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特集・コラム

第2回 FTA/TPPが加速する経済ブロック化 第2回 FTA/TPPが加速する経済ブロック化

FTAが導く経済の姿

 FTAが導く経済の姿は、「自由競争」です。自由競争の場合の競争は基本「規模の効果」に大きく影響されます。FTAは関税の削減・撤廃などで擬似的に国境を取り払いますから、対象とする市場規模が大きくなり、その中での企業間競争になります。単純化はできませんが、大きなプレーヤーが規模の効果によって低コストで商品を生産し、マーケットシェアを拡大します。そこには国による干渉や保護は原則ありません(実際にはいろいろな制約はあります)。大企業はFTAによって、いっそう大きな市場へ以前より効率的にアクセスできます。

 また、企業は、FTAにより「内国民待遇」という立場を得られ、相手国の企業と同じ扱いでの投資ができ、自由度が増します。工場、果ては本社まで他の国に設けて、経済活動ができます。「経済のボーダーレス化」ですね。ボーダーレス化は市場の規模を大きくすると同時に、その中の競争のルールを均一化するため、企業はより戦いやすくなります。しかしながらFTAなどによってもたらされる経済圏の外にある国や企業は、経済圏の中にある国や企業に比べて競争環境が劣後するために、競争に負ける確率が高くなります。

 今やFTA先進国の韓国ですが、米国とのFTAがない時期に米国内のシェアが落ちる時期がありました。「アメリカとのFTAを締結している国はシェアを上げている。韓国はアメリカとの間にFTAがないからシェアを落としている」。そういった考え方から、韓国はFTA拡大戦略に乗り出します。
 一方、台湾は中国の影響もあり、FTA締結はごくわずか。その意味で、経済競争で遅れをとっており、台湾国内ではTPP参加すべきという声も大きいのです。ただ、FTAは競争基盤の確立を促すものであり、自由競争に晒されるもので、その国の経済繁栄を約束するものではありません。

 国と違い、企業はFTAによりもたらされた経済圏に工場を持てば、FTAの恩恵を受けることが可能になります。それ故、グローバル企業は、国を越えて人とファシリティ(工場、研究所ほか)を配置するのです。

ボーダーレス化と経済ブロック化

 日本の経済は、海外から原材料を購入し、それで商品を作り、海外に販売するという輸出型モデルで成長を遂げました。現在の様なFTAをトリガーにしたボーダーレス化の中では、その旧来の日本モデルでは勝ち続けることが難しくなりました。企業のサプライチェーンがグローバル化かつ複雑化しています。
 前回申したように、FTAによる経済の仲良しグループができている事を鑑みると、現在進んでいるのは「ボーダーレス化」ではなくFTAによる「経済ブロック化」であり、その経済ブロック内に企業(工場など)が存在しない限り、厳然と「ボーダー(国境)」は存在することになります。この経済ブロックの「国境」も、FTAが日々締結されることにより刻々と変化しています。企業のグローバル戦略はその経済ブロックの変化を予測し、臨機応変に対応を図ることに重点が置かれなければなりません。FTAは交渉が始まってから発効するまでに大体2~3年かかりますので、逆に将来の予測も不可能ではありません。

過渡期であり、混沌期である現状

 WTOが掲げる世界規模での「貿易の自由化の推進」は、理想像としては理解できます。しかし、WTOが機能せず、各国がFTAを締結することによるなし崩しの「貿易の自由化」が進められている現在は、遠い将来の全世界自由貿易に向かう過渡期であり、多くのFTAが乱立し、競争条件が複雑になってしまった混沌期と言えます。

 WTO加盟国(160カ国)からの輸入品には、一律の税率(MFN税率)を課す義務があります。統一の税率なので輸出側にも、そして輸入側税関にもわかりやすかったのですが、多くのFTAが導入されている現在、FTAにより関税が変わり、どの国から輸入するかにより関税が違うようになりました(図1)。また、関税の譲許方法がFTAにより違うので、毎年これらの税率が変わっていきます。

図1 とある商品のMFN関税、FTA関税

図1 とある商品のMFN関税、FTA関税

 グローバルSCM構築の際に、コスト削減として必須のFTAですが、FTAが進展することで複雑な問題も起こっています。例えば、日本企業が近年力を入れているベトナム市場ですが、日本とベトナムの間にはすでに2つのFTAがあります。1つは日本とベトナム二国間のFTA(EPA)、もう1つは日本がASEANとして締結したFTA(AJCEP)。似た中身ではありますが、関税削減のスケジュールや条件が違います。
 また、現在進行中なのが、日本とベトナムが交渉に加わっているTPP、そして前回述べたRCEPがあります。これらが発効すれば、日本とベトナムとの間に4つのFTAが存在し、それぞれの協定内容が違う場合、協定を精査して活用する必要があります。

混沌に拍車をかける税務、法務

 FTAがもたらす戦略的自由度とその裏腹である複雑性に加えて、企業が対応しなければいけないことに各国の税務や法務があります。
 インドやブラジルのように関税は表向き低率ですが、その国に輸入するのに他の形態の税がかかり、結果的には輸入の際にトータルで30~40%の税金を払わねばならない場合もあります。また、貿易で必ず発生する「移転価格」の問題も、対応を誤ると大きなペナルティとなって跳ね返ってきます。
 また、法務問題では、相手国の法律とその執行のあいまいさ加減をしっかり理解しないと、馬鹿にできない訴訟を起こされ、損害賠償を請求されることもあります。FTAが認めているのはその国での「内国民待遇」であり、自国のルールが適用されるわけではありません。

 日本の企業は、少し前までは日本の経済成長に合わせた戦略をとれば成長できました。しかし、日本の人口が減少し始めた昨今、企業が成長を維持するには海外市場への取り組みが必要です。その際には、各国の税務や法務など様々で複雑な課題をこなす必要があります。残念ながら、そういった問題を一箇所で解決できる場所が今までありませんでした。そこで、これらの問題を解決するのに、弊社(株式会社ロジスティック)と他の専門家がGlobal Edge Forumという海外戦略における学びのフォーラムを作り、セミナーなどで情報を共有しています。

嶋 正和 氏の写真

嶋 正和 氏

株式会社ロジスティック 代表取締役

【学歴】
東京大学工学部電子工学科卒業
欧州経営大学院(INSEAD)MBA取得

【職歴】
コンサルティング、物流企業での実経験の中から、ノンアセット型3PLサービスを経営の立場から構築、運営を展開。株式会社プランテックコンサルティング(社外)取締役

-ボストン・コンサルティング・グループ
 ・情報システム・ロジスティクス関連プロジェクト
-フットワーク・エクスプレス
 ・物流会社にマーケティング、戦略の導入を実施
-ローランド・ベルガー・アンド・パートナー・ジャパン
 ・ロジスティクスの包括アウトソーシングを核とした改革コンサルティング
-ロジスティック
 ・設立時に大前研一氏主催のビジネス・プラン・コンテストで大賞受賞

嶋氏著書 戦略的FTA 活用ハンドブック メリットとコンプライアンスの写真

嶋氏著書

戦略的FTA 活用ハンドブック メリットとコンプライアンス

出版社: Web販売のみ(2018年6月発売予定)

章立て(予定)
 -第1章 FTAと戦略的活用
 -第2章 FTAの基礎
 -第3章 FTAのメリットを享受するには
 -第4章 日本企業のFTA活用の問題
 -第5章 日本企業の課題の解決はこれでできる!
 -参考資料
 -図表目次
 -索引
 -語彙集
 -FTAお役立ちサイト
 -FTAに関する相談窓口

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