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2ページ目|第5回 「行動へのフォーカス」が実効性あるリスクマネジメントを実現する|システム構築やトータルソリューションをお探しなら、日立ソリューションズをご利用ください。

2ページ目|第5回 「行動へのフォーカス」が実効性あるリスクマネジメントを実現する
第5回 「行動へのフォーカス」が実効性あるリスクマネジメントを実現する

安全に必要なものは何か、「行動」の仕組みづくり

多くの企業はこれまでも、安全性確保のために努力してきました。現場ごとに会議をする、危険行動を禁止する通達を回す、といった意識改革を促すものから、消火器具を多数配置する、落下防止柵を設置する、などのハード面の対策まで、さまざまな手を打ってきたはずです。ここで私が推奨する「組織行動セーフティマネジメント」は、これまでの既存の対策に科学的な要素を加えることにより、企業の安全性レベルを著しく押し上げるものなのです。では、安全性に何が足りなかったのでしょうか。

まず考えられるのは「安全な作業条件と設備」「安全な作業手順」「安全性の訓練」という3つですが、きちんとできている企業でもケガ人が出るような事故は起こります。あと1つが、重要な「確実に正しい行動をとらせるシステム」。例えば、重い部品を持ちあげる時のための安全装置があります。その使い方を従業員に周知させ、使用する訓練を受けさせていても、従業員は安全行動の手間を惜しんだり忘れたりすることがあります。こうした習性を持つ人間に、危険につながる行動をやめさせ、いつも安全な行動をとらせるためには「行動」の仕組みをより深く理解することが必要なのです。

安全対策を徹底するためには「PST」の結果が重要
安全対策を徹底するためには「PST」の結果が重要

組織行動セーフティマネジメントが基礎を置く行動科学理論では、「ABCモデル」を軸として人々が行動を起こす理由を定義しています。このうち人の行動(B)は、先行条件(A)よりも結果(C)に左右される、ということは以前に説明しました。加えて、人の行動に大きな影響を与える「結果」については、3つの要素「タイプ(行動する人自身にとってポジティブかネガティブか)」「タイミング(即時か即時ではないか)」「確率(確かか不確かか)」があり、すべての結果はこれらの組み合わせとなります。結果がすぐに確実に現れるほど、行動に与える影響は大きく、すなわち職場の安全対策を徹底させるためには、「PST(ポジティブ・即時・確か、の頭文字をとったもの)」の結果が重要な意味を持ちます。ここに着目すると、なぜ危険につながる行動をとってしまうのかが、よく見えてくるのです。

1人のオペレーターを例にすると、工場の機材を操作する際に、既定の安全基準から外れたスピード違反をしていました。この行動には、考えられる結果として、「早く仕事を終わらせることができる(=PST)」「面白くて興奮する(=PST)」「仕事を予定通りに進めることができる(=PST)」などポジティブな面がある一方、「生産性が上がり上司からほめられる」というポジティブでも不確実な結果や、「自分や他人がケガをする」というネガティブで不確実な結果など、危険な行動をとることによって、不確かなものも生じ得ます。つまり「安全」を意識して行動させるにしても、危険行動を抑制するには影響力が弱く、その影響力をはるかに上回る“おいしい”結果があるために、オペレーターはつい危険行動をとってしまうのです。

従って企業活動を真に安全なものにするには、従業員1人ひとりから、危険行動を消去し、安全行動を引き出してくことが必要になります。上記の例で言えば、やはり「早く仕事を終わらせることができる」などのPST結果が人を動かしているため、この結果要因を解決していかなければ、スピード違反という危険行動は繰り返されることになります。よって、経営者やリーダーが徹底した指導を行うだけではこと足りず、リーダーの強い覚悟と、安全行動を繰り返したくなる仕組みをつくることが必要です。部下に対して「火の始末に注意しろ」と言っておきながら、そのリーダーの机の上に灰皿があるのでは話になりません。タバコの不始末が怖いのであれば、例えば防火設備の整った喫煙室を設け、その部屋以外では喫煙できないような仕組みをつくること。環境を整え、具体的行動を教えれば、それができるようになります。

そして企業の安全を確かなものにするには、徹底した「サーベイ(調査・測定)」を行う必要があります。現場の状況や資料に基づき、誤りなく丁寧に調べあげるのです。「最近、工場での事故が増えた」「このところ、クレームがよく上がってくる」という漠然とした現状認識では、危険行動は消去できません。ここで大事なのは結果ではなく、行動レベルにおける数値化です。タバコの火の不始末であれば、ボヤが起きた回数より、危険につながりかねない場所で従業員がタバコを吸っている回数を把握すること。結果以前の行動こそポイントです。把握できた後は、「するべき」行動を習慣化・定着化させます。ビジネスに圧倒的なスピードと変化が求められるいま、些細な行動が大きな致命傷へとつながる前に「行動にフォーカス」したリスクマネジメント方法を取り入れてください。

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