Chapter01間違いやすい敬語ベスト5
大嶋先生に、間違いやすい敬語のベスト5を伺いました。若手だけでなく、ベテランのビジネスパーソンもついつい使ってしまう、間違いやすい敬語・言葉遣いのNG例と、その正しい使い方を解説します。
1位
二重敬語「おっしゃられる通り」
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お客様がおっしゃられる通りだと思います。
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お客様がおっしゃる通りだと思います。
先生からのアドバイス
これは典型的な二重敬語で、最もよく見られる間違いです。二重敬語とは1つの言葉に2つ以上の敬語をつけてしまう間違った敬語表現です。
「おっしゃる」だけで尊敬語になるため、さらに尊敬語である「られる」をつける必要はありません。
尊敬の意は込められているので、失礼にはあたりませんが、聞いている方は大げさな印象を受け、違和感を覚えるでしょう。
このほかに、二重敬語の例として「ご覧になられましたか」という間違いもよく見られます。これは、「ご覧になりましたか」というのが正解です。
2位
「ございます」と「いらっしゃいます」
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田中様でございますね。
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田中様でいらっしゃいますね。
先生からのアドバイス
「ございます」は「ある」の丁寧語であり、尊敬語ではありません。また、通常は、「あちらに公園がございます」など物事に対してや、「田中でございますか。申し訳ありませんが、田中はただ今、外出しております」など身内に対して使う言葉です。
そのため、敬意を払うべき相手の名前に「ございます」を使うことは大変失礼にあたります。
上の例のように、お客様と名刺交換をした時や、電話を受け相手の名前を復唱する時は「田中様でいらっしゃいますね」というのが正解です。
3位
「申し上げる」と「申し伝える」
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かしこまりました。上の者に申し上げておきます。
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かしこまりました。上の者に申し伝えておきます。
先生からのアドバイス
謙譲語と尊敬語の区別がついていないために起こる間違いです。「申し上げる」は目下の者から目上の者へ使う謙譲語であり、「上の者に申し上げておきます」というと、身内である上司を立てることになります。
自分が上司に直接何かをいう場合は「申し上げる」で正しいのですが、この場合敬意を表すべきなのは上司ではなくお客様です。そのため、「申しておきます」または「申し伝えておきます」が正しいいい方です。
4位
「弊社」、「当社」、「わが社」の使い方の区別
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わが社のミスにより、ご迷惑をおかけして大変申し訳ございませんでした。
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弊社のミスにより、ご迷惑をおかけして大変申し訳ございませんでした。
先生からのアドバイス
「弊社」、「当社」、「わが社」の使い方の区別がついていないために起こる間違いです。「わが社」は自社のことにプライドをもった言葉であり、「わが社の今期目標は……」など社内に向けて使う言葉です。一般に対外的には使いません。
対して、「弊社」は自社のことをへりくだったいい方です。弊社の弊は弊害の弊、「たいしたことのない会社です」という意味合いを含んでいます。そのため、対外的に自社のことをいう場合、特に例のように謝罪の際には「弊社」を使うのが正解です。
ちなみに、「当社」は客観性が高い言葉で、商品説明などのデータに「当社比」などと書く場合に使います。
5位
「おられる」
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○○社でマナー講師をしておられます大嶋様です。
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○○社でマナー講師をしていらっしゃいます大嶋様です。
先生からのアドバイス
ベテランのビジネスパーソンでも使ってしまうよくある間違い。「おる」は「いる」謙譲語であり、「私は営業を担当しております」と自分のことをへりくだって丁寧にいう場合に使う言葉です。
謙譲語である「おる」に「られる」という尊敬語をつけても尊敬表現にならないどころか、そもそも言葉の使い方として間違っています。
「マナーを教えている」など、尊敬すべき相手がやっていることを説明する場合は「おられる」ではなく、「いらっしゃいます」というのが正解です。
敬語のマナーのポイント目上の人に「ご進言ください」はNG?
最近目上の人に向かって「この件について、ご進言ください」といっている場面によく遭遇します。「進言」とは「アドバイス」を丁寧にいった言葉だと思っているようですが、それは間違いです。「進言」の正しい意味は、「目下の人から目上の人に対して意見を申し述べること」です。
目上の人に「教えてください」という時は「ご教授ください」または、「ご指導ください」といいうのが正解です。
残念なことに、世の中には間違った言葉遣いが氾濫しています。それを何の疑いもなく正しいと思って使うのはとても危険です。自分が知らなかった敬語表現を目にした時には、本当にそれが正しい表現なのかを調べてから使うようにしましょう。