【平成の世にサムライを探して】第145回 海上・港湾・航空技術研究所 電子航法研究所 主幹研究員 伊藤恵理「世界のパイオニアたちと「次世代の航空管制」をつくっていく」|システム構築やトータルソリューションをお探しなら、日立ソリューションズをご利用ください。

平成の世にサムライを探して 

【平成の世にサムライを探して】第145回 海上・港湾・航空技術研究所 電子航法研究所 主幹研究員 伊藤恵理「世界のパイオニアたちと「次世代の航空管制」をつくっていく」

半世紀以上前につくられた航空管制の仕組みを新しい時代に合わせて刷新していくこと──。それが、海上・港湾・航空技術研究所 電子航法研究所の伊藤恵理氏のミッションである。「空は一つ」をモットーに、世界を飛び回りながら航空管制科学の研究に従事している伊藤氏が描く未来の航空管制とは。

飛行機を安全に効率よく運行させるために

伊藤恵理(いとう・えり)プロフィール

1980年京都府生まれ。
東京大学大学院博士課程修了(航空宇宙工学専攻)。
ユーロコントロール実験研究所、オランダ航空宇宙研究所、NASAエイムズ研究所などを経て、海上・港湾・航空技術研究所 電子航法研究所の主幹研究員に。
国際航空科学会議(ICAS)の若手部会の議長も務める。
著書に『空の旅を科学する』(河出書房新社)がある。

ライト兄弟がガソリンエンジンを搭載した飛行機で有人飛行に成功したのは1903年のことである。それから100年余り。現在では、常時平均6000機ほどの飛行機が世界の空を飛んでいる。人数にすれば、およそ100万人が常に空の上にいる計算になるという。

今後、アジアをはじめとする各国の経済が発展していけば、この数はさらに増えていくことになる。増大していく航空機をいかに安全に、効率よく、かつより少ない燃料で運行させていくか──。それが、「次世代の航空管制」の最大のテーマだ。

伊藤恵理氏が飛行機に興味を持ち始めたのは幼少の頃だった。「空を見上げながら、飛行機に乗って自由に冒険することをいつも想像しているような子どもでした」と彼女は振り返る。宮崎駿監督のアニメ映画『紅の豚』に出てくる女性の飛行設計技師フィオに憧れ、さらに飛行機への思いを募らせた。

伊藤恵理氏の画像
伊藤恵理氏

大学では航空工学を専攻し、大学院でさらに研究を続けた。航空機の運航をコントロールする方法を研究する「航空管制科学」に出合ったのは、博士課程に進んでからだ。2006年、スロバキアで開催されていた国際会議に参加して、航空機の管制に関する学問分野があることを初めて知った。

当時欧米では、新しい時代の航空管制システムを模索する動きがスタートしていた。2003年に国連の専門組織である国際民間航空機関(ICAO)が「グローバル航空交通管理運用概念」を発表し、続いてアメリカで「NextGen」(ネクスジェン)、欧州では「SESAR」(セザール)という新しい航空管制システムの構築がスタートした。日本ではやや遅れて、2010年から「CARATS」(キャラッツ)と呼ばれる計画が始まっている。

「航空管制の新しい流れに偶然巻き込まれたわけです。これから発展していく新しい分野で、世界のパイオニアたちと一緒に研究できる機会はなかなかない。そう思いました。この研究分野にのめり込むまで、それほど時間はかかりませんでしたね」

航空管制における「自動化」の在り方

色分けした旗を手に持った「フラッグマン」が、旗を振ってパイロットに離着陸のサインを送る。それが最も初期の航空管制のスタイルだった。その後、管制塔からライトガンで合図を送り、無線でパイロットと通信する仕組みが導入された。

航空機の数が増え、エアライン会社が設立されると、それぞれの会社の飛行機の航路を調整する必要が出てきた。当初は、航空地図に将棋の駒のようなものを置くことで、飛行機がどこを飛んでいるかを表していたという。

航空機の世界には人間が検証できない領域があってはいけない
航空機の世界には人間が検証できない領域があってはいけない

日本の航空管制が一気に近代化したのは、第二次世界大戦後のことだ。技術的にはレーダーが導入され、制度の面では各国の政府が航空交通を管理するようになった。

「航空管制システムの基盤がつくられたのは、1950年代から60年代にかけてです。それを21世紀にふさわしい形にしていく取り組みが、現在各国で続けられています。私の研究のミッションは、2025年までに羽田空港の新しい到着管理システムを考案することです。離着陸の時間間隔を短くしたり、飛行機の軌道を自動調整して燃料を節約できる仕組みを導入したり、安全を確保しながら日本の空の交通容量を増加させることをめざしています」

現在、自動車の自動運転、金融、工場、流通・小売り、医療、サービスなど、社会の広範な分野でAI(人工知能)の活用が進んでいるが、伊藤氏が取り組む次世代の航空管制の仕組みにおいても、高度な自動化の導入が重要な役割を果たすと見られている。ただし、「自動化」という言葉には注意が必要だと伊藤氏は言う。

「例えば、AIが管制官代わりのロボットとなって、管制が完全自動化する。そんな見通しを掲げる人もいますが、私はそれには懐疑的です。現状の航空管制を学習したAIが現在の管制官の能力を超えるとは思えないからです。むしろ、航空機側に搭載された新しい自動化システムが、自分の判断で離着陸をスムーズにするような航空管制の自動化が進んでいくと考えられます」

AIを語る際にしばしば言及されるのが、強化学習や深層学習などAIが“自ら学ぶ”機能だ。しかし、その学習機能によってブラックボックスが形成されることは、航空管制においては絶対に避けられなければならない。そう伊藤氏は強調する。

「航空機の世界では安全が第一です。安全を守るためには、人間が検証できない領域があってはいけない。入力に対するアウトプットが予測できて、人間が完全にコントロールできる。そんな自動化をめざす必要があります」

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