Chapter03日帰り登山/準備編
基礎知識を学んだら、実際に日帰り登山に出掛ける計画を立ててみましょう。ここでは、都心から近い高尾山に登山する場合の計画の立て方や必要な服装、持ち物について学びます。

当日の天気や登山にかかる時間などをきちんと調べた上で、スケジュールやコースを決めましょう。時間も調べずに行き当たりばったりで登山すると、下山するころには日が暮れて、周囲が真っ暗になってしまうことも。初めての場合は特に、入念に計画を立てることが大切です。
天気予報は、前日だけではなく数日前からチェックしておくのが安心。当日が晴天でも、数日前に降った雨の影響で登山道が通れないといったケースもあるからです。天気予報チェックは、天気予報サイトなどで、市町村ごとの天気が細かく調べられる「ピンポイント天気予報」を利用するといいでしょう。
安全、快適に登山をするための服装と靴選びのポイントを解説します。

高尾山程度の日帰り登山なら、スニーカーでもOKですが、つまずいたり滑って足首をひねったりすることもあるので、トレッキングシューズの方が安心です。
購入する場合は、登山用品を扱っているスポーツ用品店などで。キャラバン、メリルといったメーカーが一般的ですが、登山用品売り場に置いてあるようなメーカー品ならまず外れはありません。
厚めの靴下を履くので、サイズは少し大きめのものを。試着したときにつま先に少し余裕があると、下りでつま先を痛めにくいです。
また、ローカット、ミドルカット、ハイカットと種類がありますが、日帰り登山の場合はミドルカットくらいが最適(ローカットは軽量ですが足首を保護する部分がなく、ハイカットは、安全性は高いのですが重すぎて疲れてしまいます)。
さらに、今後も本格的に登山したい人は、ゴアテックスの防水加工のものがいいでしょう。

高尾山程度の低山(高尾山は標高約600m)の場合は、気温は都心より3~5度低い程度なので、基本は都心の気温を参考にして決めましょう。秋口(10~11月)なら、長袖シャツが最適。汗をかくので、速乾性の長袖Tシャツがあればその方がベター。

動きやすい長ズボン。吸湿・速乾性の素材がベター。ジーパンはぬれると重くなるので避けましょう。

下着は、汗をかくので速乾性のものがベター。靴下は、自分のシューズに合うものを選びましょう(シューズが大きめの場合は厚手の靴下にするなどして調整します)。スニーカーソックスなどではなく、足首まであって足をちゃんと保護するものの方が安全です。

山はふもとより気温が低いので、基本的に防寒着は必須です。10~11月なら、ダウンジャケットではまだ暑いので、ウィンドブレーカーが最適。ただし、日によっては寒い日もあるので、天気予報で気温を見て、冷え込みそうなら暖かめの上着を持っていきましょう。
次に、日帰り登山に必要な持ち物と選び方のポイントなどをまとめました。
ザック (リュックサック) |
両手がフリーになってバランスがとりやすいザックやリュックサックが最適。購入する場合、日帰り登山なら容量15~20リットルの小さめで十分です。 「大は小を兼ねる」とつい大きめを買いたくなるかもしれませんが、大きいザックほど重くなる上、つい余計なものまで入れてしまって荷物が多くなり、動きにくくなってしまいます。 |
雨具 | 傘より雨がっぱがベター。ゴアテックスなどの上下セパレートのレインスーツが便利ですが、そろえられなければ普通のかっぱでもOKです。 |
ザックカバー | ザックを雨から守るカバー。ザックのサイズに合うものを選ぶのがポイント。ない場合は、ビニール袋でも代用は可能。 |
帽子 | 日よけのため、また雨が降ったとき顔に雨が当たるのを防ぐために必要。つばのあるものを用意しましょう。 |
飲み水 | 登山をすると予想以上にのどが渇きます。1~2リットルくらいの水を水筒、またはペットボトルなど小分けにして必ず用意しましょう。 |
ヘッドランプ | 山道には明かりがないので、夕方~夜になると真っ暗になってしまいます。遅くなったときや万が一のときのために、ランプは必須。なければ懐中電灯でもかまいません。 |
救急用品 | 常備薬、ばんそうこう、応急手当用の水(ペットボトルなどに入ったものを、飲み水とは別に持って行く)、包帯など。 |
地図 |
本格的な登山の場合は2万5千分の1の地形図がベスト。しっかり道の整備された初心者向けの山であれば5万分の1程度の地図でもOK。 例)「山と高原地図 高尾・陣馬 2011」 |
コンパス |
コンパスで方向を確認しながら進むのが山歩きの基本。しかし、日帰り登山で行ける山では、登山道や道標が整備されているので使わずに済むことが多いです。 ただ、登山を楽しむにはぜひ地図とセットで持ちたいアイテム。購入するなら、スケール付きのオリエンテーション用のものを。 |
携帯電話・ スマートフォン |
山でも携帯電話は必需品。救助を呼んだり、ネットで地図や天気予報を調べたりするのにも活用できます。ただし電波が届く所は限られており、特に沢沿いではつながらないことを覚えておきましょう。 |
ストック |
使うと歩行の補助をしてくれ、足の負担軽減になります。日帰り登山の場合はなくても大丈夫ですが、持っていると安心。必ず自分の体に合うサイズのものを選びましょう。 |
行動食 | 簡単に食べられるパンやおにぎり、お菓子など、登山の行動中に食べるもの。途中や山頂に飲食店がある山も多いので、調べておくといいでしょう。 |
ビニール袋 | 雨が降ったときにザックの中身がぬれるのを防ぐために使います。大きめのものを用意。 |
日焼け止め | 日焼けを防ぎたい人は必要。 |
ガムテープ | 靴底がはがれたときなどに使います。 |
タオル | 汗を拭いたり、雨にぬれたりしたときのために持っておくと便利。 |
下着・靴下の替え | 汗や雨にぬれたときのためにTシャツや靴下の替えを持って行くと便利。 |

登山用品やウェアーはネットショッピングでも買えますが、実物を見るとネットで見たイメージと違うことや、サイズが合わないことも。店舗に行って実物を手に取ったり試着したりして選ぶのが一番です。

山でも便利な携帯電話ですが、救助を呼びたいときなどいざというときに電池が切れていては意味がありません。特にスマートフォンは電池の減りが早いので注意が必要。事前に十分に充電し、使わないときは電源を切る、予備電池を持って行くなどの対応を。
アイゼン |
固い雪の上を歩くとき、靴底に装着して使う、スパイクのような道具。 |
雲海 (うんかい) |
高い山の上の方から見下ろしたとき、雲が一面に広がり、海のように見える風景。 |
ガレ | 大小さまざまな岩や石が重なってごろごろした、歩きにくい斜面のこと。 |
コッヘル | コンパクトに畳めたり重ねられたりと、携帯に便利なように工夫された鍋・食器。 |
ザイル |
岩登りや沢登りで使うロープのこと。 |
出合い | 登山道や沢や川が合わさるところを指す言葉。 |
パーティー | いっしょに山に登るグループのこと。 |
ピッケル | 雪の上を歩くときに使う、つるはしのような形の道具。つえ替わりにしたり、滑り落ちるのを止めたりするのに使われます。 |
自然の登山道を歩き慣れている先生に、登りの際の安全で正しい歩き方を教えていただきました。

普段、街を歩いているときの感覚で歩くと、つま先やかかとから踏み出してしまいがち。このように一カ所に重心をかけると、つるっと滑りやすくなります。

登りの斜面では、できる限り足が地面に平行になるようにして、足の裏全体に均一に力がかかるようにすると、歩きやすく、足にも負担がかかりにくくなります。歩幅はやや小またで、手を振りすぎず、重心をぶらさないようにして歩きましょう。

「今日は普通のスニーカーを履いてきてしまったので、舗装されていない道ではちょっと怖かったのですが、この歩き方で歩くと、足元が安定しますね」(タカハシ)