CHAPTER6 いよいよ実践!粋に寿司が食べられるか?|システム構築やトータルソリューションをお探しなら、日立ソリューションズをご利用ください。
リクエストが終わると、もじもじしている私を見かねてか、重金さんが「今日のいいところ、お造りで出して」とおつまみを注文してくれた。そして、ビールを少々。私も思い切って「今の旬はなんですか」と声をかける。
「今日は、カキのいいのが入ったので、生ノリと蒸してお出しします」とご主人。その言葉にちょっとうれしくなる。そのやり取りを受けて、重金さんとご主人の魚談義がしばらく続く。
「魚の話は、職人さんとコミュニケーションをとるのに最適です。旬や獲れた場所、食べ方や調味料など、聞いてみると面白いでしょう。最近、ミシュランでも星を取った銀座の老舗「K」では、トロの巻き物にニンニクを使ったと聞きました。伝統を重んじる職人さんも、新しいものを追求する職人さんも、それぞれ魚についてはこだわりがあると思います。そうしたお話を聞くのって楽しいですよ」
そうこうしているうちに、お造りに酢のもの、煮もの、温かいもの(今回はカキの蒸し物)が出たところで「そろそろ握りましょうか」の声がかかった。ぱんと手を叩くと、見事な手さばきでシメサバを握っていく。しかし、出されてすぐは周りを伺い、食べるタイミングがわからない。いつ食べればいいのだろう。手で食べるのがマナーなのだろうか。
「出したら2秒で食べろと無茶をいう寿司屋もありますが(笑)、乾かない程度に、出してもらったらすぐにいただくようにしましょう。たいてい主役や女性から順に出してくれますから、待たなくても大丈夫ですよ。また、食べ方は箸でも手でもどちらでも構いません。でも、この機会に手で食べてみてはいかがですか。慣れると案外簡単ですよ」
促されて手に取ってみる。軽く寝かせてつまみ、さらに90度返して、裏返したままで口へと運ぶ。たねが先に舌にあたるのが理想的な食べ方なのだそうだ。醤油をつける場合は、裏返したままネタ側に軽くつければよい。
小ぶりのお寿司なのに、一口となると案外難しい。なんとか口に運ぶと魚の味がふわっと広がって、その後に寿司飯がほろほろとほどけてくる。おいしさに顔もほころんでくるのがわかる。しかし、うっかりすると、食べることに集中して無言になったり、醤油皿の中にご飯が落ちたり、自分ばかり食べていたり…。
「たばこや香水などのように他の人に迷惑をかけるじゃなし、萎縮する必要はないですよ。醤油にご飯が落ちたら、さりげなくとっておけばいいし、自分ばかり食べていたり、遅れたりに気づいたら、周りを見ながら調整すればいい。わさびがきつい時や、大きくて噛み切れないなどの場合は、職人さんに対応をお願いしましょう」
接待の時には、自分だけでなく招待客の様子をみながら気遣うことが必要になる。たとえば、年配者には柔らかいもの、お酒の好きな人にはおつまみで飲む時間を長めにするとか。事前に全体を相談しておき、加えて微調整を職人さんにリクエストするのがコツのようだ。
「ただし、職人さんも多ければ1人で8人くらいを相手にしていますからね。独占するようなことがないように気をつけましょう。また、なにより職人さんはお寿司が乾くことを嫌います。おしゃべりのしすぎや長っ尻なのも野暮ですから、くれぐれも注意して」
そうそう引き際が肝心。だいたい2時間がめどだという。幹事役は最後の卵焼きや椀物、デザートが来るくらいで、さりげなくトイレに立つふりをして会計を済ませる。このあたりはぜひスマートに行いたいものだ。
近年はほとんどの寿司屋でクレジットカードが使えるというが、カードが読み取れないなどのトラブルがあった場合、お客様を待たせかねない。接待の際には現金を多めに持っていくことが賢明のようだ。
幸い今回の取材も予算内に収まり、だいたいの流れは把握できた。今回は重金さんのリードがあってなんとかまとまったが、「2回目の回らないお寿司」は自分で組み立てに挑戦してみたい。そう思えるほど、度胸がついたのが最大の収穫といえるだろう。
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