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※本コンテンツは、2016年1月に作成したものです。
※本コンテンツは、以下資料を基に制作しています。
・内閣官房 TPP政府対策本部
・外務省 環太平洋パートナーシップ(TPP)協定交渉
・経済産業省 TPPの概要や大筋合意の内容に関する資料
・日本貿易振興機構(JETRO) FTA/EPAの基礎
・
株式会社ロジスティック セミナー・講演資料
TPP(環太平洋パートナーシップ協定)の大筋合意
TPP
*1(環太平洋パートナーシップ協定)が2015年10月5日、大筋合意に達しました。
これにより、世界のGDP
*2の約4割(3,100兆円)を占める巨大経済圏がアジア太平洋地域に生まれる道筋がつきました。
TPPは、日本、米国、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナムの12カ国間で関税の撤廃を進めて、貿易の活発化を図る多国間協定です。また、TPPは、モノの関税撤廃や削減だけではなく、サービス、投資の自由化を進め、さらには知的財産、電子商取引、国有企業の規律、環境など、幅広い分野で21世紀型のルールを構築するものです。
工業製品については、日本から見た輸出先の11カ国全体で99.9%の品目の関税撤廃を実現します。貿易額ベースで見ても99.9%を達成する見込みです(即時撤廃の割合は76.6%(貿易額ベース))。
TPPは、成長著しいアジア太平洋地域に大きなバリュー・チェーンを作り出すことにより、域内のヒト・モノ・資本・情報の往来が活発化し、この地域を世界で最も豊かな地域にすることを狙いにしています。
*1 TPP:Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement 環太平洋パートナーシップ協定
*2 GDP:Gross Domestic Product 国内総生産
■TPP協定のインパクト
■主要FTAとの比較
TPPの効果
TPPは、関税の撤廃や削減でモノの貿易拡大を促すだけではなく、参加国の規制緩和を通じて国境を越えた事業展開が可能になります。また、新興国を中心に金融などのサービスや投資の規制が緩和されるほか、ビジネス目的での入国手続きがスムーズになったり、知的財産の保護についてルールが統一されることになります。
日本企業においてビジネス機会は大きく広がり、透明なルールの下で域内の国へ進出しやすくなります。
工業製品の関税について大筋合意事項を見てみると、相手国や品目によって異なるものの、協定発効後、即時に関税撤廃される品目は86.9%となり、撤廃時期に達した場合99.9%の関税が撤廃される方向です。
日本の輸出額の上位を占める自動車や自動車部品で数多くの関税が、段階的に引き下げられたり、即時撤廃される予定です(米国向け乗用車は、15年目から削減開始、段階的に撤廃される)。その他、鉄鋼・非鉄金属や家電・産業用機械、化学品等で関税減免の恩恵を受ける業界が多いと言えます。
詳しくは、経済産業省から発行されている“相手国及び我が国の工業製品関税に関する大筋合意結果の概要”を参照して下さい。
■TPPの効果
■TPPの主な合意内容
TPPは企業戦略の重要な柱
TPP参加12カ国の経済規模は、3,100兆円で、世界全体の4割を占めることになります。また、TPP経済圏の市場規模(人口の合計)は8億人であり、世界全体の1割を占めることになります(世界銀行の2014年データベース)。
TPP参加国のGDP総和に占める米国の割合は62%、日本の割合は17%、カナダが6%となり、残り9カ国のGDPの割合は15%となります。米国と日本のGDPの和が80%であるため、TPPは、アジアの成長を取り込むというよりは、日米FTAとしての役割が大きいと言えます。
また、世界銀行が、TPPによる2030年までの各国のGDP・輸出額の伸び率を発表しました。それによると、日本は2030年までに(2014年比で)、GDP2.7%増、輸出額で23.2%増と試算されています。モノの輸出だけでなく東南アジアへ製造業・小売業等の進出が増える効果を見込んでおり、早期のTPP発効が望まれます。また、東南アジアでは、ベトナムが、GDP10%増、輸出額30.1%増と試算されており、成長性の高さを見ることができます。
■TPP参加12カ国の経済規模
Source:世界銀行(2014),日経新聞2016.1.8のデータをもとに作成 1ドル=110円で換算
TPPにより、域内の貿易投資の自由化や共通ルールの策定が行われます。
日本企業にとって、バリューチェーン/サプライチェーン再編により、域内分担体制の最適化や効率化が図れ、新たなビジネスチャンス・成長機会の創出の実現が可能になります。
TPP/FTAを考慮したバリューチェーン/サプライチェーン戦略ならびに事業戦略の再考を早期に着手することが必要です。
■TPPと企業戦略
TPPやFTAとは何なのか?
FTA(Free Trade Agreement、自由貿易協定)とは、ある国や地域との間で、関税をなくし、モノやサービスの自由な貿易を一層進めることを目的とした協定のことです。
日本は、FTAを基礎としながら、これに加えて、投資の促進、知的財産や競争政策等の分野での調和、様々な分野での協力、などにより幅広い分野を対象として、経済上の連携を強化することを目的とした協定を推進しており、このような協定をEPA(Economic Partnership Agreement、経済連携協定)と呼んでいます。
FTA:特定の国や地域の間で、物品の関税やサービス貿易の障壁等を削減・撤廃することを目的とする協定
EPA:貿易の自由化に加え、投資、人の移動、知的財産の保護や競争政策におけるルール作り、様々な分野での協力の要素等を含む、幅広い経済関係の強化を目的とする協定
TPP(TPP:Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement、環太平洋パートナーシップ協定)は、FTA・EPAを多国間に拡大したもので、環太平洋という広い地域での経済連携を目指す協定です。対象も幅広く、環境、労働、電子商取引など新しい分野を含む21分野で交渉が進められています。「例外なき関税撤廃」が前提で、原則としてすべての品目での関税撤廃を掲げています。
■自由貿易協定(FTA)と経済連携協定(EPA)
FTAはこう考えるとわかりやすい
以下の図で説明します。
今までの世界や経済は「国」をひとつの単位としてきました。それぞれの経済規模が小さい時期はそれでもよかったのですが、企業が大きくなり、自国から外に出て事業を行おうとすると、「国境」が生み出す制約(関税、ビザ、お金の持ち出し規制など)があり、ビジネスが国境を超える邪魔をしていました。
FTAの目指す方向性は、「一つの経済ブロックになるために邪魔な障壁を取り除く」です。
経済上の国境を守るよりも、むしろ国境での制約をなくしてしまった方が経済効果が上がります。この障壁を取り払い、経済活動を活性化させることを目的として「経済規模拡大のメリット」を生かすために、経済に関してあたかも1つの国と同じにする協定がFTAなのです。
■FTAの考え方
Source: 株式会社ロジスティック嶋 正和氏資料
FTA動向と企業課題
JETROによると、2014年の貿易統計を基に、2015年7月時点のFTA発効件数で、FTAカバー率(当該国の貿易額に占めるFTA締結国との貿易額の割合)を計算すると、日本は22.3%、米国は40.1%、EUは28.7%、中国は18.7%、韓国が41.1%となっています。日本の現状FTAカバーは、主要国の中では下位グループに位置しています。このままの状況が続くと、日本は諸外国から大きく遅れをとり、世界経済の成長と繁栄から取り残されることになりかねません。
ただし、今回のTPP大筋合意によりメガFTA交渉が加速化する可能性が出てきています。
TPPが発効されると日本のFTAカバー率は14.9%増加します。また、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)や日EU(日EU経済連携協定)などのメガFTAが発効されることで日本のFTA カバー率は73.5%に達し、世界的にみても高水準になります。TPP/FTAを成長戦略と位置付け、諸外国との交渉における貿易・投資の自由化のルール作りのプロセスで日本がイニシアティブを発揮することが望まれています。
■TPP合意で、FTAカバー率が拡大の見通し
Source:JETRO(2014)
日本企業のFTA活用(日本が参加していないFTA(第三国FTA)の活用も含めて)の課題を以下に整理してみました。
FTA活用における主な企業課題として、“FTAの認知不足”、“原産地規則等関連ルールや手続きのハードル”、“国内・外のFTA情報不足”、“社内体制と人材不十分”などがあります。
今後、ほとんどすべての日本企業が直接的、間接的にFTAの影響を受ける時代が到来します。企業にとってのFTA活用は、関税の減免を享受できてはじめてメリットになるわけですが、企業が実際に関税減免を受けるには、FTAルールの理解や企業体制とマネジメントシステムの確立が前提になってきます。
■FTA活用の企業課題
広がるメガFTA
現在世界では、TPPをはじめ、日EU FTAや日中韓FTA、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)、環大西洋貿易投資パートナーシップ(TTIP)などのメガFTA(広域の経済連携)が交渉されています。
メガFTAは、その経済規模や人口の大きさ、参加国の数の多さから、実現すればこれまでのFTAをはるかに上回る影響を参加国の経済や社会、貿易にもたらすと考えられます。
また、メガFTAが実現されれば、日本企業を取り巻く事業環境は大きく変化します。サプライチェーンの再編などメガFTA時代に対応する事業戦略が求められています。
■TPPと交渉中のメガFTA
RCEP:東アジア地域包括的経済連携(Regional Comprehensive Economic Partnership)
ASEAN:東南アジア諸国連合(Association of Southeast Asian Nations)
APEC:アジア太平洋経済協力(Asia Pacific Economic Cooperation)
TTIP:環大西洋貿易投資パートナーシップ(Transatlantic Trade and Investment Partnership)
日EU:日EU経済連携協定
日中韓FTA:日中韓自由貿易協定
関税撤廃はコスト競争力を生み出す
FTA活用の企業メリットの第一は、関税削減効果です。
下のケースで説明してみましょう。
通常の関税(このケースでは20%)による輸入と、FTA活用(関税撤廃)による輸入価格の比較になります。
関税撤廃により、CIF価格×関税率分のコスト競争力が生まれます。
関税分を利益とするのか販売価格値下げに使うのかによりますが、どちらにしてもFTAを活用した企業が、削減されるコストによる優位性を構築できることは間違いありません。
日本の輸出相手国の関税引き下げや貿易制限緩和は、実質的な日本企業の競争力強化を生み出します。さらに、貿易自由化による競争促進が、企業の生産性や技術進歩の向上に寄与すると考えられます。TPPやFTAは日本企業にとって新たなビジネスチャンスであり、成長機会の創出に繋がるものと考えています。
TPPやFTAを契機に、バリューチェーン(サプライチェーン)戦略ならびに事業戦略の再考をお奨めします。
■関税撤廃はコスト競争力を生み出す
FOB:Free on Board 商品が船舶や飛行機などに荷積みされた時点で、その商品の所有権が買主に移転するという取引条件のこと
CIF:Cost, Insurance and Freight 運賃・保険料込み条件のこと
Source: 株式会社ロジスティック嶋 正和氏資料
まとめ:日本企業が準備すべきこと
〈今後のTPP発効までの流れ〉
TPP協定の交渉が大筋合意に達したことを踏まえ、日本を含む交渉参加12カ国は、協定の早期発効に向けて、協定への署名や議会の承認など、それぞれの国内手続きを急ぐことにしています。これらがスムーズに進めば2016~18年にも発効の可能性があります。ただし、各国はそれぞれの事情を抱えていますので、曲折することも予想されます。
〈日本企業が準備すること〉
日本企業にとって、メガFTAの時代が到来します。メガFTAの成立が既存のFTAを吸収するというわけではなく、両者は併存することになります。つまり利用できるFTAの選択肢が増えるということになり、ほとんどすべての日本企業が直接的、間接的にFTAの影響を受ける時代が到来します。FTA活用を視野に入れ、グローバルビジネス戦略の早期検討着手が必要であると考えます。
以下に、「FTA活用における今後の検討事項」について整理してみました。
■日本企業が準備すること
TPPは、スムーズに進めば2016~18年にも発効の可能性があるんじゃ。
今からTPP/FTAの活用を視野にいれたビジネス戦略の社内検討に着手すべきじゃな。
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