Chapter05敬語・言葉遣いNG集その4/メール・文書編
20代には、文語文を使いこなせない人が多いようです。文語での表現では、口語との違いを意識することが大切。メールなどの文章を書く際の敬語・言葉遣いの実例をご紹介します。
Case. 1
メール・文書で「高橋さんは最近お忙しいだろうと思います」と言いたい場合
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「高橋様は最近お忙しいこととご拝察します」
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「高橋様にはご多忙のことと拝察申し上げます」
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「高橋様は最近お忙しいことと存じます」
「拝察」は、自分がへりくだって「(尊敬する相手のことを)想像する」という意味の謙譲語なので、「ご」はつけません。「拝察」を使う場合は、「拝察いたします」、「拝察申し上げます」とします。
「~と思います」の謙譲語である「~と存じます」を使ってもかまいません。
Case. 2
メール・文書で「何か気づいた点があれば教えてください」と言いたい場合
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「何かお気づきの点がありましたらよろしくご進言ください」
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「何かお気づきの点がありましたらご指摘ください」
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「何かお気づきの点がありましたらお知らせください」
「進言」は目上の人に対して意見を申し述べるときに使う言葉。その意味を知らずについ使ってしまう人もいるようですが、お客様に対して「ご進言ください」と言うように使うのは明らかに失礼です。同様に、お客様にご意見をいただいたときに「ご進言ありがとうございます」と言うのも失礼です。
Case. 3
初めての相手にメールする場合
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「お世話になっております」
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「初めてメールさせていただきます」
メールの冒頭のあいさつ文としては「お世話になっております」がもっとも一般的ですが、会ったことのない初めてメールする相手に「お世話になっております」では違和感があります。初めての相手には「初めてメールさせていただきます」などと書くといいでしょう。
ビジネスメールの目的は用件を簡潔に伝えることなので、基本的に表現はワンパターンで型にはまったものでかまいません。が、相手への心遣いを示すには、相手との関係性や状況に合わせて、上の例のように文面を少しアレンジするのがおすすめです。
さらに印象をよくしたい場合は、最後にパーソナルな一言を添えるといいでしょう。たとえば、「以上、よろしくお願いいたします」の後に「今日から3月、ますますお忙しくなると思いますが、お元気でお過ごしください」というような一文を入れるのです。メールは、冒頭から用件までは速やかに読みたいものなので、最初に余計なことを書くのは迷惑。最後にチラッと書くと、相手はぐっとくるものです。
敬語の使い方をマスターすることは重要ですが、言葉遣いが完ぺきなメールが書ければそれでいいというわけではありません。20代のビジネスパーソンに求められているのは、社内の人やお客様とうまくコミュニケーションをとって信頼関係を築いていくこと。メールはそのための一手段に過ぎません。
メールは便利なツールですが、相手から返事が来ない限り、届いているかどうか分からないというデメリットもあります。また、重要な用件や謝罪するときにもメールで済ますと、相手に不快感を与えることも。何でもメールだけで済まさず、直接会って話をしたり、電話でフォローをしたりすることも大切です。
Case. 4
受け取ったから2、3日たったメールへの返信で
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「取り急ぎ失礼いたします」
「取り急ぎ」は「急いでいるので、手短ですがお許しください」というときに使う表現。特に急いでいないときに使うのは避けましょう。受け取ってから時間が経過したメールへの返信に使うのも不適切です。
緊急性が認められる場合には、お客様、目上の人へのメールで使ってもかまいませんが、「取り急ぎお礼申し上げます。近日中に必ずお伺いしますのでその際はよろしくお願いいたします」などと、必ずフォローの一文を入れることが大切です。
Case. 5
複数に宛てたメールや文書で
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「各位様」
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「○○各位」、「お客様各位」
「各位」は複数の人宛の文書で、その一人ひとりを敬う敬称です。つまり「皆様」という意味。従って「各位様」とするのは間違った表現です。「ご担当者各位」、「お客様各位」とするのが正解。
ちなみに、相手の会社に対する尊敬の表現に「御社」、「貴社」がありますが、一般的に、口語では「御社」を使い、文書では「貴社」を使うとされています。
その理由は、口頭で「キシャ」と言うと、音がきつく意味がわかりにくいため。メールや文書では貴社でも御社でも漢字が目に入り、意図するところが分かるので、どちらでも問題はありません。
メールにしても企画書にしても、文書を書く際は、「相手は読みたくない」という前提に立って書くことが大事。思いの丈を長々と長文で述べても、相手には面倒なだけです。
短く簡潔に書くコツは、たとえば「A4一枚におさめる」というように、自分の中でルールを作ること。また、ワンセンテンスが3行以上になると読みにくいので、3行までにおさめるようにしましょう。