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【平成の世にサムライを探して】【第七十四回】立川談春|システム構築やトータルソリューションをお探しなら、日立ソリューションズをご利用ください。

立川談春 当世随一の実力派噺家が語る、師匠、落語、技 天分を生かし、基礎を磨き、そして戦う

古典落語の世界を生き生きと語らせたら、老若男女を問わず聴き入らせる。 落語立川流きっての 実力派にして、エッセイ 『赤めだか』でその真価を知られた「語り」の才人、 立川談春氏。彼にとっての 、そして 師匠とは──。

この人は俺に本気で教えようとしている

立川談春 (たてかわだんしゅん)プロフィール
1966年東京都生まれ。
立川談志に惚れ込み、84年、高校を中退して談志に入門する。88年に二つ目に、97年9月に真打ちに昇進する。
2000年、国立演芸場花形演芸会銀賞を、03年には同金賞を受賞する。08年、文芸誌「en-taxi」での連載をまとめた『赤めだか』で講談社エッセイ賞を受賞した。

※黒字=立川氏

-- 立川談志師匠を初めて見たのは、中学生の時だったそうですね。

卒業前に上野の鈴本演芸場に生徒みんなで落語を聴きにいくという企画がありましてね。何に感動したかといって、40代半ばにもなった大の大人の男がですよ、14、15のガキたちに向かって、大汗をかいて自分の稼業がどういうものかと真剣に分からせようとしている。その姿に感動したわけです。俺の周りにそんな大人は一人もいませんでしたから。「ああ、この人は俺に本気で何かを教えてくれようとしている」。そう思いましたね。

天才肌、毒舌、危ない。好き勝手に生きていて、痛烈なこと言ってるけど、世間からは何とか抹殺されずに済んでいる──。昔からそんなイメージでしょ、うちの師匠って。でも俺にとっては、どんな大人よりも自分に向かって親切に語りかけてくれた人だった。そこが俺の立川談志に対する興味の始まりだった。縁というのか運というのか、そこから談志を本気で追いかけるようになったわけです。

-- 「落語は人間の業の肯定である」という談志師匠の言葉については、どう感じましたか?

それを聴いたのも中学生の時ですけど、意味なんか分かんないですよ。「ゴウって何だ? どう書くんだ?」くらいの話です。しかし、今は分かりますよ。「為せば成る」というのがあらゆる芸能の根本にある考え方であり、もっといえば、日本という国のモットーだった。でも、為さなくてもいいっていう価値観もあるんだよと。最善を尽くせってみんな言うけれど、最善を尽くせないもんなんだよ、人間はと。そういう言葉でしょ、あれは。

-- 2008年、談志師匠との親子会で「芝浜」をやられました。師匠の大名演で知られるネタをやるのは、大きな覚悟だったのではないでしょうか

立川氏「芝浜をやる」と言ったら、談志からはものの見事に拒絶されましたよ。「何考えてんだ、てめえ」と。「10年早いよ」ということだったのか、「今日の客に対してそれは違うだろう」ということだったのか。おそらくその両方だったんでしょう。

しかし、あえて俺は「芝浜」をやりました。それは確かに覚悟のいることでしたが、覚悟のドキュメントを見せることが、その日の客に対してストライクの球を投げることだと、そう思ったからやりました。覚悟を見せることがかっこいいと思ってしまうような気が弱いやつなんですよ、俺は。

挫折の中でつかんだ自分だけの武器

-- ご自身の芸が確立したのはいつ頃でしたか?

確立しなければならない。そう切羽詰まって思ったのは、弟弟子が先に真打ちに昇進した時でした。こいつには負けるわけがない、抜かれるはずがない。そう思っていたやつに越されちゃったわけだから、これは挫折ですよ。悔しい。悔しいから戦わなきゃならない。戦うには武器が必要だ。じゃあ、俺の武器って何だ?そう初めて考えたわけです。

立川氏それまではね、全部やれるようになりたいと思ってたわけですよ。オールマイティーになるって夢を見てた。なぜかといえば、師匠がそういう人だったから。落語がうまくて、文章が書けて、世の中を騒がす才能があって、国会議員にまでなって、サメ退治に行って日本中から怒られても、まだ存在を許されているというね。弟子って、師匠になりたいものでしょ。立川談志になりたかったんですよ、俺は。

でも、それは自分のことが分かっていなかったということでね。努力をすればなれるというものじゃないの。人には持って生まれたものがあるんです。その人だけの長所というものがあるんです。俺は追い詰められて、それにすがるしかなくなった。それまでは、長所を褒められても嬉しくなかったんです。だって、長所ってできることなんだもん。

当たり前にできることを褒められたって嬉しくないじゃないですか。でも、弟弟子に抜かれてその当たり前のことにすがるしかなくなった。お前が勝負できるのはここでしょ、自分の長所しかないでしょ。じゃあそれでやっていくしかしょうがないね。そんなふうに考えられるようになるまで、15年掛かりました。

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