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特集・コラム

第1回 ドイツ、米国、日本それぞれの成長戦略と成功の鍵を探る 第1回 ドイツ、米国、日本それぞれの成長戦略と成功の鍵を探る

Internet of Things(IoT)モノのインターネットとは

 IoT(Internet of Things)とは、モノのインターネットと呼ばれているものです。最近よく使われるようになってきた言葉で、これから大きな市場やビジネスチャンスが期待されている領域です。

 IoTとは、私達の身の回りにあるモノ(機械)にセンサーや制御機器を組み込んで、これをインターネットに繋いでネットワーク化することです。例えば、自動車に搭載されたセンサーは、位置情報で現在位置を把握するだけではなく速度や進行方向、エンジンの回転数や温度、燃費など様々なデータをモニターしています。また、工場の工作機械に組み込まれているセンサーからは、稼働時間や消耗品の減り具合、故障した部品や故障の予兆などの情報を集めることができます。住宅やビルに設置されている最新の電力・ガスのメーターは、検針員が見まわらなくてもエネルギーの使用量データを収集蓄積し、その情報を自動的に伝達することができます。

 このように既に身近に活用されている技術ですが、その接続されている機械やデバイスの数は2015年で150億台、2020年には500億台を超えると言われています。そして、この膨大な情報を有効活用することで市場が生まれ、新しいビジネスモデルを生み出すことができるというのが、IoTに取り組む先進企業が狙う目標です。

IoTの原型は日本のセンサー技術

 IoTの原型となっているのは、日本のセンサー技術を使った取り組みにあると言われています。

 よく知られているのは2000年頃に建設機械大手コマツ(株式会社 小松製作所)がGPS(Global Positioning System:人工衛星を利用した位置情報計測システム)を油圧ショベルに搭載した話です。これは当時、盗んだ油圧ショベルで銀行のATMを壊して現金を強奪する事件が日本で多発していたため、その盗難対策として「油圧ショベルにGPSをつけたらどうか」というところからスタートしているのだそうです。GPSの位置情報のほかに、エンジンコントローラーやポンプコントローラーから情報を集めて、その建設機械が今どこにあるのかが即時に分かる仕組みです。

 こうして稼働中か休止中か、燃料の残量はどのくらいかといった情報をセンサーが取得して、通信機能を使ってコマツのセンターにデータを送る仕組み「KOMTRAX」が開発されました。これによって、コマツの建設機械は盗難にあっても位置情報ですぐに所在が追跡され、さらに遠隔操作でキーを入れてもエンジンが掛からなくする仕組みが搭載されました。コマツの機械は劇的に盗難が減り、これが理由で盗難保険の掛け金も値下げされたそうです。機械(ハードウェア)にセンサーを組み込みネットワーク化してシステム(ソフトウェア)で管理するサービスを提供することで、製品に後から付加価値をつけることに成功したのです。

 この技術は、差別化の手段としてさらに発展していきました。セキュリティ目的の位置情報確認だけではなく、稼働管理、保全管理、省エネ運転支援といった各種サービスの提供や、ICT建機の開発によって遠隔操作による無人ダンプトラック運行システム(AHC:Autonomous Haulage System)、3次元位置情報を使ってオペレーターの技量や経験に頼らない作業を実現する全自動ブレード制御機能搭載ICTブルドーザー(Intelligent Machine Control Dozer)といった新しい製品開発に活かされています。

 その他の日本企業でもセンサーを機械に組み込みネットワークで繋いでいる事例があります。
 DMG森精機は自社の工作機械にセンサーを組み込み、機械から直接サービスセンタと通信してエラー分析や技術サポートを受けることができます。シスメックスは医療用検査機械にセンサーを組み込み、その稼働状況や消耗品の残量などをリアルタイムにモニターしています。故障予知、リアルタイムエラーログ監視、予防保守点検など従来は障害が発生してから対処するサービス&サポートを、プロアクティブサービスで提供しています。

海外IoT動向とそれぞれ異なる戦略の違い

 機械をネットワーク化することで、新しいサービスや製品開発に活かすという考え方は海外でも注目されています。欧州では、ドイツ政府が製造業のイノベーション政策として主導しているプロジェクト『Industrie 4.0』(インダストリー4.0:第4次産業革命)があります。

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 そのコンセプトは『Smart Factory』(スマートファクトリー:考える工場)です。第一次産業革命を18世紀の蒸気機関などによる工場の機械化によるものとすると、第二次産業革命は19世紀から始まった電力の活用による大量生産、第三次産業革命は20世紀のコンピューター制御による自動化だとするものです。

 『インダストリー4.0』は、これら3つの産業革命に匹敵する取り組みとして、工場を中心にインターネットを通じてあらゆるモノやサービスが連携することで新しい価値やビジネスモデルの創出を目指す取り組みであると説明されています。このモデルは「ダイナミックセル生産」という新しい生産方式の実現を狙うもので、従来の生産方式であるライン生産やセル生産を超える試みです。

 米国においてもIoTへの関心は高く、米国政府はサイバーフィジカルシステム(CPS:Cyber Physical System)と呼んでいます。
 CPSでフォーカスしている産業領域は、交通、エネルギー、製造業、医療産業です。プロジェクトとしては、Smart America Challengeと呼ばれていて、様々な取り組みが始まっています。具体的な活動や目的はまだこれからですが、そのコンセプトや取り組みについては ウェブサイト動画サイトなどで知ることができます。

 米国におけるIoTの取り組みで大きく注目されているのは、世界最大のコングロマリットであるGE(ゼネラル・エレクトリック)社の『Industrial Internet』(インダストリアル・インターネット:産業のインターネット)です。
 GE社は、「産業革命」「インターネット革命」に続く第3の革命が『インダストリアル・インターネット』であり、「産業機器とビッグデータと人々を結びつけるオープンでグローバルなネットワークである」と定義しています。これは、機械をインターネットに繋げることで、様々なデータを収集し、このデータを解析することで顧客に価値を提供するという考え方です。そのコンセプトやイメージは ウェブサイト動画サイトで公開されています。
 GE社のCEOジェフ・イメルト氏は『インダストリアル・インターネット』に取り組む理由を次のように答えています。「ハードウェアだけで競争に勝てる時代は終わった。ハードウェアは同じままでもソフトウェアを使ってハードウェアの能力を引き出して、顧客にとっての価値を最大化することができる。」

同床異夢のIoTを紐解き、勝敗を決める鍵を探る

 IoTへの取り組みが今後さらに活発となり、新しい市場を生み出してビジネスチャンスが広がると予想されます。しかし、各国、各企業の取り組みが微妙に異なっていることから同床異夢であることが分かります。IoTについて、通信業界やIT業界が独自の解釈で発信しているものはネットに溢れていますが、海外動向や先進企業の狙いや戦略を深堀りして紐解いている情報はあまり知られていません。

 本コラムでは、その取り組みの違いを見極めるとともに、勝敗を決める鍵について探っていきたいと思います。

(公開日:2015年2月9日)

鍋野 敬一郎 氏の写真

鍋野 敬一郎 氏

株式会社フロンティアワン 代表取締役
ERP研究推進フォーラム講師

1989年 同志社大学工学部化学工学科(生化学研究室)卒業
1989年 米国大手総合化学会社デュポン社の日本法人へ入社。農業用製品事業部に所属し事業部のマーケティング・広報を担当。
1998年 ERPベンダー最大手SAP社の日本法人SAPジャパンに転職し、マーケティング担当、広報担当、プリセールスコンサルタントを経験。アライアンス本部にて戦略担当マネージャーとしてSAP Business All-in-One(ERP導入テンプレート)立ち上げを行った。
2003年 SAPジャパンを退社し、コンサルタントとしてERPの導入支援・提案活動に従事。
2005年 独立し株式会社フロンティアワン設立。現在はERP研究推進フォーラムでERP提案の研修講師、ITベンダーのERP/SOA/SaaS事業企画や提案活動の支援、ユーザー企業のシステム導入支援など、おもに業務アプリケーションに関わるビジネスを行っている。
2015年よりインダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI):サポート会員(ビジネス連携委員会委員、パブリシティ委員会委員エバンジェリスト)

鍋野氏寄稿ムック 丸わかり!! IoT入門の写真

鍋野氏寄稿ムック

丸わかり!! IoT入門

出版社: 洋泉社 (2017/2/16)

家電や自動車、住宅、ロボット、工場など身の回りのあらゆるモノがインターネットにつながる――。
IoT(モノのインターネット)によって、10年後の私たちの暮らしやビジネス、産業構造は、大きく変わるでしょう。
第4次産業革命と呼ばれる「IoT」を徹底解説するビジュアルムック。

鍋野氏寄稿ムック インダストリー4.0の衝撃の写真

鍋野氏寄稿ムック

インダストリー4.0の衝撃

出版社: 洋泉社 (2015/7/24)

製造業に押し寄せる新たな波「インダストリー4.0」――。
生産システムがつながる「スマート工場」の登場により、生産現場、サプライチェーン、われわれの暮らしはどう変わるのか!?
インダストリー4.0の立役者ヘンニヒ・カガーマンはじめ、日本GE、経産省のインタビュー、専門家の論考などにより、21世紀の新産業革命を多角的に読み解く。

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ご参考サイト

2015年7月31日(金)開催「日本の製造業はインダストリー4.0にどう対処すべきか」スペシャルレポート(SBクリエイティブ株式会社(ソフトバンクグループ)のサイト「ビジネス+IT」へ)

インダストリー4.0から見る日本企業が執るべき戦略~日本的「つながる工場」とは何か。その示唆を探る~ 講演資料ダウンロードはこちら

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