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2ページ目|第3回 経済小説に経済の「今」を読む —もしも、今とは違う結果を望むのなら? その2—|幸田真音(作家)のマイン・スコープ|システム構築やトータルソリューションをお探しなら、日立ソリューションズをご利用ください。

第3回 経済小説に経済の「今」を読む —もしも、今とは違う結果を望むのなら? その2—
第3回 経済小説に経済の「今」を読む —もしも、今とは違う結果を望むのなら? その2—

国内外に向けた強いメッセージが重要

 いささか唐突な感じがあった今回の日本国債の格下げでしたが、直後に債券市場に仕掛け的な売り(カラ売り)が少し見られたものの、すぐに買い戻しがはいって、むしろ格下げによる影響は、一時的なもので済みました。これは、前回の格下げのときと同じです。

 ただ、無視できないのは、このニュースを受けて、ぶらさがりの記者会見で質問を受けた総理の発言でした。とくに驚いた様子もなく、「まだ聞いていなかった。そういうことに疎いので」と発言されるのを聞いたときには、さすがに唖然とさせられました。

 この発言は、さっそくさまざまな批判にさらされています。

 批判のポイントは、情報が速やかに伝わっていなかったなら危機管理上の問題ではないか、などですが、仮にも、総理大臣になる前は財務大臣だった人です。みなさんは、どう感じましたか?

 これで大丈夫なのかと、心配になったのは私だけでしょうか?

 かねてより、政治家にお会いするときによく感じていたことなのですが、「いやあ、僕は経済の分野は得意ではなくて」とか「金融の世界には疎くてね」と、笑いながらおっしゃる方が実に多いことです。

 もちろん謙遜もあるのでしょう。でも、この国には、妙な偏見がまだ残っているんですね。つまり、経済というのはカネ勘定である。だから、経済や金融に疎いということは、お金に疎いということ。それだけ「自分はクリーンなんだよ」、という発想です。

 え、と思われる読者もいるかもしれませんが、案外こういう政治家って多いんですよ。まあ、ご本人にとっては美学のつもりなのでしょうが、いまは、外交を含む政治と、国の経済との関係が、ますます緊密になっている時代です。

 先進各国の景気低迷を受け、それぞれが自国優先の保護主義に陥りがちな時代でもあります。そんななか、国際社会で強い発信力を持つためには、経済に「疎い」政治家では、話になりません。

 ましてや、日本の財政事情に世界が強い懸念を抱いているいま、総理大臣がこういう不用意な発言をしたのでは、みずから国債市場に売りのチャンスを提供していることになってしまいますね。

 財政問題を改善し、建て直すには、歳出削減ももちろんですが、それ以上に歳入をいかに増やすかが大切です。経済をどうやって活性化し、企業にも、国民にも、国の税収を担える力、税金を払っていける力、つまり「担税力」をつけていくことが不可欠です。

 税収を増やすとなると、すぐに税率を上げるという議論になりがちですが、税金を払うもとの収入を増やさなければ、国民生活が苦しくなるだけです。

 少子高齢化が進み、労働力の減少がはっきりしてくる日本で、企業の収益力増強や、個人の担税力アップのために、いかに需要を創出し、雇用のチャンスを増やしていくか。そういう包括的な構想力が求められます。

 だからこそ与党であれ、野党であれ、政治家たるもの、もっと経済に関するシャープさを備えてほしいと、切に願います。選挙の票集めのためのスローガンだけでなく、金融市場を正しく理解してほしい。現実に起きていることを真摯に認め、足を動かしてほしいものです。

 財政問題に苦しむ先進国のなかで、英国やドイツなど欧州各国が厳しい財政再建案を打ち出しているのに対して、米国や日本は金融緩和政策継続のため、さらに国債を増発して借金を膨らまそうとしています。

国内外に財政再建に向けて強いメッセージを発信し続けることが大切

 そのせいばかりではないのでしょうが、最近の日本国債の市場が、米国債の市場動向に影響を受けて動きがちなのも気になります。

 なぜなら米国債の格付けは、ドルが基軸通貨であることを背景にずっとAAA(トリプルA)の座を保ってきましたが、今後2年以内には格下げされるかもしれないという懸念があるからです。もしもそうなれば、発行残高の半分以上を米国外で保有されているだけに、ショックも大きく、日本への影響も少なくないはずです。

 だからこそわが国は、国内国外に向けて、「われわれは財政規律を守る」、「財政再建に向けて長期的な目標を掲げ、その実現にベストを尽す」。そういった強いメッセージを常に発信し続けることが大切です。それだけでも、国債市場の暴落を防ぐ効果は大でしょう。

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