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【平成の世にサムライを探して】第六十八回 横山幸雄 音楽家としての生きざま〜音楽を愛し、学び、奏で、伝えていく|システム構築やトータルソリューションをお探しなら、日立ソリューションズをご利用ください。

横山幸雄 音楽家としての生きざま〜音楽を愛し、学び、奏で、伝えていく

ショパン国際コンクール入賞から20年。 ピアニスト横山幸雄は、時に第一線で活躍する演奏家として、時に辻井伸行ら未来ある後進の指導者として音楽にその身を捧げてきた。作曲家の思いを解釈し演奏する表現者の面と、生徒を教え導いていく教育者の面とは、横山氏の中でどのようにバランスが取られているのだろうか。

ショパンの曲を弾き続けることの喜び

横山幸雄(よこやまゆきお)プロフィール
1971年東京生まれ。東京芸術大学附属高校入学後、87年にパリ国立高等音楽院に留学する。90年、ショパン国際コンクールにおいて日本人としては歴代最年少で3位に入賞。現在は、上野学園大学教授、エリザベト音楽大学客員教授を務める。ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで優勝した辻井伸行の担当教官としても知られる。

※黒字=横山氏

-- 作品集のレコーディングや全曲演奏など、これまでショパンの作品に意欲的に取り組んでこられました。ショパンの音楽の魅力についてお聞かせください。

ショパンは、ひと言で言えば「ピアノのためだけの曲を書いた作曲家」です。ピアノという楽器は、ちょうどショパンが生まれた頃に楽器としての完成を見ています。つまりショパンは、完成型としてのピアノを初めて演奏した世代の一人だったわけです。彼は、その新しい楽器であるピアノのための音楽、ピアノでしか表現できない音楽を終生追求しました。

現代のピアノ演奏者から見れば、それはすなわち、ショパンの音楽を独り占めできることを意味します。ベートーベンのオーケストラ曲をそのままの形で一人で演奏することはできませんよね。しかし、ショパンの曲は一人で弾くことができる。作品に一対一で向かい合えるわけです。これは、ピアノ奏者としては、大変喜ばしく、やりがいのあることです。

また、作品の解釈の幅が非常に広いことも、ショパンの曲の特徴です。彼は、テンポ・ルバート、つまり、テンポが自由自在に伸縮する形式を作曲に本格的に取り入れたほぼ最初の音楽家でした。テンポの伸縮のさせ方は弾き手に任されています。従って、弾き手がどう弾くかによって、メロディーの表情や美しさが大きく変わるわけです。

僕自身、この20年間、様々な形でショパンの作品に取り組んできましたが、弾けば弾くほど、曲の奥深さを発見させられます。とりわけ、最高のピアノで、最高の演奏会場でショパンの曲を弾くという経験を何度もさせていただいたことで、作品の魅力がより深く理解できるようになったと感じています。最近では、彼の作品がまるで自分の曲のように身近になっていますね。もっとも、僕の演奏をショパン本人が聴いたら、何と言うかは分かりませんが(笑)。

-- 楽譜には、作曲家が曲に込めた思いなどは書かれていませんよね。演奏する際は、作者の思いをどのようにくみ取っているのですか。

ピアノを弾く横山氏確かに楽譜に書かれているのは、音符といくつかの音楽記号だけです。しかし、過去の天才的な音楽家たちは、そこに思いのすべてを託していると僕は考えています。

作曲家の生涯や歴史的背景といった資料に当たる作業は、やらないよりはやった方がいい。でも僕たち演奏家は、音符そのものから作曲家のメッセージを受け取り、それを生きた音楽として表現できなければいけません。もちろん、メッセージの受け取り方やそれを表現する方法は、演奏者によって様々ですけどね。

自分が納得できないと体が動かない

-- 10代の頃、日本やフランスで音楽を学ばれました。その当時、より良く音楽を学ぶために大切にしていたことは何でしたか。

自分ではない誰かと全く同じように演奏することは不可能であり、それは音楽を学ぶということではないと僕は考えていました。では、音楽を学ぶとはどういうことか。それは、自分が頭の中で思い描いている理想の音楽に近づくための、合理的で最短のアプローチを身に付けることである。そういつも思っていました。

自分が演奏したい音楽のイメージが自分の中にある。しかし、それをより良く表現するためには、指の動きを矯正しなければならないかもしれないし、体の動かし方を変える必要があるかもしれない。そういった方向性と、それを身に付けるためのトレーニング法を教えてもらうこと。それが音楽を学ぶということなのだと僕は思います。

-- 「音楽をどう表現したいか」ということ自体は、人に習うものではないということですね。

それは本来、自分の中にあるものですよね。僕の場合、幼い頃から本当にたくさんのレコードを聴いていましたから、その中で自然に音楽の感性やイメージが培われたのだと思います。

昔、ある先生に言われて今も記憶に残っている言葉があります。「君は私が指摘すると、指摘通りには弾かずに、独自に解釈したやり方で弾こうとするね」──。それが、まさしく10代の頃からの僕のスタンスでした。自分の感性を一度通し、自分なりに納得した上でないと、体が動かないんです。だって、先生から言われたことをそのままなぞっていたのでは、先生を超えることはできないじゃないですか。

横山氏そのやり方を通すことで僕は少し回り道をしたのかもしれないけれど、今になって振り返れば、それがそのままプロとして活動するためのトレーニングになっていたように思います。自分が教える立場になってみて、自分独自の考えで何かをやってみようとする生徒が少ないことをちょっと不満に感じています。

自分の解釈、自分のスタイル、自分のアプローチ。そういったものをある程度持たないと、一人で羽ばたいていくことは難しいよ。そう生徒たちには伝えていきたいですね。

-- 日本とフランスでは、音楽教育の方法に違いはありましたか。

あくまで傾向としてですが、先生に習ったことを正確にやることが重視されるのが日本だとすれば、フランスでは、先生と生徒が議論をしながら、その生徒が最も良い演奏をするための方向をともに探るという感じでした。その点でも、フランスの音楽環境は僕の肌に合っていましたね。

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