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2ページ目|第二回「不調に泣いていた松坂は、なぜ復活できたのか?」|脳が変わればビジネスも変わる 脳医学者 林成之の成果を生み出す勝負脳講座|システム構築やトータルソリューションをお探しなら、日立ソリューションズをご利用ください。

第二回「不調に泣いていた松坂は、なぜ復活できたのか?」
第二回「不調に泣いていた松坂は、なぜ復活できたのか?」

「整った形が大好き」という脳のクセを利用するべき

 このように、松坂投手には「間合い」についての話をしましたが、もう一つ、「人間力」を強くしなさい、とも言いました。どういうことかいうと、例えば絶好調で投げているピッチャーが、たったひとつの味方のエラーからガタガタと崩れていく場面がよくありますね。これは、「しまった」という感情によって、脳の本能の一つである「統一・一貫性」が負の方に働いてしまうからです。いわゆる脳のクセというものです。これは人間がものを考える場合に、これは正しいとか間違っているとか、あるいはよく似ているといったことを判断する本能です。人間は整った顔だちの人を好む傾向がありますが、ここにも「統一・一貫性の本能」が隠れています。人間は左右対称、あるいは筋の通ったもののように統一・一貫性のあるものを好む本能があるのです。一方で、統一・一貫性をよりどころとしているために、違うものを受け入れにくいという負の側面も持っています。バランスのよくないものは嫌いですし、自分と違う意見は大嫌いで、その意見を出した人まで嫌いになってしまうのです。

 この本能を克服し、ネガティブに傾きかけている脳のクセを、逆転させてポジティブな方向に持っていくために必要なのが、「人間力」なのです。

 ピッチャーが味方のエラーから崩れるとき、多くのピッチャーは、「彼のエラーでピンチになった」、「自分のせいではない」と負の考え方をします。すると、統一・一貫性の本能が緩み、あるいは、負の方に統一・一貫性の本能が働き、次々と打たれ始めます。この場合、良い方向へ持っていくには「前は彼の守備で助けられたのだから、今日はオレが助ける番だ」と、同僚がピンチを招いてしまったときこそ、「オレがやってやる」という意識を持つべきなのです。いったんネガティブな方向に傾くと、「統一・一貫性」の本能が働いてどんどん負の連鎖が起きてしまうという脳のクセを理解し、「人間力」によって「統一・一貫性」の本能をポジティブな方向へと逆転させる。そのために必要なのが、「オレがやってやる」「やるのは自分しかいない」という強い気持ちなのです。

 ピンチのときこそ、「自分がやってやる」という気持ちを強く持つこと。これがすなわち、土壇場に強くなるための秘訣であることはもうお分かりですね。土壇場で踏ん張って、逆転することができる人とできない人の違いは、結局、「自分だったらできる」と思っているかどうかなのです。松坂投手にもそう言いました。「試合の勝ち負けは、本能で決まる」。脳が「負けるかもしれない」と思った時点ですでに負けている。なぜなら、脳医学的に言うと、気持ちに“逃げ”が起こってしまうから。

 逆に「自分がやってやろう」という気持ちを持つと、「自己報酬神経群」が働きます。これは、人間が自分というものの存在を意識する本能であり、自我を形成するための大切なプロセスでもあります。つまり、自らが進んでやると決めると、それが成功したときの達成感がより強くなる、という本能が脳にはあるわけです。大切なのは、人から言われてやるのではなく、自分から進んでやること。それを一度やると、本能的に脳の達成感が増し、自分でやることを習慣化できるようになるのです。

 ビジネスにおいても、上司から言われたことをそのままやっていると、たとえそれが成功した場合でも達成感は低い。しかし、自分が意欲を持って取り組んだ仕事は、成功したときの達成感も大きいでしょう。これは「自己報酬神経群」の働きなのです。つまり、人から何か命令されたとしても、1から100まで言われたとおりにはやらず、「自分はこう思う」という自分の意見の部分を持ち、その部分だけ独力でやり抜くようにすることが大切です。

「人間力」でネガティブなイメージをポジティブに変えていくことが大切。
「人間力」でネガティブなイメージを
ポジティブに変えていくことが大切。

 それから、「イヤだ」「もう無理だ」「できない」「疲れた」などの否定語やネガティブなイメージのある言葉を使わない、考えないことです。人は土壇場に追い込まれると、どうしても「もうダメかもしれない」などとつい口にしてしまいがちです。が、それは意欲の低下を招くばかりで、問題解決にならないどころか、ますます窮状を深めることにもなりかねません。脳の仕組みから説明すると、脳に入ってきた情報はドーパミンA10神経群を通り前頭前野に送られます。このドーパミンA10神経群には好き嫌いを決める側坐核があり、この部分は好きな情報には積極的に反応するので脳は活性化するのですが、逆に嫌いな情報が入ってくると、あまり反応しないため脳が活性化しないのです。これが続くと思考のうねりも起きず、ドーパミンA10神経群の機能はどんどん低下し、ものを考える意欲や記憶力が落ちてしまうことがわかっているのです。もし土壇場に強い人になりたいのであれば、否定語禁止を徹底しましょう。

 ところで、日本人は「勝負に弱い民族」である、とよく言われますよね。その理由として、私は「日本人はまじめすぎる」のではないかと思うのです。どういうことかと申しますと、ビジネスでも何でも、何かしらの答えを出さなければならないとき、日本人は常に100点の答えを出そうとします。今日は60点で、明日は70~80点と上げていけばいいや、といった考え方は日本人はあまりしません。しかし、現実は、いきなり100点を出すのは難しいことの方が多いですよね。だから、余計にうまくいかないと感じてしまい、ネガティブにもなりがちです。いったんでも気持ちがネガティブに傾くと、脳の「統一・一貫性」の本能が働いて負の連鎖に陥る、というのは前述した通りです。

 そこで私は、「自分にできないことを認めて、公言する」ことをお勧めしています。脳医学的にはそのほうが理にかなっているのです。とくに、組織の中でリーダー的な立場にある人にとっては有効です。私は、リーダーとしての「脳」を鍛えるために、まずは「チームの弱点を明確にしなければならない」と言っていますが、チームの弱点の中には、自分自身の弱点も含まれます。「自分にできないことを認める」ことは、自分自身の弱点を明確にすることにもつながりますし、それを公言することで、リーダーであるあなたの弱点を、チームの弱点として捉えることもできます。リーダーが自分の弱点を皆の前で明確にすることで、はじめて部下と一緒になって解決策を検討できるのですから。そして、リーダーの次は、個人個人の弱点も洗い出す必要があるでしょう。そのとき、個人個人が自分の弱点を認めて、公言していれば、話は早いですよね。つまり、「自分にできないことを認めて、公言する」ことは、組織を強くすることにつながるわけです。批判を怖れず、堂々と自分の弱点を認めて、公言しましょう。その弱点を克服する努力をするのは、それからでいいのです。

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