Chapter08営業・接客へ「コーチング」を活用する
これまで、社内コミュニケーションにおけるコーチングの手法や活用法についてお話してきました。これまでのテクニックを身に着けていれば、コーチはクライアントに心をひらいてもらうよう、スムーズに信頼関係を作るテクニックや相手の要望を引き出す質問の仕方を体得しているはずです。
実はこのメソッドは、コミュニケーションの質が成果に大きく反映されるセールスパーソンや、サービス業の方にとっても大きな武器となります。
商品がもたらすドラマを見せる
しかし「いいフルートの選び方」ではなく「フルートを手にとることでどんな風に世界が広がるか」だったらどうでしょう。「僕も演奏をしてるのですが、演奏をすることで感動が得られたり、フルートを通じて仲間たちと触れ合うのを楽しんでます。お客さまはこれまで何か楽器をやってこられましたか?」……このようにスタッフ自身の体験を語ってくれたなら、 顧客の中により具体的なイメージが広がり、心の声にも耳を傾けることができます。それは多くの場合、購入意欲にもつながるでしょう。
このセールストークにはコーチングと同じ要素が含まれています。ティーチングは「英会話能力を上げたい」「仕事で成果を上げたい」というスキルレベルの目標を掲げて指導に望みますが、コーチングでは「英会話が上達するとどんな人生になりそうですか?」「成果が上がるとどんないいことが有りますか?」と、その先のドラマに焦点を当てます。 顧客がそのサービスや商品を手に入れることでどんな素晴らしいことが起こるのか。それを一緒に考えていくことが大切なのです。
相手に合わせる
そこで、Chapter4で紹介した「ペーシング」「ミラーリング」を使っていきましょう。これはプロのコーチやカウンセラーが相手にリラックスしてもらい、心をひらいてもらうために実際行っているテクニックです。 そしてこの方法は営業や接客業にそのまま応用できます。どんな人にでも同じ態度というのではなく、相手によって意図的にペースを合わせてみてください。そのためには相手をよく観察し、コミュニケーションスタイルを読み取って関わるのが重要です。
相手に貢献する
「顧客(クライアント)に対して貢献したい」というこの思いは、コーチングでもセールスでも共通するポイントです。そもそも商売の原点とは、お互いに欲しい物を交換する「物々交換」。「売らねばならない」のではなく、顧客が欲しいものを提供する〝win=win〟の関係であることが重要です。 コーチング的に相手に感想を求めて商品の良さを確認してもらいつつ、「顧客に貢献したい」という思いをしっかり伝えることで、顧客の中に「商品を購入したい」「サービスを受けたい」という思いが生まれるのです。
コーチングのスキルを身に付ければ、コミュニケーションのスキル自体は自然とアップしているはず。 基本的なコミュニケーションスキルを身に付ければ、取引先や外注先との人間関係や、営業などにも大きな効果があるはずです。