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2ページ目|第4回 経済小説に経済の「今」を読む —本質を見極める目とは?—|幸田真音(作家)のマイン・スコープ|システム構築やトータルソリューションをお探しなら、日立ソリューションズをご利用ください。

第4回 経済小説に経済の「今」を読む —本質を見極める目とは?—
第4回 経済小説に経済の「今」を読む —本質を見極める目とは?—

低金利政策の長期化が招いた年金問題

 いったい通貨ってなに? 金利ってなんなの?

 みなさんには、常にそういう意識を持っていただきたいと願っています。

 そして、そういったことをもっと多くの方々と一緒に考え、問題意識を共有したいと切に願って書いたのが、『日銀券』(上下・2004年新潮社刊)でした。

「失われた10年」、「いや、失われた20年だ」などという言葉をよく耳にしますが、バブル経済崩壊後、景気回復のために続けられた超がつくほどの低金利政策、ゼロ金利時代からさらに進んだ量的緩和策にいたっては、第3回でも触れたように、結果的に金利に対してきわめて感度の低い社会、つまり、金利の変化に対して脆弱な社会を作ってしまいました。

 そうした事態への強い危機感もあって、金融緩和策の「出口政策」をシミュレートする小説として、実社会の半年前を行くような形で週刊新潮に連載したのが『日銀券』でした。連載中は当時の日銀総裁はじめ、日銀幹部の方々にも熱心に読んでいただいたようです。

 2011年のはじめ、前日銀総裁福井俊彦氏と対談させていただいたとき、当時はひとつの「ガイドライン」として読んでいたとまで言われ、驚いたり感激したりしたものです。

 金利があまりに低いままだと、資産運用はとても難しくなります。年金問題が浮上してきた背景と、長引く低金利政策とは無縁ではありません。

長引く低金利政策によって年金問題が浮上

 ですから、低金利政策の陰の一面としての年金問題を描いたのが『代行返上』(2004年小学館・刊)でした。

 この作品では、企業年金が舞台でしたが、いろいろと取材を重ねているうちに、国側の専門機関による事務処理のあまりのずさんな現実を知り、私はいち早く小説のなかで訴えました。

 これはいずれ大きな社会問題になる。

 そんな危機感ゆえのことでしたが、案の定、この作品を書いたことで、私自身が大きな抵抗にも遭いました。

「こんなことを暴露して、社会を混乱させる気か」とか、「ホームで電車を待つときは背後に注意しろ」などと、雑誌に連載中から、実際に脅迫めいたメールなどが次々と届いたのもこのころでした。

 でも、事実は事実です。いまさら真実を歪める気はありません。いくら隠しても、いずれ国民は知ることになる。私はとうに覚悟を決めていました。

 単行本として刊行後、当時の国会、具体的には予算委員会だったと記憶していますが、そのころ野党だった民主党の政治家が、私の小説『代行返上』を会議場に持ち込み、高らかと掲げて、当時の与野、自民党の副大臣に「この話は本当か」と、説明を求める場面がテレビのニュースで放送されたりもしました。

 もっとも、国側の事務処理の不備にまで議論が進む前に、党首自身の年金未加入や、未納問題がマスコミによって発覚し、大きな話題になり、残念ながら問題の本質にまで議論が進むにはいたりませんでした。

 結局、ようやくこのあたりが注目されるようになったのは、それからさらに2年あまり経ったあと、2006年6月に「宙に浮いた5000万件の年金記録」として実態が発覚したときのことでした。

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