Chapter04情報を「変換」し、アイデア化する方法(1)
料理をする際、良い食材が豊富にあっても、そのままでは食べることができません。作る料理に合わせ、皮を剥いたり、切ったり、場合によっては冷やしたり冷凍したり……という「下ごしらえ」が必要です。
情報も同じことが言えます。ストックした情報を引き出してきても、そっくりそのまま使うことはできません。自分の仕事に応用する「アイデア」にするためには、それらを自分の仕事に合うよう「下ごしらえ」をしておく必要があります。
情報の場合、この「下ごしらえ」にあたるのが「変換」です。つまりこれがChapter2でお話した「情報変換力」となります。
既存の情報を変換することにより、これまでになかった新たな発想が生まれます。まずはChapter3で集めた情報を「変換」するための大前提をお話ししましょう。
「特殊はない」と柔軟に考える
「うちの業界には当てはまらないんですよ」「うちの業界は特殊ですから」このような言葉をよく耳にします。しかし、本当にそうでしょうか? 本当に「特殊なビジネス」などあるのでしょうか?
ビジネスは、売り手と買い手が存在することによって成り立っており、業界によって何を売るのか、誰に売るのか、どう売るのかという違いはあっても、その成り立ち自体に変わりはありません。つまり、ビジネスに「特殊」はないのです。
「自分の業界は特殊だから」と言って、他の業界を見なければ、その業界の常識の枠から出ることはできません。「自分の業界は特殊」という前提に立ったところで、得することは一つもないのです。
業界の垣根を取り外し、ストックしてある情報を縦横無尽に組み合わせ使いこなす柔軟性が必要です。むしろ、入手した情報はどんなものであっても自分の仕事に変換してみせる、このくらいの心構えが必要です。
業界の常識を疑う
私は「自分の好みで仕事を選ばない」ことを自分のルールにしています。自分の好みをフィルターにしてしまうと、仕事の幅が狭まり、自分の可能性も広がっていかないからです。
好きな事なら夢中になり、情熱を注げるから成果を生みやすいのでは? と思われるかもしれませんが、ビジネスの場合はそうとも限りません。
好みをあてにせず、距離を置き客観的な視線を持つことで、従来のその業界の常識を疑うことができ、新たな発想を生み出すことができるというケースもあります。
ビジネスにおいては「好きか嫌いか」のフィルターは脇に置き「商売になるかどうか」「マーケットがあるかどうか」というセンサーを働かせましょう。同時に、その業界の「常識」を疑うことも必要です。
抽象化するまで落としこむ
興味深い事例として、群馬県の相模屋食料が製造販売している「ザクとうふ」があります。TVアニメ「機動戦士ガンダム」に出てくるモビルスーツ「ザク」の形をしていて、色もアニメのザクと同じ緑色です。
大ヒット商品になった「ザクとうふ」ですが、大事なのは「なぜガンダムではなく、ザクを豆腐にしたのか」という部分です。
答えは簡単で、主人公のガンダムは一機しかあってはいけないのですが、ザクは量産型モビルスーツなのでいくつあってもいいのです。ファンであればあるほど「量産型」でないと納得できない、という心理を逆手に取ったヒットといえるでしょう。この事例を自身のアイデアに落とし込むには、どうすればいいのでしょうか。
「ザクとうふが大ヒットしている」だけでは、新たな情報を入手しただけです。ここで終わってはもったいない。
それに対して「なぜガンダムではなくてザクなんだろう」と疑問を抱き、それを考えることで、ファンが納得するためにはどうしたらいいかというレベルの考えに到達できます。
情報を入手したら、このような「抽象化」が大事です。表面的な知識で終わることなく、そこに疑問を感じて抽象的なレベルにまで落としこむ。
そして、必要に応じてその抽象レベルを使いこなす。そうすることで、自分の仕事に使えるようになります。
この3つは、情報を入手する際の基本的な姿勢です。入手した情報を具体的に変換してゆく際には、まずこの3つの姿勢が大前提となりますので、常に心がけておくようにしましょう。