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※本コンテンツは、2016年2月に作成したものです。
※本コンテンツは、以下資料を基に制作しています。
・日本貿易振興機構(JETRO) 関税・関税制度を調べる
・財務省関税局・税関 経済連携協定(FTA/EPA)
・商工会議所(JCCI) EPAに基づく特定原産地証明書発給事業
・経済産業省 EPA/FTA/投資協定
・
株式会社ロジスティック セミナー・講演資料
FTA適用の業務プロセス
今後、ほとんどすべての日本企業が直接的、間接的にFTAの影響を受ける時代が到来します。
企業にとってのFTA活用の第一のメリットは関税削減効果ですが、FTA活用には、まず以下のような「FTA適用業務プロセス」を確認し、企業の体制とマネジメントシステムを構築することが必要になります。
■FTA適用の業務プロセス
原産地規則:ある産品の原産地(=物品の「国籍」)を特定するためのルール
HSコード
HSコードは、輸出入の際に物品を分類する番号です。この番号から関税率、原産地規則を調べることができます。
HSコードは、「商品の名称及び分類についての統一システム(Harmonized Commodity Description Coding System)に関する国際条約(HS条約)」に基づいて定められたコード番号のことです。
■HSコードとは
原産地規則
FTAは、その締約国に対して、FTA域内の他国に一律適用する関税率より特別に低い関税率(FTA特恵税率)を適用することを約束します。
このFTA特恵税率を適用できる締約国産のモノ(原産品)であるかどうかを判断するために、他国のモノとの線引きが必要になります。
他国産の産品のすり替えや迂回貿易を回避するため、全てのHSコードについて原産地規則がFTAで規定されています。
わが国の原産地規則の主な規則の概要を説明します。
〈原産地規則〉…ある産品の原産地を特定するためのルールで、以下3つの規定があります。
原産地基準 | FTA税率の対象となる原産品となるための基準 |
積送基準 | 輸出国から輸入国までの間の運送について満たすべき基準 |
原産地手順 | 税関に原産地基準を満たしていることを証明するための手順 |
〈原産地基準〉…以下3類型があります。
完全生産品 | 1つの国で生産が完結する産品(自然から得られたもの等) |
原産品である材料のみから生産される産品 | その国の原産材料のみで生産される産品(加工食品等) |
実質的変更基準を満たす産品 | 非原産材料を使用して当該締約国で生産される産品(鉱工業品や繊維製品等) |
〈実質的変更基準〉…以下3つがあります。
関税番号変更基準(CTC) | 使用する非原産材料・部品について、関税番号での「桁数の変更」ルールを満たせば、生産される産品は原産品である |
付加価値基準(VA) | 生産・加工等に伴い形成された付加価値が一定の基準値を超えた場合に、当該産品に原産資格を付与する方法 |
加工工程基準(SP) | 特定の生産・加工工程が実施された場合に、当該産品への原産資格を付与する方法 |
CTC:Change in Tariff Classification VA:Value Added SP:Specific Process
■わが国のFTA原産地規則
■原産地規則ケーススタディ
特定原産地証明書
原産地規則に照らして原産資格があると判断された場合、特定原産地証明書により、その資格を輸入国税関に証明する必要があります。
特定原産地証明書の発給申請に関する手続きは以下の手続きになります。
輸出国 | ①企業登録 | 指定発効機関(日本では商工会議所)への企業登録 |
②原産品の判定依頼 | 指定発効機関に産品が原産品と認められるかの審査を依頼 | |
③原産地証明書の発給申請 | 「特定原産地証明書」の発給申請 | |
④原産地証明書の送付 | 「特定原産地証明書」を取得し、輸入者へ送付する | |
輸入国 | ⑤原産地証明書の申告 | 輸入者が税関に輸入申告する(「特定原産地証明書」の提出) |
⑥減免された税率の適用 | 減免された関税率の適用 |
■特定原産地証明書の発給手続き
FTA関税を調べてみる
各国(税関)で輸入や輸出の際に課される税を関税 といいます。主に輸入国が課す輸入関税のことをさすことが多く、商品によっては大きなウェートを占める場合もあり、取り扱い商品の関税率を確認することは輸出入取り引きの基本です。
世界各国の関税率を調べる方法は、各国(175カ国)の関税率が無料で検索できるデータベースWorldTariff、世界各国の関税率表、各国税関などのウェブサイトなどがあります。
【WorldTariffでFTA関税を調べる】
JETROのWebサイトからWorldTariffの関税率情報データベース検索サイトへのアクセスが可能です(日本の居住者はどなたでも無料で利用できます)。
WorldTariffは米国FedEx Trade Networks社が提供している世界の関税率情報データベースです。
世界175カ国を収録しており、品目別の関税率(MFN税率(通常適用税率)、原産地国別の最低適用税率)と輸入時にかかる諸税(付加価値税・売上税・酒税など国により異なる)を調べることができます。英語表記で注記や脚注のフォームが統一されており、同一商品の各国の関税率を比較する(同時比較は3カ国まで)ことが可能です。日本から各国へ輸出する際の輸入国側関税率だけでなく、タイから中国へなど外国間の輸入関税率が調べられます。検索方法は品目分類(HS)番号と英語の商品名の2種類が用意されています。
FTA税率適用効果のケーススタディ
FTA適用効果について、もう少し現実のサプライチェーンに即したケースで見てみましょう。以下のようなサプライチェーンモデルを仮定して、FTA効果の違いを学習してみましょう。
サプライチェーンモデル(ベースケース X) |
・部材は日本、マレーシア、フィリピン、中国で製造
・製品のアセンブリはタイで行う ・完成品をベトナムで販売する |
このサプライチェーンモデル(ベースケース X)で適用するFTAシナリオを2つ設定しました。
日本とASEANのFTA(AJCEP)を主体とするシナリオの“シナリオA”と、ASEANのFTA(AFTA)を主体とするシナリオの“シナリオB”です。
この2つのシナリオによるコスト比較により、適用するFTAの選択が企業のコスト構造にどのような影響を与えるかについて考えてみてください。
シナリオA |
・日本とASEANのFTA(AJCEP)の活用を主体で
考えるもの ・中国からのタイへの輸出は、中国とASEANの FTA(ACFTA)を活用 |
シナリオB |
・ASEANのFTA(AFTA)の活用を主体で考える
もの ・日本からのタイへの輸出は、日本とタイの FTA(JTEPA)を活用 ・中国からのタイへの輸出は、中国とASEANの FTA(ACFTA)を活用 |
■FTA税率適用効果のケーススタディ
Source: 株式会社ロジスティック嶋 正和氏資料
(→次へつづく)
FTA税率適用効果のケーススタディ(続き)
(→前項からのつづき)
サプライチェーンモデル(ベースケース X)で2つのFTA適用シナリオ(AとB)別のコストについて比較して見ましょう。
さて、コストはどう変わるのでしょうか。コストシュミレーション結果の一例を示したのが下の図です。
同じ部材を使って同じものを作ってもコストが違ってきます。シナリオBにおいては、現状コストの約15%が削減できています。関税によるコスト削減の効果を実感できるのではないでしょうか。
(シュミレーションは、実際に使用する部材や製品の関税により様々な結果になります)
(関税削減効果を理解し易くするために部材費やアセンブリ付加価値はどれも同じにしてあります)
■FTA税率適用効果のケーススタディ(続き)
Source: 株式会社ロジスティック嶋 正和氏資料
TPPが採用する完全累積制度
TPP協定においては、複数の締約国において、付加価値・加工工程の足し上げ(累積)を行い、原産地を判断する「完全累積制度」(ACU:Accumulation)が採用される予定です。
この制度を活用することで、企業がサプライチェーン設計の自由度を飛躍的に高めることができます。生産工程が複数国にまたがってもTPP参加12カ国内で生産された物品は「メイドインTPP」と見なされ、関税優遇を受けられます。商品がどの国で作られたかを特定する「原産地規則」と呼ばれるルールにおいて「完全累積制度」が実現するからです。商品の生い立ちが細かく問われる煩わしさから解放され、部品の供給網が広がれば、優れた加工技術を持つ日本企業の輸出競争力は一層高まると言えます。
■TPPが採用する完全累積制度
TPPが採用する自己証明
日本のFTAは「第三者証明制度」と言われ、日本から産品を輸出する場合は、日本商工会議所に原産性の判断を受けた上で輸出の都度、原産地証明書の発給を受けるという手続きを取っています。
しかし、TPPでは生産者や輸出者、または輸入者自らが原産確認、証明書作成・申告する事ができる「自己証明制度」が適用される予定です。そのため今までのような貿易手続き改善が期待できる一方、輸入国税関側からの問合せ照会に対応できる体制構築が企業に求められます。さらに原産性判断書類の保管を含め、コンプライアンス対応などの社内管理体制を十分にする必要があります。
〈第三者証明制度〉
輸出者や生産者が輸出国発給当局(あるいはその指定機関)に申請し、原産地証明書を取得、それを輸入者に送付し、輸入者が輸入国税関にその原産地証明書を提出することで、原産品であることを証明する制度です。
〈自己証明制度〉
貨物の輸入者、輸出者または生産者自らが、原産品申告書を作成し、輸入者が輸入国税関にその原産品申告書を提出することにより、原産品であることを申告する制度です。
■日本のFTAの多くが採用する第三者証明とTPPが採用する自己証明
まとめ:FTA適用は一日にして成らず
TPP/FTAは、物品市場アクセスすなわち物品貿易の自由化(関税の撤廃・削減)が進みます。また、新興国への投資促進や知的財産や競争政策等の調和といった面で企業業績向上に資するものは大きいと言えます。
しかし、このようなTPP/FTAのメリットは自動的に享受できるわけではありません。
企業として理解すべきは、「FTAの戦略的な価値」、「FTAルールの理解」、「業務プロセスと体制の確立」、「サプライチェーンの再検討」などです。これらの課題の正確な理解なしに、TPP/FTAのメリットを享受する事はできません。
さらに、TPPでは「完全累積制度」や「自己証明制度」など新しいルールへの対応が必要になります。外部の専門家(FTAコンサルやサプライチェーンベンダー等)のサポートも視野に入れた、TPP/FTA対応のロードマップ作りが急務だと考えます。
■FTA適用は一日にしてならず
TPP/FTA適用のメリットは自動的に享受できるわけではないのじゃよ。
2016年、今から準備を始めるべきじゃな。
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