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2ページ目|第2回 マネジメントはサイエンス。教科書通りの方法で失敗リスクを最小限にする。|星野佳路の「組織活性化」講座|システム構築やトータルソリューションをお探しなら、日立ソリューションズをご利用ください。

~星野リゾート流 意識改革~ 星野佳路の「組織活性化」講座
第2回 マネジメントはサイエンス。教科書通りの方法で失敗リスクを最小限にする。

教科書を信じ切ること。一から十まで忠実にやり通すことが大切

 さらに「教科書」を実践することで非常に重要なことがあります。これを軽んじるとすべては無になるどころか悪い結果を招くことにもなりかねませんのでしっかりと胸に刻んでください。

中途半端にせず、一から十まで忠実に実践することが大切
中途半端にせず、一から十まで忠実に実践することが大切

 それは一から十まで忠実に実践すること。理論や公式というのは一から十まで完璧に実践しなければ正しい「解」は得られないのです。よく見受けられるのが、複数の理論のいいところ取りをしようとして失敗している人です。折衷案は愚の骨頂なのです。一つのジャンルには一つの理論を徹底的に実践してください。そして「最後までやり通す」こと。中途半端はいけません。成果は継続することから生まれますし、検証もきちんと実践するからこそできるものです。

 一つ例を挙げると、星野リゾートの系列の地ビールメーカー「ヤッホー・ブルーイング」があります。1996年に設立の本格的醸造所はそれまで日本になかったエールビールの製造販売を一貫して行い、看板商品である「よなよなエール」は、1997年の発売直後は地ビールブームの追い風も受けて大ヒット。しかし、ブームが終焉すると売り上げが急激に落ち込み、2002年の決算は赤字となってしまいました。

 すぐにスタッフは新しい需要を掘り起こそうと「よなよなエール」の新味を提案してきました。しかし、私は首を縦には振りませんでした。

 この時、私の頭にあった教科書が『売れるもマーケ 当たるもマーケ マーケティング22の法則』。同書は、よくあるマーケティングの誤解を指摘し、効果的な製品づくりに必要な法則をまとめた本ですが、「短期的に見ると、製品ラインの拡張は常に売り上げを増大させる」が、「長期的な効果は無残」で、結果として売り上げは大きく落ち込むと理論づけていて、私も「一つのブランドで多くの味を出すのは絶対にマイナスである」と確信していたのです。 我々は新味をつくらず、製造工程の見直しなど、品質を向上させる地道な努力を続け、「マーケティングの効果は、長い時間を経てから表れる」という言葉を信じて待ちました。すると少しずつ固定ファンが増え、2005年にはとうとう黒字へと回復。以来、営業利益は伸び続けています。 この場合は、製品ラインを変えないことが正解だったのです。

リピーターの満足度をさらに上げる科学

 私は自分の経営手法のなかで、教科書を根拠とする経営に少しずつですが自信を持ち始めています。そして日々の仕事のうえでも「サイエンス」を取り入れ、理論的な運営を目指しています。

 例えばCRM(Customer Relationship Management)の導入もその一つ。ここで重要なことはデータを収集して分析するうえでしっかりと目的を明確化するということ。漠然とデータを集めるのではコストの無駄です。弊社でいえば「リピーターを確保する」ことで「マーケティングコストを削減する」ことが絶対的な目的なのです。具体的にいうと、弊社の施設ではチェックアウト時に顧客アンケートを行い、「Better Spec Sheet」を作成します。ここで他のリゾートと異なるのは、データ分析の対象を2回目以上の顧客としていること。リピートした時点で初めて、1回目に利用した際のデータを洗い直すのです。現在、「星のや 軽井沢」では利用顧客のうち15%が2回目の利用をしているリピーター客であることが分かっています。これまで顧客アンケートというと、1000人中の1人の人が「部屋のCDの数を増やして欲しい」と言っても検討の対象にはなりませんでした。それよりも1000人中300人が「部屋にシャワートイレの設置を希望している」といった要望の方が優先されていたのです。しかし、CDの数を増やして欲しいという顧客がロイヤリティの高いリピーターであるのであれば、それがたとえ1000人中1人という少数派の要望であっても、弊社では検討の対象となります。それによって、「年に2~3回は国内旅行をする」人が、星野リゾートのシェアを高めてくれるのであれば、それこそが安定集客を可能にする仕組みとなるからです。これは 私たちのような事業では、リピーターとなるお客さまが非常に大切だからです。 新しいお客様を毎回探していくコストというのは非常に高く、リピーターと比べてその費用は8倍から10倍とも言われているのです。ですから顧客満足度に関してもリピーターのお客様の意見がとても重要なのです。

 現在そういったお客様の要望は、データベースに蓄積しています。例えばヘビーリピーターであるAさんの過去10回分のデータベースも確認することができ、1回目の満足度が85点、2回目は87点という具合にグラフが表示されます。 Aさんが繰り返し利用していただく度に満足度が上がっているのか下がっているのかを、私たちはひと目で把握できるのです。さらに前回は87点だった満足度を次回利用していただく際に、少しでも上げるためには何をしたらよいのかを解決していくためのシートが「Better Spec Sheet」。実際にシートに書かれている施策を試してみて満足度が上がったかどうかも検証しています。この仕組みのメリットは、宿泊していただくごとに、満点に対する不足点を積極的に埋めていけること。それが今、各施設のリピート率が競合他社に比べて高くなっている最大の秘訣だと思っています。

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