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3ページ目|第3回 経済小説に経済の「今」を読む —もしも、今とは違う結果を望むのなら? その2—|幸田真音(作家)のマイン・スコープ|システム構築やトータルソリューションをお探しなら、日立ソリューションズをご利用ください。

第3回 経済小説に経済の「今」を読む —もしも、今とは違う結果を望むのなら? その2—
第3回 経済小説に経済の「今」を読む —もしも、今とは違う結果を望むのなら? その2—

世界が注目する日本の国債市場

 ところで、『日本国債』で書いた「未達」が、実際の市場で本当に起きたことを前回の終わりで少し触れました。

 2002年9月20日のことでしたが、それを受けて一番反応が早かったのが海外メディア、英国のフィナンシャル・タイムズの記事でした。その日の夕方、ロンドンの友人からメールが来て、「あなたのことがFTに出てるわよ」というのです。

 「国債入札の失敗を予測して、何年か前にそれを小説に書いていた作家がいる」といった内容だったと思います。さっそくFT社に電話をしてみましたら、東京オフィスの記者が会いたいと言うので、急遽わが家で取材を受けることになりました。

 やって来るなり、アジア系アメリカ人の女性記者が言いました。

 「私の上司が、日本の国債はいつか暴落する、いつか暴落する、といつも言っている。でも、なぜかまだそれは起きない。どうしてなのですか?」

 私自身への詳しい取材ももちろん受けたのですが、大半は日本国債ならではの特異性について、レクチャーをすることになったのです。

 小説『日本国債』は、のべ200人以上の関係者に丹念に取材をして書き上げた作品でしたが、刊行された途端、今度は逆に私自身が200社以上に及ぶ内外メディアからの取材を受けることにもなりました。

 なかでも印象的だったのは、刊行直後にニューヨーク・タイムズの記者が取材にやってきたことです。大蔵省(いまの財務省)の門の前で、拙著『日本国債』の上下刊を手に持って、イギリス人のカメラマンに撮影された写真が、でかでかと紙面に掲載され、記事としてもかなり大きな扱いを受けました。

 イギリスのBBCのラジオ放送にも、三つの番組に出演しました。自宅から電話でロンドンとつないで国債を語る生番組にも出たり、当時スタートしたばかりの小泉政権についてコメントを求められたりもしました。

 ただし、国内メディア向けの発言とは違って、慎重に言葉を選んで語ったのを覚えています。なぜなら、うっかり日本の国債市場は危ないなどと強調して、市場に思わぬ暴落を招いてはいけないと心配したからでした。

 ニューヨーク・タイムズの記事をネットで見たと言って、海外の読者からもメールが次々と届きました。ウォール・ストリート・ジャーナルなどの米国紙や、米国雑誌だけでなく、イタリアの大手経済紙や、フランスの雑誌、ほかにはブラジルやタイ、ノルウェーの新聞などからも取材を受けました。

 日本の国債市場に対する世界の関心がこれほど高かったのかと、あらためて驚かされる思いでした。

 日本国債は、その約95%を国内の投資家が買っているので、問題ないのだとずっと言われてきました。ただ、いまのままの状態がこの先も続けば、いずれは国債の大量発行は消化しきれなくなるときが必ずくるでしょう。

国債の安定的な買い手であった日本の機関投資家は買い余力が低下

 長いあいだ、国債の安定的な買い手であり、長期保有者だった日本の機関投資家、たとえば年金基金や生命保険会社などは、買い余力が低下しています。高齢化が進み、年金や保険の支払いに資金を回す必要が増えてきたからです。

 それがいつ起こるのか、予測はとても難しいのですが、もしも起こるとしたら、耐えに耐えた堤防があるとき突然決壊するように、そのときを迎えることでしょう。

 国債の価格が急落し、長期金利が急上昇したら・・・。

 20年近くも低金利に慣れ切ってきた社会は、いまは金利そのものに対してとても脆弱になっています。総理発言ではありませんが、金利に対する感度がとても「疎く」なってしまったいまの社会で、突然の長期金利の上昇がもたらす影響は、はかりしれないものがあるはずです。

 私が現役の債券ディーラーだったころ、まだ利率8%の10年物国債なんていうのが残存していた、というと驚かれるでしょうか?

 たとえば、日本国債の先物市場というのがありますが、そこでは一定の条件のバーチャルな国債を設定して、3月、6月、9月、12月の20日といった将来の受け渡し日の価格で取引を行なっています。その国債は利率6%、額面100円の10年物の利付国債だとご存じですか?

 どうしてこんなに高い利率のモデルにしたのだろうと、不思議に思われるかもしれませんが、東京証券取引所に国債の先物市場が誕生した1985年のころ、当時の長期国債市場がその利回りレベルだったからにほかなりません。

 では、金利って、いったいなんなのだろう?

 誰が、どうやって決めるのかしら?

 そんな疑問を持たれる方も多いのではと思いますが、このあたりのお話は、また来月。

次回

第4回   金利のメカニズム

政府や日銀の金融政策、他国の長期金利の動向など、さまざまな経済活動と深く関連しながら変動する金利。次回は金利の上げ下げのメカニズムなどを通して、経済、そして社会の今を解説していただきます。

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