ページの本文へ

動き始めた「電力・ガスシステム改革」~浮び上る課題と今後の展開~|システム構築やトータルソリューションをお探しなら、日立ソリューションズをご利用ください。

特集・コラム

第4回 電力・ガスシステム改革で何がどう変わるのか 第4回 電力・ガスシステム改革で何がどう変わるのか

エネルギー事業の一体改革が始動

 送配電事業部門の法的分離など、電力システム改革の総仕上げとなる第3段階の電気事業法の改正法案、ガス事業における小売全面自由化や都市ガス大手3社の導管事業部門の法的分離を柱とするガス事業法の改正法案、熱供給事業法の抜本的な見直し、エネルギー事業に係る新たな行政組織の創設など、エネルギー分野の一体改革を図るための法案が3月に閣議決定された。

 経済産業省は、これらの改革によって、エネルギー市場の垣根は取り払われ、総合的なエネルギー市場を創り上げることが可能となり、革新的な技術の導入や異なるサービスの融合などによるイノベーションの早発、エネルギー選択の自由度拡大、電気及びガス料金の抑制、安定供給の確保など、消費者利益の拡大が図られるとしている。

 そして、改革がいよいよ始動する。まず、4月に、電源の広域的な活用に必要な送配電網の整備や全国大での需給調整機能の強化を目的とした「電力広域的運営推進機関」が創設され、6月にはエネルギー事業の新規制組織が経済産業大臣直属の8条委員会として設置される。「小売全面自由化」は、電力が2016年、ガスが2017年に行われ、熱供給事業は2016年に自由化される。電力の送配電部門は2020年、都市ガス大手3社の導管部門は2022年にそれぞれ「法的分離」され、併せて、適正な競争が確保されている地域では小売料金規制が撤廃される予定である。

これまでに実施された部分自由化による変化

 電気及びガス事業では、1990年代半ばから、参入規制の廃止や小売部分自由化などの制度改革が段階的に進められてきた。これらの改革をきっかけに、電力・ガス各社は、安定供給の確保、環境対応などを図りつつ、経営合理化に取り組み、料金の引き下げ、サービスの向上などを図ってきた。その成果は、全面自由化が実施されたEU諸国と比べて高く評価されていた。
 今回、電気、ガス、熱供給の一体改革が図られるようになったのは、東日本大震災をきっかけに、原子力政策並びに原子力発電所の設備・運用体制の見直しが求められるようになり、電力の供給力不足、複数の電力会社の経営悪化などが起きたからである。

新電力の現状

イメージ

 2000年に始まった部分自由化をきっかけに、電力小売には、特定規模電気事業者(新電力)と呼ばれる新規事業者が参入した。新電力の自由化分野におけるシェアは、2013年度の発電量ベースで約4%、そのうち最大手のエネットが47%、上位10社が89%を占めている。
 新電力の登録事業者数は、2011年以降に急増、2015年3月11日現在で596社に及んでいる。業種は、都市ガス、石油、LPガス、新エネなどのエネルギー関連のほか、製造業、通信、不動産、流通・サービス、リース、メンテナンスなど多岐にわたっている。ただし、その大半は、電力小売事業者に求められる同時同量(電力の需要と供給の一致)を達成するための需給調整機能を備えた供給力を確保できていない。
 新電力の一部はコストが割安な石炭火力などの電源開発計画を進めているが、2016年に新たに自由化される家庭用など小口消費者向けを含め、電気事業の採算性は必ずしも高くないことから、既存の電気事業者に対抗できる体制を確立できる事業者は限定されよう。

今後どのような変化が起きる可能性があるか

 一方、複数の電力会社が、他電力の供給区域における電力小売事業の展開や電源開発、卸電力事業の強化などに取り組み始めている。電力各社の系統間の連系容量も拡大されることから、今後、電力会社間での競争の活発化が予想される。
 ガス事業でも、小売が全面自由化され、導管事業の中立性の確保、LNG基地の第三者利用の促進などが図られる。これにより、すでにガス事業に参入している電力、石油などに加え、異業種からの新規参入、ガス事業者間での競争の活発化などが起きると考えられる。

 これらの改革によって、我が国のエネルギー産業は、自由競争に移行し、複合エネルギー事業化、他業種との融合化などにより、その姿を大きく変えることになると予想されるが、将来、欧州の一部にみられるような寡占化が生じる可能性も否定できない。

伊藤 敏憲 氏の写真

伊藤 敏憲 氏

株式会社伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー 代表取締役兼アナリスト

1984年 東京理科大学卒業
1984年 大和證券株式会社入社、同年 株式会社大和証券経済研究所(現 株式会社大和総研)に出向以来、一貫して調査研究業務に従事。株式会社大和総研で、産業・企業の調査、上場企業調査の総括などを担当後、HSBC証券およびUBS証券でエネルギー業界等の調査を担当。2012年に株式会社伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリーを設立し代表取締役兼アナリストに就任。2013年よりEY総合研究所株式会社客員研究員を兼務。セルサイドアナリスト時に各種アナリストランキングで長年トップあるいはトップクラスの評価を得ていた。
内閣府、経済産業省、日本証券アナリスト協会などの審議会・研究会等の委員を多数歴任し、現在は、経済産業省の「総合資源エネルギー調査会 総合部会 電力システム改革小委員会」、「スマートメーター制度検討会」などの委員に就任中。
専門分野は、エネルギー、環境、マーケティング、経済・金融・商品分析など。
主な著書・コラムは、「石油・新時代へ提言」(燃料油脂新聞社)、「伊藤敏憲の提言」(月刊ガソリンスタンド、連載中)、「道標」(北海道石油新聞、連載中)、「Expert Power」(石油ネット、連載中)など。

この筆者の他のコラム記事

~関連ソリューション~

販売・会計統合ソリューション  / (株)日立ソリューションズ

FutureStage 商社・卸向け販売管理システム[旧名称:Fit-ONE]

連載目次

サービス化における「顧客価値」と「利益」の同時獲得サービス化における「顧客価値」と「利益」の同時獲得

メガFTAの入り口メガFTAの入り口

インダストリー4.0が実現をめざすデジタル市場:App Store for Machinesインダストリー4.0が実現をめざすデジタル市場:App Store for Machines

『10年後、2027年のIoTビジネスで成功する施策』続:IoT 先行企業の狙いを見極める。~10年先にIoT勝ち組企業となる戦略構想~『10年後、2027年のIoTビジネスで成功する施策』~10年先にIoT勝ち組企業となる戦略構想~

IoT時代を生き残る。「消費者を動かし、マーケットをつかむイノベーション」IoT時代を生き残る。「消費者を動かし、マーケットをつかむイノベーション」

グローバルSCMを見直す絶好の時期が到来する:メガFTA到来とその活用リスク 嶋 正和氏グローバルSCMを見直す絶好の時期が到来する:メガFTA到来とその活用リスク

LPガス・石油を中心としたエネルギー産業の今後の動向 伊藤 敏憲氏LPガス・石油を中心としたエネルギー産業の今後の動向

世界の安全と企業の存亡に関わる安全保障輸出管理の成否 押田 努氏世界の安全と企業の存亡に関わる安全保障輸出管理の成否

動き始めた「電力・ガスシステム改革」~浮び上る課題と今後の展開~ 伊藤 敏憲氏動き始めた「電力・ガスシステム改革」~浮び上る課題と今後の展開~

FTA/TPP時代のグローバルサプライチェーン改革 嶋 正和氏FTA/TPP時代のグローバルサプライチェーン改革

IoT 先行企業の狙いを見極める。 鍋野 敬一郎氏IoT 先行企業の狙いを見極める。

自動車産業の未来と課題 鶴原 吉郎氏自動車産業の未来と課題

BPMで、確実に効果を生み出す極意 大川原 文明氏BPMで、確実に効果を生み出す極意

グローバル経営を支える見える化の情報基盤 浅利 浩一氏グローバル経営を支える見える化の情報基盤

社会保障・税番号(マイナンバー)の活用で日本を変えよう 森信 茂樹氏社会保障・税番号(マイナンバー)の活用で日本を変えよう

流通マーケット最前線2 流通ニュース編集部流通マーケット最前線2

新しいビジネスモデルづくりとPLM戦略 朴 英元氏新しいビジネスモデルづくりとPLM戦略

顧客ロイヤリティと新マーケティング戦略 鍋野 敬一郎氏顧客ロイヤリティと新マーケティング戦略

情報システム部門の憂うつ-進化を求められるIT部門 その役割とシステム化構想力 浅利 浩一氏情報システム部門の憂うつ-進化を求められるIT部門 その役割とシステム化構想力

コンシューマライゼーションの大きな波 株式会社フロンティアワン ソーシャルメディア研究チームコンシューマライゼーションの大きな波

ビッグデータと企業情報システム 牧野 二郎氏ビッグデータと企業情報システム

『コンサルタントの道具箱』 鍋野 敬一郎氏コンサルタントの道具箱

グローバル連結経営管理を考える 中澤 進氏グローバル連結経営管理を考える

グローバル製造業のための勝てるコストを作り込む「攻めの生産管理」

教えて!業務の達人

ビッグデータ特集

【グローバル製造業向け】拠点間のコミュニケーションで困っていませんか? 3つの仕組みですっきり課題解決!【グローバル製造業向け】拠点間のコミュニケーションで困っていませんか? 3つの仕組みですっきり課題解決!

PSI情報から読み取る製商品需給バランス~SCM改革で欠品による機会損失と過剰在庫のリスクを救え!~PSI情報から読み取る製商品需給バランス~SCM改革で欠品による機会損失と過剰在庫のリスクを救え!~

企業競争力を支えるビッグデータ分析基盤企業競争力を支えるビッグデータ分析基盤

日立ソリューションズのビッグデータビジネスへの取組み事例(2013年度)日立ソリューションズのビッグデータビジネスへの取組み事例(2013年度)

ビッグデータ利活用基盤と業務・分析ノウハウが新たなビジネス価値を創出するビッグデータ利活用基盤と業務・分析ノウハウが新たなビジネス価値を創出する

<PLM特集>標準化による部署間連携の強化と上流から下流への素早く、正確な情報の展開施策<PLM特集>標準化による部署間連携の強化と上流から下流への素早く、正確な情報の展開施策

IT経営で解決する医薬品卸業の経営課題~医薬品の安定供給と収益改善の実現~IT経営で解決する医薬品卸業の経営課題~医薬品の安定供給と収益改善の実現~

音声合成システムを活用する企業が成功している理由音声合成システムを活用する企業が成功している理由

オムニチャネル・リテイリング戦略が小売業界を変革するオムニチャネル・リテイリング戦略が小売業界を変革する

「お客様の声」の活用が商品・サービス力を強くする「お客様の声」の活用が商品・サービス力を強くする

売上向上と利益増大に直結する“ファン”サービス売上向上と利益増大に直結する“ファン”サービス

SCMの要、需給調整業務の高度化SCMの要、需給調整業務の高度化

グローバル展開を支える情報システムグローバル展開を支える情報システム

『攻めのロイヤリティマーケティング』ポイントベースCRMで、囲い込みと集客力アップ『攻めのロイヤリティマーケティング』ポイントベースCRMで、囲い込みと集客力アップ

グローバルサプライチェーンのトータルコスト算出システムグローバルサプライチェーンのトータルコスト算出システム

【IFRS対応】グループ企業間の様々な会計情報連携を実現。~仕訳HUBとマルチスタンダード元帳システム~【IFRS対応】グループ企業間の様々な会計情報連携を実現。~仕訳HUBとマルチスタンダード元帳システム~

複数の企業、拠点、組織と情報共有を行う企業の困りごとを、情報共有サービス『OnSchedule』で解決する複数の企業、拠点、組織と情報共有を行う企業の困りごとを、情報共有サービス『OnSchedule』で解決する

企画・構想からお客様をご支援するための『超上流』への取組み企画・構想からお客様をご支援するための『超上流』への取組み

SCM改善活動を通した在庫適正化への取組みSCM改善活動を通した在庫適正化への取組み

業務へのスマートデバイス有効活用業務へのスマートデバイス有効活用

本サイトは2015年1月1日以前に公開されたもののため、旧社名で表記されている部分がありますが、当該ページで公開されている内容は全て新体制にて引き続き提供しております。製品に関するご不明点等・ご要望等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。
【旧社名】(株)日立ソリューションズ・ビジネス/(株)日立ソリューションズ・ネクサス → 【新社名】(株)日立ソリューションズ・クリエイト

ページの先頭へ