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動き始めた「電力・ガスシステム改革」~浮び上る課題と今後の展開~|システム構築やトータルソリューションをお探しなら、日立ソリューションズをご利用ください。

特集・コラム

第2回 電力・ガスシステム改革の問題点と影響 第2回 電力・ガスシステム改革の問題点と影響

多くの課題を抱える中で進められる電力システム改革

 電力システム改革は、喫緊に克服すべき多くの課題を抱えた状態のままで、2015年の春に開始される。
 最大の懸念材料は、原子力を利活用できない状態が続いていることに起因する、電力の供給力不足及び供給安定性の低下、経済性の悪化、環境性の悪化である。

 エネルギー基本計画(第3回改訂)において、原子力は「安全性の確保を大前提にエネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源」と位置付けられ、利活用する方針が示された。しかし、現時点では、原子力をいつの時点でどの程度利用できるようになるかのめどは立っておらず、電力供給体制を再構築するための具体策を講じることができていない。

原子力、火力、水力、風力、太陽光

 この問題に対処するためには、速やかに、原子力政策を確立するとともに、2012年7月に設定された新規制基準などを達成し、安全性が確認された原子力発電所を利活用できる体制を整えなくてはならない。
 そして、S(Safety)+3E(Energy security、Economic growth、Environmental conservation)の整合性のとれたエネルギーミックスを実現するため、2012年に導入された再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)など、再生可能エネルギー政策の修正、環境への適合も考慮に入れた石炭利用計画の策定なども急務と思われる。

 電力各社の収支及び財務体質を健全化することも喫緊の課題である。原子力利用率の低下による火力燃料費の増加、料金制度運用のゆがみなどによって、多くの電力会社の収支が悪化し、財務体質も劣化している。このため、電気事業を健全に営むために必要な費用の支出、設備投資、要員の確保などが難しくなっている。自由化された国・地域の電気事業者や一般の事業会社と照らすと、自由化後には大半の電力会社で財務格付けの引き下げが避けられなくなると考えられる。このままの状態が続くと、電力各社の資本・資金調達コストが上昇し、電気事業全体のコストがさらに押し上げられることになる。

電力を踏襲するガスシステム改革

 電力システム改革と併せて、ガスシステム改革も進められる。目的は、新たなサービスやビジネスの創出、競争の活性化による料金の低廉化、ガス供給インフラの整備・拡充、消費者利益の保護、安全確保などだ。
 具体的な改革内容は、競争を促すための「ガス小売の全面自由化」、公平性・中立性をより一層確立するための「ガス導管事業制度の見直し」、安全を確保しつつ新規事業者の参入を促すための「保安体制の見直し」並びに「卸取引の選択肢拡大に向けた環境整備」、「簡易ガス事業制度の見直し」などである。これらの改革案を盛り込んだ改正ガス事業法は、2015年春の通常国会で成立を目指す見通しである。

電力・ガスシステム改革が与える影響

 電力・ガス事業ともに小売が全面自由化されることで、家庭用を含む全ての需要家が供給者を選べるようになる。新規事業者の参入が促され、既存事業者間での競争が活発化し、異業種との複合サービスも行えるようになる。
 通信機能を使った遠隔操作や検針ができるスマートメーターが、2024年度末までに全需要家に導入されることで、きめ細かい料金メニューの設定や、需要側が需給を調整するネガワット取引など、新たなサービス事業も展開できるようになる。これらにより、新規事業者には新たなビジネスチャンスがもたらされ、需要家は料金の低廉化や選択肢の拡大などのメリットが得られると期待する向きが多い。

 しかし、電力業界では、原子力政策の見直し、再生可能エネルギーの大量導入、火力電源の新増設及びリプレース、地域間連系送電線や送電網の拡充といった、巨額のコストを要する諸対策が進められている。それにより、電力広域的運営推進機関(広域機関)の設立や、送配電部門の法的分離(発送電分離)などのシステム改革に対応するためのコストの追加、電力各社の資本・資金調達コストの増加なども見込まれる。
 電気事業の収益性は高くないため、これらのコスト増を事業者の経営合理化や、利ザヤの圧縮によって吸収できるとは思えない。今後は、事業者が採算性に応じて料金を設定するようになると考えられるため、料金は需要家によって下がるケースもあれば、上がるケースもでてくると考えられる。
 ガスについても、基本的には電力と同様で、システム改革のメリットを受けることができる需要家や事業者は限定されることになろう。

 経済産業省は、自由化後の電力及びガス事業者の登録要件を、「安定的に電力あるいはガスを供給できる体制を整備していること」と示している。この要件を満たすためには、自らあるいは契約によって、既存事業者に対してコスト競争力がある需給調整力を備えた供給体制を確保する必要がある。
 特定規模電気事業者(いわゆる新電力)の登録者数は、2015年1月30日現在で526社に及んでいるが、自ら供給力を確保し、需給調整を行っている事業者は、現時点でその1割にも満たない。
 また、電力会社やガス会社に当面課される料金規制などの経過措置が解除され、競争原理が正常に機能するようになると、規制の狭間を狙った事業モデルで収益を稼ぐことは難しくなると考えられる。将来的には、既存事業者、新規参入者の枠に関わらない再編・集約が進むようになると予想される。

伊藤 敏憲 氏の写真

伊藤 敏憲 氏

株式会社伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー 代表取締役兼アナリスト

1984年 東京理科大学卒業
1984年 大和證券株式会社入社、同年 株式会社大和証券経済研究所(現 株式会社大和総研)に出向以来、一貫して調査研究業務に従事。株式会社大和総研で、産業・企業の調査、上場企業調査の総括などを担当後、HSBC証券およびUBS証券でエネルギー業界等の調査を担当。2012年に株式会社伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリーを設立し代表取締役兼アナリストに就任。2013年よりEY総合研究所株式会社客員研究員を兼務。セルサイドアナリスト時に各種アナリストランキングで長年トップあるいはトップクラスの評価を得ていた。
内閣府、経済産業省、日本証券アナリスト協会などの審議会・研究会等の委員を多数歴任し、現在は、経済産業省の「総合資源エネルギー調査会 総合部会 電力システム改革小委員会」、「スマートメーター制度検討会」などの委員に就任中。
専門分野は、エネルギー、環境、マーケティング、経済・金融・商品分析など。
主な著書・コラムは、「石油・新時代へ提言」(燃料油脂新聞社)、「伊藤敏憲の提言」(月刊ガソリンスタンド、連載中)、「道標」(北海道石油新聞、連載中)、「Expert Power」(石油ネット、連載中)など。

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