【平成の世にサムライを探して】第151回 鳥類学者/国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所 主任研究員 川上和人「なぜ、鳥は空を飛ぶのか ――空間と時間を超えて鳥類の謎に挑み続ける」|システム構築やトータルソリューションをお探しなら、日立ソリューションズをご利用ください。

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【平成の世にサムライを探して】第151回 鳥類学者/国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所 主任研究員「なぜ、鳥は空を飛ぶのか ――空間と時間を超えて鳥類の謎に挑み続ける」

身近にいるが、その生態についてよく理解しているわけではない。私たちにとって鳥とはそんな存在である。その鳥類の謎を明らかにすべく、無人島やジャングルに足を運んで調査を続けているのが鳥類学者の川上和人氏だ。どのようにして鳥は恐竜から進化したのか。鳥はなぜ空を飛ぶようになったのか。なぜ鳥類の秘密に挑み続けるのか──。気鋭の研究者が熱く語った。

知られていないことが多い鳥類の世界

川上和人(かわかみ・かずと)プロフィール

1973年大阪府生まれ。東京大学農学部林学科卒。同大学院農学生命科学研究科中退。農学博士。国立研究開発法人森林研究・開発機構森林総合研究所主任研究員。著書に『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』『美しい鳥 へンテコな鳥』『そもそも島に進化あり』『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』など。図鑑の監修も多い。

※黒字= 川上和人氏

川上和人の画像
川上和人氏

── 文章がとても個性的で面白いと評判です。

僕たちは税金で研究をさせてもらっていますから、論文によって学術界に研究成果を知らせるだけでなく、一般の皆さんにも研究の内容や結果を報告していかなければなりません。世の中の役に立つ研究は、放っておいても情報が広まっていきますが、鳥類学のように何の役に立つのかよく分からない研究分野は、こちらから積極的にアピールしていかないと興味を持ってもらえません。ですから、面白がってもらえる文章を一般雑誌に書いたり、書籍を出したりして、できるだけこの学問分野の意義を広めたいと思っています。

── 研究者になったのは、宮崎駿監督の『風の谷のナウシカ』の影響だったとか。

映画を観たのは小学生の時で、あれで環境に対する関心が芽生えましたね。あの作品の影響で生態学者になった人は少なくないのではないでしょうか。大学では林学科に進んで、森林動物を研究分野に選びました。その頃はまだ鳥の研究がしたかったわけではなく、生物間の相互作用に興味があったんです。そこから専門分野を絞っていく中で鳥類が対象になりました。

── 鳥類学の中にもいろいろな専門的な領域があるのですか。

鳥類学に限らず、生物に関する学問分野は非常に細かく分かれています。僕の場合、研究分野でいうと、野生動物学、保全生態学、生物地理学などにわたっていますし、海にいる鳥も陸にいる鳥も対象にしています。また、観察するだけではなくDNAの研究もしています。元来が飽きっぽい性格ということもあり、いろいろな領域に携わっていたいと思っています。

── その中で特に関心があるのは。

興味の中心は、鳥が生態系の中でどういう機能を持っているかということですね。それから、鳥が恐竜からどう進化してきたかということにも非常に関心があって、恐竜についての文章を書いたり、講演をしたりしています。

── 鳥類学研究の一番の醍醐味は何ですか。

これらは鳥類学に限らないことですが、新しい発見をした時に、それを知っているのは世界中に自分一人しかいないこと。これが研究の第一の醍醐味で、それを論文にして発表することで、褒めてもらえたり、共感してもらえたりすることが第二の醍醐味です。
鳥類学独自の面白さというと、他の生物学の分野と比べても、鳥に関しては知られていないことが多いので、まだまだ新しい発見があり得ることです。例えば、渡り鳥の存在は誰もが知っていますが、それがどのようなルートをたどって日本に来て、どのようなルートで次の目的地に行くのかはあまり知られていません。何しろ、鳥は飛んでいってしまいますから、観察できないわけです。最近では、大型の鳥にセンサーをつけて行動を追うといったことも可能になっていますが、小型の鳥ではまだまだ調査は難しいですね。

海鳥がつくった孤島の生態系

── これまで、火山、ジャングル、無人島など、非常に過酷な環境で研究をしてこられたそうですが、特に面白かったところはどこですか。

小笠原諸島の一部である南硫黄島ですね。人が住んだことがなく、野生の状態が保たれていて、立ち入りが禁止されている「原生自然環境保全地域」が日本には5カ所あります。うち4カ所が人の生活エリアと地続きになっているのに対して、南硫黄島だけが完全に隔離された環境にあります。アクセスするには、環境省からの立ち入り許可をもらったうえで、船をチャーターし、さらに断崖が海岸から切り立っているのでアルピニストに同行してもらわないと山に登ることもできません。ここまで隔離された環境にある島は、世界的に見ても珍しいと思います。

── そこでどのようなことを研究するのですか。

特に注力しているのは、海鳥を媒介とした物質循環の研究です。南硫黄島では、海でいろいろなものを食べた海鳥が陸地に飛来して、地上で繁殖しています。なぜ繁殖できるかというと、鳥を捕食する地上性哺乳類がいないからです。鳥たちの糞にはリンや窒素が含まれています。これらは、植物の肥料になる栄養素です。鳥による栄養塩供給による物質循環が生態系を支える基礎になっているのだと僕は考えています。

── 西之島でも研究されていますね。

小笠原諸島の一部の西之島も海鳥が繁殖しています。この島は火山の噴火により新たな大地ができていますが、今後海鳥の繁殖分布が拡大していくと考えられます。これに伴い、海鳥の糞による栄養塩の供給や、羽毛についた植物の種子による種子散布などの機能が発揮され、何もない大地に生態系が成立していくだろうと考えられます。このようなストーリーの検証は、外来種に侵されていないまっさらな生態系でしかできません。

── では、これまでの研究対象で珍しかった鳥は何でしょうか。

オガサワラヒメミズナギドリです。日本で最後に鳥の新種が見つかったのは、1981年のヤンバルクイナですが、オガサワラヒメミズナギドリは、新種に近いレベルの珍しい鳥で、現在、営巣地が確認されているのは世界中で小笠原だけです。数は2桁しかいないとみられています。
海鳥は長距離を飛ぶことができて、場合によっては1日に1000km移動することもあります。しかし、島から移動しない鳥もいます。小笠原諸島に生息するメグロは、飛翔能力がありながら島から移動しません。ヤンバルクイナのように、飛翔能力を失う鳥もいますが、メグロは飛べるのに、すぐ近くにある他の島には決して行かない。その理由は今のところ全く分かっていません。

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