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第2回「健康」の安心 前編| 次の情報セキュリティのヒントがここに つくろう!安心ニッポン|システム構築やトータルソリューションをお探しなら、日立ソリューションズをご利用ください。

第2回「健康」の安心 前編
安心のつくりびと 嘉糠 洋陸 先生
東京慈恵会医科大学教授
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聞き手 ひろた みゆ紀さん
フリーアナウンサー
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変わり続ける感染症のリスク

嘉糠 洋陸 先生

ひろた

嘉糠先生は、東京慈恵会医科大学の熱帯医学講座の教授として、基礎医学の視点から感染症の研究に取り組んでいらっしゃいます。今日は、よろしくお願いいたします。

嘉糠 洋陸 先生

よろしくお願いします。

ひろた

早速ですが嘉糠先生、昨年、デング熱やエボラ出血熱など感染症が数多くニュースになりましたが、感染症のリスクから身を守るために、私たちはまず何に気を付けなければならないでしょうか。

嘉糠 洋陸 先生

まず初めのステップとして、感染症のリスクはつねにある、と「受け入れる」ことでしょうか。

ひろた

え?感染症のリスクを受け入れるとは、具体的に言うと?

嘉糠 洋陸 先生

一人で部屋に引きこもって他の人や動物を寄せ付けないようにすれば、リスクをかなりゼロに近づけられると思いますが、無理ですよね。

ひろた

無理です。人に会わなきゃ仕事になりませんし。

嘉糠 洋陸 先生

私たちの社会は、集団を大きくすることで発展してきました。しかし、感染症の病原体からすれば、宿主が密集しているのはとてもありがたいこと。

ひろた

人口が一極集中しているこの東京は、病原体にとって「しめしめ」という状態なんですね。

嘉糠 洋陸 先生

文明が進歩して人が自由に遠くへ移動できるようになった点も、病原体には有利に働いています。
今回、西アフリカでエボラ出血熱の感染が拡大した原因のひとつに、感染者の移動が挙げられます。エボラが発見されたのは1976年ですが、その頃、アフリカでは人々の移動範囲が狭く、そのことがある地域での感染が大きく拡がることを防いでいました。ところが、今は車などで簡単に遠距離を移動できます。そのことにより広範囲に感染が拡大したのです。
さらに世界に衝撃が走ったのが、飛行機によって感染者がスペインやアメリカに移動したことですよね。

ひろた

なるほど。いろんな要因でリスクはどんどん変わるんですね。

嘉糠 洋陸 先生

要は、リスクを100%排除することは無理なのです。だからまず「受け入れる」こと。それが第一のステップなのです。

リスクを上手く受け入れた日本

ひろた

昨年(2014年)の夏、国内で蚊が媒介するデング熱の患者さんが報告されたわけですが、先生はその時のリスク管理についてどんな印象をお持ちになりましたか?

嘉糠 洋陸 先生

デング熱のリスクを正しく「理解」して行動できた、という感想を持ちました。 リスクを「受け入れる」ことが初めのステップだとすると、次のステップはリスクを「理解」することだと私は思っています。

ひろた

「理解」ですか。どういう点で、そう思われたんですか?

嘉糠 洋陸 先生

厚生労働省は、最初の患者さんが見つかってすぐに、48時間もたたないうちに、「代々木公園で感染」と場所まで特定して発表しましたよね。その後も熱海や神戸など患者さんが出た場所の発表が毎日のようにあったわけですが、観光地が閑散とするとか、人々が家から出ないとかいうことはなかった。
デング熱は蚊を介して感染するものであり、人から人への感染はしない。そして感染しても重症化することは稀である。このようなデング熱についての情報をみなさんが、正しく理解した結果だと思います。
私たちはリスクへの対応に関して数年のうちにかなり前進したようです。

ひろた

数年前は、そうではなかったんですか?

嘉糠 洋陸 先生

2009年に世界的な新型インフルエンザの流行がありましたよね。当時、政府は絶対に日本に上陸させないという意気込みで、国際空港で機内検疫を行っていました。しかしその後すぐに、国内でも感染者が発見されたのです。
そしてマスクの売り切れにはじまり、観光地の風評被害や出張自粛…大きな騒ぎになりました。つまり当時の日本は新型インフルエンザのリスクを受け入れられず、したがって理解もできなかった。
だから病気が上陸したとたんにパニックになってしまったんです。

ひろた

そうだったんですね。でも、どうしてデング熱の時は、私たちはリスクを受け入れて、理解することができたんでしょう。

リスクの理解には情報が鍵

嘉糠 洋陸 先生

きめ細かな情報提供が成功したから、というのが大きいと思います。
リスクの「理解」とは、そのリスクの原因が何で、どれくらいの確率で起きて、起きたらどういうインパクトがあるか、把握することです。把握するためには情報が大事。そして把握できればリスクのコントロールが可能になります。
デング熱の報道があった昨年(2014年)も、皆さんはキャンプなどのアウトドア・レジャーを普通に楽しんでいました。同時にキャンプ場では蚊に刺されないように長袖を着て、家に帰った後も発熱に注意していたんじゃないでしょうか。デング熱のリスクに対して、バランスのとれた判断だと思います。つまり情報をもとにリスクを受け入れ、理解して、上手にコントロールしていたんです。

ひろた

なるほど。リスクを知り、恐れずにコントロールする。これが極意ですね。

嘉糠 洋陸 先生

それができれば「安全」につながります。でも「安心」はまだその先にある、と僕は思っています。

ひろた's VIEW

人を取り巻く環境が変わり、感染症のリスクが高まりましたが、情報セキュリティでも同じことが言えるのではないでしょうか。
企業と企業の交流が盛んな共創の時代になって、情報漏洩のリスクの種類は変わってきています。その時に大事なのは、「情報漏洩のリスクを100%排除することはできない」というリスクの存在を受け入れて、理解することなのではないでしょうか。そしてリスクを上手にコントロールする必要性を感じました。

プロフィール

嘉糠 洋陸 先生
東京慈恵会医科大学教授
1997年、東京大学農学部獣医学科卒業。
2001年、大阪大学大学院医学系研究科修了。
スタンフォード大学医学部研究員、東京大学大学院薬学系研究科講師、
帯広畜産大学原虫病研究センター教授等を経て、2011年より現職。

ひろた みゆ紀さん
1971年、岐阜薬科大学大学院薬学研究科 博士課程修了。日本食品安全協会理事長として、食と健康に関するアドバイスを行う「健康食品管理士」の育成に長年携わる。
また「多幸之介先生」のニックネームでウェブなどに「食」の問題を取り上げたコラムを執筆。臨床病理研究会奨励賞、坂幹夫賞、生物試料分析株式会社学会賞などを受賞。「長村教授の正しい添加物講義」(ウエッジ社)「健康食品学」(日本食品安全協会)「臨床化学」(講談社)など、著書多数。

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