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【平成の世にサムライを探して】第十一回 星野佳路-後編-目指すは百戦百勝のリゾート再生請負人。|システム構築やトータルソリューションをお探しなら、日立ソリューションズをご利用ください。

星野佳路-後編-目指すは百戦百勝のリゾート再生請負人。

「リゾート運営の達人になる」を会社のビジョンとして掲げる 星野佳路さんの経営の詳細に迫る後編です。トップに就任したものの、最初の数年は日々の業務をまっとうすることに追われ、社内改革どころではありませんでした。しかしながら、少しずつ着実に進むべき路線を見出し、他には真似のできないリゾート運営手法を確立されるに至ります。その手法を武器に買収した大型リゾートを次々に再生へと導き、今また ゴールドマン・サックス・グループとの提携により、日本各地の温泉旅館、リゾートホテルをよみがえらせようと奔走されています。 「世界を魅了する日本独自のリゾート創生」が星野さんの目標です。

最初の数年は茨の道

星野佳路(ほしのよしはる)プロフィール
1960年、長野県生まれ。
慶應義塾大学経済学部卒業後、1986年米国コーネル大学ホテル経営大学院にて経営学修士号を取得。シティバンク勤務を経て91年1月、星野リゾートの前身である星野温泉の社長に就任。エコツーリズム、地ビール事業への進出、ブライダル事業路線の改革など次々と妙案を打ち出し、2001年以降は、リゾナーレ小淵沢(山梨県)、アルツ磐梯リゾート(福島県)、アルファリゾート・トマム(北海道)などの再建を手がけている。

星野さんが社長に就任したのは31歳のときである。さっそく抜本的な改革に着手できるかと思ったのだが、現実は甘くなかった。就任後の2、3年間というものは、それぞれの部署にスタッフを配置して日々の業務をまっとうするのに追われ、それどころではなかったからである。なぜそんなことになってしまったのか。ひとつは星野さんがトップになって、それに反発する社員が辞めていったということがある。しかし、それよりも深刻だったのが、重労働で、休みが少なく、待遇のよくないサービス業に人々が求職しなくなっていたという事実だった。人手不足が進んでいた。

その頃の星野さんの日課は、明日の館内の業務シフトを確認してまわることだった。フロントに人はいるのか。料理人はちゃんと揃うのか。できた料理をちゃんとお客様に出せるのか。毎日人のやりくりに頭を悩ませていたのである。

その一方で、少しでもスタッフのモラルを上げ、サービスを向上しようと、星野さんは気がついたことがあるとそのつどスタッフに告げた。しかし、ホテル旅館の経営を経験したことのない年若い社長のいうことを、スタッフはなかなか素直に聞こうとしなかった。いちばん衝突したのは料理人であった。たとえば、「この料理、味がちょっとおかしい」という。すると「おまえに俺の味がわかってたまるか」といった意味の言葉が出る。そこには「おまえみたいな若造に」という意味と「おまえみたいな門外漢に」という二つの意味がこめられていた。休憩の取り方や部下の管理について注意すると、いちいち反論が返ってくる。「前の職場では何人かケガしたことがありますが」といわれたこともある。

しかし、星野さんは一歩もひるまなかった。そちらがケンカで鍛えたというなら、こちらはアイスホッケーで鍛えている。このスポーツにはまた、たとえば“最初の5分で徹底的に相手をたたく”といったような、さすが氷上の格闘技らしい戦術が数多くあって、相手とわたりあう術には事欠かない。いくら乱暴な言葉を受けたところで、まったく恐いと思うことはなかった。

しかしながら、実績のない年若い社長のいうことに耳を傾けにくいというのは、ある意味しかたがないことである。何とかスタッフに目を覚ましてもらう方法はないかと考えに考えた末に思い至ったのが、顧客満足度調査だった。料理をおいしいまずいと感じるのは主観だが、同じ主観でも、社長の「まずい」は信じられなくても、お客様が「まずい」といったら、それはさすがに考え直すきっかけになるだろうと思ったのである。「みんなが何といっているか聞いてみよう」というわけだ。そして、星野さんはただちに顧客満足度調査を実施した。その結果、噴出してきたのは不満の山だった。料理がまずいだけではない。間の悪いサービスのタイミング。部屋の設備不足。予約のときの応対のまずさ。同社では0を中心に±3の7段階評価で顧客満足度を測ったのだが、このときの数値は1.47。

星野氏星野さんは今でもはっきりと覚えている。老舗温泉旅館を自認していただけに、スタッフにとってもそれはショックだったのだろう。めくれども厳しい指摘が続くアンケート用紙の束を、スタッフは食い入るように見入っていたという。そのときから同社では、この顧客満足度とともに、収益、環境という3つの数値をビジョン達成のための目標に掲げ、これが同社の企業風土として定着することになった。ちなみにそれぞれの具体的な目標値は、顧客満足度が2.5以上、経常利益が20%、NPO法人グリーン購入ネットワークによる環境への取組みの事業者評価ポイントが24.3(25点満点)。いずれも非常に高いレベルに設定されているのだが、「ビジョン達成のための目標なので簡単に達成できても困るのです(笑)」

その次に星野さんがナタをふるったのはブライダル事業だった。前編の冒頭で少し触れたように、星野リゾートの敷地内にある軽井沢高原教会は、若い女性の結婚式を挙げたい教会トップランキングの中に必ず入る人気の教会である。そこで目玉の一つになっていたサービスに対し、なんとなくミーハーな感じがしていて、危惧する部分があった星野さんは、マーケティング調査を実施した。すると20代前半の女性、つまり、まさにこれから結婚しようという女性の間で著しく不評だった。流行に左右されない、結婚式の本質に返ったブライダルビジネスをめざそうと思い始めていた星野さんは、そうであるなら止めたいと思った。しかし、表面上は絶好調のサービスである。さすがの星野さんも決断に2年かかったという。結婚式はきらびやかなイベントではなく神聖なセレモニーであるという認識のもと、他のブライダルメニューも全面的な見直しをかけ、本物志向の二人に理解してもらえる内容にリニューアル。これで顧客を失うならそれはそれで本望、という段階まで来たところでサービスの転換を決意、ミーハーなものではない、祝福に包まれた本質的な結婚式への転換を行っていった。

さて、結果はどうなったか。なんと挙式数が半分にまで減ってしまった。このときのブライダル事業の担当者が楽観的な性格の人間で、星野さんが心臓が止まりそうな思いで売り上げ表を見ているというのに、その向かいで「半分になりましたよ。まだいきますかね」と他人事のようにいっていた。しかし、幸いなことに、ここが下げ止まりだった。虚飾を排した本格的な教会式を望んでいた新郎新婦が全面的にリニューアルされたブライダルプランを支持、売り上げが徐々に回復していったのである。結婚式のときだけの教会ではなく、結婚したあとも二人の教会であり続けようと、「おかえりなさい」といつでも暖かくお二人、そしてあたらしく誕生したお二人の家族を迎えている。ここで式を挙げた二人が、夏休みや結婚記念日などのたびに軽井沢に戻ってきてくれるのだ。子供ができたら子供を連れて訪れてくれる。軽井沢をファミリーの始まりの地として愛してくれていることを、星野さんは何よりも喜んでいる。

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