕在化していることと思います。重要なのは、現状の課題分析だけで力尽きたり煮詰まってしまわないように、どうすれば課題を解決できるのか仮説を設定しながら、それを検証していく過程で将来像のイメージを具体化していくことです。

 たとえば、経営トップやキーパーソンの賛同を得られるような経営情報の活用イメージを作成することも有効でしょう。システムを利用する役割を、経営層、管理層、現場層といった階層別や、研究開発、営業、生産といった職能別、そして、日々、週次、月次、四半期といったタイミングを意識して具体化していくのがよいでしょう。

 いずれにしろ、「見えるべき」情報は何かのWhatを特定することが最初の出発点となります。この点を曖昧にしたままプロジェクトを進めても、システムの実装には成功したものの、使いこなせない、なかなか活用が進まない、すぐに陳腐化したといった残念な例もあります。つまり、導入したシステムのスコープが広すぎる/狭すぎる、深すぎる/浅すぎるなどの理由から、単なる「電子紙芝居化」してしまったようなケースです。

 こうした問題は、経営管理分野に限らずどのITプロジェクトについても言えることですが、技術面だけにフォーカスし、企業文化的な要素を軽視したプロジェクトは失敗する可能性が高い傾向があります。しかも、経営管理は企業の経営・事業戦略を直接的に支援するための取り組みであり、とりわけ企業文化の壁を乗り越えるための考慮が重要となります。

企業文化の壁

 それでは、乗り越えるべき企業文化の壁とはどのようなものでしょうか。ここでは、情報のマネジメントに関わる6つの代表的な壁を想定してみました(図1)。

図1 情報マネジメントの6つの壁

出典:ITR  © 2014, ITR Corporation All rights reserved.

図1 情報マネジメントの6つの壁

 当たり前ですが、経営者が無自覚でスポンサーシップがない場合、最初の壁から超えることが困難です。従来の踏襲で、今後も成長できる圧倒的な競争優位を持つ企業や、他社と差別化できる強固なビジネスモデルを継続できる企業では、逆にこうした壁に悩むことがあります。

 2つめに、経営者が鼓舞しても、ガバナンスを欠いているため推進の土壌がない場合もあります。特に、グループ/グローバルにおけるガバナンスがまだ十分でないといった企業は少なくありませんし、他社資本の割合が高いグループ企業を多く抱える場合もあります。

 この壁を超えても、業務プロセスや情報を直接所管する事業部門が非協力的な場合もあるでしょう。さらに、そこから一歩を踏み出し始めても、企業内で減点主義や責任回避体質が強い場合は活動継続の壁となってしまいます。過去に何回も同じような取り組みをしたにもかかわらず、頓挫して後ろ向きになっている場合もこれにあてはあります。ここまでが企業文化の壁です。

どのように導入を進めるべきか

 ITの壁は主に技術的な問題ですから、重要度、緊急度、影響範囲などを特定していけば、なんらかの解決策は必ずあります。それに対して、企業文化の壁は根深く、簡単にブレークスルーできないので、教宣活動含めて取り組む必要があります。この点については、よくトップダウン型といわれる海外企業でも悩みの根は共通で、グループ/グローバルでの見える化の情報基盤を導入していく場合は、以下の点に留意して進めることが重要です。

減点主義ではなく加点主義 :経営管理情報が見えるようになれば、目標を達成できない部門にとっては、自らの問題点が露わになることを意味し、大きなプレッシャーとなります。減点主義的なカルチャーの企業では、経営が単に「劣等生」を見つけて罰を与えるためのツールとなってしまう場合もあるでしょう。各部門は自分が罰せられることを恐れて必要なデータを提供しなくなったり、悪い点が露見しないようにデータを改ざんしたりするようにもなりがちです。実際、部門間で業績データを「調整」し合うことで、特定の部門に責任が集中しないような運用を行っている企業は意外に多く存在します。

 見える化の情報基盤が「劣等生部門を見つけて罰するための仕組み」ではなく、優秀な部門がインセンティブを得られる一方で、特定部門にペナルティを与えるだけでなく、各部門が協力して問題点を改善し、その恩恵を共有できる前向きのカルチャーを重視すべきでしょう。なお、海外の格言に「Don't shoot the messenger」というものがあります。すなわち「(悪い) 知らせをもってきた使者を撃つ(罰する) ようなことをしてはいけない」ということです。悪いのは問題を報告した人ではなく、問題そのもののはずです。このカルチャーが根深いことの証左でしょう。

Bad news must travel fast :もうひとつ海外の格言から重要なポイントをご紹介しましょう。企業にとって都合の悪い情報であればあるほど伝達の即時性を高めるべきだという意味合いです。悪い情報であればこそ早急なアクションが求められるのは当然のことですが、悪い情報の処理を後回しにする「臭いものには蓋」型の企業文化が強い場合、昨今のようなデジタル社会では、あっという間に致命的な企業ブランド喪失にもつながりかねません。なお、あらゆるデータをリアルタイムで報告できるようにすることは非現実的なばかりか、かえって重要なアラートがノイズに埋もれてしまう危険性もあります。どの情報の即時性を強化するかについては、どのようなアクションにつなげていくべきかを含めて、慎重に優先順位をつける必要性があります。

 企業文化上の課題は一朝一夕に解決できるものではありませんが、一方で、見える化の情報基盤を実装し育てていくなかで、適切な企業文化の醸成ができるという側面もあります。簡単ではありませんが、挑戦しがいのあるシステムであり取り組みであると思います。

浅利 浩一 氏の写真

浅利 浩一 氏

株式会社アイ・ティ・アール プリンシパル・アナリスト

国内製造業で、生産、販売、調達、物流、会計、人事・給与、製造現場/工程システムなど、エンタープライズ全領域のアプリケーション構築に携わる。SAPの設計・展開では、国内グループ企業向け共通システム、およびグローバル・システムの構築に携わるなど、幅広い業務分野での導入経験を持つ。2002年より現職。
現在は、ERPを中核としたエンタープライズ・アプリケーション全般、SCM、PLMを担当し、可視化からシステム化構想、製品選定、概要設計および導入支援などのプロジェクトを数多く手がけている。また、グループ/グローバルにおけるシステムの設計・構築・展開などのコンサルティングに取り組んでいる。

浅利氏共著本 日本版SOX法 IT統制実践法~IT全般統制・IT業務処理統制~の写真

浅利氏共著本

日本版SOX法 IT統制実践法~IT全般統制・IT業務処理統制~

内山悟志・浅利浩一[共著]
出版社: ソフトリサーチセンター (2007/3)

この筆者の他のコラム記事

~関連ソリューション~

統合型基幹アプリケーション  /  日本マイクロソフト(株)

Microsoft Dynamics 365 統合ERP構築サービス

統合生産管理アプリケーション  / 東洋ビジネスエンジニアリング(株)

mcframe

販売・会計統合ソリューション  / (株)日立ソリューションズ

FutureStage 商社・卸向け販売管理システム[旧名称:Fit-ONE]

連載目次

サービス化における「顧客価値」と「利益」の同時獲得サービス化における「顧客価値」と「利益」の同時獲得

メガFTAの入り口メガFTAの入り口

インダストリー4.0が実現をめざすデジタル市場:App Store for Machinesインダストリー4.0が実現をめざすデジタル市場:App Store for Machines

『10年後、2027年のIoTビジネスで成功する施策』続:IoT 先行企業の狙いを見極める。~10年先にIoT勝ち組企業となる戦略構想~『10年後、2027年のIoTビジネスで成功する施策』~10年先にIoT勝ち組企業となる戦略構想~

IoT時代を生き残る。「消費者を動かし、マーケットをつかむイノベーション」IoT時代を生き残る。「消費者を動かし、マーケットをつかむイノベーション」

グローバルSCMを見直す絶好の時期が到来する:メガFTA到来とその活用リスク 嶋 正和氏グローバルSCMを見直す絶好の時期が到来する:メガFTA到来とその活用リスク

LPガス・石油を中心としたエネルギー産業の今後の動向 伊藤 敏憲氏LPガス・石油を中心としたエネルギー産業の今後の動向

世界の安全と企業の存亡に関わる安全保障輸出管理の成否 押田 努氏世界の安全と企業の存亡に関わる安全保障輸出管理の成否

動き始めた「電力・ガスシステム改革」~浮び上る課題と今後の展開~ 伊藤 敏憲氏動き始めた「電力・ガスシステム改革」~浮び上る課題と今後の展開~

FTA/TPP時代のグローバルサプライチェーン改革 嶋 正和氏FTA/TPP時代のグローバルサプライチェーン改革

IoT 先行企業の狙いを見極める。 鍋野 敬一郎氏IoT 先行企業の狙いを見極める。

自動車産業の未来と課題 鶴原 吉郎氏自動車産業の未来と課題

BPMで、確実に効果を生み出す極意 大川原 文明氏BPMで、確実に効果を生み出す極意

グローバル経営を支える見える化の情報基盤 浅利 浩一氏グローバル経営を支える見える化の情報基盤

社会保障・税番号(マイナンバー)の活用で日本を変えよう 森信 茂樹氏社会保障・税番号(マイナンバー)の活用で日本を変えよう

流通マーケット最前線2 流通ニュース編集部流通マーケット最前線2

新しいビジネスモデルづくりとPLM戦略 朴 英元氏新しいビジネスモデルづくりとPLM戦略

顧客ロイヤリティと新マーケティング戦略 鍋野 敬一郎氏顧客ロイヤリティと新マーケティング戦略

情報システム部門の憂うつ-進化を求められるIT部門 その役割とシステム化構想力 浅利 浩一氏情報システム部門の憂うつ-進化を求められるIT部門 その役割とシステム化構想力

コンシューマライゼーションの大きな波 株式会社フロンティアワン ソーシャルメディア研究チームコンシューマライゼーションの大きな波

ビッグデータと企業情報システム 牧野 二郎氏ビッグデータと企業情報システム

『コンサルタントの道具箱』 鍋野 敬一郎氏コンサルタントの道具箱

グローバル連結経営管理を考える 中澤 進氏グローバル連結経営管理を考える

グローバル製造業のための勝てるコストを作り込む「攻めの生産管理」

教えて!業務の達人

ビッグデータ特集

【グローバル製造業向け】拠点間のコミュニケーションで困っていませんか? 3つの仕組みですっきり課題解決!【グローバル製造業向け】拠点間のコミュニケーションで困っていませんか? 3つの仕組みですっきり課題解決!

PSI情報から読み取る製商品需給バランス~SCM改革で欠品による機会損失と過剰在庫のリスクを救え!~PSI情報から読み取る製商品需給バランス~SCM改革で欠品による機会損失と過剰在庫のリスクを救え!~

企業競争力を支えるビッグデータ分析基盤企業競争力を支えるビッグデータ分析基盤

日立ソリューションズのビッグデータビジネスへの取組み事例(2013年度)日立ソリューションズのビッグデータビジネスへの取組み事例(2013年度)

ビッグデータ利活用基盤と業務・分析ノウハウが新たなビジネス価値を創出するビッグデータ利活用基盤と業務・分析ノウハウが新たなビジネス価値を創出する

<PLM特集>標準化による部署間連携の強化と上流から下流への素早く、正確な情報の展開施策<PLM特集>標準化による部署間連携の強化と上流から下流への素早く、正確な情報の展開施策

IT経営で解決する医薬品卸業の経営課題~医薬品の安定供給と収益改善の実現~IT経営で解決する医薬品卸業の経営課題~医薬品の安定供給と収益改善の実現~

音声合成システムを活用する企業が成功している理由音声合成システムを活用する企業が成功している理由

オムニチャネル・リテイリング戦略が小売業界を変革するオムニチャネル・リテイリング戦略が小売業界を変革する

「お客様の声」の活用が商品・サービス力を強くする「お客様の声」の活用が商品・サービス力を強くする

売上向上と利益増大に直結する“ファン”サービス売上向上と利益増大に直結する“ファン”サービス

SCMの要、需給調整業務の高度化SCMの要、需給調整業務の高度化

グローバル展開を支える情報システムグローバル展開を支える情報システム

『攻めのロイヤリティマーケティング』ポイントベースCRMで、囲い込みと集客力アップ『攻めのロイヤリティマーケティング』ポイントベースCRMで、囲い込みと集客力アップ

グローバルサプライチェーンのトータルコスト算出システムグローバルサプライチェーンのトータルコスト算出システム

【IFRS対応】グループ企業間の様々な会計情報連携を実現。~仕訳HUBとマルチスタンダード元帳システム~【IFRS対応】グループ企業間の様々な会計情報連携を実現。~仕訳HUBとマルチスタンダード元帳システム~

複数の企業、拠点、組織と情報共有を行う企業の困りごとを、情報共有サービス『OnSchedule』で解決する複数の企業、拠点、組織と情報共有を行う企業の困りごとを、情報共有サービス『OnSchedule』で解決する

企画・構想からお客様をご支援するための『超上流』への取組み企画・構想からお客様をご支援するための『超上流』への取組み

SCM改善活動を通した在庫適正化への取組みSCM改善活動を通した在庫適正化への取組み

業務へのスマートデバイス有効活用業務へのスマートデバイス有効活用

本サイトは2015年1月1日以前に公開されたもののため、旧社名で表記されている部分がありますが、当該ページで公開されている内容は全て新体制にて引き続き提供しております。製品に関するご不明点等・ご要望等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。
【旧社名】(株)日立ソリューションズ・ビジネス/(株)日立ソリューションズ・ネクサス → 【新社名】(株)日立ソリューションズ・クリエイト

ページの先頭へ