【平成の世にサムライを探して】第十二回 大谷賢二-前編-カンボジアの地雷被害は、今この時間にも起こっている地球規模の問題。|システム構築やトータルソリューションをお探しなら、日立ソリューションズをご利用ください。
カンボジア地雷撤去キャンペーンの代表を務めておられると聞いて最初に思ったのは、きっと眉間に皺を寄せて生きておられる方なのだろうなということだった。深刻な話の連続となることを半ば覚悟してきたのだが、予想とまったく違っていた。話が重くないのだ。ドラマティックでもあり、悲惨な部分もあるのだが、聞くのがつらいというようなことはない。それはたぶんに大谷さんの巧みな話術とおおらかな性格によるところが大きいのだろう。構えていた気持ちが早々に消えた。
幼少の頃は、ちょこまかととにかくよく動く子どもだったそうだ。そのために大きなケガを三度も経験している。それもちょっとやそっとの大ケガではない。
最初は3歳の頃だった。幼稚園の遠足で、太宰府に行った時みやげに買ってもらった竹笛を丸椅子の上に立って吹いていた時、バランスを崩してしまった。笛をくわえたまま床へころげ落ち、笛がのどを貫通するほど突き刺さってしまったのだ。大量の血を吐いて倒れている彼を見つけ、お母さんは血相を変えて全力疾走で近くの外科病院にかつぎこんだという。
次は4歳の頃のことだ。当時お母さんは編み機を使った編み物を習っていた。一緒に連れて行かれた大谷さんは、退屈して部屋の中を走り廻っていて座布団に滑って転び、編み機のひっかけ針がまぶたを貫通して白目に突き刺さったのだ。危ないところだったがこの時もお母さんの介抱のおかげで失明を免れている。
そして、とどめというべき3度目は、小学校に上がる少し前、5、6歳の頃だった。小学校のそばに住んでいた大谷さんは、校庭で暗くなるまで友達と遊んでいた。ごはん時分になり、お母さんに大声で何度も呼ばれ、息せき切って台所に走り込んだ弾みでグラグラに沸いていた天ぷらの鍋をひっくり返してしまったのだ。沸騰した油を半ズボンでむき出しの下半身に浴び、大火傷をしてしまう。子供は体表の10%以上に熱傷を負うと生命に危険が及ぶというが、それをはるかに上回る50%近くの熱傷である。それから半年というもの、お母さんに抱かれて通院し、次々現れる水ぶくれの水を注射で抜いては、真っ白になるくらい薬を塗る日々が続いたという。今は不思議なくらいにきれいに治り、火傷の傷はみじんも残っていない。
いずれも、幸いにして一命を取りとめたとしかない言いようのない大ケガで今日生きているのが不思議なくらいなのだが、そんなことを感じさせないほど、大谷さんは誰よりも元気がいい。
こう聞いてくると、子どもの頃はやんちゃばかりの男の子だったようにみえるが、心は根っからのロマンチストで繰り返し大恋愛を経験している。その始まりが3歳のときだったというから驚きだ。最初は幼ななじみの女の子で、彼女とは幼稚園から小学校3年までずっと一緒のクラスだった。彼女は成績もよく運動神経もバツグンで通信簿はいつもオール5だった。小学3年生のときにはお互いに“結婚しようね”との約束までしたという。担任の先生も「あんたたちはいいねえ」と目を細め、いつも二人を応援してくれていた。残念なことに、大谷さんが3年生のときに転校してしまったのだが、それでも5年生までは大谷さんが彼女のもとに通う“遠距離恋愛”を続けていたそうだ。
その後新しい小学校でもクラス中からもて囃される恋愛をし、その子とは小学校5年生から高校1年まで続いていたが、高校が違っていたため、というか高校での新たな出会いにより自然に消滅する。高校は福岡県でも有数の進学校である県立福岡高校に進んだ。やりたかったラグビーが強かったことと、転校する前の小学校の学区であり昔の友人に会えるかもしれないという期待で大谷さんはあえて越境して福岡高校を受験したのだ。
出会いは突然訪れた。中学時代からの同級生の女友達とノートを貸し借りをしていた大谷さんは、同級生に付き添ってきた彼女を見て“運命”を感じたという。ところがその彼女も大谷さんを見た瞬間「ハッ」としたが、親友の大切な人なので「好きになってはいけない人」だと思ったという。しかし、2年に進んだ時2人はついに同じクラスになり、またしても大谷さんと彼女は学校公認の仲になった。
福岡在住の成績優秀な高校生にとって、定番の進学コースの一つは、九州大学に進むというものである。文芸部時代、大谷さんのことを小説や詩に書いていた彼女は九大文学部へと進んだ。ところが大谷さんは花園での高校ラグビー全国大会が受験直前の1月のため、受験勉強はそこからのスタートである。大谷さんは試験科目が3教科しかなかった慶應義塾大学へと進んだ。ところが、大学生になった大谷さんを待っていたのはつまらない生活だった。「あなたにずっとついていく」と言ってくれた彼女のいない異郷の地での大学生活ほど空しいものはなかったのだ。
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