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特集・コラム

第3回 欧州の電気事業制度改革について 第3回 欧州の電気事業制度改革について

EUが電力自由化を推進

 EUは、域内市場統合を進める対策の一環として域内エネルギー市場構想を提唱し、1997年に発効したEU電力指令により、加盟各国には2003年までに発電部門の自由化、小売自由化範囲の拡大あるいは全面自由化、送電系統への第三者アクセスの確保、発送電分離、2007年7月までに小売全面自由化の実施が求められた。

イギリスは1989年に民営化、1999年に小売全面自由化、2002年の料金規制撤廃等を実施

 イギリスでは、国営の中央電力庁(CEGB)が発電と送電を一手に担い、12の地域配電局が需要家に供給する体制だったが、1989年にCEGBが3つの発電会社と送電会社のNational Grid PLCに分割・民営化され、12の配電局はそのまま民営化された。電力小売は、1990年に部分自由化、1999年に全面自由化され、2002年に料金規制の撤廃及び配電部門の別会社化が実施された。
 自由化後、イギリスでは、約100社が発電あるいは小売事業に参入し、海外の電力会社も交えてM&Aが活発に行われた。そして、ドイツRWE系のRWE npower、ドイツE.ON系のE.ON UK、スペインIberdrola系のScottish Power、フランスEDF傘下の原子力発電会社EDF Energy、独立系のSSE、電気事業に参入したCentrica(旧国有ガス会社British Gas)の6社に集約された。現在、大手6社の電力小売シェアは約95%に達している。

イギリスの電気料金は低下後に上昇、電力供給力不足も深刻化

 イギリスの電気料金は90年代に大幅に低下した。CEGBに課せられていた割高な国内炭の使用、国産プラントの定期発注、雇用の維持などの義務が廃止された結果、発電事業で約5割、配電事業で約7割の人員が削減され、火力燃料費の低減、プラントコストの低減、発電所の集約などが進んだからだ。しかし、これらの効果が一巡した2000年頃から、燃料価格の高騰、寡占による競争緩和などによって、電気料金は上昇に転じ、2014年の電気料金は、規制緩和後の最安値の約2倍に上昇し、欧州で最も電気料金が高い国の一つになっている。
 また、イギリスでは、どの事業者にも供給力の確保義務が課せられていないため、自由化後、低効率の火力発電所が廃止され、再エネを除く電源や送電網の増設が進まなくなり、電力の供給安定性が低下している。

ドイツは1998年に電気事業制度改革を開始、競争により電気事業は4社の寡占体制に

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 ドイツでは、EU指令を受けて1998年にエネルギー事業法が改定され、発電部門への参入規制の緩和、発送電分離などが実施された。
 改革前のドイツでは、発送配一貫体制の大手8社(発電シェア合計約80%)と公営の小規模な配電会社約900社が電気事業を営んでいたが、規制・制度改革をきっかけに再編・集約が進み、大手は、E.ON、RWE、EnBW、Vattenfallの4社に集約された。これら4社は、経営合理化、海外の電力会社や国内の配電会社の買収、ガス事業への進出、配電部門の売却などに取り組み、E.ON、RWEは世界有数の複合エネルギー企業になった。

ドイツの電気料金は低下後に上昇

 ドイツの電気料金は、改革前、欧州で最も高かったが、改革後、産業用の料金は一時2~3割低下した。しかし、2000年代に入って、燃料価格の上昇、再生可能エネルギーの大量導入に伴う環境関連税の増加、寡占化による競争緩和などから上昇に転じ、再び、電気料金はEU内で割高になっている。

フランスの優位性高まる

 発送配一貫体制で原子力の発電構成比が高い、国有のEDFのほぼ独占状態だったフランスでは(配電事業には約160地方配電会社が存在していたがシェア合計は約5%)、EU指令の期限ぎりぎりに電気事業制度改革が実施された。これによりEDFが株式会社化され、一部株式が民間に公開され、EDFの配電部門が100%子会社のeRDFとして法的分離された。
 改革後、発電事業には、GDFスエズ(旧国有ガス事業者)系のCNR、ドイツE.ON系のSNETなどが参入し、小売事業にも約20社が新規参入したが、EDFは、依然、国内発電で約80%、産業用・業務用小売で約80%、家庭用小売では90%以上のシェアを維持している。
 フランスでは、規制制度改革後も相対的に割安な電気料金が維持され、供給安定性も確保されている。先行例を参考に改革が実施された、2000年代に燃料価格が高騰し原子力比率の高いEDFの優位性が高まったなどが、その理由と思われる。

伊藤 敏憲 氏の写真

伊藤 敏憲 氏

株式会社伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー 代表取締役兼アナリスト

1984年 東京理科大学卒業
1984年 大和證券株式会社入社、同年 株式会社大和証券経済研究所(現 株式会社大和総研)に出向以来、一貫して調査研究業務に従事。株式会社大和総研で、産業・企業の調査、上場企業調査の総括などを担当後、HSBC証券およびUBS証券でエネルギー業界等の調査を担当。2012年に株式会社伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリーを設立し代表取締役兼アナリストに就任。2013年よりEY総合研究所株式会社客員研究員を兼務。セルサイドアナリスト時に各種アナリストランキングで長年トップあるいはトップクラスの評価を得ていた。
内閣府、経済産業省、日本証券アナリスト協会などの審議会・研究会等の委員を多数歴任し、現在は、経済産業省の「総合資源エネルギー調査会 総合部会 電力システム改革小委員会」、「スマートメーター制度検討会」などの委員に就任中。
専門分野は、エネルギー、環境、マーケティング、経済・金融・商品分析など。
主な著書・コラムは、「石油・新時代へ提言」(燃料油脂新聞社)、「伊藤敏憲の提言」(月刊ガソリンスタンド、連載中)、「道標」(北海道石油新聞、連載中)、「Expert Power」(石油ネット、連載中)など。

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