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特集・コラム

第1回 エネルギー基本計画の見直し、電力システム改革について 第1回 エネルギー基本計画の見直し、電力システム改革について

エネルギー関連規制・制度改革の背景

 エネルギーは、あらゆる経済活動、そして国民生活を営むうえで必要不可欠な基礎資材である。したがって、エネルギー政策の課題は、安全性の確保(safety)を前提とした上で、安定供給(Energy security)を確保しつつ、経済性(Economic growth)の向上、環境への適合(Environmental conservation)を図ること、すなわち「S+3E」を達成することである。

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 エネルギー政策は、かつてエネルギー産業ごとに策定されていたが、エネルギーを取り巻く諸情勢が変化してきたことを背景に、総合的・政策的に検討する必要性が高まった。これにより、2002年6月に「エネルギー政策基本法」が制定され、同法の方針に沿って、エネルギーの需給に関する施策の長期的、総合的かつ計画的な推進を図るため、2003年10月に「エネルギー基本計画」が策定された。その後、諸情勢の変化を考慮して、エネルギー基本計画は、2007年3月に第1回改定、2010年6月に第2回改定が行われた。

 エネルギー基本計画(第2回改定)では、基本的視点として、総合的なエネルギー安全保障の強化、地球温暖化対策の強化、エネルギーを基軸とした経済成長の実現、安全の確保、市場機能の活用による効率性の確保、エネルギー産業構造の改革、国民との相互理解を掲げ、2030年に目指すべき姿と政策の方向性が示された。具体的には、基幹エネルギーとして原子力の導入及び利用の拡大と、再生可能エネルギーの積極的な利用拡大を図ること、化石燃料の安定供給確保と高度利用の推進を図ることなどが示された。

エネルギー産業の規制緩和

 エネルギー産業の規制緩和は、石油産業において1987年、電力及びガス事業においては1995年に始まった。石油産業は2002年に全面自由化され、電力及びガス産業では、事業者の経営自由度の拡大、参入規制の緩和、小売部分自由化、託送制度(送電線、ガス導管の利用制度)の導入などが段階的に進められた。電力、ガスは、現時点で、ともに消費量ベースで約60%の需要家が自由化されている。

 これらの改革によって、エネルギー各社に経営の合理化が促されるとともに、エネルギー事業者間の競合や新規事業者の参入が進んで競争原理がより一層導入され、エネルギー産業の構造は変化した。そして、供給安定性の確保、エネルギーの品質の維持・向上、環境への適合などが図られながら、1990年代半ばには世界で最も高かった石油製品の価格、電気料金、ガス料金が低廉化され、石油製品の税抜価格や電気料金は欧州諸国の平均並みとなり、ガス料金の内外価格差も自由化分野を中心に縮小した。このため、2000年代半ばまでに実施されたエネルギー産業の規制・制度改革は、欧米各国の改革に比べて高く評価されていた。

エネルギー基本計画の見直し

 東日本大震災によって東北及び関東地域の多数の発電所が被災して停止し、東京電力福島第一原子力発電所ではメルトダウンを伴う原子力事故が発生した。
 そして、震災直後の2011年3月には、供給力不足に陥った東京電力が、地域と時間をあらかじめ設定した計画停電の実施に迫られ、その年、東京電力と東北電力は節電要請を繰り返し行わざるを得なくなった。
 その後、原子力事故が発生したことで、国策として導入及び利用の拡大が推進されていた原子力発電に関する政策が転換され、原子力発電所の停止が広がった。電力の供給力不足が全国に拡大し、全国的に節電が要請されることとなり、供給力の不足を火力発電で補ったため電力の供給原価が上昇、複数の電力会社が電気料金の値上げを余儀なくされた。

 このような事情から、電力会社に対する国民の信頼が低下し、電力会社の各方面への影響力が弱まった。そして、政治判断に従って、行政が主導する形で、エネルギー基本計画の改定、電力システム及びガスシステムの改革が進められることとなり、昨年4月にエネルギー基本計画の第3回改定が行われた。ただし、エネルギー基本計画(第3回改定)では、現時点ではまだ確立されていない原子力政策を除いて、大きな政策の見直しは行われていない。

電力システム改革について

 東日本大震災を機に、電気事業の仕組みを大きく見直す「電力システム改革」が進められている。第1段階の規制・制度改革と、第2段階以降の改革のスケジュールが盛り込まれた第1弾の改正電気事業法は、2013年11月の臨時国会で成立し、第2段階の規制・制度改革を示した第2弾の改正電気事業法は、2014年6月の通常国会で成立した。最終となる第3弾の改正電気事業法は、2015年春の通常国会で審議される見通しだ。

 改革の第1段階として、電力広域的運営推進機関が今年4月に創設される。2016年4月には、第2段階として、家庭を含めたすべての消費者が電気の購入先を選べるようになる「電力小売の全面自由化」が行われる。電力会社の送配電事業部門の法的分離(発送電分離)を含む第3段階の改革は、2018年~2020年に実施される見通しである。

伊藤 敏憲 氏の写真

伊藤 敏憲 氏

株式会社伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー 代表取締役兼アナリスト

1984年 東京理科大学卒業
1984年 大和證券株式会社入社、同年 株式会社大和証券経済研究所(現 株式会社大和総研)に出向以来、一貫して調査研究業務に従事。株式会社大和総研で、産業・企業の調査、上場企業調査の総括などを担当後、HSBC証券およびUBS証券でエネルギー業界等の調査を担当。2012年に株式会社伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリーを設立し代表取締役兼アナリストに就任。2013年よりEY総合研究所株式会社客員研究員を兼務。セルサイドアナリスト時に各種アナリストランキングで長年トップあるいはトップクラスの評価を得ていた。
内閣府、経済産業省、日本証券アナリスト協会などの審議会・研究会等の委員を多数歴任し、現在は、経済産業省の「総合資源エネルギー調査会 総合部会 電力システム改革小委員会」、「スマートメーター制度検討会」などの委員に就任中。
専門分野は、エネルギー、環境、マーケティング、経済・金融・商品分析など。
主な著書・コラムは、「石油・新時代へ提言」(燃料油脂新聞社)、「伊藤敏憲の提言」(月刊ガソリンスタンド、連載中)、「道標」(北海道石油新聞、連載中)、「Expert Power」(石油ネット、連載中)など。

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