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特集・コラム

第4回 日本企業が超えるべき壁 第4回 日本企業が超えるべき壁

3つのご提言

  第3回の企業文化の壁では、海外の格言「Don't shoot the messenger」「Bad news must travel fast」を例に、見える化の難しさは日本企業だけではなくグローバル企業でも同様であることを述べましたが、連載の最後にあたり、日本企業が超えるべき壁として3つのご提言をさせていただきます。失礼に当たるかもしれませんが、このテーマに取り組む国内企業の皆さまに向けたエールも兼ねて、率直に述べさせていただきます。

 経営管理や見える化に限らないのですが、お客様からいただくお問い合せの多くに事例を教えて欲しいというものがあります。先達に学ぶという意味で、事例研究が有効であることは確かです。また、経営トップの意思決定で必ず問われる以下の質問の準備としても有効でしょう。

①他社はどうか?
②実行しないリスクは何か?
③代替案はないのか?
④実行する場合のリスクは何か?

 しかし、事例を研究するというよりは答えを知りたい、競合他社を出し抜きたい、あるいは単純に社名を知りたい、報告書に記載するきれいな絵が欲しいといった意図を感じることも少なくありません。さまざまなご事情があってのこととは思うのですが、できるだけショートカットしたい、つまり近道して手間とコストを省きたい、失敗したくないということなのだと思います。

 しかし、仮にそのような詳細な事例研究レポートやきれいな絵をご提示できたとして、それで問題が解決するでしょうか。「当社とは背景も状況も異なるので参考にならない」「○○社だからできるのであって当社では無理だ」「○○社ができたからといって当社でできるという保証はない」といった、使えない論できない論に陥りがちではないでしょうか。

 単なるショートカットから得られる知見は浅く、地に足がついた理想像や自社に見合った解決策を導き出すことは通常極めて困難であり、そもそも経営管理に関わる情報や経営指標の詳細が公開されることはまずありません。例外的に公開されていたとしても、なぜそのような指標を設定したか、なぜそのタイミングで情報を入手しているかの脈絡は企業が置かれている状況により異なりますので、これが正解という答えだけを得ることは不可能でしょう。気がつけば、事例の数だけ何年も同じ課題の上を堂々巡りをしているといったことにもなりかねません。

 1つめのご提言は、「ショートカットの壁を乗り越える」です。何を目的にして事例を調べるのか、言い換えれば事例を調べるにあたって自社の課題に応じた初期仮説を不明確にしたまま、いくら作業を積み重ねてもうまくいかないことは、 前回連載の第2回「初期仮説の重要性」で述べたとおりです。

先延ばしの壁を乗り越える

 積み上げ型で完璧主義を目指すと、どうしてもスピードが劣ります。「巧遅は拙速に如かず」といわれますが、グローバル拠点の課題をボトムアップで拾い上げていこうとすればたいへんな労力が必要ですし、その徒労感から先延ばしになりがちです。もっと調べれば、もっと検討すれば良いアウトプットが出せるはずとの誘惑に陥らないようにすべきではないでしょうか。特に、例外や個人のニーズをすべて拾い上げていくときりがありません。

  連載第1回では、国内だけでなく海外の事業や拠点が増えてバリューチェーンやサプライチェーンが複雑化・多様化すればするほど、さらに情報の分断や非同期が悪化すると述べましたが、時間をかけて先延ばしすればするほど超えるべき壁が高くなってしまいます。

 かといって、トップダウンならうまくいくというものではありません。海外企業はトップダウンだからよくて、日本企業はボトムアップだからダメだというのは安易です。経営層からのトップダウン頼りでは、現場層まで経営者の思いを浸透しきれないことも多いと思います。そこで、両方の欠点を補うことができるミドルアウト型のアプローチを検討するなどして、「先延ばしの壁を乗り越える」ことを2つめのご提言といたします。

図1 グローバル見える化の検討アプローチ

出典:ITR  © 2014, ITR Corporation All rights reserved.

図1 グローバル見える化の検討アプローチ

将来を見越した情報基盤とするためには

 最後のご提言は、将来を見越した情報基盤とするための枠組みを組み込むことです。 第2回「見える化の情報基盤の確立」の項でもご紹介したとおり、グローバル経営を支える情報は、パッケージ、独自開発、手作業といった情報のインプット手段、メール、連携ツール、共用サーバといった伝達/保管手段、BI/DWH、グループウェア、ポータルといった分析/共有手段など、広範囲な要素から構成されます。こうした基盤がまったく導入されていない企業はありませんので、一挙にすべて刷新することは難しいことが多いでしょう。優先順位付けを行ってロードマップに落としこみつつ、投資計画を策定していかねばなりません。

 その際、是非重視していただきたいのが、現在視点の課題解決だけでなく、将来視点の戦略的なテーマのシーズを取りこぼさないことです。前項と逆のことを言っているとのご指摘を受けそうですが、せっかく構築した情報基盤が数年で陳腐化しては意味がありません。

 こうした戦略テーマのシーズを洗い出し、整理する枠組みとして、当社(ITR)では4象限のフレームワークを念頭に置くことをご推奨しています。特に長期的な視野での検討が重要な基盤の計画策定においては、①発生型の課題を裏返した解決策を列挙したり、②のような直近の理想像を仮置きするだけでなく、将来視点の課題に着目することがポイントです。

図2 4象限フレームワークでの課題抽出

出典:ITR  © 2014, ITR Corporation All rights reserved.

図2 4象限フレームワークでの課題抽出

 将来を先読みするのは容易ではありませんが、自社の将来像について関係者間でズレがないかを確認することには意味がありますし、より充実した見える化の情報基盤の検討を進めることができるでしょう。

 たとえば、④未来志向型の課題にある「全従業員にペーパーレスで経営情報を見せたい」を実現できる情報基盤が将来像だとすれば、描くべきロードマップも、選ぶべき製品/サービスも異なってきます。場合によっては、利用者数でライセンス費用が左右されない、オープンソースの製品を重視すべきかもしれません。そして、現在そのようなスキルやノウハウが十分でない場合は、その準備から始めるべきかもしれません。
 将来視点を見落とさないことで、「陳腐化の壁を乗り越える」ことを最後のご提言といたします。

浅利 浩一 氏の写真

浅利 浩一 氏

株式会社アイ・ティ・アール プリンシパル・アナリスト

国内製造業で、生産、販売、調達、物流、会計、人事・給与、製造現場/工程システムなど、エンタープライズ全領域のアプリケーション構築に携わる。SAPの設計・展開では、国内グループ企業向け共通システム、およびグローバル・システムの構築に携わるなど、幅広い業務分野での導入経験を持つ。2002年より現職。
現在は、ERPを中核としたエンタープライズ・アプリケーション全般、SCM、PLMを担当し、可視化からシステム化構想、製品選定、概要設計および導入支援などのプロジェクトを数多く手がけている。また、グループ/グローバルにおけるシステムの設計・構築・展開などのコンサルティングに取り組んでいる。

浅利氏共著本 日本版SOX法 IT統制実践法~IT全般統制・IT業務処理統制~の写真

浅利氏共著本

日本版SOX法 IT統制実践法~IT全般統制・IT業務処理統制~

内山悟志・浅利浩一[共著]
出版社: ソフトリサーチセンター (2007/3)

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