Chapter03コーチングの基本「セッション」
「コーチング」とはなにか、ということがおぼろげにでもつかめかけてきたでしょうか? ではまず、コーチングの基本的な流れである「セッション」を、コーチングする側を「コーチ」、コーチングされる側を「クライアント」と呼称し、お話します。
(1) 現状把握
例えば、職場でコミュニケーションがうまく取れない人がいる、という場合。コーチが上司で、クライアントは部下。部下はA君という人とうまくいっていないとします。最初に、どううまく行っていないのか、質問で詳しく掘り下げます。その結果、「職場において、A君がまともに話をしてくれない。自分が話しかけても無視するので、コミュニケーションがとれないどころか仕事に支障が出ている。何度か話しあおうとするが避けられる」という問題が出たとしましょう。
(2) 目標設定
現状が具体的に把握できれば、次のステップは目標設定です。クライアントの未来イメージが明確になればなるほど目標設定への一歩も踏み出しやすくなります。今回の例で言うと
- 「A君と同僚としてうまくサポートし合える関係性になりたい」
- 「これまでは飲み会にA君がいると行きづらかったが、行けるようになれば同じチームの仲間とも情報交換がしやすくなる」
といったように、具体的に目標イメージを設定しましょう。そしてそのイメージをコーチと共有していきます。
(3) リソースの発見
目標が決まったら次に、課題解決や目標達成のためにクライアントが活用できる資源(リソース)をとことん発掘していきます。
例えば②で出た「A君とうまくコミュニケーションがとれるようになりたい」という場合。
- 上司「これまで、A君とのコミュニケーションでうまくいっていたことはある?」
- 部下「彼があんなふうになる前は、サッカーの話で盛り上がったことが有ります」
- 上司「他には?」
- 部下「彼は頼られるのが好きだから、仕事のことで相談したら喜んでました。あと、飲み会の幹事をやるのが好きです」
……などなど。部下とA君の関係性の中でうまく行ったことを過去にさかのぼって探すと同時に、部下が過去に人間関係づくりで成功した方法についてもヒアリングしています。 このステップでは、クライアントが目標達成や課題解決のために自発的にアクションを起こすための材料を、クライアント自身に探求してもらうために関わっていくのです。
(4) アクションプランの作成
リソースを十分に引き出すことができたら、最後にアクションプランを作ります。ここでは実際に課題解決、目標達成のためのアイデアを具体的に行動に落としこんで行きます。
③でたくさん出てきた過去の成功体験やクライアント自身の強みを踏まえ、実際に何から取り組むのか考えてもらいます。
その際に「いつまでに、何を、どんな風にどうするのか」という具体的な行動計画を作成することがポイントです。
例えば上の例なら
「A君と笑顔で話せて、自然とサポートし合える関係になる」という目標のために「まずは自分から笑顔で話しかけてみる」 、そして過去の体験から「仕事の相談をA君に持ちかけてみる」ことにしましょう。そして「いつまでに」も決めなくてはいけないので「一週間以内に」とします。
これでアクションプランは完成です。
しかし、「どんなタイミングで話しかけたらいいだろう」「いきなり相談すると不自然では?」とまだまだ懸念は出てきます。
そこで上司は「どんな風に相談すると良さそうかな?」と聞き、実行に移す前の事前準備の機会を設けていきましょう。
これはあくまでも、コーチングの基本的な流れです。ただこの流れを機械的に実践していても意味はありません。
相手とどういうふうにコミュニケーションを取っていくか、相手にどう心を開いてもらい、自分自身を信用してもらうかなど、さまざまな留意すべきポイントがあります。
Chapter4からは、コーチングをより効果的にするためのテクニック、そして応用方法を学んでいきましょう。